令和8年熊本地震と、解体・災害廃棄物の実務 ── 許可の期限が延びています
01処理するのは、市町村です
熊本県は令和8年8月、熊本県災害廃棄物処理実行計画(第1版)を定めました。計画には「処理主体:市町村」と明記されています。県は全体の計画をつくり、調整する立場です。
ですから、仕事の入り口は市町村にあります。どの市町村が、いつから、どういう形で解体を進めるのか。そこを見ないと動けません。県のページを見ていても、受付の日程は出てきません。
02公費解体と自費解体は、別の仕事です
被災家屋の解体には二つの道があります。業者から見ると、この二つはまったく違う仕事です。
| 公費解体 | 自費解体(償還) | |
|---|---|---|
| 誰が解体するか | 市町村が所有者に代わって実施 | 所有者が自分で手配する |
| 業者との契約 | 市町村との関係になります | 所有者との請負契約 |
| お金の流れ | 市町村が負担 | 所有者が支払い、あとで一部を受ける |
| 対象 | り災証明書で半壊以上(全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊)と判定された家屋 | |
受付の日程は市町村ごとに違います。たとえば熊本市では、事前予約を令和8年8月25日から、書類の受付を令和8年9月10日から12月10日までとしています。ほかの市町村は、それぞれの案内で確かめてください。
03自費解体は、業者の書類が施主の償還を決めます
ここは強くお伝えしたいところです。自費解体で所有者が費用の償還を受けられるかどうかは、工事をした業者が何を残したかで決まります。
熊本市の案内は、自費解体の場合に解体工事の前後の写真、契約書、領収証、廃棄物処理帳票の保管が必要だとしています。このうち、写真と処理帳票は施主が自分で用意できるものではありません。
| 残すもの | 誰が用意するか |
|---|---|
| 解体前・解体後の写真 | 業者。着手前に撮っていなければ、あとから作れません |
| 契約書 | 業者と所有者。口約束で始めると、ここで詰まります |
| 領収証 | 業者 |
| 廃棄物処理帳票(マニフェスト等) | 業者。処理の流れを裏づける書類です |
急いで着手して、写真を撮り忘れる。これがいちばん怖いところです。施主は解体そのものより、そのあとの償還で困ることになります。
なお、熊本県からは災害後の住宅修理トラブルに関する注意喚起も出ています。見積の内訳を示し、契約書を交わし、記録を残す。ふだんどおりのことを、ふだんより急いでいる状況でやりきれるかどうかです。
04許可の期限が、延びています
令和8年熊本地震は特定非常災害に指定されました(令和8年政令第260号)。これにより、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律にもとづく措置が適用されています。
令和8年7月28日以後に満了する許可等の有効期間が、令和9年1月27日まで延長されます。国土交通省は令和8年8月7日に告示を公布しました。
| 許可等 | 対象者 | 延長後 |
|---|---|---|
| 建設業の許可 | 特定被災地域内に主たる営業所を有する者 | 令和9年1月27日 |
| 経営事項審査、監理技術者資格者証 | 告示で指定された範囲 | 令和9年1月27日 |
| 産業廃棄物収集運搬業 | 熊本県内で業を行う許可を有し、有効期間が令和8年7月28日〜令和9年1月26日に満了する者 | 令和9年1月27日 |
| 産業廃棄物処分業 | 施設等が特定被災区域内にあり、同じ期間に満了する者 | 令和9年1月27日 |
産廃の収集運搬については、被災区域に限られていません。熊本県内で業を行う許可を持っていて、期間中に満了するなら対象です。処分業のほうは施設の所在地で判断します。
県が示す特定被災区域は、災害救助法が適用された市町村です。八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、氷川町、芦北町、津奈木町。県の産廃の告示では、政令市である熊本市が除かれています。熊本市の許可を持っている会社は、熊本市に確認してください。
指定された範囲に入らない場合でも、申出により延長が認められることがあります。あきらめる前に、許可を出している部局に相談してください。
許可・経審・監理技術者資格者証の期限がどこまで動いたのか、そして指名願の締切が動いていないことは、建設業許可・経審・指名願は、地震でどう動いたかに日付で整理しました。
05出せなかった届出には、猶予があります
もうひとつ、期限のほうの措置です。
令和8年7月28日以後に期限が来た届出などの義務が、地震のために果たせなかった場合、令和8年11月27日までに履行すれば、行政上および刑事上の責任を問われません。決算変更届、変更届、各種の報告。事務所が流された、書類が取り出せない、人が動けない。そういう事情が認められる場合の措置です。
免責であって、免除ではありません。出さなくてよくなったわけではなく、11月27日までに出せばよい、ということです。日程が読めるようになった時点で、順番を組んでください。
06解体を請け負う側の要件は、変わりません
災害だからといって、解体工事の要件が緩むわけではありません。ここは平時と同じです。
| 請負金額 | 必要なもの |
|---|---|
| 500万円以上 | 解体工事業の建設業許可 |
| 500万円未満 | 建設リサイクル法にもとづく解体工事業の登録 |
配置する技術者についても同じです。技術検定に平成27年度までに合格した人は、資格とは別に、解体工事の実務経験1年か登録解体工事講習が必要です。この点は分かれ目は合格した年度で詳しく書いています。
廃棄物を運ぶなら産業廃棄物収集運搬業の許可が要ります。災害廃棄物であっても、事業活動として運ぶ以上は同じです。市町村の委託を受けて運ぶ場合の扱いは、その市町村の仕様によりますので、確認してください。
やむを得ず解体する場合、施主は住むところを探すことになります。半壊以上で再利用できず解体する方は、県の賃貸型応急住宅の対象になり得ます(応急住宅は三つあります)。解体の相談を受けたときに、あわせて案内できると話が早く進みます。
07つまずきの記録
| よくある思い込み | 実際は |
|---|---|
| 災害廃棄物は県が処理する | 処理主体は市町村です。県は実行計画をつくる立場です |
| 公費解体も自費解体も、業者から見れば同じ | 相手が違います。契約もお金の流れも別です |
| 急ぐから、写真は後回しでいい | 解体前の写真は、あとから作れません。施主の償還が受けられなくなります |
| 許可の期限が切れたら終わり | 令和9年1月27日まで延長されています。対象かどうかを確かめてください |
| 産廃の延長は被災地域の業者だけ | 収集運搬は、県内で業を行う許可を持ち期間中に満了するなら対象です |
| 告示の対象外だから、もうどうにもならない | 申出により認められる場合があります。所管の部局に相談してください |
| 届出は出さなくてよくなった | 免責であって免除ではありません。11月27日までに出してください |
| 災害だから、解体の許可や登録は問われない | 要件は平時と同じです |
いま確かめておくこと
- 自社の建設業許可・産廃許可の満了日が、令和8年7月28日以後かどうか
- 主たる営業所、または処分施設が、災害救助法の適用市町村にあるか
- 対象外に見える場合、申出で延長できないか所管に相談したか
- 7月28日以後に期限が来た届出で、出せていないものがないか
- 自費解体を請け負うとき、着手前の写真を撮る段取りができているか
- 契約書・領収証・処理帳票を、施主に渡せる形で残しているか
- 公費解体に関わるなら、その市町村の受付日程と手続きを確認したか
解体と廃棄物のほかにも、県は修理や住まいの制度をいくつも動かしています。所管課ごとにばらばらに置かれているので、建設業に関わるものだけを並べ替えました(地震の情報は、県のどこにあるか)。
08確認先
制度は動いています。ここに書いたことも、確認した時点のものです。手続きの前に、必ず最新の案内をご覧ください。
| 災害廃棄物・産廃許可の延長 | 熊本県 環境生活部 循環社会推進課 企画調整班 096-333-2277/廃棄物指導班 096-333-2278 |
|---|---|
| 建設業許可・経審 | 熊本県 土木部 監理課(建設業担当) |
| 公費解体・自費解体 | お住まいの市町村(受付期間・様式は市町村ごとに異なります) |
| 国の告示 | 国土交通省「令和8年熊本地震における被害者の有する許可等の有効期間の延長について」(令和8年8月7日) |
被災された皆さまに、お見舞い申し上げます。手続きのことで手が回らないときは、熊本県内の案件についてご相談ください。期限のことだけでも、先に整理しておくと動きやすくなります。
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