令和8年熊本地震にともなう建設業許可・経営事項審査・入札参加資格の期限の取扱い

建設業許可・経審・指名願は、地震でどう動いたか ── 延びた有効期間と、動かない12月18日

令和8年7月28日の地震から、ひと月あまりが過ぎました。現場は動き出しています。一方で、事務所の机には別の心配が残っているはずです。許可の満了日、経審の有効期間、そして年内に控えた指名願。結論から書くと、地震で動いたのは期限だけで、審査の中身や出す書類は動いていません。どの日付がどこまで延びて、どの日付が延びていないのかを整理します。

01動いたのは期限で、中身ではありません

令和8年熊本地震による災害は、特定非常災害に指定されました(令和8年政令第260号)。これを受けて国土交通省は、令和8年8月7日に告示を公布しています(国土交通省告示第千三十七号ほか)。特定非常災害法第3条にもとづき、許可や登録の満了日を先送りするための告示です。

この告示で、建設業許可・経営事項審査・監理技術者資格者証の有効期間が、そろって令和9年1月27日に揃いました。同じ告示には測量業者登録、建築士事務所登録、宅地建物取引業免許なども含まれています。

ただし、延びたのは満了日です。経審の審査対象となる決算日も、指名願の受付期間も、提出する書類の中身も、変わっていません。ここを混ぜて考えると、年末に足をすくわれます。

地震で動いたか いまの取扱い
建設業許可の有効期間 動いた 満了日が令和9年1月27日に
経営事項審査の結果の有効期間 動いた 満了日が令和9年1月27日に
監理技術者資格者証の有効期間 動いた 満了日が令和9年1月27日に
変更届などの提出期限 動いた 令和8年11月27日までに出せば責任を問われない
経審の審査対象となる決算日 動いていない 令和7年10月1日から令和8年9月30日まで
指名願(令和9・10年度)の受付期間 動いていない 令和8年6月1日から12月18日まで
経審の審査項目・審査基準 動いていない 令和8年7月1日施行の改正がそのまま適用
申請書に添える書類 動いていない 省略や簡略化は示されていません
図1 地震のあとに並んだ、五つの日付
延びた期限と、延びていない期限が、同じ半年のなかに並んでいます 令和8年7月28日 地震。すべての起点 令和8年11月27日 遅れた届出を出しておく日 令和9年1月27日 延長後の満了日 令和8年8月7日 国土交通省の告示 令和8年12月18日 指名願の受付終了。ここは動かず 延長は、特定被災区域内に主たる営業所(資格者証は本人の住所)がある場合の取扱いです。

02令和9年1月27日に、三つの期限が揃いました

告示で満了日が延びるのは、次の三つです。手続きは要りません。申請も届出もせずに、満了日そのものが動きます。

対象 誰が対象か もとの満了日 延長後
建設業の許可(法第3条第1項) 特定被災区域内に主たる営業所を有する者 令和8年7月28日から令和9年1月26日までに満了 令和9年1月27日
経営事項審査の結果の有効期間 同上 同上 令和9年1月27日
監理技術者資格者証 特定被災区域内に住所を有する者 同上 令和9年1月27日

告示に名前が挙がっていない許認可でも、所管の部署に申し出れば延長が認められる場合があります。国土交通省の報道発表にもその旨が添えられています。産業廃棄物処理業の許可については熊本県が別に告示を出しており、対象外に見える方のために申出書も用意されています(令和8年熊本地震と、解体・災害廃棄物の実務にまとめました)。

なお、自動車検査証の有効期間は、この告示ではなく道路運送車両法第61条の2にもとづいて別に伸長されています。運輸局の案内でご確認ください。

03対象は「主たる営業所がどこか」で決まります

特定被災区域とは、地震が発生した日に災害救助法が適用された市町村の区域です。令和8年7月28日現在で、県内21市町村が該当します。

特定被災区域(令和8年7月28日現在の災害救助法適用市町村)
熊本市 八代市 水俣市
山鹿市 菊池市 宇土市
上天草市 宇城市 天草市
合志市 美里町 大津町
菊陽町 西原村 御船町
嘉島町 益城町 甲佐町
氷川町 芦北町 津奈木町

ここで一つ、産業廃棄物処理業との違いがあります。県の産廃の告示は政令市である熊本市を除いていました。熊本市の産廃許可は市が出しているからです。一方、建設業許可は政令市に権限が移っていません。ですから熊本市内に本店がある建設業者も、そのまま対象になります。

見る場所を間違えやすいのは、支店の扱いです。支店が益城町にあっても、主たる営業所が区域の外にあれば、一律の延長は及びません。逆に、本店が区域内にあれば、現場が県外でも対象です。監理技術者資格者証だけは会社ではなく本人の住所で見ます。

図2 自社が延長の対象かどうか
見るのは現場の場所ではなく、主たる営業所の場所です 主たる営業所は、どこにありますか 21市町村の中にある 許可・経審・資格者証の満了日は 令和9年1月27日。申請も届出も要りません 21市町村の外にある 一律の延長は受けられません。所管に 申し出て、認められる場合があります 読み違えやすいところ 建設業許可と経審は主たる営業所で、監理技術者資格者証は本人の住所で判断します。 支店が被災地にあっても、本店が区域の外なら一律の延長は及びません。

04もう一つの日付、令和8年11月27日

特定非常災害法には、期限を延ばす条文のほかに、遅れを咎めない条文があります。第4条第2項です。履行期限が令和8年7月28日から11月26日までに来る届出等の義務について、令和8年11月27日までに履行すれば、行政上および刑事上の責任を問われないという扱いになります。

届出 平時の期限
決算変更届(事業年度終了の届出) 事業年度終了後4か月以内
経営業務の管理責任者に関する変更 2週間以内
専任技術者に関する変更 2週間以内
商号・所在地・資本金などの変更 30日以内
役員等・使用人の変更 30日以内

ここは読み方に注意が要ります。出さなくてよいという話ではありません。遅れた責任を問われないだけで、届出そのものは残ります。しかも11月27日は、指名願の締切より三週間ほど前です。決算変更届が滞っていると経審にも指名願にも進めませんから、実務としては11月27日を年内の第一関門と考えたほうが無理がありません。

05指名願の締切は、動いていません

令和9・10年度の熊本県工事入札参加者資格審査申請、いわゆる指名願は、令和8年6月1日から12月18日までの受付です。県のページは令和8年5月13日更新のままで、地震のあとも受付期間は変わっていません(令和8年9月1日時点)。

そして、申請できる者の条件も動いていません。県内に主たる営業所があり、知事許可なら審査基準日が令和7年10月1日から令和8年9月30日までに属する経審を完了(見込みを含む)していること。大臣許可なら令和7年7月1日から令和8年6月30日まで。ここが要点です。

つまり、経審の結果の有効期間が延びたことと、指名願に必要な経審があることは、別の話です。有効期間が令和9年1月27日まで延びていても、対象の決算日で経審を受けていなければ、令和9・10年度の指名願は出せません。地震で決算や経審が後ろにずれた会社ほど、ここで詰まります。

手順そのものは平時と同じです。熊本県・熊本市の入札参加資格申請(指名願)に流れをまとめています。市町村の入札参加資格は各発注者が別に受け付けますので、地震後の取扱いは発注者ごとに確かめてください。

06現場側の緩和は、二つあります

熊本県監理課は令和8年8月10日、国土交通省の通知と事務連絡を周知しました。期限の話のほかに、現場に直接効く取扱いが二つ入っています。

一つは、監理技術者等の途中交代です。災害によって技術者が職務を続けられなくなった場合、または工期や工事内容に大幅な変更が生じた場合には、注文者と合意のうえで交代できるとされました。専任は同じ人が最後まで務めるのが原則ですが、その例外が改めて示された形です。専任の考え方そのものは配置技術者の「現場専任」実務ノートにまとめています。

もう一つは、恒常的な雇用関係です。公共工事で専任の監理技術者等に求められる「入札申込のあった日以前に3か月以上の雇用関係」について、緊急の必要その他やむを得ない事情がある場合には適用しない、という扱いです。応援の技術者を急ぎで迎える場面を想定したものと読めます。

自分で判断してよい話ではありませんどちらも、注文者や発注者との協議が前提です。交代の理由、合意の経緯、いつから誰に代わったかを記録に残してください。あとで施工体制の説明を求められたときに、書面がなければ説明できません。なお、共同企業体での専任の判断は、この通知では動いていません(JVの技術者は、自社の持分では数えません)。

07発注と契約の側で出た通知

県の監理課は、地震の直後から入札契約に関する通知を続けて出しています。許可の話ばかり見ていると見落としますが、資金繰りと安全に関わるものが混じっています。

日付 通知 要点
令和8年7月30日 被災地域における建設工事等の適正な入札及び契約について 緊急の工事などで随意契約を活用し、迅速に発注する
令和8年7月31日 応急復旧工事等の優先的かつ円滑な実施等について 工事の一時中止、前金払の推進、前払金保証の事務を迅速に
令和8年8月3日 復旧資材等の運送に係る道路運送法の適用について 同法第78条第1号により、自家用自動車での有償運送が例外的に可能
令和8年8月4日 復旧工事における労働災害防止対策について 熱中症、がれき処理、解体作業の安全
令和8年8月10日 建設業法上の特例措置等について 有効期間の延長、監理技術者等の途中交代、恒常的な雇用関係

とくに工事の一時中止と前金払は、手を挙げなければ動きません。現場が止まったまま経費だけが出ていく状況なら、発注者に相談する値打ちがあります。窓口は熊本県土木部監理課建設業班(096-333-2485)です。

期限のほかにも、県は所管課ごとにさまざまな案内を出しています。建設業に関わるものだけを抜き出して並べ替えたものが、地震の情報は、県のどこにあるか ── 建設業者のための並べ替えです。応急仮設建築物の存続期間など、期限が別に走っているものもあります。

08年内、この順で手を動かします

期限が延びたと聞くと、いったん安心して手が止まります。ですが今回の延長は半年ぶんで、しかも一月末に三つの期限が重なって着地します。そこに更新申請が集中すれば、窓口も混みます。順番を決めておいたほうが楽です。

時期 やること
いま 許可・経審・資格者証の満了日を書き出し、令和8年7月28日以後かどうかを確かめる
いま 主たる営業所が21市町村の中かどうかを確かめる。外なら所管に申し出られるか相談する
11月27日まで 止まっている決算変更届・変更届をすべて出す
12月18日まで 令和9・10年度の指名願を出す。経審が対象の決算日で終わっているかを先に確認
年内から1月 許可の更新申請。1月27日に集中する前に着手する

いま確かめておくこと

  • 建設業許可の満了日が、令和8年7月28日から令和9年1月26日までの間にあるか
  • 主たる営業所が、災害救助法の適用21市町村にあるか
  • 監理技術者資格者証を持つ人の住所が、その区域にあるか
  • 7月28日以後に期限が来た届出で、出せていないものがないか
  • 令和7年10月1日から令和8年9月30日までの決算で、経審の段取りが立っているか
  • 指名願の申請書と、必要な添付書類がそろっているか
  • 途中交代した技術者について、注文者との合意を書面で残しているか

延びたのは、書類を整える時間です。整えるべきものが減ったわけではありません。令和9年1月27日は、いまから数えて五か月足らずです。

この記事で扱った三つの日付は、ほかの期限とあわせて熊本の建設業 制度改正カレンダーに一枚で並べています。次に何が来るのかを、まとめて確かめたいときにお使いください。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

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