熊本県・熊本市の入札参加資格申請(指名願) ── 公共工事参入の流れ
01三段階の全体像
- 建設業許可 ── 公共工事の元請には必須です
- 経営事項審査(経審) ── 毎年受け、P点(総合評定値)を取ります
- 入札参加資格審査申請(指名願) ── 発注者ごとに出します
熊本市は熊本県とは別に申請が必要で、格付の基準も市が独自に定めています。ほかの市町村や国の機関も、それぞれ受付時期と様式が異なります。狙う発注者を先に決めることになります。
「指名願」は通称です。熊本県も公式ページで併記していますが、様式の名称は「一般競争(指名競争)参加資格審査申請書」です。書類を探すときは、こちらの言葉で探すと見つかります。
02熊本県 令和9・10年度の定期申請
| 受付期間 | 令和8年6月1日(月)〜 令和8年12月18日(金) |
| 申請方法 | 電子申請(LoGoフォーム)と郵送のどちらでも可。郵送先は熊本県土木部監理課建設業班 |
| 資格の有効期間 | 令和9年4月1日 〜 令和11年3月31日 |
| 添付する経審の審査基準日 | 知事許可:令和7年10月1日〜令和8年9月30日 大臣許可:令和7年7月1日〜令和8年6月30日 |
| 問い合わせ | 熊本県土木部 監理課 建設業班 096-333-2485 |
ここでいちばん見落とされるのが、許可の種類によって出せる経審の範囲が違うことです。大臣許可の会社は、知事許可の会社より3か月早い期間で見ます。
熊本県の令和9・10年度定期申請では、添付する経営事項審査の結果通知書は、知事許可の会社なら審査基準日が令和7年10月1日から令和8年9月30日までのもの、大臣許可の会社なら令和7年7月1日から令和8年6月30日までのものです。この範囲に入る経審を受けていなければ、締切に間に合っても申請できません。
締切に間に合っても、範囲内の経審を受けていなければ申請できません。決算日から逆算すると、経営状況分析と経審の受審を積み上げて四〜五か月。いま経審に着手していない会社は、ここが分岐点です。
令和9・10年度について、熊本県の申請要領には「追加受付」の記載がありません。前回(令和7・8年度)は追加受付が行われましたが、今回あるかどうかは公表されていません。定期受付で出す前提で組んでください。
令和8年熊本地震のあとも、この受付期間は変わっていません。動いたのは建設業許可や経営事項審査の満了日のほうです。建設業許可・経審・指名願は、地震でどう動いたかにまとめました。
03そろえる書類 ── 期限があるのは二つ
| 書類 | 気をつけるところ |
|---|---|
| 一般競争(指名競争)参加資格審査申請書 別記様式1、2、3-1、3-2、4 |
県が公表するExcel様式を使います |
| 経営規模等評価結果通知書兼総合評定値通知書の写し | 審査基準日が上の範囲に入っていること。ここが第一関門です |
| 変更届出書(事業年度終了)の「直前3年の各事業年度における工事施工金額」 様式第三号の写し |
決算変更届を出していなければ、この書類がありません。未提出の期があるなら先に処理を |
| 国税の未納税額がないことの証明書 その3の3(法人税+消費税及び地方消費税) |
証明年月日が申請書の提出日から3か月以内。早く取りすぎると出し直しです |
| 熊本県税の未納税額がないことの証明書 28号様式 |
同じく3か月以内。国税と県税の両方が要ります |
| 保険加入関係書類 | 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の各1部 |
納税証明書は種類の指定があります。国税は「その3の3」、県税は「28号様式」。窓口で「納税証明書をください」とだけ言うと、別の種類が出てきます。そして3か月の期限。準備を早く始めた会社ほど、ここで取り直しになります。納税証明書は最後に取ると覚えてください。
04等級はどう決まるか ── 主観点は自分で積める
熊本県で等級格付があるのは5業種です。土木一式(A1・A2・B・C)、建築一式(A1・A2・B・C・D)、舗装・電気・管(各A・B・C)。造園や水道施設に県の等級格付はありません。
格付に使う総合数値は、経審の総合評定値(客観点)に、県が定める「技術事項等評価点数」(主観点)を足したものです。経審は決算が終わってからでは動かせませんが、主観点は日頃の取り組みで積めます。おもな項目を挙げます。
| 技術事項等評価項目 | 点数 |
|---|---|
| 防災協定の締結 | 県との協定 20点/市町村との協定 5点 |
| 総職員数 | 計算式により最大60点 |
| 公共工事完成工事高 | 5億円以上 80点 〜 1千万円未満 10点 |
| 優良工事状況 | 工事成績85点以上 20点/80点以上85点未満 10点 |
| VE提案の採択 | 1件 20点 |
| ブライト企業認定 | 20点 |
| 新規学卒者の雇用 | 1人 4点(上限16点) |
| 若年者の定着状況 | 1人 3点(上限12点) |
| 大臣・知事表彰 | 1件 10点 |
| 新分野進出 | 10点 |
| 新技術開発等 | 特許 1件10点/NETIS登録 1件5点/県新技術・新工法 1件3点 |
| 県関係研修会の受講 | 1人 1点(上限10点) |
| 労働安全の取組(講習) | 1人 1点(上限10点) |
| 障がい者の雇用/男女共同参画の推進 | 各 5点 |
| 熊本県SDGs登録 | 5点 |
| 社会貢献活動 | 消防団入団 1人2点・2人3点・3人以上4点/消防団協力事業所 1点/保護観察者協力雇用主登録 5点 |
| 不当要求防止責任者講習 | 3点 |
| 粗雑工事状況 | 工事成績65点未満 1件 −20点 |
| 信用の度合(指名停止) | 1か月あたり −20点 |
見ていただくと分かるとおり、お金をかけずに取れる点がかなりあります。県との防災協定20点、ブライト企業認定20点、新規学卒者の雇用で最大16点、SDGs登録5点、消防団4点、障がい者雇用5点、男女共同参画5点。ここだけで70点を超えます。等級の境目まであと少し、という会社にとっては、経審を1点上げるより早い道です。
工事の種類ごとの上乗せもあります。舗装なら1級舗装施工管理技術者が1人5点、アスファルトフィニッシャーの保有20点など。土木一式には、トンネル・PC橋・基礎・軟弱地盤・管きょ推進・ダムの施工実績が各10点。実績があるのに申告していないことがよくあります。
等級ごとの総合数値の区切りは、熊本県が毎年度の格付基準で公表しています。数値の詳細と読み方は熊本県の入札参加資格と格付にまとめています。
05どの等級で、いくらの工事が取れるか
等級が決まると、参加できる工事の規模が決まります。熊本県工事入札参加者資格審査格付要綱の別表(工事種類規模別等級表)が定める請負対象金額です。
| 業種 | 等級 | 請負対象金額 |
|---|---|---|
| 土木一式 | A1 | 7,000万円以上 |
| A2 | 1,500万円以上 7,000万円未満 | |
| B | 500万円以上 1,500万円未満 | |
| C | 500万円未満 | |
| 建築一式 | A1 | 1億3,200万円以上 |
| A2 | 5,500万円以上 1億3,200万円未満 | |
| B | 2,750万円以上 5,500万円未満 | |
| C | 1,100万円以上 2,750万円未満 | |
| D | 1,100万円未満 | |
| 舗装・電気・管 | A | 1,100万円以上 |
| B | 330万円以上 1,100万円未満 | |
| C | 330万円未満 |
土木一式のA2とBの境目が1,500万円、A1とA2の境目が7,000万円。建築一式ではA1とA2の境目が1億3,200万円で、業種によって刻みがまるで違います。「いくらの工事を取りたいか」から等級が決まり、等級から必要な総合数値が決まり、そこから経審と主観点の目標が決まります。順序はいつもこの向きです。
この金額は告示の改正によって変わることがあります。申請の前に、最新の格付要綱別表で確かめてください。
等級ごとの発注標準額が分かったら、その帯に実際に何件の工事が並んでいるかを数えられます。熊本県は今年度発注する工事の見通しを公表しており、設計金額の区分まで載っています。読み方は今年度どの工事が出るかは、もう公表されています ── 熊本県の発注見通し情報(詳細版)の読み方にまとめました。
06熊本市・国・市町村は、別の暦で動く
県に出したから終わり、ではありません。発注者ごとに、受付時期も申請方法も資格の長さも違います。
| 発注者 | 受付 | 方法・特徴 |
|---|---|---|
| 熊本県 | 令和8年6月1日〜12月18日 資格は2年(令和9〜10年度) |
電子(LoGoフォーム)または郵送。格付は5業種 |
| 熊本市 | 次回の定期申請は、令和8年8月時点で未告知 | 県とは別に申請が必要。格付は7業種(土木一式・建築一式・電気・管・舗装・造園・水道施設)で、基準も市が独自に定めています |
| 国土交通省 (九州地方整備局) |
令和9・10年度の定期受付は令和8年11月開始(令和8年7月6日 国土交通省公表) | インターネット一元受付。定期受付とは別に、随時申請も通年で受け付けています |
| 県内の市町村 | 市町村ごとにばらばら | たとえば荒尾市は令和8年1月7日〜2月13日の受付で、建設工事の資格は単年度、しかも電子申請のみ(郵送不可)です |
荒尾市の例のように、建設工事だけ単年度という自治体があります。物品や委託は2年でも、工事は毎年出し直し。ここを知らずに1年空けると、その年は名簿から落ちます。
熊本市は県とは点数の付け方が違います。工事成績が過去3年平均で最高50点から最低マイナス30点までの14段階、防災協定は5点、指名停止は過去1年度に1件でマイナス5点。県では20点の防災協定が、市では5点です。同じ会社でも、県と市で等級が揃うとは限りません。市の等級と発注標準額は熊本市の等級格付けにまとめています。
狙う発注者を先に決める、というのはこのためです。県だけなのか、市も出すのか、国の一元受付にも出すのか。それぞれ準備の時期が違うので、一年のカレンダーに落としてから動いてください。
12月18日のほかにも、年内から年明けにかけて期限が続きます。熊本の建設業 制度改正カレンダーに、次に来るものから順に並べました。
07よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「指名願を出せば仕事が来る」 | 名簿に載るのはスタートラインです。等級・地域要件・実績づくりの設計が要ります |
| 「一度出せば終わり」 | 定期受付を逃すと原則2年待ち。役員・所在地などの変更届も出し続ける必要があります |
| 「実績がないと無理」 | 小規模工事や随意契約から実績を積む道筋があります |
| 「経審さえ受けていれば出せる」 | 審査基準日が範囲内でなければ出せません。知事許可と大臣許可で範囲が違います |
| 「納税証明書は早めに取っておく」 | 提出日から3か月以内という決まりがあります。早く取ると取り直しです |
| 「主観点は自分では動かせない」 | 防災協定20点、ブライト企業認定20点、新規学卒者雇用で最大16点。取りにいける点がかなりあります |
| 「県に出したから市も大丈夫」 | 熊本市は別の申請、別の基準、別の時期です |
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。
技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。
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