行政書士村上事務所

熊本県の入札参加資格と格付 ── 2年に一度の申請で、その後2年が決まる

熊本県の公共工事に入るには、まず県の名簿に載る必要があります。その申請は2年に一度。そこで付いた等級で、次の2年間に入札できる工事の大きさが決まります。この手続きは、書類を出せば終わりの事務ではありません。2年分の営業の幅を決める一回です。制度の形と、自社がどこから手をつけるかを整理します。

構成一 2年に一度、2年分が決まる/二 格付される業種と、等級の意味/三 等級は「経審の点」だけでは決まらない/四 経審は、自社で積める唯一の部分/五 いつ動き出すか/六 つまずきの記録/確認のチェックリスト

第一章2年に一度、2年分が決まる

熊本県の工事入札参加者資格は、2年ごとに一斉の受付があります。業界では「表年(おもてどし)」と呼ばれる年です。ここで申請しなかった会社は、次の受付まで県発注工事の入札に入れません。

図1 2年に一度、2年分が決まる2年に一度のサイクル(令和9・10年度の例)決算 → 経審定期申請審査・格付この等級で2年間、入札する決算・経審受付開始6月1日締切12月18日年度当初4月1日2年後有効期間 2年間 ── この間、等級は動きません

一度決まった等級は、次の定期申請まで基本的に動きません。つまり、締切直前に出す経審の点数が、そのあと2年間の営業の幅を決めます。「今回は間に合わせで出しておく」が2年効いてしまう、という手続きです。

ここで押さえておきたいのは、等級が2年間動かないという点です。申請の翌年度から2年、その等級で入札します。途中で経審の点が上がっても、原則としてその期の格付は変わりません。だから「今回は間に合わせで」という判断が、2年効いてしまいます。

直近の受付令和9・10年度分の定期申請は、令和8年(2026年)6月1日から12月18日(金)まで受け付けられています。締切と必要書類、経審の対象期間は令和9・10年度 定期申請の記事にまとめました。今回の申請を控えている方は、そちらを先にご覧ください。

第二章格付される業種と、等級の意味

すべての業種に等級が付くわけではありません。熊本県で格付の対象となるのは、発注量の多い主要業種です。土木一式工事、建築一式工事、舗装工事、電気工事、管工事──この5業種が中心になります。

等級が付くと、その等級に対応する金額帯の工事が入札の対象になります。上の等級ほど大きな工事に入れる一方、そこに並ぶ相手も変わります。等級は「上げれば得」とは限りません。ひとつ上に行った結果、これまで取れていた規模の指名から外れることもあります。狙う工事の規模と、いまの施工体制の釣り合いを見て決める話です。

県と市は別の制度です熊本県の資格を持っていても、熊本市が発注する工事には参加できません。申請も名簿も等級も、発注者ごとに別に存在します。県と市の両方を狙うなら、それぞれの受付時期を押さえる必要があります。熊本市の格付については熊本市の等級格付けの記事に書きました。

第三章等級は「経審の点」だけでは決まらない

格付を決めるのは、経審の点数だけではありません。発注者は経審の結果を客観的な物差しとして使い、そこに自分たちが見たい項目を足して総合点を出します。

図2 等級は「経審の点」だけでは決まらない等級が決まるまで経審のP点全国共通の物差し県が独自に見る項目工事成績・地域貢献など総合点客観点+主観点等級(格付)入札できる工事の幅

左上の経審は、決算の設計と加点メニューで自社から積める部分です。左下は工事を受注して仕上げないと積み上がりません。だから最初に動かすのは上の箱になります。配点や項目は発注者ごとに違い、県と市でも別の制度です。

足される側の項目は、工事成績や地域への貢献など、その発注者の工事を実際に受けて積み上げるものが中心です。ここは時間がかかります。裏を返せば、着実に工事をこなしている会社が正当に評価される仕組みでもあります。いま等級が低くても、受注と成績を積めば確実に近づきます。

評価項目と配点は年度や発注者によって変わります。自社の判断に使うときは、必ず熊本県が公表する最新の資格審査要領でご確認ください。

第四章経審は、自社で積める唯一の部分

二つの要素のうち、自社の計画で動かせるのは経審です。しかも動かし方には順番があります。

  • W点(社会性等):建退共、上乗せ労災、退職金制度、防災協定、CCUS、各種認定。制度を整えるだけで点になります。費用も期間も小さい
  • Z点(技術力):技術者の資格取得と配置。1〜2年かかりますが、上位等級では点数とは別に「一級技術者が何名以上」という要件そのものになります
  • X1(完成工事高)・Y(経営状況):決算の設計で翌期から効きます。狙う業種への振り分けと、2年平均か3年平均かの選択
動くのは決算の前ですW点の加点の多くは、審査基準日=決算日時点の状態で判定されます。決算が終わってから建退共に加入しても、その年の経審には入りません。1年遅れます。加点メニューの一覧と効き目は経審の実務ノートにまとめています。

第五章いつ動き出すか

定期申請の締切から逆算します。申請には経審の結果(または申請済みであることの証明)が要り、経審には決算の確定と決算変更届が要ります。決算日から結果通知まで、通しておおむね4〜7か月。

  • 締切の10か月前:決算の設計を税理士と詰める。W点の加点メニューを決算日までに整える
  • 締切の6か月前:決算確定、決算変更届の提出
  • 締切の4か月前:経営状況分析の申請、続けて経審の申請
  • 締切まで:資格申請の書類を揃える(納税証明書には取得期限があります)

この逆算をすると、「自社の締切」は決算期ごとに一社一社違うことが分かります。県の案内に書いてあるのは受付期間だけで、そこから先は自社で引くしかありません。

第六章つまずきの記録

決算変更届をためていた

最も多い形です。許可は取ったが毎年の届出をしていない。経審の相談で初めて数年分の未提出が分かる。全部出すところから始まるので、ここだけで一か月かかることもあります。

表年を知らずに一年を過ごした

2年に一度という周期を把握しておらず、気づいたときには受付が終わっていた。次の機会まで待つことになります。決算月とあわせて、表年の受付時期を手帳に入れておくのが確実です。

業種を絞らずに受けた

とりあえず全業種で経審を受けた結果、どの業種も点数が薄くなる。完成工事高も技術者も分散するためです。狙う業種を決めて厚くするほうが、等級は上がります。

確認チェックリスト

  • 建設業許可は有効か。更新の時期は近くないか
  • 決算変更届は毎期出しているか。未提出の期はないか
  • 直近の経審の審査基準日はいつか。申請の対象期間に入っているか
  • 狙う発注者は県か、市か、国か。それぞれ別の申請が要る
  • 狙う業種はどれか。完成工事高はそこに寄っているか
  • W点の加点メニューで、まだ取っていないものはどれか
確認先(一次情報)入札参加資格の要領・様式・受付期間は熊本県の公式ページで公表されます。等級区分と評価項目も同じ資料に載っています。判断の前に、必ず最新版をご確認ください。制度の考え方や自社の段取りについては、当事務所でもご相談を承っています。
執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。

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