その20点は、決算書ではなく就業規則から来ます ── ブライト企業認定と、指名願の主観点

指名願の点数のうち、主観点にあたる技術事項等評価項目には、ブライト企業認定で20点という行があります。県との防災協定と同じ重さです。しかもこの20点は、工事成績でも完成工事高でもなく、就業規則と賃金台帳と雇用保険の台帳から来ます。経審のP点を1点上げるより近い道になることがあります。熊本県ブライト企業の認定を、入札の側から見ていきます。

01その20点が、どこに乗るか

熊本県の工事入札参加者資格は、経営事項審査の総合評定値(客観点)に、県が独自に定める技術事項等評価項目(主観点)を足して等級を決めます。等級の境目に近い会社ほど、主観点の1点が効きます。

技術事項等評価項目のうち、お金をかけずに取りにいける行を並べると、ブライト企業認定の位置が見えます。

評価項目 点数 取り方
防災協定の締結 県との協定 20点/市町村との協定 5点 建設業協会等を通じて締結する
ブライト企業認定 20点 県に応募し、審査を経て認定を受ける
VE提案の採択 1件 20点 工事の中での提案が前提
新規学卒者の雇用 1人 4点(上限16点) 採用の実績
若年者の定着状況 1人 3点(上限12点) 定着の実績
熊本県SDGs登録 5点 登録制度に申請する
障がい者の雇用/男女共同参画の推進 各 5点 雇用と社内制度

この並びのなかで、ブライト企業認定は単独で20点が付く数少ない行です。新規学卒者を4人採るのと同じ点が、認定ひとつで付きます。

点数は年度で動きます上の点数は令和7・8年度の技術事項等評価項目によるものです。令和9・10年度分の申請要領は、熊本県工事入札参加者資格審査申請要領に令和8年12月頃に定めて公表すると書かれています。申請の前に、公表された要領で必ず確かめてください。
図1 主観点のなかの20点 ── お金をかけずに取りにいける行
技術事項等評価項目(令和7・8年度)のうち、届出や認定で取れるもの 防災協定(県) 20点 ブライト企業認定 20点 VE提案の採択 20点 新規学卒者の雇用 最大16点 若年者の定着 最大12点 熊本県SDGs登録 5点 濃い色は、単独で20点が付く行。ブライト企業認定は、新規学卒者を4人採るのと同じ重さになります。

02ブライト企業とは何か

熊本県が平成27年度に始めた認定制度です。ブラック企業の対極をイメージした県の造語で、働く人がいきいきと輝き、安心して働き続けられる企業を県が認定し、その取組みを広く知らせることで、若者の県内就職を促すことをねらいとしています。

基本的な要件は四つです。

  • 従業員とその家族の満足度が高い
  • 地域に雇用を生み出している
  • 地域社会・地域経済への貢献度が高い
  • 安定した経営を行っている

認定の総数は500社を超えました。令和4年度からは、より上位の基準を満たした企業をプラチナブライト企業として認定する仕組みも置かれています。

項目 内容
所管 商工労働部 商工雇用創生局 労働雇用創生課 県内雇用促進班
根拠 ブライト企業認定事務実施要綱
審査 熊本県労働審議会への諮問を経て、県が認定
有効期間 認定日から3年間
入札での扱い 熊本県工事入札参加者資格の格付における加点。県の企画コンペ等における加点
入札以外 シンボルマークの使用、県による周知・広報、合同企業説明会等への優先参加
採用の制度であって、入札の制度ではありません県が掲げるねらいは若者の県内就職です。入札での加点は、その結果として付いてくるものです。順番を取り違えると、応募書が書けなくなります。

03入口の10項目 ── ここで落ちると審査に進めません

応募には資格があります。10項目すべてを満たすことが条件で、ひとつでも欠けると審査に進めません。点を競う前の、入口の話です。

番号 応募要件
(1) 正社員の採用権限がある事業所を県内に有する法人・個人事業主・企業組合で、雇用保険と社会保険に加入し、就業規則を整備している
(2) 過去3年の間に正社員の採用実績がある
(3) セクハラ・パワハラ・妊娠出産等に関するハラスメント、育児休業等に関するハラスメントの防止措置義務を講じている
(4) 過去3年の間に会社都合の解雇を行っていない
(5) 過去3年の間に労働関係法令違反で送検されておらず、違法な時間外労働や賃金不払がない
(6) 労働保険、社会保険、県税等の滞納がない
(7) 公序良俗に反する行為や重大なコンプライアンス違反がない
(8) 労働者全員に応募と記載内容を周知したうえで、労働者の過半数代表者から同意書を得ている
(9) 今後3年以内に正社員の採用予定がある
(10) SDGs達成につながる企業活動等に取り組んでいる

建設業の会社でつまずきやすいのは、(2)と(8)と(10)です。

(2)は正社員の採用です。技能者を協力会社に頼ってきた会社ほど、直近3年の自社採用がゼロということがあります。(8)は社内手続きで、応募することと応募書の中身を労働者全員に周知したうえで、過半数代表者から同意書をもらいます。県は参考様式として、従業員への周知用の掲示様式を配っています。(10)のSDGsは、熊本県SDGs登録制度に登録していれば示しやすくなります。こちらは主観点でも5点です。

(4)と(5)については、県が熊本労働局の協力を得て事実確認を行うと要綱に書かれています。申告だけで通るものではありません。

添付書類は、役所から取り寄せるものが多い労働保険料等納付証明書(労働局徴収課)、社会保険料納入証明書(年金事務所)、県税の納税証明書、雇用保険の事業所台帳異動状況照会(ハローワーク)、就業規則の写し、直近2期分の決算書。取り寄せに日数がかかるものばかりです。募集期間は1か月しかありません。

04審査は20項目。うち5つは、建設業の平均との比較です

令和8年度の審査項目は20項目で、各1点です。このうち五つは、自社の数字を業種別の平均値と比べて判定します。建設業の基準値が、そのまま目標になります。

審査項目 建設業の基準値 加点の向き 出典
正社員の平均年間離職率(過去3年平均) 9.7% 下回れば1点 令和6年 雇用動向調査
正社員の平均勤続年数 13.7年 上回れば1点 令和7年 賃金構造基本統計調査
月平均所定外労働時間(1人当たり) 11時間 下回れば1点 令和7年 賃金構造基本統計調査
年次有給休暇取得率(1人当たり) 60.7% 上回れば1点 令和7年 就労条件総合調査
月平均所定内給与額(1人当たり) 292.7千円 上回れば1点 令和7年 賃金構造基本統計調査

基準値はいずれも企業規模999人以下の数値です。年度ごとに直近の統計に置き換わります。応募書のExcelには業種平均が自動で入るようになっているので、自社の数字を入れれば、その場で足りるかどうかが分かります。

五つのうち四つ、勤続年数・所定外労働時間・有給取得率・所定内給与額は、プラチナブライト企業の必須項目にも入っています。ここを落とすと上位の認定には届きません。

数字を作る話ではありません離職率も有給取得率も、計算の元になるのは賃金台帳と出勤簿です。県は熊本労働局の協力を得て事実確認を行います。実態と違う数字を書けば、応募要件の(5)や(7)に跳ね返ります。動かすなら、実態のほうを動かすことになります。

05何点で認定されるか

令和8年度の認定基準点は15点です。20項目のうち15項目を満たせば、ブライト企業に認定されます。5項目は落としてよい、という設計です。

区分 令和8年度の基準
ブライト企業 審査項目20のうち15項目を充足(認定基準点15点)
プラチナブライト企業 更新企業であること/審査項目の得点が19点以上/必須項目(11項目)を得点していること/審査部会で相応しいと認められること
必須項目 審査項目 2、3、5、6、7、8、9、10、11、13、15
審査の主体 熊本県労働審議会(審査部会)
基準点の見直し 応募要件・審査項目・様式は毎年見直される。必ず応募年度のものを使う

ここで押さえておきたいのは、プラチナは更新企業に限られることです。初回でいきなりプラチナということはありません。まずブライトを取り、3年後の更新でプラチナを狙う、という順番になります。

そして、入札の主観点で20点が付くのはブライト企業の認定です。プラチナを目指すのは採用や広報の側の話で、点数を増やすためではありません。

06建設業なら、そのまま拾える項目

20項目のうち、建設業の会社がすでに満たしている、あるいは短期間で埋められるものを抜き出します。

審査項目 中身 建設業での見え方
18 団体への加入 商工3団体、建設業協会又は情報サービス産業協会のいずれかへの加入 建設業協会に入っていれば、それだけで1点。添付書類も不要
20 BCP 事業継続計画の策定、又は事業継続力強化計画の認定 防災協定や災害対応の体制づくりと同じ土俵。策定していれば加点
17 社会貢献活動 直近1年間の実施の有無 地域の清掃、災害時の出動、通学路の除雪など。記録が残っているか
16 インターンシップ等 直近3年間の学生・生徒の受入実績 工業高校の現場実習の受入れが該当する
5 能力開発の支援制度 資格手当、資格取得費用(旅費・受験料・受講料)の補助 技術者の資格取得を支援している会社は多い。就業規則に書いてあるか
4 在職可能年齢 66歳以上または不問であれば加点 就業規則の定年と継続雇用の規定を見直す
19 直近の決算 2期の営業利益が黒字、又は直近の売上が前期より増加 経審のY点対策と同じ方向を向く
経審や主観点と重なるもの資格取得の支援は経審のCPD・技能レベル向上(CPD・技能レベル向上 実務ノート)と、災害対応の体制は防災協定の加点と、若手の採用は新規学卒者の雇用(主観点で最大16点)と重なります。ブライト企業のために新しく何かを始めるのではなく、すでにやっていることを書き出す作業になることが多いです。
加点対象から外れる制度もあります審査項目11の職場定着支援では、勤続表彰などの褒章・表彰を用いた制度は加点対象から除かれています。審査項目5の資格取得費用の補助も、会社が業務として命じた講習に限った費用補助は対象外です。従業員が希望する取組みを支援する制度かどうか、という線引きです。

07一年の段取り ── 募集は夏、加点は冬

ブライト企業の募集は年に一度です。令和8年度の日程は次のとおりでした。

時期 できごと
令和8年6月15日 募集開始
令和8年7月15日 17時 応募書類の締切(必着・郵送)
令和8年10月頃 認定結果を文書で通知
令和8年12月18日 令和9・10年度 入札参加資格審査申請(指名願)の締切
令和9年3月末まで 入札参加資格の審査結果を通知
令和9年4月1日〜令和11年3月31日 入札参加者資格の有効期間

並べると、夏に応募して秋に認定を受け、冬の指名願に間に合わせるという一年になっています。令和8年度に応募した会社は、10月頃の通知を持って12月18日の締切に向かうことになります。

令和8年度の募集はすでに締め切られています。今から動く会社にとっては、次の募集は令和9年の6月頃です。認定は3年間有効なので、そこで取れば令和9・10年度の資格期間の途中から、そして次の定期申請にも乗ります。

1年あると、埋められる項目が変わります離職率は過去3年平均、勤続年数は申請日時点、インターンシップ受入は直近3年間、社会貢献活動は直近1年間。いずれも「思い立った月」では作れません。就業規則の改定、資格取得支援の制度化、実習生の受入れ。次の6月までの9か月で動かせるものから手を付けることになります。
図2 夏に応募して、冬の指名願に間に合わせる
6月15日 募集開始 7月15日 17時 応募の締切 10月頃 認定の通知 12月18日 指名願の締切 認定は3年間有効。10月頃の通知を持って、12月の指名願で20点を申告する流れになります。

08取り消しと、つまずきの記録

認定は取り消されることがあります。要綱の第6条です。

場面 扱い
応募資格を満たさなくなったとき 県は認定を取り消すことができる
「若者の使い捨てが疑われる企業等」として熊本労働局が公表するなど、重大な法令違反が確認されたとき 同上
知事が不適当と認めたとき 同上
取り消されたとき 認定証等を県に返納する
疑いがあるとき 県は調査等を行うことができ、認定企業は協力する
辞退 申し出ることができ、県が受理した日に認定の効力が失われる

主観点の20点は、認定があることを前提にした点です。認定が消えれば、その前提も消えます。3年の有効期間のあいだ、要件を満たし続けることが条件になります。

つまずき 防ぎ方
募集期間が1か月しかないことを知らずに、7月に入ってから動き出した 証明書類の取り寄せに日数がかかる。6月の募集開始前に、書類の手配だけ始めておく
過半数代表者の同意書を、社長が指名した人からもらっていた 過半数代表者の選び方そのものが問われる。労働者全員への周知が先
資格取得の費用補助はあるが、就業規則に書いていない 審査項目5の添付書類は就業規則または関係規程。制度があっても書面がなければ加点されない
会社が命じた講習の費用補助を、能力開発の支援として書いた 業務命令による講習は加点対象外。従業員が希望する取組みへの支援かどうかで分かれる
直近3年の正社員採用がゼロだった 応募要件(2)で落ちる。協力会社への外注が中心の会社ほど確かめておく
去年の様式と手引きで書いていた 応募要件・審査項目・様式は毎年見直される。必ず応募年度のものを使う
認定を取った年度の指名願に申告し忘れた 10月頃の通知から12月18日までが勝負。指名願の準備と一本の線でつないでおく

※この記事は令和8年9月13日に、熊本県「熊本県ブライト企業推進事業について(企業向け)」「令和8年度(2026年度)ブライト企業を募集します」、ブライト企業認定事務実施要綱、令和8年度審査項目一覧、『ブライト企業応募書』記入の手引き、および「令和9・10年度(2027・2028年度)熊本県工事入札参加者資格審査申請要領(県内建設業者)」にあたって書いています。主観点の配点は令和7・8年度のもので、令和9・10年度分の技術事項等評価項目の申請要領は令和8年12月頃に公表される予定です。

確認先 連絡先
ブライト企業(応募・認定) 熊本県 商工労働部 労働雇用創生課 県内雇用促進班 096-333-2341
指名願・技術事項等評価項目 熊本県 土木部 監理課 建設業班 096-333-2485
執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

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