今年度どの工事が出るかは、もう公表されています ── 熊本県の発注見通し情報(詳細版)の読み方
01公表は、県の義務です
根拠は公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)第7条第1項です。地方公共団体の長は、毎年度、その年度の公共工事の発注の見通しを公表しなければならない、と定められています。見通しを変更したときも、変更後の内容を公表しなければなりません(同条第2項)。
公表の中身と時期は施行令第5条にあります。4月1日(その日に予算が成立していなければ成立の日)以後、遅滞なく。対象は、その年度に発注が見込まれる公共工事です。ただし予定価格が400万円を超えないと見込まれるものと、公共の安全と秩序の維持に密接に関連して秘密にする必要があるものは除かれます。
| 施行令第5条が求める項目 | 熊本県の詳細版 |
|---|---|
| 工事の名称、場所、期間、種別、概要 | 載っています。場所は市町村名と工事場所に分かれています |
| 入札及び契約の方法 | 載っています |
| 入札を行う時期(随意契約なら契約の時期) | 載っています。月単位です |
| (法令の求めなし) | 設計金額区分、予算種別、担当部署名、余裕期間、摘要 |
最後の行が要点です。設計金額の区分まで出しているのは、法令が求めているからではありません。県が「詳細版」と呼んでいるのは、この上乗せがあるからです。使わないと、もったいない資料です。
021行に、14の項目が入っています
発注部署別のものは、1件の工事につき次の項目が並びます。
| 列 | そこから読むこと |
|---|---|
| 部名等/課名等 | どこの部署が出すのか。窓口が特定できます |
| 市町村名/工事場所 | 自社の施工範囲に入るか |
| 工事等名称 | 路線名や施設名。過去の同種工事と結びつきます |
| 工事等種別 | 土木一式、舗装、解体など。自社の許可業種と突き合わせます |
| 工事等概要 | 延長、面積、構造など。積算の当たりがつきます |
| 入札予定時期 | 月単位。技術者と重機の空きを見ます |
| 工事等期間(余裕期間含む) | おおよその工期。次の現場と重ならないか |
| 入札及び契約の方法 | 一般競争か、指名競争か、随意契約か |
| 予算種別 | 財源。補正の可能性を推し量る材料になります |
| 設計金額区分 | 自社の等級で入れる工事かどうか |
| 摘要/余裕期間 | 条件付きの注記。見落としやすいところです |
業種別のものは13項目で、部名等・課名等・市町村名のかわりに区分と担当が入ります。工事等種別は、土木一式工事から消防施設工事、建具工事まで20の区分に分かれています。
03設計金額区分から、自社の等級で逆算する
設計金額区分は、たとえば1,500万円以上3,000万円未満、3,000万円以上5,500万円未満といった帯で示されます。県の工事は等級ごとに発注の標準額が決まっていますから、この帯を見れば、その工事が自社の等級の射程に入るかどうかが、公告を待たずに分かります。
ここで二つの使い方が生まれます。ひとつは、入れる帯の行だけを拾って、年間の段取りを組むこと。もうひとつは、入れない帯にどれだけの件数が並んでいるかを数えることです。後者は、等級を一つ上げたときに何が見えるようになるかの見積もりになります。経審の評点をどこまで上げるかという話は、この件数を見てから考えたほうが具体的になります。
等級と発注標準額の対応は、熊本県・熊本市の入札参加資格申請(指名願)にまとめています。
04見るのは、自社のエリアの局のぶんだけ
県全体のPDFは1.35メガバイトあります。全部に目を通すのは現実的ではありません。ただ、熊本県は発注部署別のファイルも分けて出しています。
| 区分 | ファイルの分かれ方 |
|---|---|
| 本庁 | 知事公室・総務部・企画振興部・健康福祉部・環境生活部・商工労働部・観光文化部・出納局・企業局・教育庁・県警本部で1本、農林水産部で1本、土木部で1本 |
| 広域本部・地域振興局 | 県央広域本部、宇城、上益城、県北広域本部、玉名、鹿本、阿蘇、県南広域本部、芦北、球磨、天草広域本部の11本 |
つまり、自社の営業エリアの局のぶんだけ開けばいいということです。上益城で仕事をしているなら上益城地域振興局と、県全体を所管する土木部・農林水産部。天草なら天草広域本部。ファイルは1本あたり300キロバイト前後ですから、これなら現場の合間にも目を通せます。
| 業種別(県全体) | 発注部署別 | |
|---|---|---|
| 並び | 工事等種別ごと | 部署ごと |
| 向いている使い方 | 自社の業種の工事を県内で広く探す | 決まったエリアの動きを追う |
| 使う場面 | 年度初めに全体を眺めるとき | ふだんの段取りを組むとき |
05国・県・市町村を、一枚で見る方法があります
県の見通しだけでは、片側しか見えません。同じ地域で、国の工事も市町村の工事も動いています。これを一枚にまとめたものが、国土交通省九州地方整備局のページにあります。
九州ブロック発注者協議会と熊本地震等復旧・復興工事情報連絡会議が、九州ブロックの国・県・市町村・法人等の発注情報を一元化して公表しているものです。熊本県内のぶんは、令和8年7月時点の版が出ています。
| 層 | どこが出しているか |
|---|---|
| 国 | 九州地方整備局のほか、九州農政局、九州森林管理局、九州防衛局など |
| 県 | 熊本県 土木部 土木技術管理課(発注見通し情報・詳細版) |
| 市町村 | 各市町村。熊本市は工事の入札・契約のページで別に公表しています |
| 三つをまとめたもの | 九州地方整備局「発注予定情報」の一元化ファイル(Excel) |
形式がExcelなのが利いています。フィルターで、業種と地域と時期を掛け合わせて絞れます。整備局はその狙いを「建設業者が技術者や技能者の配置等を行いやすい環境を整備するため」と書いていて、県内を11の地域に区分した地域区分図も添えています。熊本、鹿本、玉名、菊池、上益城、阿蘇、八代、芦北、球磨、天草、宇城です。県の広域本部・地域振興局の区切りとおおむね重なります。
06いま出ている県の版は、地震の前のものです
ここは注意が要ります。熊本県の令和8年度 第2回は、令和8年7月3日の公表です。地震が起きたのは7月28日ですから、復旧・復興の工事は、この版には入っていません。
県の資料の冒頭にも、こう書かれています。「ここに掲載する内容は、令和8年(2026年)7月3日現在の見通しであるため、実際に発注する工事等がこの記載と異なる場合、又はここに記載されていない工事等が発注される場合があります。」
一方、熊本市はすでに更新しています。令和8年8月17日時点の版を出し、「令和8年熊本地震により、今後発注が変更になる可能性があります」と注記を添えました。発注者によって、更新の速さが違います。
入契法第7条第2項は、見通しを変更したときも公表しなければならないと定めています。県の次の版で、復旧関係が反映されるはずです。いまの版を「今年度はこれで決まり」と読まないでください。地震のあと、許可や経審の期限がどう動いたかは、建設業許可・経審・指名願は、地震でどう動いたかにまとめています。
07見通しから逆算して、何をするか
見て終わりでは、ただの読み物です。拾った行から逆算すると、やることが決まります。
| 拾った行から見えること | 先に手を打つこと |
|---|---|
| 入札予定時期が11月の工事に入りたい | その時期に専任で置ける技術者を確保する。前の現場の工期と突き合わせる |
| 設計金額区分が自社の等級より一つ上 | 次の経審で評点をどこまで上げるか、逆算して決める |
| 工事等種別が自社の許可にない | 業種追加を検討する。技術者要件が先に立ちます |
| 入札及び契約の方法が一般競争 | 入札参加資格の有効期間と、必要な実績の登録を確かめる |
| 総合評価の対象になりそうな規模 | 技術者の資格・CPD・工事成績を点検する |
最後の行について、CPDの単位数は発注者ごとに違います。何ユニット必要で、何年分で見るのか。CPDの「20ユニット」は、どこの数字かに整理しました。
08つまずきの記録と、確認先
- 見通しは見通しです。載っていた工事が出ないことも、載っていない工事が出ることもあります
- 予定価格が400万円を超えないと見込まれる工事は、そもそも載りません
- 公表日を見ずに読むと、古い版で段取りを組むことになります
- 地域で絞り込むと、複数地域にまたがる工事が落ちることがあります
- 摘要欄と余裕期間の欄は、狭いわりに条件が書かれています
- 県の版と市町村の版で、更新の時点が違います
制度も版も動きます。ここに書いたことも、令和8年9月時点で確かめたものです。
| 発注見通し情報(詳細版) | 熊本県 土木部 土木技術管理課 096-333-2490 |
|---|---|
| 入札参加資格・等級・経審 | 熊本県 土木部 監理課 建設業班 096-333-2485 |
| 一元化した発注予定情報 | 国土交通省 九州地方整備局「発注予定情報」(九州ブロック発注者協議会) |
| 市町村の見通し | 各市町村の入札・契約のページ。熊本市は工事の入札・契約ホームページ |
自社の等級で、今年度どの帯の工事が何件あるのか。それを数えるだけでも、次の経審で狙う評点が具体的になります。熊本県内の案件について、見通しの読み方から入札参加資格の組み立てまでご相談を承ります。
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