特定建設業と一般建設業 実務ノート ── 分かれ目は「下請に出す額」、壁は財産要件
構成:一 分かれ目は「下請に出す額」/二 特定の要件は何が重いか/三 「毎回の更新で問われる」という時間の問題/四 特定に到達する設計/五 つまずきの記録
第一章分かれ目は「下請に出す額」
- 一般建設業:自社施工中心、または下請に出しても総額が基準未満の元請
- 特定建設業:元請として、1件の工事で下請契約の総額が基準額以上になる場合に必要(基準額は政令改正で引き上げが続いており、直近の改正後の額を必ず確認。建築一式は別基準)
- よくある誤解:①自社が下請に入るだけなら金額がいくらでも特定は不要 ②受注額が大きくても自社施工なら一般でよい ③発注者から直接請けない限り関係ない──すべてその通りで、「元請として下請にいくら出すか」だけを見ます
受注額の大きさは関係ありません。自社施工でいくら大きな工事を受けても、下請に出す総額が基準未満なら一般のままです。この基準額は令和7年2月1日に引き上げられ、現在は建築工事業が8,000万円、それ以外が5,000万円です(建設業法施行令第2条)。熊本県が公開している手びきの一部には改正前の額(4,000万円・6,000万円)が残っていますので、判断の前に国土交通省の最新の案内でご確認ください。建築一式工事は別基準です。
第二章特定の要件は何が重いか
| 要件 | 一般 | 特定 |
|---|---|---|
| 財産的基礎 | 自己資本500万円等 | ①欠損の額が資本金の20%以内 ②流動比率75%以上 ③資本金2,000万円以上 ④自己資本4,000万円以上の4つすべて |
| 営業所技術者等(旧・専任技術者) | 資格または実務経験 | 一級資格者等(指導監督的実務経験ルートもあるが指定建設業7業種は一級必須) |
| 下請保護の義務 | ─ | 下請代金の支払期日規制・施工体制台帳の作成義務など、元請責任が加重 |
壁になるのは圧倒的に財産要件です。とくに自己資本4,000万円は、利益の内部留保だけで到達するには年数がかかります。
第三章「毎回の更新で問われる」という時間の問題
特定の財産要件は取得時だけでなく、5年ごとの更新の直前決算でも満たしている必要があります。取得した年がピークで、その後の赤字決算で要件を割ると、更新で特定を維持できず一般への切替(般特新規)を迫られます。特定は「取る」より「持ち続ける」方が難しい──決算のたびに4要件をモニタリングする仕組みが要ります(Y点の決算設計と同じテーブルで管理できます)。
第四章特定に到達する設計
- 増資 ── 資本金2,000万円と自己資本の底上げを同時に。株主構成・税務と合わせて設計
- 役員借入のDES・資本性借入金 ── 自己資本4,000万円への近道。経審のY点改善と同じ打ち手が特定要件にも効きます
- 組織再編 ── 合併により純資産を合算して到達する道。事業承継と経審で書いた「三つの断絶」の設計とセットで
- 一級技術者の確保 ── 財産要件と並行して、専技に立てる一級資格者の育成・採用を。数年がかりの計画になります
第五章つまずきの記録
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| 下請総額が基準を超えそうなのに一般のまま受注 | 見積り段階で外注比率を試算。超える見込みなら受注前に般特新規を |
| 更新直前決算で自己資本4,000万円割れ | 毎決算で4要件チェック。割りそうな期はDES・増資を決算日前に |
| 指定建設業で実務経験ルートを検討して時間を浪費 | 土木・建築・管・鋼・舗装・電気・造園の7業種は一級必須と覚える |
| 特定取得後の下請保護義務を知らず違反 | 支払期日・施工体制台帳の社内ルールを取得と同時に整備 |
※下請総額の基準額・財産要件の運用は改正されます。個別判定は最新の政令・熊本県の手引きで確認してください。
「あと何が足りれば特定に届くか」は、決算書があれば即答できます。TSMC関連の大型案件を見据える会社は、2〜3年計画での到達設計をご相談ください。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。
技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。
不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。
RELATED ── 許可の記事
熊本で建設業許可・許認可をお考えの方へ
行政書士村上事務所は、創業20年・支援実績100社超。許可の要件を満たせるか、経審で狙った評点・等級に届くかを、着手前に診断してお伝えします。初回相談は無料です。
建設業許可 実務講座 第3講 / 全25講 ── 第一部 許可とは何を認める制度か
前の講:第2講 知事許可と大臣許可 ── 分かれ目は「営業所」の定義
次の講:第4講 29業種の考え方 ── 一式工事は「なんでもできる許可」ではない
→ 講座の目次(全25講)を見る
