事業承継と経審|行政書士村上事務所

事業承継と経審 ── 合併・譲渡でP点と実績を引き継ぐ設計

M&A・合併・事業譲渡で会社を引き継ぐとき、経審の点数はどうなるのか──ここを設計せずに承継すると、完成工事高がリセットされ、格付けが落ち、公共工事の受注が数年止まることがあります。逆に、正しく設計すれば前の会社の実績を引き継いだまま経審を受けられます。この記事では、許可・経審・補助金の三点から承継の設計をまとめます。

構成:一 承継で起きる三つの断絶/二 許可の承継(認可制度)/三 経審の承継 ── 完工高と技術者を引き継ぐ/四 補助金の活用/五 つまずきの記録

第一章承継で起きる三つの断絶

断絶 何が起きるか 対応する制度
許可の断絶 旧会社の許可が消え、新規取り直しの空白が生じる 事業承継の認可(法第17条の2・17条の3/第二章)
実績(経審)の断絶 完成工事高・技術者数がゼロからの評価になり、P点が急落 承継に伴う経審の特例的取扱い(本稿)
名簿(入札)の断絶 入札参加資格の名簿情報が旧会社のまま/失効 発注者ごとの変更・承継手続

三つはセットで、どれか一つでも欠けると「許可はあるのに入札に入れない」状態になります。承継日の前に、三つ全部の段取りを並べるのが大原則です。

図 三つはセットで設計する承継で切れる三つ許可の断絶旧会社の許可が消え、取り直しの空白が出る事業承継の認可(事前)実績の断絶完成工事高と技術者がゼロから評価され、P点が落ちる承継に伴う経審の取扱い名簿の断絶入札参加資格の名簿が旧会社のまま、または失効する発注者ごとの変更・承継手続どれか一つ欠けると「許可はあるのに入札に入れない」状態になります。

承継日の前に、三つ全部の段取りを並べておくのが原則です。とくに経審の取扱いは通常の申請と手順が違うため、承継の話が具体化した時点で県と事前に協議しておくことになります。

第二章許可の承継 ── 認可は「事前」

合併・事業譲渡・分割・相続では、事前の認可申請により許可を空白なく引き継げます。建設業法第17条の2・第17条の3に置かれた制度で、認可を受ければ承継予定日から切れ目なく営業できます。

申請の時期 ── 承継日から逆算する

合併・譲渡・分割は、承継が起きる前に認可を取っておくのが原則です。国の窓口では承継予定日の90日前までの申請を求めており、標準処理期間も90日とされています。県知事許可の場合の受付時期は許可行政庁の運用によりますので、承継の話が出た段階で県に事前相談を入れてください。逆算すると、実質的な準備開始は承継予定日の半年前です。

相続だけは事前に動けません。被相続人の死亡後30日以内に認可を申請します。認可されれば承継の日まで遡り、被相続人の許可を相続人に対してしたものとみなされます。許可の有効期間は承継の日の翌日から5年です。

承継できない組み合わせがある

認可には制限が二つあります。一つは一般と特定の食い違いです。ある業種について一般建設業の許可を受けている者が、同じ業種で特定建設業の許可を持つ者の地位を承継することはできません(逆も同じです)。もう一つは範囲です。承継者は被承継者の建設業の全部を承継する必要があり、一部の業種だけを引き継ぐことはできません。

この二つは、承継の設計そのものを縛ります。「使う業種だけもらう」「一般のまま特定の会社を引き受ける」という組み方はできません。認可を受けずに事業を譲り受けた場合、譲受人は自分で新規の許可を取り直すことになり、その空白の間は許可が要る工事を請けられません。

そして経審との関係で重要なのは、認可のスケジュールが経審の再受審スケジュールの起点になることです。次章はここを扱います。

第三章経審の承継 ── 完工高と技術者を引き継ぐ

  • 完成工事高(X1)の通算 ── 合併・譲渡等の場合、被承継会社の完成工事高を合算して経審を受けられる取扱いがあります(いわゆる合併経審)。これにより、承継後も従前の規模の評価を維持できます
  • 技術職員(Z)の引継ぎ ── 移籍する技術者の取扱い(6か月超雇用の要件との関係)も、承継の事情を踏まえた運用があります
  • 実務の肝は「事前協議」 ── これらは通常の申請と違い、審査行政庁(熊本県)との事前相談・協議を前提に進みます。必要書類(合併契約書・承継の事実を示す書類・両社の決算資料等)も個別に指定されるため、承継スキームが固まった段階で早めに協議に入るのが確実です
  • 再受審のタイミング設計 ── 承継日を基準にした経審を受け直し、結果が出るまでの期間は旧結果の効力・名簿の扱いを発注者ごとに確認します。ここの設計が甘いと数か月の入札空白が生じます
経営の視点承継・M&Aは、単独では届かない規模・業種・技術者を一手で獲得できる戦略でもあります。純資産要件が壁の特定建設業許可への到達や、TSMC関連の大型案件への参画資格づくりとして、組織再編を使う発想は熊本でこそ現実味があります。

第四章補助金の活用

  • 事業承継・M&A補助金 ── 承継・M&Aに伴う設備投資・専門家活用(FA・デューデリジェンス)費用等を支援。公募回ごとに要件・上限が変わるため、スキーム検討と並行して公募スケジュールを確認します(補助金・経営支援)
  • PMI(統合後)の投資 ── 統合後のシステム・設備投資は省力化投資補助金等の対象になり得ます。承継を「補助金の使いどき」として設計すると、統合コストがかなり圧縮できます

第五章つまずきの記録

つまずき 防ぎ方
承継後に経審を受け直すことを知らず、名簿から消える 承継スキーム確定と同時に県へ事前協議。三つの断絶を一枚の工程表に
認可を取らずに事業譲渡し、許可が空白に 認可は「事前」。譲渡契約の効力発生日と認可日を合わせる
技術者の移籍手続(保険・雇用)が遅れZ点が立たない 移籍日=承継日に揃え、保険の切替えを同日処理
入札名簿の承継手続を発注者ごとに確認していない 熊本県・熊本市・各市町村で扱いが異なる。発注者リストで潰す

承継・M&Aの検討段階(相手が決まる前)からのご相談が、結果的に最も選択肢を残します。許可・経審・入札・補助金を一枚の工程表にした「承継設計書」を無料相談でお出しします。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

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chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

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