資本性借入金 実務ノート ── 借入を自己資本として評価させる4条件と使いどころ
構成:一 何が起きるのか(評価の仕組み)/二 認められる4条件/三 使いどころの判断/四 申請実務と必要書類/五 つまずきの記録
第一章何が起きるのか ── 負債が資本として読まれる
経営状況分析(Y点)と経営規模(X2)の算定において、要件を満たす借入金を負債からはずし、自己資本に加えて指標を計算できます。影響を受けるのは、自己資本比率/自己資本対固定資産比率/負債回転期間(Y点の8指標のうち3つ)と、X2の自己資本額です。国土交通省の資料では、この四か所が反映先として挙げられています。純支払利息比率は、式に自己資本も負債も入らないため、ここでは動きません。自己資本1,000万円・資本性借入金2,000万円の会社なら、分析上は自己資本3,000万円の会社として読まれる──それだけ評点の景色が変わります。
第二章認められる4条件
| 条件 | 実務での意味 |
|---|---|
| ① 貸し手が金融機関等であること | 日本政策金融公庫の資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付など)や、民間金融機関の劣後ローン。社長個人からの借入はここでは対象外(それはDESで対応する領域) |
| ② 償還まで5年超 | 期限一括償還が基本形。長いほど資本性が強い |
| ③ 金利が業績連動 | 赤字のときは低利になる設計(公庫の資本性ローンはこの形) |
| ④ 劣後性 | 法的破綻時に他の債務より返済順位が後ろであること |
要するに「金融検査上、資本とみなされる劣後ローン」と同じ発想です。公庫の資本性ローンはこの4条件を満たすよう設計されているため、実務の入口はほぼ「公庫の資本性ローンを使えるか」の検討になります。
自己資本比率と自己資本対固定資産比率の二つが同時に改善するため、Y点に効きます。ただし償還原資の見込みが立たないなら、資本性でも借金は借金です。社長からの借入が大きい会社は、まず費用のかからないDESから検討してください。
第三章使いどころの判断
- 向いている会社:利益は出ているが自己資本が薄い/設備投資・TSMC関連の増産対応で資金需要があり、どうせ借りるなら評点にも効かせたい/格付けの境目にいて、Y点をあと一段上げたい
- 向かない場合:無借金で自己資本も厚い(効果が薄い)/そもそも償還原資の見込みが立たない(資本性でも借金は借金です)
- DESとの使い分け:社長借入が大きい会社はまずDES(コストほぼゼロ)、外部資金が必要な会社は資本性ローン、と覚えると整理しやすい。併用も可能です
第四章申請実務 ── 要は「該当証明書」です
この取扱いが始まったのは令和7年7月1日です。根拠は令和7年国不建第41号「資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて」。それ以前は、資本性のある借入でも経審の上では普通の負債でした。
手続きの中心は、契約書ではなく「資本性借入金」該当証明書です。国土交通省が様式を定めています。これがないと、契約書がどれだけ整っていても始まりません。
| 誰が証明するか | 公認会計士、税理士、建設業経理士1級など。経審で「経理処理の適正を確認した旨の書類」を確認できる者と同じ範囲です。建設業経理士1級は、登録経理試験の合格や登録経理講習の受講からの年数に条件があります |
|---|---|
| 証明書に何を書くか | 要件を満たすことと、自己資本と扱う額。当期の決算日と前期の決算日で、それぞれの額を書きます。残存期間で逓減するため、前期と当期で金額が違うのがふつうです |
| 経営状況分析での書き方 | 申請書の余白に「資本性借入金○○○円」と記載し、該当証明書の写しと借入金の契約書の写しを添えます |
| 経営規模等評価での書き方 | 申請書の項番17(自己資本額)に、資本性借入金を含めた額を記載します |
順番としては、決算が固まったら、まず証明できる方に相談することになります。税理士の関与がある会社なら、決算の打合せのときに一緒に話しておくのが早道です。分析機関によって求める資料の細部が異なるため、初年度は事前照会をお勧めします。当事務所では公庫への融資相談の段階から、経審への効き方を織り込んだ資金調達の設計をお手伝いしています(補助金・経営支援)。
第五章つまずきの記録
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| 普通の長期借入を「5年超だから」と申請 | 期間だけでは不可。業績連動金利と劣後性まで4条件すべて必要 |
| 残存5年を切って評点が想定より下がった | 逓減スケジュールを経審計画に記載しておく。必要なら借換えの検討を |
| 社長借入を対象と誤解 | 個人からの借入はDES(資本振替)で。税務論点があるため税理士と設計 |
| 該当証明書を用意していなかった | 契約書だけでは通りません。国土交通省の様式による「資本性借入金」該当証明書が要ります。証明できる方への依頼は、決算が固まった時点で |
| 証明資料の不足で分析が差し戻し | 該当証明書の写しと契約書の写しを、分析申請とセットで準備 |
※この記事は令和8年9月10日に、令和7年国不建第41号(令和7年7月1日)と国土交通省の概要資料にあたって見直しました。制度の細部(みなし割合・確認書類)は告示・分析機関の運用で変わることがあります。最新は分析機関と経審の手引きで確認してください。
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