事業承継五つの視点|行政書士村上事務所

事業承継・M&A補助金と、建設業許可の承継 ── 90日前と30日以内

事業承継・M&A補助金は、親族内承継や従業員承継の設備投資、M&Aの専門家費用、統合後の経営、そして廃業までを対象にした制度です。ただし建設業の場合、補助金より先に確かめておくことがあります。建設業許可そのものを引き継ぐには、建設業法上の認可が要るからです。ここでは補助金の枠組みと、許可の承継手続きを並べて整理します。

01補助金の六つの枠

この補助金は、承継やM&Aのどの局面にいるかで枠が分かれます。設備投資を伴う親族内・従業員承継なら事業承継促進枠、M&Aの専門家費用なら専門家活用枠、統合後ならPMI推進枠、事業をたたむ側なら廃業・再チャレンジ枠です。

図1 事業承継・M&A補助金の六つの枠六つの枠と、補助上限・補助率(十五次公募)補助上限補助率事業承継促進枠800万〜1,000万円1/2・2/3専門家活用枠(買い手)600万〜2,000万円1/3・1/2・2/3専門家活用枠(売り手)600万〜800万円1/2・2/3専門家活用枠(小規模売り手)450万円2/3PMI推進枠150万〜1,000万円1/2・2/3廃業・再チャレンジ枠150万〜300万円1/2・2/3※上限額は枠の中の類型や要件(賃上げ・大規模など)で幅がある。実額は公募要領で確認のこと。

出典:中小企業庁「中小企業生産性革命推進事業『事業承継・M&A補助金』(十五次公募)の公募要領を公表します」。

直近の十五次公募は、令和8年6月19日に申請受付が始まり、令和8年7月24日17時で締め切られました。次回の公募日程は、この記事の時点では公表されていません。

公募回ごとに枠と金額が変わる

この補助金は年に複数回の公募があり、回ごとに枠の構成や上限額、要件が見直されます。上の表は十五次公募の内容です。実際に申請するときは、その回の公募要領を必ず確認してください。

02建設業では、許可の承継に認可が要る

ここからが建設業固有の話です。会社を譲り渡す、合併する、分割する、あるいは代表が亡くなって相続が起きる。いずれの場合も、建設業許可は自動的には引き継がれません。建設業法第17条の2と第17条の3に基づく認可の手続きが必要です。令和2年10月1日に始まった制度です。

図2 建設業許可の承継 ── 事前認可と、相続の事後認可建設業許可の承継 ── 事前認可と事後認可譲渡・譲受/合併/分割 = 事前認可・承継予定日の90日前までに申請する・標準処理期間はおおむね90日・承継予定日から地位を承継する・申請時点で承継者が許可要件を備える相続 = 事後認可・死亡後30日以内に認可を申請する・死亡の時にさかのぼって効力が生じる・30日を過ぎると新規許可の取り直し・申請時点で相続人が許可要件を備える認可を受けずに事業を移すと、廃業日から新しい許可日までのあいだ、軽微な工事以外を請け負えない空白期間が生じる※建設業法第17条の2・第17条の3。令和2年10月1日施行。

出典:国土交通省関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」(建設業法第17条の2・第17条の3)。

実務で効いてくるのは、事前認可と事後認可で時間の性質がまったく違うことです。

譲渡・合併・分割は、90日前までに

譲渡及び譲受け、合併、分割は事前認可です。承継予定日の90日前までに申請し、標準処理期間もおおむね90日とされています。M&Aの交渉が固まってから動き出したのでは、希望する承継日に間に合いません。基本合意の段階で、許可行政庁への事前相談を並行して始めておく必要があります。

相続は、死亡後30日以内に

相続だけは事後認可で、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請します。認可を受ければ、効力は死亡の時にさかのぼります。逆に、この30日を逃すと、相続人は新規に許可を取り直すことになります。葬儀と並行して30日を数えることになるため、代表者一人に許可要件が集中している会社ほど、事前の備えが要ります。

空白期間の意味

認可を受けずに事業を移した場合、廃業した日から新しい許可が下りる日までのあいだ、軽微な工事(建築一式工事以外は請負代金500万円未満など)以外を請け負えません。工事の受注が止まるだけでなく、経営事項審査の完成工事高や、入札参加資格の実績にも影響します。

03順番を間違えないための段取り

  • 承継の形(譲渡・合併・分割・相続)を決めます。ここで手続きの時期がすべて決まります。
  • 承継する側が、経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を満たせるかを確認します。認可の申請時点で備えている必要があります。
  • 承継予定日から逆算して90日前を出し、そこから許可行政庁への事前相談の日程を置きます。
  • 補助金を使うなら、公募回の締切と承継予定日の関係を確かめます。補助対象になる経費の発生時期が、交付決定の前後どちらかで扱いが変わります。
  • 相続に備える場合は、経営業務の管理責任者になり得る人を、代表以外にも用意しておきます。

04まとめ

補助金は使えれば助かりますが、公募回ごとに変わり、締切も動きます。一方で許可の承継は、承継の形が決まった時点で日程が確定します。先に押さえるべきは後者です。90日前と30日以内。この二つの数字だけは、承継の話が出た日に思い出せるようにしておいてください。

出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金(十五次公募)」、中小企業基盤整備機構の公表資料、国土交通省関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」、建設業法第17条の2・第17条の3。

執筆体制

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