熊本県の入札参加資格と格付 ── 申請は2年に一度、格付は毎年
構成一 申請は2年に一度、格付は毎年/二 格付される5業種と、入れる工事の大きさ/三 総合点数の組み立て/四 技術点は何で積むか/五 経審は毎年効く/六 いつ動き出すか/七 つまずきの記録/確認のチェックリスト
第一章申請は2年に一度、格付は毎年
熊本県の工事入札参加者資格は、2年ごとに一斉の受付があります。業界で「表年(おもてどし)」と呼ばれる年です。ここで申請しなかった会社は、次の受付まで県発注工事の入札に入れません。令和9・10年度分は令和8年(2026年)6月1日から12月18日(金)までが受付期間で、認定された資格の有効期間は令和9年4月1日から令和11年3月31日までです。
ここまでは「2年に一度」の話です。ところが等級のほうは、2年間固定されていません。県が毎年度公表する格付基準を読むと、すでに2か年有効な資格を持っている会社についても、認定時の経営事項評価点数を最新の経審結果の総合評定値と入れ替え、技術事項等評価点数を足し直して格付すると書かれています。つまり経審の点は、翌年度の等級に毎年効きます。
逆に、県が独自に見る技術事項等評価点数のほうは、原則として認定時のまま動きません。合併等の特例による加算がある場合を除いて、2年間は据え置きです。
技術事項等評価点数は合併等の特例による加算がある場合に限り随時見直されます。経営事項評価点数は毎年度、直近の経審結果に入れ替わります。
この形が意味するのは単純です。今回の申請で技術点を取りこぼすと、その分は2年間取り返せません。いっぽう経審の点は、翌期の決算を設計すれば翌年度の格付に反映されます。急ぐべきものと、毎年積めばよいものが分かれています。
第二章格付される5業種と、入れる工事の大きさ
すべての業種に等級が付くわけではありません。県の格付要綱の別表(工事種類規模別等級表)に載っているのは、土木一式工事・建築一式工事・ほ装工事・電気工事・管工事の5業種だけです。それ以外の業種と、県外に主たる営業所がある会社については、等級ではなく経審の総合評定値による順位付けが行われます。
等級が付くと、その等級に対応する金額帯の工事が入札の対象になります。別表が定めているのは次のとおりです。
| 工事の種類 | 等級 | 工事の請負対象金額 |
|---|---|---|
| 土木一式 | A1 | 7,000万円以上 |
| A2 | 1,500万円以上 7,000万円未満 | |
| B | 500万円以上 1,500万円未満 | |
| C | 500万円未満 | |
| 建築一式 | A1 | 1億3,200万円以上 |
| A2 | 5,500万円以上 1億3,200万円未満 | |
| B | 2,750万円以上 5,500万円未満 | |
| C | 1,100万円以上 2,750万円未満 | |
| D | 1,100万円未満 | |
| ほ装・電気・管 | A | 1,100万円以上 |
| B | 330万円以上 1,100万円未満 | |
| C | 330万円未満 |
出典:熊本県工事入札参加者資格審査格付要綱(平成15年3月7日告示第221号、令和5年3月31日告示第317号による一部改正まで)別表。
この表を横に読むと、業種ごとに刻みがまるで違うことが分かります。土木一式は4等級で最上位が7,000万円以上、建築一式は5等級で最上位が1億3,200万円以上、ほ装・電気・管は3等級で最上位が1,100万円以上です。「Aに上がる」という言葉の中身は、業種によって別物です。
そして等級は「上げれば得」とは限りません。ひとつ上に行った結果、これまで取れていた規模の指名から外れることもあります。土木一式でA2からA1に上がれば、下限が1,500万円から7,000万円に跳ね上がります。狙う工事の規模と、いまの施工体制の釣り合いを見て決める話です。
なお、格付は業種ごとです。ある業種で等級を上げたければ、その業種の完成工事高が積み上がっている必要があります。そしてこれは、決算が終わってからでは動かせません。詳しくは完成工事高の業種区分 ── 決算が終わってからでは動かせないにまとめました。
第三章総合点数の組み立て
等級を決めるのは「総合点数」です。その中身は二つしかありません。
経営事項評価点数には経審の総合評定値がそのまま使われます。係数を掛ける仕組みではありません。
左の箱は、決算の設計と加点メニューで自社から積める部分です。右の箱は、県発注工事を実際に受けて仕上げないと積み上がらないものが中心で、時間がかかります。だから最初に動かすのは左になります。
経審を受けていない、あるいは審査が終わっていない場合、経営事項評価点数は0点として格付されます。あとから結果が出れば入れ替えて見直されますが、その間の等級は0点を前提にしたものです。
参考までに、令和8年度(2026年度)の格付で使われた等級ごとの総合点数の基準は次のとおりでした。
| 等級 | 土木一式 | 建築一式 | ほ装 | 電気 | 管 |
|---|---|---|---|---|---|
| A1 | 1,432点以上 | 1,218点以上 | 1,260点以上 | 1,039点以上 | 984点以上 |
| A2 | 1,049点以上 | 1,002点以上 | |||
| B | 715点以上 | 829点以上 | 944点以上 | 836点以上 | 816点以上 |
| C | 715点未満 | 712点以上 | 944点未満 | 836点未満 | 816点未満 |
| D | — | 712点未満 | — | — | — |
出典:令和8年度(2026年度)熊本県工事入札参加者資格審査における格付基準。ほ装・電気・管の等級はA・B・Cの3区分で、A1/A2の別はありません。この基準は年度ごとに定められるため、令和9・10年度の数値は改めて公表されるものをご確認ください。
数字を並べると、業種ごとの水準差が見えます。土木一式のA1は1,432点、管工事のAは984点。同じ「A」でも要求される総合点数は450点近く違います。複数業種で格付を狙うとき、どこが現実的かはこの表で当たりが付きます。
第四章技術点は何で積むか
技術事項等評価点数は、格付要綱の第2条第2項が三つに分けています。主として請け負う建設工事の種類別工事成績、信用の度合、その他。中身は年度ごとの格付基準に一覧で載ります。令和8年度(2026年度)分を並べると、次のような構成でした。
| 区分 | 評価項目 | 点数 |
|---|---|---|
| 工事成績 | 県発注工事の種類別平均工事成績 | (平均点−65)×倍率Y Yは当初契約額の最高額から算出。上限12 |
| 優良工事(工事成績85点以上/80点以上) | 20点/10点 1年につき1件 |
|
| 粗雑工事(工事成績65点未満) | 1件当たり △20点 | |
| 信用の度合 | 指名停止 | 1月当たり △20点 |
| その他 | 公共工事(国・地方公共団体等の元請)の完成工事高 | 10〜80点 2年間平均。5億円以上で80点 |
| 専門工事の平均完成工事高(ほ装・電気・管のみ) | 0〜50点 | |
| 専門工事の完成工事高比率(同上) | 0〜90点 90%以上で90点 |
|
| 高度な技術を要する工事の実績(土木一式のみ) | 1区分10点×6区分 トンネル・PC橋上部・基礎・軟弱地盤処理・管きょ推進・ダム |
|
| 総職員数 | 60点まで 総職員数×当該業種平均完工高÷全業種平均完工高×1.2 |
|
| 新規学卒者の雇用 | 1人4点(16点まで) | |
| 若年者の定着 | 1人3点(12点まで) | |
| 県と防災協定を締結/県内市町村と締結 | 20点/5点 | |
| ブライト企業の認定 | 20点 | |
| VE提案の採択 | 1件20点 | |
| 大臣・知事表彰 | 1件10点 | |
| 舗装用機械の保有(ほ装のみ) | 10〜20点 アスファルトフィニッシャー保有が前提 |
|
| 障がい者雇用/育児・介護休業制度/消防団/協力雇用主/不当要求防止責任者講習 | 各1〜5点 | |
| 県関係研修会・労働安全講習の受講/新分野進出/新技術開発/温暖化対策計画/県SDGs登録 | 各1〜10点 |
出典:令和8年度(2026年度)熊本県工事入札参加者資格審査における格付基準 第2の2。項目と配点は年度ごとに定められます。令和9・10年度分は改めて公表されるものをご確認ください。
この一覧を上から見ると、点の重さが偏っているのが分かります。工事成績と完成工事高、そして総職員数が大きく、制度の届出でとれる項目は5点から20点の刻みです。前者は受注を積まないと動きません。後者は書類で足せます。
もうひとつ、見落とされやすいのが判定日です。令和8年度分では、防災協定と男女共同参画は令和7年9月30日現在、新規学卒者雇用と社会貢献活動は令和7年12月31日現在、ブライト企業と県SDGs登録は令和8年1月31日現在で判定されました。項目ごとに基準日が違い、しかも申請の受付よりかなり前に締まっています。「申請前に間に合わせる」では届かない項目があるということです。
第五章経審は毎年効く
二つの要素のうち、自社の計画で毎年動かせるのは経審です。しかも動かし方には順番があります。
- W点(社会性等):建退共、上乗せ労災、退職金制度、防災協定、CCUS、各種認定。制度を整えるだけで点になります。費用も期間も小さい
- Z点(技術力):技術者の資格取得と配置。1〜2年かかりますが、上位等級では点数とは別に「1級技術者が何名以上」という資格要件そのものになります
- X1(完成工事高)・Y(経営状況):決算の設計で翌期から効きます。狙う業種への振り分けと、2年平均か3年平均かの選択
動くのは決算の前です。W点の加点の多くは審査基準日=決算日時点の状態で判定されます。決算が終わってから建退共に加入しても、その年の経審には入りません。1年遅れます。加点メニューの一覧と効き目は経審の実務ノートにまとめています。
今回の定期申請では、使える経審の範囲が決まっています。熊本県知事許可の会社は令和7年10月1日から令和8年9月30日までの間に審査基準日が属する経審、国土交通大臣許可の会社は令和7年7月1日から令和8年6月30日までの間に審査基準日が属する経審です。完了見込みでも申請できますが、この窓から外れた経審は使えません。
第六章いつ動き出すか
定期申請の締切から逆算します。申請には経審の結果(または申請済みであることの証明)が要り、経審には決算の確定と決算変更届が要ります。決算日から結果通知まで、通しておおむね4〜7か月。
- 締切の10か月前:決算の設計を税理士と詰める。W点の加点メニューを決算日までに整える
- 締切の6か月前:決算確定、決算変更届の提出
- 締切の4か月前:経営状況分析の申請、続けて経審の申請
- 締切まで:資格申請の書類を揃える
- 締切のあと:技術事項等評価項目の申請要領の公表を待って、別途申請
書類のうち期限があるのは納税証明書です。国税(法人税と消費税及び地方消費税)に未納税額がないことの証明書(その3の3)と、熊本県税に未納税額がないことの証明書(28号様式)は、証明年月日が申請書提出日から3か月以内のものに限られます。早く取りすぎると取り直しになります。
この逆算をすると、「自社の締切」は決算期ごとに一社一社違うことが分かります。県の案内に書いてあるのは受付期間だけで、そこから先は自社で引くしかありません。
第七章つまずきの記録
決算変更届をためていた
最も多い形です。許可は取ったが毎年の届出をしていない。経審の相談で初めて数年分の未提出が分かる。全部出すところから始まるので、ここだけで一か月かかることもあります。定期申請では、審査対象事業年度に係る変更届出書のうち「直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)」の写しを提出しますので、届出が済んでいないと書類がそろいません。
総合評定値を請求していない業種があった
経審の申請時に、総合評定値の請求をしていない業種は申請そのものが受け付けられません。完成工事高に実績がない業種も同じです。許可を持っているだけでは名簿に載らない、という一段があります。経審を出すときに「どの業種で請求するか」を決めているので、そこが入札の入口になっています。
社会保険が「無」のままだった
経審で雇用保険・健康保険・厚生年金保険のいずれかの加入状況が「無」となっている会社の申請は受け付けられません。指名願の申請日までに加入すれば、保険料の領収書や完納証明書などを添えて申請できます。なお令和8年(2026年)7月1日以降の審査基準日で経審を受けた会社については、この追加書類は不要とされています。
表年を知らずに一年を過ごした
受付が2年に一度なので、逃すと次まで待つことになります。しかも技術点は申請のときに決まって2年動きません。逃したのは「1回の申請」ではなく「2年分の営業の幅」です。
業種を絞らずに受けた
許可のある業種すべてで経審を受けた結果、どの業種も点数が薄くなる。完成工事高も技術者も分散するためです。狙う業種を決めて厚くするほうが、等級は上がります。ほ装・電気・管では、専門工事の完成工事高比率が90点まで付く仕組みになっていますので、絞ることが技術点にも効きます。
確認チェックリスト
- 建設業許可は有効か。更新の時期は近くないか
- 決算変更届は毎期出しているか。未提出の期はないか
- 直近の経審の審査基準日はいつか。今回の対象期間(知事許可は令和7年10月1日〜令和8年9月30日)に入っているか
- 経審で、狙う業種の総合評定値を請求しているか。完成工事高の実績はあるか
- 経審の社会保険の加入状況が3つとも「有」になっているか
- 狙う発注者は県か、市か、国か。それぞれ別の申請が要る
- 格付5業種(土木一式・建築一式・ほ装・電気・管)のどれで勝負するか決まっているか
- 納税証明書は、提出日から3か月以内の日付で取れているか
- 技術事項等評価項目の申請要領(令和8年12月頃公表予定)の確認先を控えているか
- W点の加点メニューで、まだ取っていないものはどれか
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