コリンズ(CORINS)実務ノート ── 工事実績登録を「受注力」に変える
01まず、経審との関係をはっきりさせる
ご相談でいちばん多い誤解から片づけます。コリンズへの登録は、経営事項審査の評点に一切影響しません。加点項目ではありませんし、登録しなくても点数が下がることもありません。
経審の評価項目はX1(完成工事高)・X2(自己資本額等)・Y(経営状況)・Z(技術力)・W(社会性等)で、この中にコリンズは一項目も入っていません。経審の完成工事高は工事経歴書と財務諸表から出るもので、コリンズの登録とは制度的に無関係です。
混同されやすいのはCCUS(建設キャリアアップシステム)のほうです。あちらはW点の加点対象です。名前が似ていて、どちらも登録するものなので、入れ替わって覚えられていることがよくあります。
経営事項審査の評価項目(X1・X2・Y・Z・W)にコリンズは含まれていません(国土交通省「現行の企業評価制度の概要」)。
ではコリンズは何に効くのか。個別の工事に参加できるかどうかです。「同種工事の施工実績があること」「配置予定技術者にその工事の経験があること」──公告に付くこうした条件を証明するのが、コリンズの実績です。
02登録が必要な工事
| 発注機関 | 対象となる請負代金額 |
|---|---|
| JACIC(制度としての対象) | 1契約あたり500万円以上(消費税および地方消費税相当額を含む) |
| 国土交通省 直轄工事 | 500万円以上(単価契約の場合は契約総額) |
| 熊本県 | 500万円以上 |
| 熊本市 | 500万円以上(消費税を含む) |
金額はどこも同じです。ただし、登録を義務づけるかどうかと期限は、契約図書(契約書・特記仕様書)で決まります。「コリンズ登録のこと」と書かれていれば対象です。
熊本市には、押さえておきたい運用が二つあります。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 500万円未満で契約したが、変更契約で500万円以上になった | 受注時登録が必要になります。後から対象に入ります |
| 余裕期間を設定した案件 | 契約工期は全体工期、実工期および技術者の従事期間は実工事期間で登録します |
03登録は三回ある
国土交通省・熊本県の土木工事共通仕様書による。訂正時は適宜。熊本県は完成時の起算日を「工事完成通知書(しゅん工届)の提出日」としています。
| 種類 | 期限 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 受注時 | 契約後、土曜日・日曜日・祝日等を除き10日以内 | 契約したらすぐ着手。発注者の確認をもらう時間が要ります |
| 変更時 | 変更があった日から、同じく10日以内 | いちばん漏れやすいところです |
| 完成時 | 工事完成後、同じく10日以内 | ここまでやって初めて「使える実績」になります |
| 訂正時 | 適宜 | 訂正の手数料は廃止されており無料です |
変更登録について、実務で効く決まりがあります。変更登録が必要なのは、工期または技術者に変更が生じた場合です。請負代金だけが変わった場合は、原則として登録は要りません。金額変更のたびに登録し直している会社がありますが、そこは不要です。
熊本県の共通仕様書には、二つの補足があります。完成時の10日の起算点は「工事完成通知書(しゅん工届)の提出日」であること。そして変更時と工事完成時の間が10日間に満たない場合は、変更時の提示を省略できることです。工期末ぎりぎりの変更で助かる規定です。
04手続きの流れと、発注者の確認
受注企業が勝手に登録して終わり、という仕組みではありません。途中に発注者の確認が挟まります。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 発注機関の確認担当者の情報を確認する |
| 2 | 実績データを作成する(工事の情報と、配置技術者の情報) |
| 3 | 発注機関に「登録のための確認のお願い」を出し、確認を受ける |
| 4 | 実績データを登録する |
| 5 | JACICが処理し、「登録内容確認書」がPDFで発行される |
この「登録内容確認書」が、登録が完了した証拠です。受け取ったら、速やかに監督職員に提示する義務があります(共通仕様書)。以前「工事カルテ受領書」と呼ばれていたものにあたります。
なお「登録のための確認のお願い」への監督職員・調査職員の押印は廃止されています。古い手引きには押印を求める記載が残っていることがあります。
05費用
| 請負金額の区分 | 実績登録料(工事1件ごと・税込) |
|---|---|
| 5,000万円以上 | 8,360円 |
| 2,500万円以上 5,000万円未満 | 7,590円 |
| 500万円以上 2,500万円未満 | 2,450円 |
2023年4月1日の改定で約1割引き下げられ、あわせて登録内容確認書の発行手数料と訂正手数料は廃止(無料)になりました。工事1件につき一度かかる費用ですので、原価に見込んでおいてください。
06技術者にとっての意味
コリンズには、工事の情報だけでなく配置技術者の情報が登録されます。役割(現場代理人・監理技術者・担当技術者)、技術者ID、氏名、生年月日、監理技術者資格者証番号、従事期間。
これが二つの意味を持ちます。
| 意味 | 内容 |
|---|---|
| 本人の実績になる | 次の入札で「配置予定技術者の工事経験」を問われたとき、登録された工事が証明になります。登録されていない工事は、本人の実績として使えません |
| 重複配置が見える | 専任義務のある工事で複数の現場に同時に登録されていれば、発注者に把握されます。配置技術者の現場専任は、ここで確かめられています |
技術者の専任と兼任の考え方は、配置技術者の現場専任(許可講座 第20講)で扱っています。
共同企業体の工事では、専任かどうかを共同企業体の全体額で判断します。自社の出資分で数えると、ここで重複が生まれます。
07つまずきの記録
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| 受注時に登録し、完成時を忘れた | 完成登録をしないと実績が確定しません。竣工検査の書類一式に、完成登録を並べて入れておく |
| 技術者を交代したのに変更登録をしていない | 交代の決裁と同時に変更登録。専任の重複を疑われる原因にもなります |
| 10日の期限を過ぎた | 発注者の確認に日数がかかります。契約書を受け取った日から動き出してください |
| 500万円未満だから対象外だと思っていた | 変更契約で500万円以上になれば対象です(熊本市) |
| コリンズを登録したから経審が上がると思っていた | 上がりません。加点はCCUSのほうです(第1章) |
登録しないこと自体は、共通仕様書上の義務違反にあたります。それ以上に実務で効くのは、次の入札で「同種工事の実績」を証明する手段を失うことです。契約書の写しと図面を集めて個別に立証することになり、公告から締切までの短い期間にそれをやるのは、かなりの負担になります。
なお、虚偽の記載については指名停止の対象になり得ます(国土交通省の運用基準では調査資料等の虚偽記載は1か月〜3か月、悪質な場合は3か月〜6か月)。実績を大きく見せる方向の登録は、割に合いません。
08確認先
| 内容 | 確認先 |
|---|---|
| 登録対象・登録時期・手続き | 一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)「コリンズ・テクリス」 |
| 登録料金 | JACIC「コリンズ・テクリス利用料金」 |
| 国の直轄工事での取扱い | 国土交通省「土木工事共通仕様書」 |
| 熊本県での取扱い | 熊本県土木部「土木工事共通仕様書」1-1-7 |
| 熊本市での取扱い | 熊本市「コリンズ登録について」 |
| 経審の評価項目 | 国土交通省「経営事項審査」 |
※料金や期限の運用は改定されることがあります。登録の前に、JACICおよび発注機関の最新の案内でご確認ください。
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この記事の先にあるもの
コリンズの実績は、個別の工事に参加できるかどうか(同種工事の施工実績、配置予定技術者の工事経験)を証明するものです。入札参加資格の等級そのものは経営事項審査の点数で決まります。二つは別の仕組みで、役割が分かれています。
→ 入札参加資格・公共工事 実務講座(全16講)── 等級と、個別工事の参加資格
→ 経営事項審査 実務講座(全25講)── 等級を決める点数のつくり方
