最低制限価格と低入札価格調査 ── 落ちる線を知る
01最低制限価格の計算式
熊本県の取扱要領は、最低制限基準価格を次のように定めています。
| 費目 | 掛ける率 |
|---|---|
| 直接工事費 | 100分の97 |
| 共通仮設費 | 100分の90 |
| 現場管理費 | 100分の90 |
| 一般管理費 | 100分の68 |
この四つを足した額に、無作為(ランダム)係数を乗じて算出します。そして上限と下限があります。
| 上限 | 予定価格の100分の92を超える場合は、予定価格の100分の92 |
|---|---|
| 下限 | 予定価格の100分の75に満たない場合は、予定価格の100分の75 |
熊本県「建設工事及び建設コンサルタント業務等委託契約事務取扱要領」による。熊本市も同じ係数(10分の9.7・9・9・6.8、上限9.2・下限7.5)です。
熊本市も同じ考え方です。直接工事費に10分の9.7、共通仮設費に10分の9、現場管理費に10分の9、一般管理費等に10分の6.8。上限は予定価格の10分の9.2、下限は10分の7.5です。
02ランダム係数があるということ
ここが実務でいちばん大事なところです。最低制限価格には無作為係数が乗るので、事前に正確な額を計算することはできません。
つまり、「ぎりぎりを狙う」という考え方が成り立ちません。読み切れない数字に賭けることになります。積算の精度で勝負するのではなく、自社が実際に施工できる価格で入れる。それが結果的にいちばん確実な方法になります。
03低入札価格調査と失格判断基準価格
総合評価落札方式による一般競争入札などでは、最低制限価格ではなく低入札価格調査の仕組みが使われます。調査基準価格を下回った場合、その価格で適正に施工できるかを調べたうえで、落札者にするかどうかを決めるものです。
そして、調査基準価格とは別に失格判断基準価格があります。熊本県の実施要領は次のように定めています。
| 費目 | 掛ける率 |
|---|---|
| 直接工事費 | 100分の97 |
| 共通仮設費 | 100分の90 |
| 現場管理費 | 100分の90 |
| 一般管理費 | 100分の30 |
調査基準価格との違いは、一般管理費の率だけです(68%→30%)。この失格判断基準価格を下回った入札は、調査に入ることなく失格です。
この計算式は、令和6年4月の国土交通省の基準見直しに準拠したもので、令和6年6月1日以降に公告・指名通知を行う入札から適用されています。
04なぜこの線があるのか
ダンピング受注を防ぐためです。安く受けすぎた工事は、どこかにしわ寄せが出ます。下請への支払、労務費、工期、安全。改正建設業法が標準労務費や見積内訳の明示を求めているのと、同じ方向の話です(許可講座 第23講・第24講)。
ですから、この線は取り締まりというより、下限の設定だと考えるほうが実態に近いと思います。適正な施工ができる価格の下側に、線が引かれている。
05実務としての値決め
| やること | 理由 |
|---|---|
| 自社の原価を、費目ごとに積み上げる | 直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費の区分は、そのまま最低制限価格の計算区分です |
| 下請への支払を前提に入れる | 標準労務費を割り込む見積は、建設業法上も問われます |
| 落札できなかった案件の入札結果を見る | 公表されています。自社の水準を測る材料になります |
| 失格した案件は、必ず原因を確かめる | 積算の誤りか、値決めの方針か。前者なら直せます |
06確認先
| 内容 | 確認先 |
|---|---|
| 熊本県の最低制限価格 | 熊本県「建設工事及び建設コンサルタント業務等委託契約事務取扱要領」 |
| 熊本県の低入札価格調査 | 熊本県土木部監理課「建設工事低入札価格調査実施要領」「計算式の改正について」 |
| 熊本市の最低制限価格 | 熊本市工事契約課「工事請負契約に係る最低制限価格の算定基準」 |
※計算式は見直されます。入札の前に、発注機関の最新の公表資料と公告でご確認ください。
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