経審の進め方 ── 書類準備から申請まで
この講は手続きの話です。経審が何を測る制度なのかは第1講、費用と期間の全体像は第3講で扱っています。
第一章提出物は三つの束に分かれる
経審に出す書類は数十点になりますが、性質で分けると三つしかありません。会社そのものを示すもの、人を示すもの、加点を示すものです。この分け方が大事なのは、三つで「いつまでに動くか」が違うからです。
真ん中と右は、決算が終わってからでは間に合いません。人の束は在籍期間と資格の有効期限を一人ずつ確認する作業で、社数が増えるほど時間を食います。右の束は、決算日時点で制度に入っていたかどうかで判定されます。左の束だけが、決算後にできる作業です。書類の名称と様式は年度で変わるため、着手前に県の最新の一覧でご確認ください。
決算後に着手できるのは左の束だけです。真ん中の人の束は、在籍期間と資格の有効期限を一人ずつ確認する作業になります。10人いれば10通り、資格証の写しと雇用の裏づけが要ります。右の加点の束にいたっては、決算日の時点で制度に入っていたかどうかで決まります。決算が終わってから建退共に加入しても、その年の点にはなりません。
第二章決算変更届を出していないと、そこで止まる
経審を受けるには、その事業年度の決算変更届(事業年度終了届)が提出済みであることが前提になります。建設業許可を持つ会社が毎年出す届出で、期限は事業年度終了後4か月以内です。
届出の中身も効いてきます。決算変更届に添付する工事経歴書の業種の振り分けが、そのまま経審の完成工事高になります。届出の段階でずれていれば、経審の数字も連鎖してずれます。後から直すのは面倒です。届出を出す時点で、経審まで見ておく必要があります。
第三章経営状況分析を、どこに出すか
Y点(経営状況)は県ではなく、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関に申請します。全国に複数あり、どこに出しても算出される点数は同じです。指標も計算式も告示で決まっているためです。
違うのは、費用と、結果が返ってくる速さと、窓口の使い勝手です。費用は1万円台で、機関によって差があります。期間はおおむね1〜2週間。決算書の電子データを受け付ける機関なら入力の手間が減ります。
ここで一つ判断が要ります。分析に出す前に、決算の内容を確認しておくかどうかです。出してしまえば点数は決まります。役員借入の資本化や高利借入の借換えといった手は、いずれも決算日より前に打つものです。分析に出す段階では、もう打つ手はありません。Y点の中身はY点の講で扱います。
第四章県への申請 ── 紙か、JCIPか
分析結果が届いたら、県に申請します。熊本県知事許可なら熊本県、大臣許可なら国土交通省の地方整備局です。出すのは経営規模等評価申請と総合評定値請求の二つで、実務上はセットで出します。
どちらでも点数は変わりません。変わるのは手間と、書類の残り方です。JCIPは提出物がシステムに残るので、翌年の準備が楽になります。一方、はじめての年に電子と紙の両方を覚えるのは負担なので、まず紙で通してから翌年に切り替える会社もあります。操作の相談はJCIPのヘルプデスク(0570-033-730/平日9時〜17時)でも受け付けています。
総合評定値請求というのは、要するにP点を出してもらう手続きです。これを請求しないとP点が出ません。経営規模等評価だけ受けても入札参加資格の申請には使えないので、必ず両方を出します。
第五章手数料は、業種の数で決まる
県に納める手数料は、受ける業種の数に比例します。
ここに登録経営状況分析機関へ支払う分析費用(1万円台)が加わります。行政書士に依頼する場合はその報酬が別に必要です。「とりあえず全業種で」と申し込むと費用も増えますが、それ以上に、完成工事高と技術者が分散して各業種の点数が薄くなります。金額は令和8年度時点のもので、年度により変わります。
ここで社長に考えていただきたいのは、業種を絞るかどうかです。費用の差は数千円から数万円で、それ自体は大きな話ではありません。効いてくるのは点数のほうです。完成工事高も技術者も、業種に分散すればそれぞれが薄くなります。狙う業種に厚く寄せたほうが、等級は上がります。ただし、二年先にその業種で工事を取りにいく予定があるなら話は別です。受注計画から逆算して決めることになります。
第六章令和8年7月からの変更点
令和8年7月1日以降の申請分から、W点(社会性等)の審査項目が見直されています。手続きそのものは変わりませんが、加点の取り方が変わりました。
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」が新たに加点対象になりました(5点)
- 建設機械の評価対象に、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが加わりました
- 社会保険の未加入による減点が廃止されました
- CCUSの就業履歴蓄積についての配点が見直されました
宣言の有無も、機械の保有も、判定されるのは決算日時点の状態です。対応するなら決算の前になります。熊本県では令和8年度から様式の色紙提出も廃止され、白色紙に統一されました。改正の詳細はW点改正の講に書いています。
第七章つまずきの記録
技術者の資格証が期限切れだった
監理技術者講習には有効期間があります。切れていると、同じ人の点が6点から5点に落ちます。名簿を作る段階ではなく、決算日の前に一覧で確認しておくと間に合います。
決算日の直前に採用した人が載らなかった
技術職員名簿に載せられるのは、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係がある人です。決算日の5か月前に採用した人は、その年の名簿には載りません。人員計画は決算日から逆算する話になります。
兼業の売上を工事高に混ぜていた
不動産賃貸や物販など、建設業以外の売上は完成工事高に入りません。決算書の売上と経審の完成工事高が一致しない会社は珍しくなく、この切り分けが決算変更届の段階でずれていると、経審の数字も連鎖してずれます。
入札参加資格の締切から逆算していなかった
経審の結果通知は、申請してから1か月以上かかります。入札参加資格の申請に間に合わせるつもりなら、そこからさらに前倒しで動くことになります。「経審を受けた」だけでは終わらないという前提で日程を引いてください。
もう一つ、申請の前ではなくその前の年度に確かめておくことがあります。社内の建設業経理士が、登録経理講習の期限内かどうかです。切れていると、その年の加点が消えます。建設業経理士の加点は、放っておくと消える ── 登録経理講習の5年にまとめました。
確認申請の前に確かめる六つ
- 決算変更届は、未提出の期がないか
- 決算変更届の工事経歴書の業種振り分けは、経審で狙う業種と合っているか
- 技術職員名簿に載せる人の在籍期間は、審査基準日から6か月を超えているか
- 監理技術者講習の有効期間は切れていないか
- 受ける業種を決めたか。手数料と点数の両方から見て妥当か
- JCIPで出すなら、GビズIDは取得済みか
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