廃棄物処理法規則改正|行政書士村上事務所

建設廃棄物 実務ノート ── 元請の排出事業者責任と、令和8年9月からの確認事項

建設廃棄物のルールは、元請が排出事業者になるという一点から組み立てられています。下請に出しても、この責任は移りません。令和8年6月に廃棄物処理法が改正され、9月18日から、解体で出た金属くずの売却先に確認すべきことが増えます。あわせて、化学物質の情報伝達をめぐる誤解も整理します。

構成:一 元請が排出事業者になる/二 マニフェストの期限/三 令和8年9月からの確認事項/四 化学物質の情報伝達は誰の義務か/五 罰則とつまずきの記録

第一章元請が排出事業者になる

建設工事が数次の請負で行われる場合、廃棄物処理法の適用については元請業者を事業者とすると定められています(法21条の3第1項)。下請に廃棄物を持ち帰らせても、排出事業者としての責任は元請に残ります。

例外は三つだけで、いずれも条件が細かく決まっています。

例外 誰が事業者とみなされるか 条件
下請による保管 下請負人も事業者とみなす 保管の場面に限る(法21条の3第2項)
下請が自ら運搬 下請負人を事業者とみなす 書面の請負契約で定めることが前提(法21条の3第3項)
下請が第三者に委託 下請負人を事業者とみなす 委託契約・マニフェストの規定について(法21条の3第4項)
「下請が自ら運搬」の条件は、かなり狭い

施行規則18条の2は、次のすべてを満たすことを求めています。一つでも外れると、下請が運んだ時点で無許可収集運搬になり得ます。

  • 請負代金が500万円以下の維持修繕工事等(新築・増築・解体は除く)、または相当額500万円以下の瑕疵補修工事
  • 一回の運搬が1立方メートル以下
  • 運搬先が元請の所有・使用権原のある施設で、工事地と同一または隣接の都道府県内
  • 運搬の途中で保管をしない

同一人と契約を分けても、正当な理由がなければ一つの契約とみなされます。

第二章マニフェストの期限

交付そのものより、返ってこないときの対応で差がつきます。日数は覚えるものではなく、台帳に組み込むものです。

場面 期限 根拠
運搬・処分終了の写しが返らない 交付から90日(特別管理産業廃棄物は60日) 規則8条の28
最終処分終了の写しが返らない 交付から180日 規則8条の28
措置内容等報告書の提出 上の期間の経過から30日以内に知事へ 規則8条の29(様式第四号)
交付等状況報告書の提出 毎年6月30日まで(前年4月〜当年3月分) 規則8条の27
写しの保存 5年 法12条の3第6項・規則8条の26

電子マニフェストだけを使っている場合、交付等状況報告書の提出は不要です(情報処理センターが報告します)。

第三章令和8年9月からの確認事項

令和8年法律第43号が6月19日に公布され、公布から3か月以内に、いわゆるスクラップヤードの規制が始まります

  • 使用済みの金属・プラスチック物品の保管や再生を業として行う者に、都道府県知事の許可が必要になります
  • 保管の高さ制限、飛散・火災の防止、油の漏出防止などの基準が課されます
  • 無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下)
解体工事の「有価物として売る」先が、許可制になる

解体で出た鉄骨・銅線・サッシ・廃プラを、有価物として業者に引き取ってもらっている会社は多いはずです。その引取先が許可を取っているかどうかが、これからの確認事項になります。

廃棄物として委託するのか、有価物として売却するのかの整理と、売却先の許可の有無。この二つを取引先ごとに一度洗っておくのが、いまの実務です。

図 有価物か、廃棄物か解体で出たものを、どちらで扱うか鉄骨・銅線・サッシ・廃プラ有価物として売却する廃棄物として委託する引取先が知事の許可を受けているかを確認する令和8年9月18日から許可業者へ委託する書面の委託契約を結ぶマニフェストを交付するどちらであっても、排出事業者としての責任は元請に残る下請に持ち帰らせても、この責任は移らない(法21条の3第1項)

有価物として売却する場合でも、令和8年9月18日以降は引取先の許可の有無が確認事項になります(令和8年法律第43号)。

あわせて、災害廃棄物の処理について協定の締結や再々委託を認める規定も新設されましたが、こちらの施行は先になります。

第四章化学物質の情報伝達は誰の義務か

令和8年1月1日から、産業廃棄物の委託契約書に第一種指定化学物質の名称と量または割合を記載する義務が加わりました(規則8条の4の2第6号ヘ)。すでに施行されています。

ここが誤解されやすいところ

この義務がかかるのは、次のすべてを満たす場合だけです。

  • 委託者が、化管法の第一種指定化学物質等取扱事業者であること
  • その物質がPRTRの届出対象であること
  • 廃棄物に含まれ、または付着していること(目安は重量1%以上、特定第一種は0.1%以上)

化管法の対象業種は24業種で、建設業は含まれていません。つまり、工事だけを行う元請業者は、原則としてこの義務の名宛人になりません。

該当し得るのは、同じ会社が産業廃棄物処分業やアスファルト合材の製造など、対象業種にあたる事業を別に営み、かつ従業員数・取扱量の要件を満たしてPRTRの届出をしている場合です。判断は事業所ごとに行います。

なお、施行日の時点で結ばれていた委託契約は、更新までの間は従前どおりで足ります。

令和9年4月1日には電子マニフェストの報告項目が増えますが、報告する義務を負うのは処分を受託した業者です。排出事業者の側の作業が増えるわけではなく、最終処分までの処分方法や処分場所がJWNET上で見えるようになる、という変化です。

第五章罰則とつまずきの記録

違反 法定刑 条文
無許可業者への委託 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり) 法25条1項6号
委託基準違反(書面契約なし・記載事項の欠落) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり) 法26条1号
マニフェストの不交付・虚偽記載・不保存 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 法27条の2

法人にも罰金が科されます(法32条・両罰規定)。なお令和7年6月1日から、法定刑の表記は「懲役」から「拘禁刑」に変わっています。

つまずき 防ぎ方
下請に「ついでに運んでおいて」と頼む 500万円・1立方メートル・保管なしの三条件と、書面契約での定めを確認してから
90日・180日を過ぎたことに気づかない 交付日を起点にした期限管理を、工事台帳と同じ場所で持つ
有価物として売っていた先が無許可だった 令和8年9月以降は許可の有無を確認。取引先ごとに一度棚卸しする
建設業なのに化学物質の情報伝達義務があると思い込む 自社が化管法の対象業種にあたるかを事業所ごとに確認する
経審との関係について

産業廃棄物処理業の許可を持つ建設業者の場合、その売上を完成工事高に含めるのか兼業事業売上高とするのかが問題になります。

この区分について、国土交通省が明示した公表資料は確認できていません。地方整備局の手引きには「建設工事の完成を請け負う営業」でないものは完成工事高に計上できないという一般論があるだけです。判断は許可行政庁への個別照会によります。断定的な説明には注意してください。

※法改正の施行日・下位法令は今後も動きます。最新は環境省の公表資料でご確認ください。

解体を伴う工事の廃棄物の流れと、売却先・委託先の確認は、一度型を作れば毎回使えます。契約書とマニフェストの様式点検からお手伝いできます。

執筆体制

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顧問技術士・一級建築士

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