登録経理講習の5年

建設業経理士の加点は、放っておくと消える ── 登録経理講習の5年

事務員が建設業経理士2級を持っている。経営事項審査で加点される。そこまでは多くの会社が知っています。ところがこの加点、放っておくと消えます。5年ごとに講習を受けないと、評価の対象から外れる仕組みになりました。期限は決算日から逆算して管理します。

01加点されるのは「登録」された経理士だけ

経審のW評点に「建設業の経理の状況(W5)」という項目があります。ここで見られるのが、監査を受けているかと、公認会計士等の数です。人数は次のように数えます。

区分 数え方
公認会計士、会計士補、税理士、登録1級建設業経理士 1人につき 1.0
登録2級建設業経理士 1人につき 0.4
3級・4級(建設業経理事務士) 数えません

ここで効いてくるのが「登録」の二文字です。令和5年4月1日以降を審査基準日とする経審からは、合格しているだけでは足りません。登録経理講習を受けて「登録1級建設業経理士」「登録2級建設業経理士」になっていることが求められます。

令和5年3月31日までは経過措置があり、合格者は全員が評価されていました。その期間が終わっています。以前は加点されていたのに、今年から消えていた。気づくのは、たいてい結果通知書を見たときです。

02有効期間の数え方

条文の言い回しは少し独特です。評価の対象になるのは、次のいずれかに当てはまる人です。

種別 要件
試験に合格した人 合格した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しないこと
講習を受けた人 受講した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しないこと

「合格日から5年」ではありません。合格した年度の、次の年度が始まる日から数えます。3月に合格しても翌月に合格しても、起算日は同じ4月1日です。

図1 令和4年度に合格した場合 令和4年度 合格 令和5年4月1日 起算日(翌年度の開始) 5年 令和10年3月31日 ここまで評価対象 この間に登録経理講習を受ければ、受講年度の翌年度4月1日からまた5年。 受けなければ、次の経営事項審査から加点は消えます。

令和4年度に2級に合格した人なら、起算日は令和5年4月1日。そこから5年で、令和10年3月31日までが評価の対象です。講習を受ければ、受けた年度の翌年度の4月1日からまた5年になります。

03決算日で、実質の猶予が変わる

経審の判定は審査基準日、つまり決算日の時点で行われます。有効期限が年度末で切れるのに対して、決算日は会社ごとに違う。この二つがずれるので、同じ日に合格した人でも、会社によって動くべき時期が変わります。

図2 有効期限が令和10年3月31日の場合 令和10年3月31日 ── 有効期限 決算日 5月31日 令和10年5月31日の審査基準日 猶予 約2か月 決算日 2月28日 令和11年2月28日の審査基準日 猶予 約11か月 ※ 判定は審査基準日(決算日)時点。その日までに受講が済んでいれば加点は残ります

決算日が5月末の会社なら、期限が切れた直後に審査基準日が来ます。猶予は2か月。決算日が2月末の会社なら11か月あります。4月・5月決算の会社ほど、動き出しを早くしておく必要があります。

逆に言えば、期限の年度末までに受けなくても、次の決算日までに受講が済んでいればその審査では加点が残ります。ただしこれは薄氷を踏む段取りです。講習には日程があります。

04講習は一日がかりです

項目 内容
時間 講義6時間+試験1時間の計7時間
形式 オンライン講習、会場講習(映像・対面)から選べます
受講料 18,000円(税込)
内容 1級は監査論・内部統制・建設業法令遵守など、2級は建設業経理士業務・会計理論など

一日つぶれます。事務員が一人しかいない会社では、その日の電話番と入出金をどうするかまで含めて段取りが要ります。「空いた日に受けさせよう」で先送りにすると、そのまま年度が変わります。

会場講習は開催日が決まっています。年度末に近づくほど選べる日が減るので、期限の年度に入ってから探すのではなく、その前の年度のうちに日を押さえておくのが確実です。

05どれくらいの差になるか

W5は「監査の受審状況」と「公認会計士等の数」の合計で、上限は30点です。これはW評点にすると262点、総合評定値(P点)に換算して約39点に相当します。

もっとも、2級が一人いるかどうかで動く幅はこの上限とは違います。公認会計士等数値に足されるのは0.4。それが何点になるかは、年間平均完成工事高の規模によって変わります。規模の小さい会社ほど、一人の重みが大きく出ます。

ここは一般論で語らないほうがいい部分です。自社の完成工事高と、いま何人いるかを入れて試算しないと、実際の数字は出ません。「たかが一人」で片づけると、等級の境目にいる会社では判断を誤ります。

06誰が期限を管理するか

この制度のいちばんの難点は、期限が本人にしか見えないことです。合格証書は本人が持っています。合格した年度を会社が把握していないと、いつ切れるのか誰にも分かりません。

やることは三つです。

やること
有資格者の合格年度(または直近の受講年度)を、会社の記録として持つ
そこから起算日と期限を出し、決算日と並べていつまでに受けるかを決める
期限の前年度に、講習の日程を押さえる

決算変更届や許可の更新と同じ扱いにして、年間の段取りの中に入れてしまうのがいちばん確実です。経審の直前に確認する項目ではありません。そのときに気づいても、もう間に合いません。

07つまずきの記録

つまずき 実際
合格しているから加点されると思っていた 令和5年4月以降は、講習を受けて「登録」になっていることが要ります
合格日から5年だと思って計算していた 合格した年度の翌年度4月1日から5年です。最大で1年ずれます
3級を取らせていた 3級・4級は数に入りません。加点を狙うなら2級以上です
期限を本人に任せていた 会社の記録に合格年度がないと、誰も気づけません
経審の直前に気づいた 講習は7時間で日程も限られます。前年度から段取りします
決算日を考えずに年度末を期限だと思っていた 判定は審査基準日時点です。4月・5月決算は猶予がほとんどありません
税理士がいるから大丈夫だと思っていた 公認会計士や税理士は別枠で数えます。こちらに講習の要件はありません

確認決算前に確かめること

  • 社内の建設業経理士は誰か。1級か2級か
  • その人が合格したのは何年度か。あるいは直近の講習を受けたのは何年度か
  • 起算日(翌年度の4月1日)から5年後の年度末はいつか
  • その期限と、自社の決算日はどちらが先に来るか
  • 受講が要るなら、講習の日程は押さえたか
  • その日、事務所を一日空けられるか

08確認先

内容 確認先
登録建設業経理士制度・登録経理講習 一般財団法人建設業振興基金「建設業経理士・経理事務士について」
経営事項審査での評価の要件 建設業法施行規則第18条の3第3項(e-Gov法令検索)
熊本県での経審の受付・様式 熊本県土木部監理課建設業班

※ 評価の要件や講習の運用は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、審査基準日時点の最新の情報をご確認ください。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

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