初めての経営事項審査(経審) ── 流れ・費用・スケジュールの基本
構成:一 経審は何のためにあるか/二 四つの工程と、かかる期間/三 費用の実額/四 いつ動き出すか/五 最初に決めておくこと/六 つまずきの記録/はじめての方のチェックリスト
第一章経審は何のためにあるか
公共工事を元請として直接請け負うには、経営事項審査を受けなければなりません。建設業法で決まっています。下請として入るだけなら要りませんが、発注者から直接受けるなら避けて通れません。
経審を受けると、会社の規模・財務・技術力・社会性を点数化した総合評定値(P点)が出ます。発注者はこのP点に独自の点数を足して、業者を等級(A・B・Cなど)に振り分ける。その等級で、入札できる工事の大きさが決まります。
経審は、それ自体が目的ではありません。入札参加資格を申請するために必要な、途中の一段です。許可がなければ受けられず、経審を受けただけでは工事は取れません。
経審は真ん中の工程です。ここを飛ばして名簿には載れません。
では、その点数は何で決まるのか。総合評定値(P点)は、五つの要素の配分で組み立てられています。
X1とZで半分を占めます。完成工事高と技術者の数──この二つが動かないかぎり、点数は大きくは変わりません。逆に言えば、W点は配分こそ15%ですが、加点項目を積めば短期間で動かせる唯一の領域です。
第二章四つの工程と、かかる期間
「経審を受ける」と一言で言いますが、実際には四つの工程があります。ここを知らずに動き出すと、必ず時期を誤ります。
| 工程 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 一 決算の確定 | 決算を締め、税務申告を終える | 決算日から約2か月 |
| 二 決算変更届 | 県へ提出。事業年度終了後4か月以内が期限 | ― |
| 三 経営状況分析 | 登録分析機関へ申請し、Y点を出してもらう | 1〜2週間 |
| 四 経審の申請 | 県へ申請し、結果通知を受け取る | 1か月以上 |
決算変更届の4か月は法定の期限です。ここが遅れると、その先がすべて後ろにずれます。3月決算なら7月末、9月決算なら翌1月末。まずこの日付を手帳に入れるところから始まります。
決算日から結果通知まで、通しておよそ4〜7か月。繁忙期はさらに延びます。「今から受けたい」と言われても、その場で受けられるものではありません。
第三章費用の実額
経審そのものにかかる法定費用は、それほど大きくありません。
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 経営状況分析(登録分析機関) | 1.3万円前後(機関により異なります) |
| 経営規模等評価・総合評定値請求(熊本県) | 8,500円+2,500円×業種数 |
3業種で受けるなら、県への手数料は8,500円+7,500円で16,000円。分析費用と合わせて3万円前後が目安です。これに行政書士へ依頼する場合の報酬が加わります。
金額は年度や機関によって変わります。申請前に必ず最新の案内でご確認ください。
第四章いつ動き出すか
結論から言えば、決算日の前です。
意外に思われるかもしれません。経審は決算が終わってから受けるものだからです。ただし点数を決める要素の多くが、決算日時点の状態で判定されます。
- 自己資本の額
- 技術職員として数えられる人(6か月を超える雇用があるか)
- W点の加点の多く(CCUS、建退共、各種認定など)
決算が終わってから「点数を上げたい」と言われても、その年についてはほとんど打つ手がありません。初めての年こそ、決算の3〜6か月前に一度相談しておくと、一年分の差がつきます。
有効期間は1年7か月
結果通知は審査基準日(=決算日)から1年7か月有効です。1年ではなく1年7か月なのは、前述の4〜7か月を制度が織り込んでいるからです。裏を返せば、実務上の余裕は7か月しかありません。
ここを外すと「空白期間」が生まれます。名簿には載っているのに、有効な経審結果がないから入札に参加できない。いちばん痛い形で効いてきます。経審は毎年「受ける」ものではなく、毎年「切らさない」ものだと考えてください。
第五章最初に決めておくこと
初めて受けるとき、点数の話に入る前に決めておくことが三つあります。ここが決まっていないと、対策の順番が決まりません。
- どの発注者を狙うか ── 熊本県か、熊本市か、国か。名簿も等級も別々です
- どの業種で取りにいくか ── 土木一式か、建築一式か、専門工事か。等級は業種ごとに付きます
- どの等級を目指すか ── いまの規模で現実的に届くのはどこか
この三つが決まると、「あと何点足りないか」という問いに変わります。そこまで来れば、完成工事高をどの業種に寄せるか、技術者をどう配置するか、どの加点メニューから取るかが、順番に決まっていきます。
第六章つまずきの記録
決算変更届をためていた
最も多いパターンです。許可は取ったが毎年の届出をしていない。経審の相談に来られて、初めて数年分の未提出が分かる。ここを片づけないと先に進めません。
入札の時期に間に合わなかった
入札参加資格の申請には締切があります。そこから逆算すると、経審の申請はさらに前。「入札したい」と思った時点で動き出しても、その年度には間に合わないことがあります。
業種を決めずに受けてしまった
とりあえず全業種で受けた結果、どの業種も点数が薄くなる。完成工事高も技術者も分散するためです。狙う業種を決めて厚くするほうが、等級は上がります。
確認はじめての方のチェックリスト
- 建設業許可は取得済みか
- 決算変更届は、過去分もすべて提出できているか
- 自社の決算日はいつか。そこから4〜7か月後はいつになるか
- 狙う発注者は、熊本県か熊本市か、それ以外か
- どの業種で等級を取りにいくか
- 次の決算日まで、あと何か月あるか
最後の一つがいちばん大事です。次の決算日までの残り時間が、今年打てる手の範囲を決めます。3か月あれば、加点の準備が間に合うものがあります。1か月なら、来期の設計に切り替えたほうが確実です。
手数料・様式・加点の要件は年度や改正で変わります。実際の申請にあたっては、熊本県「経営事項審査の実施について」および国土交通省の最新の手引きでご確認ください。
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