省エネ設備の補助金 実務ノート ── 使える枠と、経審で本当に点になるもの
構成:一 いま動いている枠/二 対象になる設備/三 経審に効くのは設備ではない/四 進め方とつまずきの記録
第一章いま動いている枠
国の省エネ設備補助の中心は、資源エネルギー庁の補助事業を環境共創イニシアチブ(SII)が執行するかたちで動いています。令和8年に事業者が申請しているのは、令和7年度補正予算による省エネ・非化石転換補助金です。
| 枠 | 補助率 | 上限・下限 |
|---|---|---|
| 設備単位型(従来枠) | 1/3以内 | 上限1億円/下限30万円 |
| GX設備単位型(トップ性能枠・更新) | 1/2以内 | 上限3億円/下限30万円 |
| 工場・事業場型(一般枠) | 中小1/2以内、大企業1/3以内 | 上限15億円/下限100万円 |
| エネルギー需要最適化型 | 中小1/2以内、大企業1/3以内 | 上限1億円/下限30万円 |
投資回収年数が短い案件は補助率が下がります(工場・事業場型の一般枠で7年未満なら1/3以内)。すぐ元が取れる投資ほど、補助は薄くなるという設計です。
1次公募は4月27日、2次公募は7月9日で締め切られています。3次公募の日程は公表されていません。
いま申請できるものを探すなら、別事業の業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ)が11月30日まで公募中です。事務所ビルの改修であればこちらが候補になります。
公募は年度ごとに枠も要件も変わります。設備の更新時期が先なら、公募が開く前に見積りと省エネ量の試算を用意しておくのが実際的です。公募期間はおおむね1か月で、そこから資料を集め始めると間に合いません。
第二章対象になる設備
建設業に業種の制限はありません。補助対象事業者は「国内において事業活動を営んでいる法人及び個人事業主」とされているだけです。本社事務所、倉庫、資材センター、加工場 ── いずれも事業活動に供していれば対象になり得ます。
設備単位型で指定されている設備は15区分あり、建設会社の事業所で使いやすいのは次のあたりです。
- 高効率空調 ── 事務所・加工場の業務用エアコンの更新
- 変圧器 ── 受変電設備の更新
- 産業用モータ
- 冷凍冷蔵設備
- 制御機能付きLED照明器具
ここが最も誤解されるところです。対象設備の名称は制御機能付きLED照明器具であって、LED照明器具ではありません。
蛍光灯や水銀灯から、制御機能のないLED器具に付け替えるだけの工事は対象外です。調光、人感センサー、タイムスケジュールといった制御機能を備えた器具であることが要件になります。
倉庫やヤードの照明を替えるなら、この一点を最初に確認してください。見積りを取り直すことになります。
大企業の場合だけ、省エネ法の事業者クラス分け評価でSクラスまたはAクラスに該当することなどの追加要件があります。中小企業にこの要件はありません。
第三章経審に効くのは設備ではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
建設業法施行規則と告示(平成20年国土交通省告示第85号)が定める経審の審査項目に、省エネ設備・環境設備の導入を評価する項目はありません。
W点(その他の審査項目)の中身は、担い手の育成・確保、営業年数、防災協定、法令遵守、経理の状況、研究開発、建設機械の保有、規格認証の登録状況です。設備投資そのものを見る項目は置かれていません。
建設機械の保有(W7)にも、排出ガス対策型や低炭素型といった環境性能の要件はありません。排出ガス対策型建設機械は、総合評価落札方式など発注者側の評価で使われる概念で、経審の客観点とは別の話です。
では環境で点になるものは何か。認証の取得です。
W点の素点1点はP点の約1.3点にあたります(告示の算式による計算値)。W評点が上限に達している場合は満額寄与しません。
| 取得するもの | W素点 | P点への寄与(目安) |
|---|---|---|
| エコアクション21 | 3点 | 約3.9点 |
| ISO14001 | 5点 | 約6.6点 |
| ISO9001 | 5点 | 約6.6点 |
| ISO9001とISO14001の両方 | 10点(この項目の上限) | 約13.1点 |
この項目は区分方式で評価されるため、ISO14001を持っている会社がエコアクション21を追加で取っても、加点は増えません。
これから環境認証を取るなら、費用と手間からエコアクション21を選ぶ会社が多いところです(エコアクション21の実務ノートで費用と流れをまとめています)。
つまり、省エネ補助金と経審は別々に考えるほうが正確です。補助金は設備投資のコストを下げる手段、経審の環境加点は認証を取るかどうかの話。この二つを「省エネに取り組むと経審にも効く」と一続きに語ると、判断を誤ります。
間接的な影響はあります。光熱費が下がれば利益が改善し、それはY点(経営状況)に効きます。ただしこれは省エネに限った話ではなく、コスト削減一般の効果です。
第四章進め方とつまずきの記録
- 更新したい設備を決める ── 指定設備の区分に当たるかを先に確認する
- 省エネ量を試算する ── 既存設備との比較で、削減量を数字で示せる形にしておく
- 公募の開始を待つ ── 期間は1か月程度。ここから準備を始めると間に合わない
- 交付決定の前に発注しない ── 先に契約・着工すると対象外になります
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| LEDに替えたのに対象外だった | 制御機能付きの器具かを、見積り段階で確認する |
| 交付決定前に発注してしまった | 発注・契約は交付決定の後。工期の逆算はここを起点に |
| 公募を見つけたときには締切間近 | 省エネ量の試算と見積りを、公募が開く前に用意しておく |
| 「経審に効く」と思って設備を入れた | 設備に加点はない。点が要るなら環境認証を検討する |
※公募の枠・補助率・対象設備・日程は年度ごとに見直されます。申請前に必ずSIIの公募要領でご確認ください。
設備の更新計画と、経審で狙う評点は、分けて設計したほうがうまくいきます。どちらの話も、着手前の見通しからお手伝いできます。
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