令和8年度 熊本市の等級格付け ── 総合数値の決まり方と、一つ上の等級への距離
第一章等級は「総合数値」で決まる
熊本市の格付けは、総合数値という一つの数字で決まります。式は単純です。
経審の点数だけでは等級は決まりません。右側の主観的数値は、熊本市の工事を受注して仕上げないと積み上がらない性質のものです。だから「等級を上げたいから工事が要る、工事を取るには等級が要る」という循環になります。
客観的数値は、建設業法にもとづく経営事項審査(経審)の結果から配点されます。全国共通の物差しの部分です。主観的数値は、工事成績など熊本市が独自に見る部分です。
ここが最も誤解されやすい点です。経審の点数だけでは等級は決まりません。経審で何点取っても、主観的数値が積み上がっていなければ届かない等級があります。そして主観的数値の中心である工事成績は、熊本市の工事を受注して、きちんと仕上げないと積み上がりません。等級を上げたいから工事が要る、工事を取るには等級が要る──この循環のどこから手をつけるかが、実務の勘所になります。
県と市は別の制度です。熊本県の入札参加資格を持っていても、熊本市が発注する工事には参加できません。発注者ごとに申請も名簿も等級も別です。両方を狙うなら、両方の受付時期を押さえておく必要があります。
第二章等級ごとの総合数値と、発注標準額
熊本市は7業種に等級を設けています。令和8年度の基準は次のとおりです。
| 業種 | 等級 | 総合数値 | 令和8年度の発注標準額 |
|---|---|---|---|
| 土木一式 | S | 981点以上 | 7,000万円以上 |
| A | 779点以上 981点未満 | 2,500万円以上 7,000万円未満 | |
| B | 600点以上 779点未満 | 1,000万円以上 2,500万円未満 | |
| C | 600点未満 | 1,000万円未満 | |
| 建築一式 | A | 830点以上 | 8,000万円以上 |
| B | 640点以上 830点未満 | 1,000万円以上 8,000万円未満 | |
| C | 640点未満 | 1,000万円未満 | |
| 舗装 | A | 897点以上 | 2,500万円以上 |
| B | 680点以上 897点未満 | 1,000万円以上 2,500万円未満 | |
| C | 680点未満 | 1,000万円未満 | |
| 水道施設 | A | 690点以上 | 2,500万円以上 |
| B | 690点未満 | 2,500万円未満 | |
| 電気 | A | 730点以上 | 1,000万円以上 |
| B | 730点未満 | 1,000万円未満 | |
| 管 | A | 690点以上 | 1,000万円以上 |
| B | 690点未満 | 1,000万円未満 | |
| 造園 造園工事・造園委託 |
A | 720点以上 | 1,000万円以上 |
| B | 720点未満 | 1,000万円未満 |
等級の記号は業種で違います。「S」があるのは土木一式だけで、建築一式と舗装はA・B・Cの三段階、電気・管・造園・水道施設はA・Bの二段階です。なお、資料の「許可」欄にある「特定」は等級の名前ではなく、特定建設業の許可が要るという意味です。
自社の総合数値をこの線の上に置けば、境目まであと何点かが見えます。50点足りないのか5点足りないのかで、打つ手はまるで変わります。数値は令和8年度・土木一式のもので、業種と年度ごとに異なります。判断の前に熊本市の最新の基準でご確認ください。
自社の総合数値をこの線の上に置けば、境目まであと何点かが見えます。50点足りないのか5点足りないのかで、打つ手はまるで変わります。
第三章点数のほかに、人と資本の条件がある
上位の等級には、総合数値とは別に技術者の人数・完成工事高・自己資本金の条件がついています。点数が届いていても、ここを満たさなければ上がれません。
| 業種・等級 | 許可 | 一級技術者 | 完成工事高 | 自己資本金 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| 土木一式 S | 特定 | 4名以上 | 20,000万円以上 | 4,000万円以上 | ― |
| 土木一式 A | ― | 1名以上 | 7,000万円以上 | ― | ― |
| 土木一式 B | ― | ― | 2,500万円以上 | ― | ― |
| 建築一式 A | 特定 | 3名以上 | 24,000万円以上 | 4,000万円以上 | 鉄筋(RC造) |
| 建築一式 B | ― | 1名以上 | 8,000万円以上 | ― | ― |
| 舗装 A | ― | 1名以上 | 8,000万円以上 | 3,000万円以上 | ― |
| 舗装 B | ― | ― | 2,500万円以上 | ― | ― |
| 電気 A | ― | 1名以上 | 5,000万円以上 | 1,000万円以上 | ― |
| 管 A | ― | 1名以上 | 5,000万円以上 | 1,000万円以上 | ― |
| 造園 A | ― | 1名以上 | 3,000万円以上 | 1,000万円以上 | ― |
| 水道施設 A | ― | 1名以上 | 4,000万円以上 | 1,000万円以上 | 配水管技能者(耐震)2名以上 |
| 水道施設 B | ― | ― | ― | ― | 配水管技能者(耐震)1名以上 |
この「完成工事高」を発注標準額と取り違えないでください。土木一式のSに必要な完成工事高は20,000万円以上ですが、Sが入札できる工事は7,000万円以上です。別の数字です。
人の条件は、点数対策より時間がかかります。土木一式のSは一級技術者4名、建築一式のAは3名。水道施設は配水管技能者(耐震)の人数まで見られます。採用と育成は年単位なので、逆算して動いてください。
第四章主観的数値は、どう配点されるか
総合数値のうち、自社で動かせる余地が大きいのが主観的数値です。熊本市の配点は公表されています。
工事成績(過去の平均)── 幅は80点
| 工事成績 | 点数 | 工事成績 | 点数 |
|---|---|---|---|
| 96点以上 | 50点 | 61点以上66点未満 | 0点 |
| 91点以上96点未満 | 45点 | 55点以上61点未満 | −5点 |
| 86点以上91点未満 | 40点 | 50点以上55点未満 | −10点 |
| 81点以上86点未満 | 30点 | 46点以上50点未満 | −15点 |
| 76点以上81点未満 | 20点 | 41点以上46点未満 | −20点 |
| 71点以上76点未満 | 15点 | 36点以上41点未満 | −25点 |
| 66点以上71点未満 | 10点 | 36点未満 | −30点 |
プラス50点からマイナス30点まで、幅は80点。主観的数値のなかで最も大きく動く項目です。66点未満で0点、61点未満からはマイナスに入ります。ひとつの現場の成績が、そのまま等級の境目に効きます。単価契約の案件と随意契約の案件は、この計算から除かれます。
そのほかの加点・減点
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 専門工事の加点(完成工事高による11区分) | 5億円以上 20点 〜 1千万円未満 2点 |
| 優良工事表彰(申請業種と同一業種、過去5か年度) | 20点 |
| 熊本県SDGs登録 | 5点 |
| 1級舗装施工管理技術者の雇用(舗装工事のみ) | 5点 |
| 障がい者の雇用 | 5点 |
| 保護観察者の協力雇用主の登録 | 5点 |
| ボランティア活動 | 5点 |
| 防災協定の締結 | 5点 |
| 熊本市消防団協力事業所の認定 | 5点 |
| 男女共同参画および子育て支援 | 5点 |
| 労働保険の不払・未加入 | 1件につき −2点 |
| 債権差押等 | 1件につき −2点 |
| 債権差押等(供託) | 1件につき −2点 |
| 指名停止(過去1か年度) | 1件につき −5点 |
5点の項目が八つあります。全部そろえれば40点。SDGs登録、障がい者雇用、協力雇用主登録、ボランティア、防災協定、消防団協力事業所、男女共同参画。どれも工事とは直接関係のない取り組みですが、点数としては工事成績の一段階分に相当します。境目まであと数十点という会社は、ここから先に手をつけるほうが早いことがあります。
熊本県とは配点が違います。県では防災協定が20点、ブライト企業認定が20点ですが、市では防災協定は5点です。同じ会社でも、県と市で等級が揃うとは限りません。県の主観点は熊本県・熊本市の入札参加資格申請にまとめています。
第五章一つ上の等級への距離を測る
やることは三つです。順番に意味があります。
一 現在地を数字で確認する
自社の総合数値がいくつで、狙う等級の境目が何点か。この二つを並べるところから始めます。「あと何点」が分かって初めて、打つ手の優先順位がつきます。そして、点数だけでなく一級技術者の人数・完成工事高・自己資本金の条件も同時に見てください。点数が届いても条件で止まることがあります。
二 客観的数値を動かす(経審)
客観的数値は経審の結果から配点されるので、経審の評点(P点)を上げれば動きます。ここは自社の努力で計画的に積める部分です。技術職員の資格取得、完成工事高の業種振り分け、そしてW評価項目の加点メニュー(CCUS、建設機械の保有、防災協定、建退共、えるぼし・くるみん・ユースエール、CPD単位など)。単独では数点でも、積み上げればP点で数十点の差になります。
ただし制約があります。W評価項目の加点の多くは、審査基準日=決算日時点の状態で判定されます。決算が終わってから慌てても、その年の経審には反映されません。1年遅れになります。動くのは決算前です。
三 主観的数値を積む(工事成績と、5点の項目)
主観的数値の中心は工事成績です。熊本市の工事を受注し、良い成績で完成させることでしか積み上がりません。時間のかかる部分ですが、裏を返せば、着実に工事をこなしている会社が正当に報われる仕組みでもあります。
そのうえで、5点の項目八つは、工事の受注を待たずに動かせます。SDGs登録、消防団協力事業所、防災協定、男女共同参画。手続きだけで取れるものから順に潰していくのが、いちばん早い道です。
第六章昇級には速度制限がある
点数と条件がそろえば、その等級に行けるとは限りません。熊本市の基準には、等級の動き方そのものを縛る規定が置かれています。ここを知らないまま計画を立てると、一年ぶんの見込みが狂います。
一 新規は最下位の等級から
熊本市の名簿に初めて載る会社は、基準に「新規業者については、それぞれの業種の最下位ランクとする」と書かれているとおり、その業種のいちばん下の等級から始まります。経審の点がいくら高くても、初年度は等級に反映されません。他の発注者で実績があっても同じです。
二 一年に上がれるのは一つまで
すでに名簿に載っている会社についても、上がり方に上限があります。基準は「前年より総合数値が急上昇して2ランク以上上昇した場合であっても、1ランクの上昇にとどめる」としています。つまりCからAへ一年で飛ぶことはできません。C→B→Aで、最短でも二年かかります。
これは第五章の「あと何点」の測り方に直接効きます。狙うべきは、点数のうえでいちばん高く届く等級ではなく、いま自社がいる等級の一つ上です。そこを確実に取り、翌年また一つ上げる。二年計画で組むほうが、結果として早く着きます。
三 Sには特定建設業許可と一級技術者4名が要る
最上位の等級には、特例が二つ置かれています。総合数値がSの水準に達していても、一般建設業許可の会社はAにとどめられます。Sは特定建設業許可が前提だからです。もう一つ、一級技術者の必要数(4名)を欠く会社も、同じくAにとどまります。
いずれも点数では埋められません。特定建設業許可の取得も、一級技術者の確保も、時間のかかる準備です。Sを見ているなら、点数を積む作業と並行して、この二つを先に片づけておく必要があります。
第七章つまずきやすいところ
| つまずき | 実際 |
|---|---|
| 完成工事高の条件を、入札できる金額だと思っていた | 別の数字です。土木一式のSに必要な完成工事高は20,000万円以上ですが、Sが入札できるのは7,000万円以上の工事です |
| 経審の点数が良いのに等級が上がらない | 主観的数値が積み上がっていないか、技術者数・完成工事高・自己資本金の条件を満たしていない可能性があります。点数と条件は別々に効きます |
| 加点の準備が毎年1年遅れる | W評価項目の多くは決算日時点の状態で判定されます。決算日の3〜6か月前が、実際の準備開始時期です |
| 県の資格があるから市も大丈夫だと思っていた | 別制度です。申請も名簿も等級も別々。配点も違います(防災協定は県20点・市5点) |
| 点が一気に伸びたので、二つ上の等級を見込んでいた | 上がれるのは1年に1等級までです。二つ上は、最短でも二年かかります |
| 「特定」を等級だと思っていた | 等級ではなく、その等級に特定建設業の許可が要るという意味です |
| 工事成績を「悪くなければいい」と考えている | 66点未満で0点、61点未満からマイナスです。1件の成績が最大80点の幅で効きます |
確認決算前に確かめること
- 自社の総合数値はいくつか。狙う等級の境目まであと何点か
- 上位等級を狙うなら、一級技術者の人数・完成工事高・自己資本金の条件を満たしているか
- 今年狙う等級は、いまの等級の「一つ上」になっているか
- 5点の項目八つのうち、まだ取っていないものはどれか
- W評価項目の加点メニューのうち、今期の決算日までに取得できるものはどれか
- 決算変更届は出しているか(未提出だと経審が受けられません)
- 経審の結果通知の有効期限(審査基準日から1年7か月)は切れていないか
- 熊本県と熊本市、狙う発注者それぞれの名簿に載っているか
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。
技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。
不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。
RELATED ── 入札の記事
無料診断 ── 「うちは取れるのか」を、着手前にはっきりさせます
建設業許可の要件を満たせるのか。経営事項審査で狙った評点・等級に届くのか。行政書士村上事務所が御社の状況を伺い、見通しと、足りないものを診断してお伝えします。熊本で創業20年・支援実績100社超。判断の材料をお持ち帰りいただくところまでが無料です。
建設業許可|経営事項審査・評点対策|入札参加資格 / 096-285-3993(平日10:00〜12:00/13:00〜17:00)|お問い合わせ
入札参加資格・公共工事 実務講座 第6講 / 全16講 ── 第二部 等級で決まること
前の講:第5講 熊本県の格付 ── 総合点数と、等級の境目にある数字
次の講:第7講 主観点で動かせるところ ── 工事成績・防災協定・地域貢献
→ 講座の目次(全16講)を見る
