JVの技術者は、自社の持分では数えません ── 専任の判断は共同企業体の全体額
01持分3割だから、と考えてしまう
2億円を超えるJV工事に、ある技術者を配置しました。同じ人の名前が、9,000万円の別の工事の配置技術者にも挙がっていました。
会社としては、こう考えていたようです。JVの出資比率は7対3で、うちは3割。だから自社の請負額は6,000万円ほど。専任が必要な線には届いていないから、この人は他の現場にも置ける──。
この考え方が、そもそも成り立ちません。
02見るのは、自社の持分ではありません
国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルは、共同企業体の型ごとに判断の基準を分けています。
| 型 | 施工の形 | 専任かどうかを判断する金額 |
|---|---|---|
| 甲型(共同施工方式) | 一つの工事を、各社が出資して共同で施工する | 共同企業体が発注者から請け負った工事全体の金額 |
| 乙型(分担施工方式) | 工区や工種を分けて、各社が分担して施工する | 各構成員が分担する工事の金額 |
特定建設工事共同企業体は、通常が甲型です。甲型では、契約そのものが共同企業体として一本で結ばれます。各社に別々の請負金額があるわけではありません。あるのは出資比率だけです。ですから「自社の請負額」という数え方が、そもそも存在しません。
乙型なら分担額で判断できますが、こちらは工区を分けて別々に施工する形です。土木の一般的なJV工事で使われるのは、まず甲型と考えてください。
03その基準額が、令和7年2月に変わりました
現場専任が必要になる請負代金額は、4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)です。令和7年2月1日の政令改正で、4,000万円・8,000万円から引き上げられました。
やっかいなのは、同じ日に、まったく別の金額も動いていることです。
特定建設業許可が必要になる下請代金の額が、4,500万円から5,000万円へ引き上げられました。改正前の特定の額と、改正後の専任の額が、どちらも4,500万円です。片方の記憶が残っていると、もう片方の話をしているときに取り違えます。
| 何の金額か | 令和7年1月まで | 令和7年2月から | |
|---|---|---|---|
| 専任 | 配置技術者が現場専任になる請負代金額 | 4,000万円 (建築一式 8,000万円) |
4,500万円 (建築一式 9,000万円) |
| 許可 | 特定建設業許可が必要になる下請代金額 | 4,500万円 (建築工事業 7,000万円) |
5,000万円 (建築工事業 8,000万円) |
判定は税込の請負額で行います。追加変更契約で線をまたげば、その時点から専任が必要になります。線の近くの工事は、変更の見込みまで含めて配置を決めておいてください。
04だから、こうなります
冒頭の例に戻ります。2億円のJV工事は、甲型であれば全体額で判断しますから、4,500万円の線をはるかに超えています。配置した技術者は、その現場に専任です。出資比率が3割でも、2割でも、変わりません。
したがって、同じ人を9,000万円の別工事の配置技術者にすることはできません。9,000万円のほうも、それ単独で専任が必要な額です。専任の現場を二つ持つことになり、どちらも成り立ちません。
そして、この重複は隠せません。コリンズには配置技術者の氏名・資格者証番号・従事期間が登録されます。専任義務のある工事に同じ人が同時に登録されていれば、発注者の側から見えています。
05兼務の道が閉じたわけではありません
専任は「一人一現場」が原則ですが、例外が用意されています。令和7年2月の改正では、この例外も広がりました。
| 道 | おおまかな要件 |
|---|---|
| 監理技術者補佐を置く | 各現場に監理技術者補佐を専任で配置すれば、監理技術者は2現場まで兼務できます。一級技術検定の第一次検定に合格した技士補などが補佐になれます |
| 遠隔からの管理による兼務 | 各工事が1億円未満(建築一式は2億円未満)、2件まで。1日のうちに巡回でき、災害時の移動がおおむね2時間以内。連絡員の配置、映像と音声を送受信できる機器の設置、人員配置計画書の作成などが条件です |
ここで注意していただきたいのは、2億円のJV工事は、遠隔管理による兼務の金額要件(1億円未満)を超えていることです。使えるとすれば補佐を置く道のほうですが、補佐にも直接的かつ恒常的な雇用関係が求められます。急に用意できるものではありません。
それに、公共工事では発注者が入札条件で兼務の取扱いを定めていることがあります。制度上できることと、その工事で認められることは別です。使う前に、発注者の条件を確認してください。
兼務の三つの道は配置技術者の「現場専任」実務ノートで詳しく扱っています。
06つまずきの記録
| よくある思い込み | 実際は |
|---|---|
| JVの持分が3割だから、自社の請負額は3割で数える | 甲型では各社の請負金額という考え方がありません。見るのは全体額です |
| 専任が必要なのは5,000万円から | 5,000万円は特定建設業許可が必要になる下請代金の額です。専任は4,500万円から |
| 4,500万円は特定許可の基準額 | それは令和7年1月までの額です。同じ日に、専任の額が4,500万円になりました |
| 契約時に線を下回っていれば、最後まで専任は不要 | 追加変更契約で線をまたげば、その時点から専任になります |
| 重複していても、書類を分ければ分からない | コリンズに配置技術者が登録されます。発注者から見えています |
| ひとまず配置して、あとで技術者を差し替える | 配置技術者の変更は原則としてできません。変更するには相応の理由が要ります |
いちばん多いのは二つ目と三つ目です。4,500万円という数字が、改正の前と後で意味を変えた。ここを押さえておけば、たいていの取り違えは防げます。
配置を決める前に確かめること
- その共同企業体は甲型か、乙型か
- 甲型なら、発注者との契約全体の金額はいくらか(税込)
- その額は4,500万円(建築一式は9,000万円)を超えるか
- 配置しようとしている技術者は、他の専任現場に登録されていないか
- 追加変更契約で線をまたぐ見込みはないか
- 兼務の特例を使うなら、発注者がそれを認めているか
07確認先
金額要件は物価の状況を踏まえて改定されます。申請や配置の前に、必ず最新の政令と発注者の条件をご確認ください。
| 熊本県内の建設業許可について | 熊本県 土木部 監理課(建設業担当) |
|---|---|
| 技術者の配置・専任の考え方 | 国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(令和7年2月1日改正) |
| 金額要件の改正 | 建設業法施行令第2条・第27条第1項 |
共同企業体の結成や配置技術者の設計は、工事ごとに発注者の取扱いが異なります。熊本県内の案件については、着手前にご相談ください。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。
技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。
不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。
熊本で建設業許可の取得をお考えの方へ
行政書士村上事務所は、創業20年・支援実績100社超。要件判定から申請・その後の経審・入札まで一貫して支援します。許可の要件を満たせるか、経審で狙った評点・等級に届くかを、着手前に診断してお伝えします。初回相談は無料です。
無料診断 ── 「うちは取れるのか」を、着手前にはっきりさせます
建設業許可の要件を満たせるのか。経営事項審査で狙った評点・等級に届くのか。行政書士村上事務所が御社の状況を伺い、見通しと、足りないものを診断してお伝えします。熊本で創業20年・支援実績100社超。判断の材料をお持ち帰りいただくところまでが無料です。
建設業許可|経営事項審査・評点対策|入札参加資格 / 096-285-3993(平日10:00〜12:00/13:00〜17:00)|お問い合わせ
建設業許可 実務講座 第16講 / 全25講 ── 第三部 申請の実務
前の講:第15講 業種追加・般特新規 ── 二つ以上を同時に出すときの組み方
次の講:第17講 変更届 ── 2週間・30日、期限のちがいを一覧にする
→ 講座の目次(全25講)を見る
