行政書士村上事務所

契約保証と前払金 ── 10分の1と、10分の4

落札してから、お金が動く順番があります。契約のときに保証を出し、着手のときに前払金を受け取る。この二つを知らないと、資金繰りの見通しが立ちません。建設業の資金繰りは、構造的に立替えだからです。

01契約保証 ── 請負代金額の10分の1以上

熊本県の公共工事請負契約約款は、契約保証を請負代金額の10分の1以上と定めています。熊本市も同じ割合です。

ただし、現金で納めるとは限りません。次の五つから選べます。

方法
契約保証金の納付
契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
銀行等・金融機関の保証
公共工事履行保証証券による保証
履行保証保険契約の締結

約款は、公共工事履行保証証券または履行保証保険を選んだ場合、契約保証金の納付は免除されるとしています。実務ではこの二つを使うことがほとんどです。現金を1割寝かせずに済みます。

図 契約保証と前払金契約するとき着手するとき契約保証請負代金額の10分の1以上前払金請負代金額の10分の4以内中間前払金請負代金額の10分の2以内保険・保証で代えられます公共工事履行保証証券/履行保証保険保険や保証で代えた場合、契約保証金の納付は免除されます前払金と中間前払金を合わせても、請負代金額の10分の6が上限です

熊本県公共工事請負契約約款(第4条・第34条)、熊本市の各要領による。

なお熊本市は、予定価格が工事で400万円以下、工事以外の業務委託で200万円以下のものは、契約の保証を免除としています。

02前払金 ── 請負代金額の10分の4以内

熊本県の約款は、前払金を請負代金額の10分の4以内としています。着手前に4割を受け取れるということです。

前提として、保証事業会社との保証契約を結び、その保証証書を発注者に寄託する必要があります。金融機関からの借入ではなく、保証を付けて公金を先に受け取る仕組みです。

03中間前払金 ── さらに10分の2以内

工事が進んだ段階で、もう一段受け取れます。熊本県の約款は請負代金額の10分の2以内としています。

熊本市の中間前金払取扱要綱は、対象となる条件を次のように定めています。

条件
1件の請負代金額が50万円以上で、かつ工期が90日を超えること
前払金がすでに支出されていること
保証事業会社の保証があること
工期の2分の1を経過していること
工程表に基づく作業が実施されていること
進捗額が請負代金額の2分の1以上に相当すること

そして、前払金と中間前払金を合わせて、請負代金額の10分の6を超えることはできません。4割+2割で6割が上限です。

04資金繰りの見通し

民間工事では、完成引渡しまで入金がないことが珍しくありません。材料も外注も、こちらが先に払います。公共工事の前払金は、この立替えの期間を短くする仕組みです。

時点 入るもの 累計
契約 ―(保証を出す) 0割
着手前 前払金 4割以内 4割
工期の半ば 中間前払金 2割以内 6割
完成・検査後 残額 10割

この形が組めるかどうかで、受けられる工事の規模が変わります。「大きい工事は資金が回らないから受けられない」という制約が、公共工事では少し緩みます。

前払金の使いみち(何に充てられるか)については、第13講で扱います。

05手続きの流れ

やること
1 落札・契約。このとき契約保証(履行保証保険等)を用意します
2 保証事業会社に前払金の保証を申し込みます
3 保証証書を発注者に寄託し、前払金を請求します
4 工期の2分の1を過ぎ、進捗が2分の1以上になったら、中間前払金を請求します

保証事業会社の審査には、決算内容が関わります。ここでも、日ごろの財務が効いてきます。

06確認先

内容 確認先
熊本県の契約保証・前払金 熊本県「熊本県公共工事請負契約約款」第4条・第34条
熊本市の契約保証 熊本市「工事請負契約等における契約の保証に関する取扱要領」
熊本市の中間前払金 熊本市「公共工事の代価の中間前金払取扱要綱」

※割合や条件は発注機関ごとに異なり、改正されることもあります。契約の前に、その工事の契約書・約款でご確認ください。

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