読むのは、やはり人です

読むのは、やはり人です ── 電子申請でも書類を整える理由

電子申請の画面で、文字の大きさを直しています。入力する内容は変わりません。ただ、印刷したときに行が途中で折り返さないように、欄からはみ出さないように、少しだけ手を入れている。傍から見れば、意味のない作業に見えると思います。

先日も、経審の申請の前に同じことをしていました。中身はもう固まっている。あとは送るだけ。それなのに、しばらく画面を眺めて、二か所だけ直しました。

送ってしまえば同じです。誰も気づきません。それでも、直してから送ります。

入力すれば出せる。けれど、それだけでは出さない

電子申請は、決められた欄に決められたものを入れれば、それで受け付けられます。字が下手でも、行がずれていても、内容が合っていれば通ります。そこが紙とのいちばんの違いです。

紙のころは、字の丁寧さがそのまま出ました。丁寧に書かれた申請書は、見ればすぐに分かる。電子になって、それがなくなりました。誰が作っても、同じ書体で、同じ大きさで出てきます。

だから差がつかないかというと、そうでもありません。収まりで差がつきます。欄からはみ出した文字、途中で切れた行、二ページにまたがった表。そういうものは、電子でもそのまま出ます。

読むのは、やはり人です

審査をするのは、システムではありません。画面の向こうで、人が見ています。

以前、提出した書類について「見やすい」と言っていただいたことがあります。褒められたかったわけではありません。ただ、読む側の手間を減らせているなら、それでいいと思いました。

逆の立場で考えれば分かります。読みにくい書類が回ってきたら、確認に時間がかかります。時間がかかれば、確かめたいことが増えます。確かめたいことが増えれば、問い合わせが来ます。

見やすい書類は、往復が減る

整えることの値打ちは、印象の話ではありません。手戻りが減るという、実際的な話です。

整える手間と、整えない手間
整えずに出したとき 提出 補正の連絡 直して再提出 結果が出る 整えて出したとき 提出 そのまま審査 結果が出る ここに数日の差が出ます 整えるのにかかるのは、たいてい数十分です。 往復は、たいてい数日かかります。

補正の連絡が来れば、内容を確かめて、直して、送り直します。その間、申請は止まっています。決算変更届や経審のように後ろに日程が続くものだと、この数日が効いてきます。

整えるのにかかるのは、たいてい数十分です。数十分を惜しんで、数日を失うことがある。それなら、先に数十分を使います。

電子になって、かえって残ったもの

電子申請が始まったとき、こういう手仕事はなくなるのだろうと思っていました。実際、なくなったものはあります。県庁まで持っていく時間。控えに受付印をもらう手続き。郵送を待つ日数。

けれど、相手に読んでもらうための工夫は、残りました。むしろ、書体や字の大きさが揃った分だけ、残った部分がはっきり見えるようになった気がします。

前回、電子申請で消えた窓口の話を書きました(窓口が消えたあとに)。手間が消えたのではなく、移っただけではないかと。今回はその続きです。移った先にも、やはり人がいます。

誰も見ていないところの仕事

この作業は、お客さんには見えません。請求書に書く項目もありません。「二か所直しました」と報告することもない。

それでも、送る前にもう一度見ます。読む人がいると分かっているから、というだけの理由です。

制度は電子に寄っていきます。次はまた別の様式が変わるでしょう。そのときも、たぶん同じことをしています。

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行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

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