経審の電子申請(JCIP)実務ノート ── GビズIDは即日、証紙は郵送
構成一 紙とJCIP、どこが変わるか/二 GビズIDは即日で取れる/三 経審の順番/四 令和8年7月の改正とデータの引き継ぎ/五 行政書士への委任/六 熊本県の運用/七 つまずきの記録/確認のチェックリスト
第一章紙とJCIP、どこが変わるか
JCIPは令和5年1月に運用が始まりました。所管は国土交通省不動産・建設経済局建設業課で、大臣許可と全都道府県の知事許可の双方に対応しています。紙との違いを並べます。
| 項目 | 紙 | JCIP |
|---|---|---|
| 提出 | 窓口持参・郵送 | オンライン提出 |
| 添付書類 | 紙の綴り | PDFまたは画像をアップロード 添付は10個以内に収める想定 |
| 一部の証明書 | 取り寄せて添付 | バックヤード連携で省略 登記事項証明書・納税情報・技術検定合格証明書・経営状況分析結果通知書 |
| 手数料 | 証紙・印紙 | 行政庁により異なる 熊本県は証紙を貼って郵送。第六章参照 |
| 不備の直し | 窓口で差し替え | システム上で通知され、送信し直す |
| 翌年以降 | 一から書く | 前年のデータを取り込んで使える |
出典:国土交通省「建設業許可等電子申請システムの概要」、JCIP操作マニュアル2.8版(令和8年2月)。
ここで注意したいのは、「電子申請」といっても紙が完全になくなるわけではない点です。手数料の納め方は行政庁ごとに違い、熊本県のように収入証紙の郵送が残っているところがあります。移動と書類作成は減りますが、封筒を出す作業は残ります。
第二章GビズIDは即日で取れる
ここが以前と最も変わったところです。マイナンバーカードと対応スマートフォンがあれば、GビズIDプライムは最短で即日発行されます。会社の実印と印鑑証明書を用意して郵送し、審査を待つ──という手順は、いまはオンラインを選ばなかった場合の話です。
| オンライン申請 | 書類郵送申請 | |
|---|---|---|
| 必要なもの | マイナンバーカード、対応スマートフォン、GビズIDアプリ 署名用電子証明書暗証番号と券面事項入力補助用暗証番号を使います |
申請書、印鑑証明書(発行日から3か月以内の原本) |
| 期間 | 最短で即日 | 最大1か月 |
| 費用 | 無料 | |
出典:デジタル庁 GビズID公式サイト。個人事業主のオンライン申請にもマイナンバーカードが必要です。
アカウントの種類は三つあり、JCIPで使えるのはプライムとメンバーです。エントリーではログインできません。メンバーはプライムを持つ組織が従業員向けに発行するもので、書類審査は要りません。
第三章経審の順番
JCIPで完結しない部分があります。経営状況分析はJCIPでは申請しません。国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関へ、別に申請します。その結果はJCIPがバックヤード連携で取得する仕組みです。
出典:熊本県「経営事項審査の手引き」(令和8年7月版)に示された流れによる。
この並びで見落とされやすいのが決算変更届です。これが出ていなければ経審に進めません。そして後述しますが、行政書士に委任するとき、決算変更届は経審とは別の委任事項になります。
第四章令和8年7月の改正と、データの引き継ぎ
令和8年7月1日施行の経審の改正に、JCIPも対応しています。削除された項目と追加された項目があります。
- 削除:雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況
- 追加:建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度に関する項目
移行にあたっての注意が三つ示されています。前年のデータを取り込んで使う会社は、ここで手が止まります。
| 取り込むもの | どうなるか |
|---|---|
| 削除された項目のデータ | 破棄されます |
| 追加された項目 | 未入力の状態で引き継がれます。自分で埋めます |
| 確認書類 | 取り込めません。新しいデータ側で改めて添付し直します |
出典:国土交通省「令和8年7月1日施行 経審改正に係るJCIPの対応について」。令和8年6月30日までに送信したデータは、改正前の制度による申請として補正の再送信ができます。
「去年のデータをコピーすれば添付書類も一緒についてくる」わけではありません。確認書類は毎年つけ直す前提で、スキャンしたPDFを自社の側に整理して残しておくと二年目以降が速くなります。
第五章行政書士への委任
委任は二段構えです。GビズIDで委任関係をつくり、そのうえでJCIP上の委任状を作ります。
- 申請者がGビズIDで代理人を指定し、代理人が承認して委任関係が成立する
- 代理人がJCIPで委任状を作成する
- 申請者が委任状を承認する
- 代理人が申請できるようになる
委任者と受任者の双方にGビズIDプライムが必要です。委任事項は「建設業許可に関する一切の件」「経営事項申請に関する一切の件」といった単位で選びます。
使ううえでの制約も押さえておきます。ひとつの申請を本人と代理人で分担することはできません。いっぽう、委任事項の範囲内かつ委任期間内であれば、ひとつの委任状で複数の申請ができます。納税情報を代理人が取得するには、委任者が委任状の承認時に利用者識別番号と暗証番号を入力します。この値が代理人に表示されることはありません。
なお令和8年(2026年)3月27日にGビズIDの委任機能が変わりました。受任者側から委任を依頼できるようになった一方で、書類の郵送による委任申請は廃止されています。
第六章熊本県の運用
ここが実務でいちばん効きます。県ごとに違う部分なので、熊本県の分だけ書きます。
| 項目 | 熊本県の扱い |
|---|---|
| 受付期間(経審) | 令和8年4月から12月までの各月1日から20日まで |
| 令和8年度の対象決算日 | 令和7年10月1日から令和8年9月30日まで |
| 手数料の納め方 | JCIPから出力した「はり付け欄」に熊本県収入証紙を貼り、書留郵便で郵送 |
| 手数料の額 | 総合評定値を請求する場合 8,500円+2,500円×受審業種数 請求しない場合 8,100円+2,300円×受審業種数 |
| 書面申請 | 受付可。申請書は正・副2部、その他は正1部 |
| 様式の紙 | 令和8年度から色紙制度を廃止。白色の紙・片面印刷 |
| 郵送先 | 〒862-8570(住所記載不要)熊本県土木部監理課建設業班 |
出典:熊本県「経営事項審査の手引き」(令和8年7月版)、「令和8年度(2026年度)経営事項審査の実施について」。金額と期間は年度ごとに見直されますので、申請の前に最新版でご確認ください。
電子申請でも証紙の郵送が残ります。Pay-easyによる納付に対応している行政庁もありますが、熊本県は証紙です。JCIPで送信して終わりにすると、納付指示が来たところで止まります。本審査は手数料を納めてから始まりますので、封筒を出すまでが申請だと考えてください。
受付期間にも癖があります。各月1日から20日までという区切りなので、21日に完成した申請は翌月扱いです。決算日から逆算するとき、この20日の壁を勘定に入れておかないと1か月ずれます。
第七章つまずきの記録
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| GビズIDの取得が経審の直前になった | マイナンバーカードがあればオンラインで最短即日。郵送を選ぶと最大1か月かかります |
| エントリーを取ってしまった | JCIPで使えるのはプライムとメンバー。エントリーではログインできません |
| 担当者の退職でログインできない | メンバーアカウントを発行し、認証手段の引き継ぎを決めておく |
| 前年データを取り込んだら添付が消えていた | 確認書類は取り込まれません。改正をまたぐ年は特に、添付し直す前提で組む |
| 経審を委任したのに決算変更届が出ていない | 「経営事項申請に関する一切の件」に決算変更届は含まれません。委任事項を分けて依頼する |
| 送信したのに審査が始まらない | 手数料の納付待ちです。熊本県は証紙を貼って書留郵便 |
| 21日に申請しようとした | 受付は各月1日から20日まで。翌月扱いになります |
用語も一つだけ。JCIPは訂正と補正を使い分けています。訂正は審査開始前に見つかった形式上の不備、補正は審査開始後に見つかった内容の不備です。通知が来たときにどちらの語かを見ると、いまどの段階にいるかが分かります。
確認チェックリスト
- GビズIDプライムを持っているか。マイナンバーカードでオンライン取得できるか
- 実務担当者用のメンバーアカウントを発行しているか
- 直近の決算変更届は提出済みか
- 経営状況分析の申請は済んでいるか(JCIPの外の手続きです)
- 審査基準日は令和7年10月1日から令和8年9月30日の範囲に入っているか
- 申請しようとしている日は、その月の1日から20日の間か
- 熊本県収入証紙を用意し、書留で郵送する段取りができているか
- 確認書類のPDFは自社側に整理して残しているか
- 行政書士に任せるなら、許可・決算変更届・経審の委任事項をそろえたか
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