えるぼし認定|行政書士村上事務所

えるぼし認定 実務ノート ── 5基準と段階の仕組み、建設業の攻めどころ

えるぼし認定は、女性活躍推進法にもとづく厚生労働大臣の認定です。経審のWでは段階に応じて素点2〜4点、プラチナえるぼしで5点(総合評定値Pでおよそ2.6〜6.6点)。点数そのものは大きくありませんが、国と地方の入札で加点対象になり、しかも令和7年度から「認定を持っている会社だけ」に絞られました。この記事では、5基準と段階の仕組み、令和8年に変わったところ、申請の実務をまとめます。

第一章点数と位置づけ

経審のWに「ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況」という項目があります。令和5年1月1日の改正で新設されたもので、三つの認定のいずれかを持っていれば加点されます。

図1 三つの認定と、経審に効く点数ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況(W評価項目・最大5点)プラチナえるぼし素点 5点P点 約6.6点プラチナくるみん素点 5点P点 約6.6点えるぼし 3段階目素点 4点P点 約5.3点ユースエール素点 4点P点 約5.3点えるぼし 2段階目素点 3点P点 約3.9点くるみん/トライくるみん素点 3点P点 約3.9点えるぼし 1段階目素点 2点P点 約2.6点複数の認定を持っていても、加点されるのは最も配点の高いもの一つだけ(審査基準日に認定が有効であることが要件)

P点への寄与は、素点 × 10 × 175 ÷ 200 × 0.15 で計算しています。W点の係数は令和5年8月14日を審査基準日とする申請から175÷200です。素点1点はP点でおよそ1.31点。「1点=約1.4点」としている資料は、旧係数のままの数字です。

認定 根拠法 W素点 P点への寄与(概算) 向く会社
えるぼし(女性活躍) 女性活躍推進法 1段階目 2/2段階目 3/3段階目 4/プラチナ 5 約2.6〜6.6点 女性の技術者・技能者・事務職の採用と定着を打ち出したい
くるみん(子育て支援) 次世代育成支援対策推進法 トライくるみん 3/くるみん 3/プラチナ 5 約3.9〜6.6点 子育て世代の職員がいる、男性の育休を進めたい
ユースエール(若者雇用) 若者雇用促進法 4 約5.3点 常時雇用300人以下で若手の採用が課題(建設業の大半が対象)

複数を取っても、加点されるのは最も配点の高いもの一つだけです。審査基準日の時点で認定が有効であること(取消しや辞退がないこと)が要件になります。

令和8年7月1日の経審改正で、W1から社会保険の未加入減点3項目が削除されました。この項目自体の配点5点は変わっていませんが、W1のなかの並び順が繰り上がっています。社内の記入マニュアルが旧番号のままだと申請時に取り違えます。

くるみんとの違いは対象です。くるみんが「子育て支援」なのに対し、えるぼしは女性の採用・登用そのものを評価します。関連:くるみんユースエール

第二章5基準と段階の仕組み

評価は五つの項目で行われ、満たした数で段階が決まります。

基準 満たすための条件(いずれか)
① 採用 女性の採用競争倍率×0.8が男性の競争倍率を上回る(直近3事業年度の平均)/または正社員に占める女性の割合が産業ごとの平均値以上
② 継続就業 女性の平均継続勤務年数が男性の7割以上(または継続雇用割合が男性の8割以上)/または正社員の女性の平均継続勤務年数が産業平均以上
③ 労働時間等の働き方 雇用管理区分ごとの法定時間外労働+法定休日労働の合計時間の平均が、直近事業年度の各月すべてで45時間未満
④ 管理職比率 管理職に占める女性の割合が産業平均以上/または女性の昇進割合が男性の8割以上(直近3事業年度の平均)
⑤ 多様なキャリアコース 非正社員から正社員への転換、雇用管理区分間の転換、再雇用、おおむね30歳以上の女性の正社員採用のうち、常時雇用300人以下なら1項目以上(301人以上は2項目以上)
段階 要件
1段階目 5基準のうち1〜2項目を満たし、実績を毎年公表。満たさない項目については、行動計画に目標を定めて取り組み、2年以上連続して実績が改善していること
2段階目 5基準のうち3〜4項目を満たし公表。満たさない項目は1段階目と同じ改善要件
3段階目 5基準すべてを満たし、実績を毎年公表
プラチナえるぼし 5基準すべてを満たし、管理職比率は産業平均の1.5倍以上(下限15%・上限40%)。加えて行動計画の目標達成、情報公表項目を8項目以上毎年公表、推進者の選任・公表。認定を受けると一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます

前提として、一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知と、実績の「女性の活躍推進企業データベース」への公表、そして労働関係法令の重大な違反がないことが必要です。公表は毎年少なくとも1回の更新が要ります。

よくある誤解ですが、5基準がすべて産業平均と比べられるわけではありません。産業平均が出てくるのは①②④の一部の選択肢だけで、しかもどれにも産業平均を使わない代替ルート(競争倍率、勤続年数の比、昇進割合の比)があります。③の45時間未満と⑤のキャリアコースは、産業平均とは無関係の絶対基準です。

第三章令和8年、制度が動きました

女性活躍推進法は令和7年6月11日に改正されました。えるぼしを検討するなら、押さえておく変更が四つあります。

変わったこと いつから
法律の有効期限が10年延長(令和8年3月31日まで → 令和18年3月31日まで 公布時
情報公表の義務が常時雇用101人以上に拡大。男女間の賃金の差異と女性管理職比率の公表が必須項目に(101〜300人はこの2項目+1項目以上、301人以上は2項目+2項目以上) 令和8年4月1日
「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」の創設。女性の健康上の特性(月経・更年期など)への配慮に関する基準を上乗せした認定です 令和8年4月1日
プラチナえるぼしに、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置の内容の公表が要件として追加 令和8年10月1日

常時雇用101人以上の会社は、令和8年4月1日から男女間賃金差異と女性管理職比率を公表する義務があります。えるぼしを取るかどうかに関わらず、この数字は外から見えるようになりました。だとすれば、同じデータで認定まで取りにいくほうが合理的です。

「えるぼしプラス」は、休暇制度と半日単位・時間単位の年次有給休暇の設置、健康配慮に関する方針の周知、研修等による理解促進、女性健康配慮担当者の選任と相談体制の整備が要件です。

えるぼしプラスが経審でどう扱われるかは、令和8年8月時点の告示・通知では確認できていません。加点の対象は「えるぼし認定(第1〜3段階)またはプラチナえるぼし認定」と書かれたままです。取得を経審の加点目的で考えるなら、事前に熊本県土木部監理課建設業班にご確認ください。

第四章入札での加点 ── ここが本命かもしれません

経審の2〜5点より、こちらのほうが効く場面があります。

国の工事(九州地方整備局の総合評価落札方式)

ワーク・ライフ・バランス等の推進企業として加点されます。令和7年度の実施方針では、次のようになっています。

  • 令和7年4月公告の工事から、技術提案評価型・施工能力評価型の全工事種別に対象が広がりました。一部の工事だけの話ではなくなっています
  • 令和7年度から、評価の対象が「認定を受けている企業」に限定されました。それまで対象だった「一般事業主行動計画を策定した中小企業」は外れています
  • 配点の目安は、一般土木・建築(A・B等級)で1.0点または0.5点、アスファルト舗装・造園・電気設備・暖冷房衛生設備ほかで0.5点

この二つ目が大きい変更です。行動計画を出しているだけでは加点されなくなりました。認定まで取らないと、総合評価の土俵に乗りません。

国等の調達全般

女性活躍推進法第24条により、国と独立行政法人等が価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行うときは、認定企業を加点評価することとされています。加点の割合は総配点のおおむね5〜12%の範囲で各府省が設定しています。地方公共団体も、国に準じた施策を実施するよう努めることとされています。

熊本県の格付では「男女共同参画の推進」に5点、熊本市の主観的数値では「男女共同参画及び子育て支援の状況」に5点が配点されています。ただしえるぼし認定がそのまま該当するかどうかは、それぞれの要領で確認が要ります。熊本県の令和9・10年度の技術事項等評価項目の申請要領は、令和8年12月ごろに別途公表される予定です。狙うなら、その公表内容を見てからでも間に合います。

第五章建設業ならではの攻めどころ

建設業の女性管理職比率は、課長相当職以上で9.6%(全産業13.1%)、係長相当職以上で10.4%(全産業15.8%)。令和6年度の雇用均等基本調査の数字です。低い水準ですが、えるぼしの比較対象も建設業の平均値なので、あきらめる前に数字を当ててみる価値があります。

  • ①採用と⑤キャリアコースから崩す ── 女性の応募が少ない業界なので、採用実績が1〜2名でも競争倍率の基準を満たすことがあります。⑤は常時雇用300人以下なら1項目でよいので、パートから正社員への転換実績が1件あれば足ります
  • ③労働時間は、どのみちやる宿題 ── 各月すべてで45時間未満という基準は、時間外労働の上限規制と週休2日の対応そのものです。えるぼしのためではなく、必要な改善です
  • ④管理職は職制の整理で乗ることがある ── 現場事務や経理の責任者を職制上明確にすることで、実態が基準に乗る場合があります
  • ②継続就業は「男性との比」で見る道がある ── 産業平均に届かなくても、女性の平均勤続年数が男性の7割以上なら満たせます

参考までに、建設業の女性技術者は平成26年の1.1万人から令和元年11月に2.2万人、女性技能者は8.7万人から11.0万人に増えています(国土交通省)。採用競争はすでに始まっています。

第六章申請の流れ(熊本)

  1. 男女別のデータを棚卸しする ── 採用・勤続年数・時間外労働・管理職の男女別データ。ここで何段階を狙えるかが判定できます
  2. 一般事業主行動計画を策定し、熊本労働局へ届出・公表・周知
  3. 実績を「女性の活躍推進企業データベース」に公表(毎年1回以上の更新が要ります)
  4. 認定申請 → 認定 → 経審の添付書類へ(認定通知書の写し)
窓口 熊本労働局 雇用環境・均等室 096-352-3865
熊本市西区春日2-10-1 熊本地方合同庁舎A棟9階
県内の認定状況 えるぼし認定 29社(プラチナえるぼしは0社)。全業種の合計です

県内で29社。プラチナえるぼしは、熊本県内にまだ1社もありません。取れば県内初になります。

第七章つまずきの記録

つまずき 防ぎ方
データ公表の更新漏れ 実績公表の継続が認定の前提です。年1回の更新を年間カレンダーに入れる
「産業平均」を全産業の数字だと思っていた 比較は建設業の平均です。しかも産業平均を使わない代替ルートが①②④のどれにもあります
5基準すべてが産業平均と比べられると思っていた ③労働時間(各月45時間未満)と⑤キャリアコースは、産業平均とは関係のない絶対基準です
行動計画が女性活躍推進法と次世代法で別物だと知らない くるみんと同時に狙う場合は2本の計画が要ります(一体での届出は可能)。同時に設計するほうが効率的です
行動計画を出せば入札で加点されると思っていた 令和7年度から、九州地方整備局の総合評価は認定企業のみが対象です。行動計画の策定だけでは加点されません
「素点1点はP点で約1.4点」で計算していた 令和5年8月14日からW点の係数は175÷200です。1点は約1.31点。5点でも約6.6点です
101人以上なのに情報公表をしていない 令和8年4月1日から、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務です。認定の前に、まず義務のほうを確認してください
確認先(一次情報)認定の基準と段階、えるぼしプラスの要件は、厚生労働省「えるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」および女性活躍推進法の特集ページでご確認ください。届出と申請は熊本労働局 雇用環境・均等室(096-352-3865)。経審での配点は国土交通省の告示および「経営事項審査の事務取扱いについて」によります。国の工事での加点は、九州地方整備局が年度ごとに公表する総合評価落札方式の実施方針で確認してください(本文の配点は令和7年度版によるものです)。熊本県の格付における「男女共同参画の推進」の要件は、令和9・10年度の技術事項等評価項目申請要領(令和8年12月ごろ公表予定)でご確認ください。自社が今どの段階に届くかは、従業員名簿と勤怠データがあれば30分で判定できます。くるみん・ユースエールとの取り順もあわせて、無料でご相談を承ります。
執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。

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