令和8年熊本地震の特例措置

令和8年熊本地震の特例措置 ── 建設業の許可・経審・届出の期限がどう動いたか

令和8年(2026年)7月28日の地震を受けて、8月7日に特定非常災害の指定が行われ、8月10日付けで国土交通省から建設業法上の特例措置の通知が出ました。建設業の許可と経営事項審査の有効期間、そして変更届の期限が動いています。日付と、誰が対象になるのかを、通知の本文どおりに整理します。

構成一 動いた期限/二 「特定被災地域」はどこか/三 何を根拠に動いたのか/四 延ばされたのは期限であって要件ではない/五 営業所と書類の扱い/六 現場側の取扱い/確認のチェックリスト

第一章動いた期限

先に結論を表にします。いずれも国土交通省不動産・建設経済局建設業課長通知(令和8年8月10日付け国不建第57号)と、同日付けの事務連絡によります。

対象 もとの満了・期限 動いた先
建設業の許可(法第3条第1項) 令和8年7月28日〜令和9年1月26日に有効期間が満了するもの 一律に令和9年1月27日
令和8年7月27日までに更新を受けた場合を除く
経営事項審査(法第27条の23第1項) 令和8年7月28日〜令和9年1月26日に有効期間が満了するもの 一律に令和9年1月27日
監理技術者資格者証(法第27条の18第1項) 令和8年7月28日〜令和9年1月26日に有効期間が満了するもの 一律に令和9年1月27日
令和8年7月27日までに新資格者証の交付を受けた場合を除く
変更等の届出(法第11条・第12条) 届出の期限が令和8年7月28日〜令和8年11月26日に到来するもの 令和8年11月27日までに届け出れば、義務の不履行について行政上・刑事上の責任を問わない

出典:国土交通省「令和8年熊本地震による災害の発生に伴う建設業法上の特例措置等について」(令和8年8月10日付け国不建第57号)、同「令和8年熊本地震による災害の発生に伴う建設業関係事務の取扱いについて」(令和8年8月10日付け事務連絡)。

ここで一つ、性質の違いを押さえてください。上の三つは有効期間そのものが延びました。いっぽう変更届は、期限が延びたのではなく、期限までに出せなかったことの責任を問わないという形です。決算変更届(事業年度終了の届出)は法第11条第2項の届出ですから、この4段目に入ります。どの変更に何日の期限が付いているかは変更届の期限一覧にまとめています。

図 日付の並び令和8年7月〜令和9年1月7/28地震8/7政令・告示8/10通知11/27届出の期日1/27延長後の満了日許可・経審この期間に満了するものは、令和9年1月27日まで変更等の届出この期間に期限が来るものは、11月27日まで※許可・経審・資格者証は主たる営業所(資格者証は住所)が特定被災地域内にある場合の一律延長

変更届の期日(11月27日)のほうが先に来ます。許可の更新まで時間があるからと後回しにすると、こちらを落とします。

第二章「特定被災地域」はどこか

通知は「特定被災地域内に主たる営業所を有する者」を一律延長の対象としています。そして特定被災地域を、令和8年熊本地震に際し災害救助法が適用された市町村の区域と定義しています。県内どこでも自動的に対象、ではありません。

災害救助法は令和8年7月28日に、熊本県内の21市町村(10市10町1村)へ適用されました。

区分 市町村
熊本市/八代市/水俣市/山鹿市/菊池市/宇土市/上天草市/宇城市/天草市/合志市
美里町/大津町/菊陽町/御船町/嘉島町/益城町/甲佐町/氷川町/芦北町/津奈木町
西原村

出典:内閣府政策統括官(防災担当)「令和8年熊本地震に係る災害救助法の適用について」(令和8年7月28日)。適用市町村はその後追加されることがありますので、判断の前に最新の公表資料をご確認ください。

判定に使うのは主たる営業所の所在地です。従たる営業所や現場の場所ではありません。監理技術者資格者証だけは、会社ではなくその人の住所で判定します。

区域の外でも道はあります事務連絡は、特定被災地域内に主たる営業所を持たない会社であっても、延長を必要とする理由を書いた書面で申し出れば、許可行政庁が満了日を令和9年1月27日に延長できるとしています。すでに有効期間が満了している場合も申出の対象です。地震そのものだけでなく、交通の遮断や、事務を処理する行政側が被災したために手続きが取れなかった場合も「被害者」に含まれるとされています。

第三章何を根拠に動いたのか

期限が動いた経路はこうです。

  • 令和8年8月7日 「令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(令和8年政令第260号)が公布・施行
  • 同日 国土交通省告示第1037号
  • 令和8年8月10日 国土交通省不動産・建設経済局建設業課長通知(国不建第57号)と、同課の事務連絡

大もとの法律は特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)です。許可などの有効期間の延長は同法第3条、期限内に履行されなかった義務の免責は同法第4条にあたります。政令で「この災害に、この措置を適用する」と決め、告示で具体的な期日を定め、通知で事務の取扱いを示す、という三段構えです。

あわせて同じ8月7日に、激甚災害の指定(本激)も行われました。こちらは公共土木施設等の災害復旧事業の国庫補助率が上がる話で、手続きの期限とは別の系統です。混同しないでください。

第四章延ばされたのは期限であって、要件ではない

ここが一番の誤解しやすいところです。有効期間が令和9年1月27日まで延びたということは、その日までに更新の申請を出さなければならないということです。平時の更新の考え方は有効期間5年と更新の記事に書きました。手続きが要らなくなったわけではありません。手数料も、通常の許可更新の手数料をそのまま納めます。

要件についても事務連絡は明確です。営業所の社屋を除くその他の要件は、遅くとも延長された満了日の時点で満たしていなければ許可してはならないとされています。経営業務の管理責任者や専任技術者、財産的基礎といった要件が、地震を理由に免除されるわけではありません。

決算変更届を後回しにすると、経審が止まります変更届の免責は11月27日までですが、決算変更届が出ていなければ経営事項審査は受けられません。そして経審が終わらなければ入札参加資格の申請に使えません。熊本県の令和9・10年度定期申請の受付は令和8年12月18日で終わります。11月27日まで待ってから決算変更届を出すと、そこから経審に進んで12月18日に間に合わせるのは、現実にはかなり厳しい日程です。

もう一点。経審の有効期間が延びたことと、県の定期申請が求める審査基準日の範囲とは別の話です。熊本県の令和9・10年度定期申請は、知事許可の会社について「令和7年10月1日から令和8年9月30日までの間に審査基準日が属する経営事項審査」を求めています。今回の特例はこの範囲を動かすものではありません。定期申請の取扱いについて県から別途の案内が出ることも考えられますので、該当しそうな場合は熊本県土木部監理課建設業班へご確認ください。

第五章営業所と書類の扱い

営業所の社屋がなくなった場合

地震による倒壊等で営業所の社屋が存在しなくなった場合でも、その営業所で営業を継続する(再建する)意思があれば、令和9年1月27日までは存続しているものとみなされます。したがって同日までは、社屋がなくなったことを理由に営業所の廃止の届出(法第11条第1項)を出す必要はありません。

あわせて、社屋が一つの都道府県にしか存在しなくなったことをもって、大臣許可から知事許可へ許可換えをする必要もない、とされています。許可の審査においても、同日までであれば社屋がない時点でも条件を付けたうえで許可することができます。

書類がそろわない場合

やむを得ない事情で書類の一部を用意できないときは、不足する書類を一定の期日までに提出する旨の誓約書や、地震で書類の一部が滅失した旨の顛末書などを添えることで、届出を受理する取扱いになっています。許可(更新を含む)の申請についても同様に、不足書類の提出を条件として付したうえで許可することができるとされています。

つまり「書類が焼けた・流された・取りに行けない」で止まる必要はありません。止めずに出す道が用意されています。

第六章現場側の取扱い

通知の「その他」には、現場の運用に関わる二つの記載があります。いずれも監理技術者制度運用マニュアルの解釈を示したものです。

監理技術者等の途中交代

工期途中での交代は、もともと注文者と合意がなされた場合に認められています。今回の通知は、地震により監理技術者等が職務を継続できない場合や、工期および工事内容に大幅な変更が発生した場合も、一般的な交代の条件に含まれると考えられるとしています。合意が要る点は変わりませんので、発注者との協議が出発点です。

3か月の雇用関係

公共工事で元請の専任の主任技術者・監理技術者等となるには、入札の申込があった日以前に3か月以上の雇用関係が必要とされています。今回の通知は、最寄りの建設業者が即時に対応することが被害の発生・拡大の防止の観点から最も合理的で、その会社に要件を満たす技術者がいない場合など、緊急の必要その他やむを得ない事情がある場合はこの限りでないとしています。

発注者側にも通知が出ています熊本県は令和8年7月30日付けで、緊急度の極めて高い工事について随意契約を適切に活用し迅速な発注に努めるよう庁内と市町村に通知しています。根拠は地方自治法施行令第167条の2第1項第5号(緊急の必要により競争入札に付することができないとき)です。7月31日付けでは、被災した工事の一時中止の指示と、前金払をできる限り速やかに行うことについても通知が出ています。受注側としては、契約変更や工期の扱いを発注者と早めに詰めておくことになります。

確認チェックリスト

  • 主たる営業所のある市町村は、災害救助法が適用された21市町村に入っているか
  • 建設業許可の有効期間の満了日は、令和8年7月28日から令和9年1月26日の間に来るか
  • 直近の経審の有効期間の満了日は、同じ期間に来るか
  • 監理技術者資格者証の有効期間が同じ期間に満了する人はいるか(判定は本人の住所)
  • 令和8年11月26日までに期限が来る変更届(決算変更届を含む)はないか
  • その決算変更届は、令和9・10年度の入札参加資格の定期申請(締切12月18日)に間に合う日程か
  • 区域の外にあるが手続きが取れなかった事情があるなら、延長の申出の書面を用意するか
  • 営業所の社屋を失った場合、その営業所での営業を続ける意思があるか
  • 施工中の工事について、一時中止や前金払の扱いを発注者と確認したか
確認先(一次情報)特例措置の通知と事務連絡は熊本県のホームページ(土木部監理課「令和8年熊本地震を受けて発出した入札契約に関する通知等」)に掲載されています。災害救助法の適用市町村は内閣府の公表資料によります。適用市町村や取扱いはその後変わることがありますので、判断の前に必ず最新の公表資料をご確認ください。許可行政庁への申出や、自社がどの取扱いに当たるかの整理については、当事務所でもご相談を承っています。
執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

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