建退共 実務ノート ── 掛金320円が経審の15点になるまで(加入・履行証明の要点)
構成:一 制度の骨格/二 経審での効き目と「履行証明」/三 手続きの実務/四 コストを試算する/五 つまずきの記録/六 経審カレンダーへの組み込み
第一章制度の骨格 ── 業界を渡り歩く職人のための退職金
建退共は、国の制度としての建設業専用の退職金共済です。仕組みは単純で、事業主が共済手帳に1日320円(2025年度時点)の共済証紙を貼る。技能者が会社を移っても手帳は本人についていき、業界での就労日数が通算されて、引退時に退職金として支払われます。雇う側から見れば「自社だけで退職金を抱え込まず、業界全体で持つ」制度です。
国の後押しも手厚く、新規加入の技能者には1人あたり最大2,400円相当の掛金助成があります。また、いまは証紙の貼付に代わる電子申請方式(掛金をオンラインで納付し就労実績を電子報告する方式)への移行が進んでおり、事務負担は以前より軽くなっています。
第二章経審での効き目 ── 「加入」ではなく「履行」が問われる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| W点の素点 | 15点(退職一時金制度・企業年金と並ぶ「退職金系」の加点) |
| P点への効き目 | 約+19.7点(素点×1.3125の換算) |
| 証明方法 | 建退共支部が発行する「加入・履行証明書」を経審で提出 |
核心はこの「加入・履行証明書」です。支部は加入の事実だけでなく、証紙の購入実績・貼付状況などの履行状況を確認して発行します。つまり、契約だけ結んで証紙を買っていない・手帳に貼っていない会社には証明書が出ない(または出にくい)ことがあります。「経審の直前に駆け込み加入したが、履行実績がなく証明が取れない」──これが最も多い失敗です。加入から履行実績づくりまで含めて、決算日から逆算する必要があります。
経審の直前に駆け込みで加入しても、履行の実績がなければ証明書が取れません。加入から実績づくりまでを決算日から逆算してください。掛金は2025年度時点の額で、改定されることがあります。
第三章手続きの実務
- 加入申込 ── 建退共熊本県支部へ。共済契約者証が交付されます
- 手帳の交付 ── 対象技能者ごとに共済手帳を作成(新規加入助成はここで適用)
- 証紙の購入 ── 契約者証を持って金融機関で購入(1日券320円・10日券3,200円)。電子申請方式ならオンライン納付
- 貼付・報告 ── 就労日数に応じて手帳に貼付(電子方式は就労実績を報告)。手帳が満了したら更新
- 加入・履行証明書の取得 ── 経審・決算変更届の時期に支部へ請求
対象は現場で働く技能者です(役員・事務職は対象外)。また、中退共など他の退職金共済との同一人での重複加入はできないため、事務職は中退共・現場は建退共という使い分けが実務の定石です。既に退職一時金制度がある会社でも、制度設計しだいで併存できますので、W点の「退職金系」加点をどう積むかは全体設計で決めます。
第四章コストを試算する
| モデル | 年間掛金(概算) | 備考 |
|---|---|---|
| 技能者5人×年間210日 | 約34万円 | 掛金は全額損金(必要経費) |
| 技能者10人×年間210日 | 約67万円 | 新規加入時は助成で初年度負担が軽くなる |
P点で約+19.7点への投資として見ると、年間数十万円はW点対策の中で最も「読める」出費です(認定取得のようなコンサル費用も、ISOのような審査費用もかからない)。しかも従業員には退職金という実利で還元されるため、採用・定着の材料にもなります。求人票に「建退共加入」と書ける効果は、地方の技能者採用では小さくありません。
第五章つまずきの記録
| つまずき | 防ぎ方 |
|---|---|
| 証紙を買ったが貼っていない(貼付が事務任せで滞留) | 月次で「就労日数=貼付枚数」を確認する係を決める。電子申請方式への切替も有効 |
| 経審直前の駆け込み加入で履行証明が出ない | 決算日の半年以上前に加入し、履行実績を作っておく |
| 手帳の更新漏れ・退職者の手帳の渡し忘れ | 手帳は本人の財産。退職時のチェックリストに含める |
| 「うちは若い子がいないから」と見送る | 加点は従業員構成に関係なく効く。また中途採用者は手帳持参で来ることも多い |
第六章経審カレンダーへの組み込み
経審実務ノートの三点セット(建退共・法定外労災・退職一時金)の筆頭がこの制度です。決算日の6か月前までに加入→証紙購入・貼付の実績づくり→決算変更届の時期に加入・履行証明書を請求、の順で組み込めば、次回の経審から確実に点になります。
- 対象技能者のリストアップ(役員・事務職を除く)
- 中退共等との重複がないかの確認
- 支部への加入申込と契約者証の受領
- 新規加入助成の適用確認
- 証紙購入・貼付(または電子申請方式)の月次ルーティン化
- 決算前の「加入・履行証明書」請求をカレンダー登録
※掛金日額・助成額・証明書の運用は改定されることがあります。最新は建退共(勤労者退職金共済機構)と熊本県支部の案内で確認してください。
自社の従業員構成での掛金試算と、退職一時金・法定外労災を含めた「退職金系W点」の最適な組み合わせは、無料相談で個別にお出しできます。
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。
技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。
不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。
RELATED ── 経審の記事
熊本で経審の受審・評点対策をお考えの方へ
行政書士村上事務所は、創業20年・支援実績100社超。許可の要件を満たせるか、経審で狙った評点・等級に届くかを、着手前に診断してお伝えします。初回相談は無料です。
経営事項審査 実務講座 第15講 / 全25講 ── 第五部 W点(社会性等)── 加点メニューの実務
前の講:第14講 CCUS ── 登録から「点になる運用」まで
次の講:第16講 法定外労災 ── 加点されない事故を防ぐ
→ 講座の目次(全25講)を見る
