村上事務所

経営事項審査で評点アップを狙うならこれ!建退共の活用が中小建設会社を強くする

建退共で経審の評点アップをめざそう

退職金制度が、会社の未来に効く理由

公共工事の受注を目指す建設会社にとって、避けて通れないのが「経営事項審査(経審)」です。経審は、建設業者の経営状態や社会的な信頼度を点数化する仕組みで、公共工事の入札に参加するための“入り口”ともいえます。

点数を少しでも上げたい、でも何から手を付けたら良いかわからない――。こうした声は、特に初めて経審に臨む中小建設会社の経営者から多く寄せられます。

そうした中で「建退共(けんたいきょう)」、正式には「建設業退職金共済制度」は、経審での加点を狙えるうえに、従業員の定着にもつながる非常に重要な制度です。

建退共が注目されづらい理由と、その裏にある“本当の価値”

実際のところ、建退共は「退職金制度」というイメージが先行し、「経審とは関係ない」と思われがちです。しかし、それは大きな誤解です。

建退共への加入や証紙(制度における掛金記録用の券)の貼付実績は、経審の「労働福祉の状況」の加点対象になります。つまり、職人さんたちの未来のために行う制度が、経営の数値評価にもきちんと反映されるのです。

建退共のイメージを“例え話”で理解しよう

建退共の仕組みをイメージしやすくするために、次のようなたとえ話で考えてみてください。

たとえば、会社が職人さんに「お弁当の引換券」を配っているとします。その券を持っている人は、将来、好きなタイミングで栄養たっぷりのお弁当を受け取れます。その券の配布実績がしっかり管理されていれば、会社の信頼度や“やさしさ”として評価される、というわけです。

建退共の「共済証紙」もまさにこの“引換券”のようなもの。労働者が1日働けば、1枚分の証紙をもらい、退職時にそれを元に退職金が支払われます。そして、この証紙の配布状況が、経審の加点対象となるという仕組みです。

建退共の評価根拠と法的な位置づけ

建退共制度の根拠は、建設業退職金共済法(昭和39年法律第155号)に基づいています。この制度は、国の関与のもと、建設業に従事する人々の退職金を安定的に確保することを目的としています。

また、経営事項審査における建退共の加点評価は、国土交通省告示第1004号の評価基準によって定められており、「労働福祉の状況」の一環として正式に採用されています。

建退共をうまく活用する会社には、どんな変化があるか

導入前導入後
経審の点数が思ったより伸びない労働福祉の状況で加点が加わり、総合評点が上昇
従業員が辞めやすく、育てた人材が流出退職金制度の安心感で職人の定着率が上がる
下請としての信頼が弱い社会保険・退職金制度が整い、元請からの評価が向上

このように、建退共は「退職金を払う制度」ではなく、「会社の信頼度を高め、点数にもつながる戦略的な制度」として活用できます。

どんな会社が導入しているのか

実は、建退共に加入している会社の多くが、従業員数10~50人規模の中小企業です。地元密着型の企業でも、しっかり制度を導入して加点につなげています。

また、従業員を雇用していない一人親方でも、任意組合を通じて加入できる仕組みもあり、広く利用されています。

このあと、制度の実際の使い方や証紙の扱い方について、さらに具体的に見ていきます。

建退共とは?実は経営の“守り”にも“攻め”にもなる制度です

「退職金制度」という名前から受ける誤解

建退共という言葉を聞いても、多くの方は「退職金制度のことだろう」と思われます。確かにその通りです。しかし、それだけではありません。この制度は、会社の評価や競争力にまで影響する、非常に戦略的な仕組みでもあります。

退職金というと、社員が辞めたときに支払うもの、つまり「会社のコスト」という印象を持たれがちです。しかし建退共の場合は、制度にきちんと取り組むことで、公共工事の受注に必要な「経営事項審査(経審)」において、加点評価を受けられるようになります。

建退共制度の法的根拠

建退共は、昭和39年に制定された「建設業退職金共済法」(昭和39年法律第155号)に基づいて運営されています。この法律は、建設業という業種の特性上、事業者が頻繁に変わる環境でも、働く人が将来安心して引退できるように退職金を支給する仕組みを整えるために生まれました。

また、建退共に関する経審の加点評価は、国土交通省が定める「経営事項審査に関する評価基準(国土交通省告示第1004号)」に明記されています。したがって、建退共の導入や運用は、法律上の根拠と国の制度に裏付けされた取り組みです。

なぜ建設業に特化しているのか

建設業は、他の業種と比べて労働者の雇用が「現場単位」「期間限定」になりやすく、継続的な雇用が難しいという特徴があります。そのため、一般的な企業のような退職金制度を自前で整備するのが難しいという現状がありました。

そこで国が音頭をとって「会社が変わっても働いた日数が通算される」仕組みとして作られたのが、建退共制度です。つまり、業界全体で職人を守る仕組みとも言えます。

身近なたとえ話でイメージする建退共

建退共のしくみは、スタンプカードに例えると分かりやすくなります。

たとえば、ラーメン屋のポイントカードを思い出してください。お店が変わっても、どこで食べてもスタンプがたまり、10個集まったら「一杯無料」になりますよね。それと同じように、建退共では、会社が変わっても、職人さんの就労日数が積み重ねられ、将来的に退職金として受け取ることができるのです。

そのポイントを「証紙」という形で日ごとに貼り付け、国が管理してくれるというイメージです。

経営目線で見たときの建退共の価値

ここで一度、経営者としての視点に立ち返ってみましょう。建退共に加入し、日々の就労を証紙として記録することで、どのようなメリットがあるのかを整理します。

メリット内容
労働者の定着率向上退職金の安心感があり、職人が辞めにくくなる
経審での加点労働福祉の評価項目で最大20点の加点が可能
元請・官公庁からの信頼制度運用がしっかりしている企業としての信用が高まる
国からの助成掛金の一部を国が負担する仕組みあり

制度を導入するかどうかの判断軸

建退共への加入を迷われている方は、「コスト」として捉えるのではなく、「未来への投資」として考えてみてください。

経審対策というと、決算書の調整や人員の確保など、時間やお金がかかる対策が多い中、建退共は日々の業務の中に取り入れやすく、加点にもつながる“割の良い”制度です。

しかも一度仕組みを整えてしまえば、あとは証紙を購入して就労日数に応じて手帳に貼るだけです。手間も少なく、費用対効果も高い取り組みといえるでしょう。

実際に多くの中小企業が導入している

現在、建退共の加入企業は全国で約25万社を超えています。その多くが、従業員数10人から50人ほどの中小企業です。大企業だけのものではなく、むしろ中小規模の会社だからこそ、建退共の効果を実感しやすいといえます。

この後の章では、具体的な証紙の取り扱いや加入手続きの流れについて、順を追って解説していきます。

建退共が経審に与える効果とは

会社の評価を上げるために「福祉の整備」が問われる時代

公共工事に参入するには、まず「経営事項審査(けいえいじこうしんさ)」を受けることが求められます。これは国や自治体が工事を発注する前に、その会社の経営状態や技術力、社会的信用度を数値で判断するための制度です。

この審査では「経営状況」や「技術力」だけでなく、「労働福祉の状況」と呼ばれる項目も評価対象になっています。ここで、建退共の加入や運用実績が大きく関わってきます。

建退共が評価される理由

建退共への加入は、厚生労働省が認可した法定制度であり、労働者の将来の退職金を守る目的で設けられたものです。事業主が自発的に導入することによって、職人の働き方を守り、労働環境を整備する企業姿勢が見えるようになります。

つまり「建退共に加入している=労働者を大切にしている」という証拠になり、審査上の評価を受けやすくなるという構図です。

実際にどう点数に反映されるのか

経審では以下のように、建退共関連の実績が数値化されます。

評価項目加点内容
共済制度への加入5点
証紙の貼付実績最大15点
合計最大20点

この「労働福祉の状況」の評価は、国土交通省が定める告示(令和元年国土交通省告示第1004号)に基づいて加点基準が明記されています。つまり、曖昧な判断ではなく、法的にも裏付けのある評価項目です。

なぜこの加点が重要なのか

経審の評点は、公共工事の入札参加資格に直結するため、1点の差が落札の可否に影響するケースも少なくありません。特に中小企業の場合、技術職員数や資本金などで不利になりやすいため、加点できる項目を積極的に活用することが重要です。

点数だけじゃない、もう一つの価値

建退共は単に点数を取るためだけの制度ではありません。職人が安心して働ける環境をつくることで、人材の定着率が上がり、結果的に現場の安定や品質の向上につながるという副次的効果もあります。

例えるならば、建退共の加入は「見えない名刺」のようなものです。名刺に記された情報が信用を生み、相手に安心感を与えるように、建退共の取り組みもまた、元請業者や自治体からの信頼を高める効果があります。

まとめると、建退共は次の3点で経審に効きます

項目内容
制度への参加共済契約を締結し、退職金制度を導入することで評価されます
証紙貼付実績働いた日数に応じて証紙を貼り続けることが加点につながります
企業の信用力労働環境を整備する姿勢が、会社全体の信頼性向上に寄与します

点数を積み上げるための「地味だが確実な一手」として、建退共の活用は非常に有効です。次の章では、実際にどのように証紙を購入し、管理するのか。その実務的な流れについて見ていきます。

共済証紙とは何か。その役割と使い方

建退共における「証紙」とは

建退共制度では、職人が働いた日数に応じて事業主が掛金を負担し、退職金として積み立てられる仕組みになっています。この掛金の納付と記録の手段として使われるのが「共済証紙(きょうさいしょうし)」です。

証紙とは、働いた日数を目に見える形で証明するためのシールのようなものです。これを労働者の「退職金共済手帳」に貼ることで、掛金の支払いが記録されます。

証紙の法的根拠と制度上の位置づけ

共済証紙の取扱いは、「建設業退職金共済法」(昭和39年法律第155号)およびその施行規則に基づいて定められています。証紙は掛金の支払いを可視化し、退職金原資として積み立てるための手段であり、記録と証明の二つの役割を担っています。

なぜ証紙が必要なのか

建設業では現場や雇用主が頻繁に変わるため、従来の「1社に長年勤めた人に対する退職金制度」ではカバーできませんでした。建退共では、誰がどこで働いても、「1日=1枚の証紙」という明確なルールで日数を積み上げていきます。

これはちょうど、電車に乗ったときの「切符」のようなもので、どこからどこまで乗ったのかを証明する手段として役立ちます。証紙もまた、「いつ・どこで・何日働いたのか」を記録し、将来の退職金受給の根拠になります。

証紙の使い方を実務の流れで理解する

手続き内容
証紙の購入契約者証を持参し、指定の金融機関で購入します。現在は日額320円(2025年3月時点)です。
証紙の配布元請事業者が下請業者へ、従業員の就労日数に応じて証紙を現物で渡します。
証紙の貼付下請事業者が、各職人の手帳に証紙を貼り付け、印を押して処理します。
記録と報告証紙の受払簿に記載し、就労実績として毎月元請に報告します。

証紙の種類と管理方法

証紙には以下の2種類があります。

対象券種
赤色中小企業者用1日券・10日券
青色大企業者用1日券・10日券

使用後は、必ず「共済証紙受払簿」に記録を残し、貼付日・使用枚数・残数を明確にしておくことが求められます。証紙は、経審時の加点資料にもなるため、帳簿管理は正確さと保管義務が問われます。

証紙と経営事項審査の関係

前章で解説したとおり、建退共の活用は経審の「労働福祉の状況」で加点対象となります。特に証紙の貼付実績は最大15点もの加点が見込まれ、これは1点の差で落札結果が変わる公共工事の世界では決して小さくありません。

そのため、証紙の取扱いは単なる事務作業ではなく、「未来の収益を左右する戦略的な管理業務」といえます。

共済証紙の電子化も進んでいる

最近では、証紙の電子化も進んでおり、紙の証紙の代わりに「退職金ポイント(電子掛金)」を月ごとに申請する方法も導入されています。電子申請では、紙の手帳に証紙を貼る作業が不要となり、業務の効率化につながります。

ただし、紙の証紙制度と電子ポイント制度は併用できないため、自社に合った方式を選択する必要があります。いずれの場合も、しっかりと制度を理解し、正確に運用することが求められます。

建退共を導入することで会社にどんなメリットがあるのか

導入による経営側の3つの実利

建退共制度は「職人さんの退職金制度」として知られていますが、事業主である経営者にとっても大きなメリットがあります。ここではその主な恩恵を、経済的支援・税務上の取り扱い・経審での加点という三つの視点から整理してみます。

1. 国からの助成金が受けられる

建退共に加入し、掛金を支払うと、その一部に対して国からの助成が入ります。これは「建設業退職金共済法施行規則第14条」に基づく制度で、加入初年度や手帳交付時などに初回特例助成が設定されています。

助成の内容対象補足
共済手帳1冊ごとに支給新規加入者一人当たり最大2400円相当
特別助成(初年度)加入時点の事業主加入手帳数に応じて助成

これは実質的に「国からの応援金」であり、企業が従業員の退職金制度を整える取り組みを支援するものです。小規模事業者にとっては特にありがたい制度といえます。

2. 掛金は全額損金または必要経費にできる

事業主が支払う掛金(1日あたり320円。2025年3月現在)は、法人であれば損金、個人事業主であれば必要経費として税務処理できます。これは「法人税法施行令第54条」や「所得税法施行令第96条」に明記されており、税務署も正式に認める処理方法です。

つまり、建退共に支払った分は「経費扱い」となり、法人税や所得税の軽減にもつながります。

3. 経営事項審査で確実に加点される

これまでの章でも解説してきた通り、建退共制度への加入と証紙貼付実績は、経審の「労働福祉の状況」項目で加点対象となります。告示(令和元年国土交通省告示第1004号)に基づき、明確な基準が設けられています。

加点項目加点内容
制度への加入5点
証紙の実績貼付最大15点

中小企業にとって、1点の差が落札可否を分けることもある経審において、この加点は非常に重要です。「お金を払うだけの制度」として見るのではなく、「事業の信頼度を高める道具」として位置づけることが大切です。

建退共は経営の負担ではなく「攻めの道具」

共済制度というと、福利厚生の一環で「従業員のためにやるもの」と考えられがちです。しかし、建退共は会社にとっても次のような利益をもたらします。

分類内容
財務面掛金は経費として処理でき、税負担が軽くなります
資金面国の助成により、実質的な負担が軽減されます
営業面経審の加点につながり、入札資格を高められます

建退共は、職人の将来を支えるだけでなく、会社の現在と未来を支える制度でもあります。適切に使えば、経営面でも力強い味方となります。

建退共への加入手続きは想像よりずっとシンプル

準備と流れを知っていれば、手続きはスムーズに進む

ここまで読んで「建退共を使ってみたい」と思った経営者の方も多いのではないでしょうか。実はこの制度への加入は、面倒な書類や費用負担もなく、非常にシンプルです。流れさえ押さえておけば、初めての方でも問題なくスタートできます。

加入の流れをステップごとに確認

ステップ内容
1最寄りの建退共支部や建設業協会に行き、「共済契約申込書」と「共済手帳申込書」を受け取ります
2会社情報や労働者数などの必要事項を記入し、支部に提出します(手続き自体に費用はかかりません)
3審査・登録後、事業者には「共済契約者証」が、従業員には「退職金共済手帳」が交付されます
4就労日数に応じて証紙を購入し、共済手帳に貼付・消印します

手続きの法的根拠

これらの手続きは、建設業退職金共済法施行規則第4条および第5条に基づき定められており、各都道府県にある建退共支部で申込を行う形となります。申込時に「建設業許可証」の提示が求められることがあります。

実際の加入の様子をイメージで理解する

例えるなら、図書館で利用カードを作るようなものです。身分証明書を出して申込用紙を記入し、カードをもらったら、あとは本を借りて使うだけ。このカードが「共済契約者証」で、本の利用履歴が「証紙貼付」に当たります。

労働者は共済手帳を持って現場で働くごとに証紙が貼られていくため、働いた記録が確実に蓄積されていきます。退職時には、その手帳をもとに退職金の支払いが行われる仕組みです。

一人親方でも利用できる制度

会社として従業員を雇用していない方、いわゆる「一人親方」の方も建退共に加入できます。ただしこの場合は、直接の加入はできず、「任意組合(にんいくみあい)」を通じて制度に参加する形になります。

任意組合の仕組みと加入の流れ

任意組合とは、同業者が集まり作る非営利の団体で、組合員が協力して共済制度を利用することができます。一人親方の方は、地域の建設業協会や商工団体が母体となる任意組合に加入し、そこを通じて手帳を発行してもらうことで制度を利用できます。

このように、規模や雇用形態に関わらず「建退共を使いたい」と考えるすべての現場関係者に門戸が開かれているのが、この制度の特徴です。

まとめとしての実務上のポイント

ポイント確認内容
加入申請書類は無料。最寄りの支部または建設業協会で取得・提出
証紙運用就労日数に応じて購入し、手帳に貼付。管理台帳の整備も忘れずに
一人親方任意組合を通じて加入可。地域の協会へ相談が近道

次章では、実際に証紙をどこで買い、どのように保管し、経審に活用するかという実務の詳細に入っていきます。

共済証紙はどこで買えるのか。購入から管理までの流れ

証紙は制度運用の要。確実に入手し、正しく管理を

共済証紙は、建退共制度の中核をなす存在です。従業員の就労日数に応じて証紙を貼付することで、退職金の原資となる掛金を積み立てていきます。前章で共済手帳の使い方について触れましたが、今回はその「証紙」をどこで手に入れるのか、またどう扱えばよいのかを詳しく解説していきます。

証紙を購入できる金融機関

証紙は全国の指定金融機関の窓口で購入できます。具体的には、以下の金融機関が対象です。

種類該当機関の例
都市銀行みずほ銀行、三井住友銀行など
地方銀行・第二地方銀行肥後銀行、熊本銀行など
信用金庫・信用組合地域の信金、信組(全てが対応しているわけではありません)
その他商工中金、労働金庫

いずれの場合も、窓口で「共済契約者証」を提示することで、証紙の購入が可能です。

証紙の種類と価格(2025年3月現在)

券種金額用途
1日券320円就労1日に対して1枚貼付
10日券3,200円一括処理や大量現場に便利

証紙の購入手続き

購入時の流れは非常にシンプルです。以下の3ステップで完了します。

手順内容
1「共済契約者証」を持って金融機関の窓口へ行きます
2希望の枚数と色(赤=中小企業用、青=大企業用)を伝えて購入します
3「掛金収納書」に銀行の確認印を受け、必ず保管します

オンライン購入と電子掛金制度

近年では、より効率的に制度を活用するために、オンラインでの申込や「電子掛金制度」も導入されています。電子掛金制度では、紙の証紙に代わって「退職金ポイント」を電子的に購入・申請し、毎月まとめて建退共へ報告する形になります。

この制度は「紙の証紙を貼る手間が省ける」「リモート管理ができる」というメリットがありますが、紙との併用はできないため、導入前に制度内容を確認することが重要です。

購入後の管理が経審評価につながる

証紙を購入しただけでは、制度は機能しません。重要なのは、その証紙を適切に管理し、確実に従業員の共済手帳へ貼付し、消印処理を行うことです。特に、以下の2点は経審時に提出資料としても求められる可能性があるため、丁寧に記録しましょう。

帳簿名記載内容
共済証紙受払簿証紙の購入日・購入数・使用数・残数・証紙番号
共済手帳貼付台帳労働者名・貼付日・枚数・現場名

これらの帳簿は「いつ」「誰に」「どのくらい」証紙を使ったかの記録であり、将来的なトラブルを防ぐだけでなく、経審での加点や自治体からの信頼にもつながります。

よくある質問とその答え 建退共にまつわる素朴な疑問を解消

導入を検討する経営者の皆さまから寄せられる代表的な質問

建退共制度について調べていると、制度の有用性に気づく一方で、「実際どうなのか」「本当にうちの会社でも使えるのか」といった疑問が出てくるのは当然です。ここでは、建設会社の経営者の方からよく聞かれる質問に対して、わかりやすくお答えしていきます。

Q1 評点アップが目的で加入しても問題ないのか

はい、まったく問題ありません。むしろ建退共制度は、労働者の福祉を守りながらも、事業者側の経審加点にもつながるよう、国が設計した制度です。

国土交通省の「経営事項審査の評点基準」(令和元年告示第1004号)でも、制度への加入と証紙貼付実績の双方が明確に加点対象とされており、最大20点の評価が期待できます。

例えるならば、「運動会でマラソンに参加したら得点が加算される」ような仕組みです。走る(制度に参加する)だけで、会社に得点が加わるのですから、利用しない理由はありません。

Q2 証紙の管理が複雑そうで続けられるか不安

実際には、それほど難しくありません。証紙の購入、貼付、残数などを記録する「共済証紙受払簿」という台帳を整備しておけば、制度としての要件は十分に満たせます。

また、最近では管理の手間を軽減するために、電子掛金制度(退職金ポイント方式)も普及しつつあります。これを使えば、紙の証紙の貼付作業が不要になり、パソコン上で一括申請が可能になります。

家計簿アプリで家のお金を管理するように、会社の証紙管理も帳簿でシンプルに整理できます。最初のひと手間で、後が格段に楽になります。

Q3 下請け業者でも制度を使えるのか

はい、下請けでも問題なく加入可能です。建退共制度は、元請・下請の区別なく「現場で働く労働者を守る制度」として設計されており、雇用主である限り加入の対象になります。

ただし、実務上は証紙の手配を元請けが一括購入し、下請けに配布する形が多く採用されています。そのため、現場に入る際には、元請け側と証紙交付の取り決めをしっかり行っておくことが大切です。

制度への誤解や不安は、正しい情報でしっかり解消を

建退共制度は、導入すればするほど会社にも従業員にもメリットのある制度です。ただ、制度が複雑に見えて手をつけにくいという声も多く聞かれます。そうした疑問を一つずつ解消していくことで、安心して制度を活用し、経営にプラスの効果をもたらすことができます。

まとめ 今すぐ始められる経審対策は建退共制度の活用

建退共は、会社と職人の双方に利益をもたらす制度

これまでの章で見てきたとおり、建退共制度は単なる退職金制度にとどまりません。会社にとっても、経審評価の加点や社会的信用の向上、そして従業員の定着・育成といった多方面に好影響をもたらす「経営の武器」と言える存在です。

会社が得られる具体的なメリット

メリット具体的な効果
社会的信用の向上国の制度を活用している会社として対外的評価が上がります
経審での加点最大20点の加点対象。公共工事の入札資格に直結します
税務上の優遇掛金は全額損金または必要経費として計上可能です
人材確保と定着職人の安心感が高まり、離職率の低下やモチベーション向上にもつながります

導入のハードルは思ったよりも低い

建退共制度の導入にあたっては、複雑な書類や特別な資格が必要というわけではありません。基本的には、以下の手順を踏むだけで制度の利用が可能になります。

  1. 支部または建設業協会から申込書を入手
  2. 必要事項を記入して提出(費用はかかりません)
  3. 「共済契約者証」と「退職金共済手帳」が発行されます
  4. 従業員の就労日数分の証紙を購入して手帳に貼付・管理

一人親方の場合も、任意組合に加入することで利用が可能です。元請か下請かに関係なく、制度の対象として適用される仕組みになっているため、企業規模や立場を問わず恩恵を受けることができます。

実際に行動に移すことが最も重要

どんなに良い制度も、知っているだけでは意味がありません。活用することで初めて、会社の体質改善や経審の点数アップ、公共工事の受注といった成果につながります。いわば、扉の鍵は既に手元にあるのです。あとは、それを使って開けるだけです。

例えるなら、冷蔵庫の中に良い食材が入っているのに、調理せずに置いておくようなものです。「使う」ことで初めて、会社の未来に栄養が行き渡ります。

専門家の支援も積極的に活用を

建退共の加入から証紙管理、経審資料への反映まで、実務には細かなルールや管理項目が多く含まれます。こうした部分で不安がある場合は、建設業に詳しい行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

とくに初めて経審に臨む中小企業の経営者にとっては、申請手続きにかかる時間や精神的な負担を軽減し、より確実な準備を進める上で心強い存在となります。

公共工事を目指すなら、まずは一歩を

建退共制度は、会社と従業員の双方にとって「得しかない制度」と言っても過言ではありません。公共工事の受注を本気で目指すならば、今すぐの導入検討が有効です。

小さな一歩が、経営を大きく前進させるきっかけとなるでしょう。

NOTE

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