
決算変更届(事業年度終了報告)とは?建設業許可を維持するための必須手続きを解説
1. はじめに
経営事項審査(経審)とは何か?
経営事項審査(経審)は、国や地方自治体が発注する公共工事を請け負うために必要な審査です。業者の財務状況や施工能力を客観的に評価し、入札における格付けの基準となります。公共工事は税金を使うため、発注者は「信頼できる業者」に依頼したいと考えています。そのため、経営事項審査を通じて、一定の基準を満たした企業のみが入札に参加できる仕組みになっています。
決算変更届と経審の関係
決算変更届は、建設業許可を持つ事業者が毎年提出する必要のある書類です。これは、過去1年間の財務状況や施工実績を示すもので、経審の評価にも大きく影響します。
決算変更届の内容 | 経審の評価への影響 |
工事経歴書 | 経営規模(X点)に影響 |
貸借対照表・損益計算書 | 経営状況(Y点)に影響 |
決算変更届を適切に提出しないと、経審の評点が正しく計算されず、入札に参加できないリスクがあります。
公共工事の受注に向けて必要な準備
経審の評価を高め、公共工事の受注競争に勝つためには、以下の準備が重要です。
決算変更届の適正な作成と提出
施工実績や財務データを正確に記載し、期日内に提出することが基本です。
自己資本比率の向上
自己資本比率が高いほど財務の健全性が評価され、経営状況の点数が向上します。
資格取得や技術者の確保
1級施工管理技士などの資格を持つ技術者が多いほど、技術力(Z点)が高まります。
社会保険への加入
雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況が、社会性(W点)の評価に影響します。
工事実績の積み上げ
公共工事の受注実績を増やすことで、より大きな工事案件に入札できるようになります。
経審の評価を上げることで受注競争に勝つ
経審の評価が高いほど、公共工事の入札で有利になります。同じ案件に複数の業者が入札する場合、評点が高い業者が優先されることが多いためです。また、一定の評点を超えていないと入札資格を得られない場合もあります。
まとめ
経営事項審査(経審)は公共工事を受注するために必要な審査制度
決算変更届のデータが経審の評価に影響するため、適正に作成・提出することが重要
財務の健全性、技術力の向上、社会性の強化が経審の評点アップにつながる
経審の評価が高いほど、公共工事の入札で有利になり、受注競争に勝つ可能性が高まる
公共工事の市場で生き残るためには、経営事項審査の仕組みを正しく理解し、適切な準備を行うことが不可欠です。
2. 決算変更届とは?
2.1 決算変更届の概要
建設業許可を持つ事業者は、毎事業年度終了後に「決算変更届」を提出しなければなりません。この書類は、1年間の財務状況や工事実績を報告するもので、監督官庁(都道府県庁など)に提出することが義務付けられています。
この決算変更届は、地域によって「年次報告」や「事業年度終了報告」とも呼ばれることがあります。たとえば、税務申告における決算報告書と混同されることがありますが、建設業においては別の意味を持ち、適切に作成・提出することが求められます。
2.2 決算変更届を提出する理由
決算変更届を提出する最大の目的は、建設業許可の適正な維持と、経営事項審査(経審)における評価の更新です。
建設業許可の維持
建設業許可を取得している事業者は、毎年の決算内容を報告しなければなりません。もし報告を怠ると、監督官庁から「経営状況が不透明な企業」とみなされ、許可の更新時に支障をきたす可能性があります。
経営事項審査(経審)への影響
公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(経審)を受ける必要があります。経審の点数は、財務状況や工事実績などを基に算出されます。そのため、決算変更届に記載する情報が正確でなければ、評価が正しく反映されず、結果として入札に不利な状況となることも考えられます。
2.3 提出期限とスケジュール管理
決算変更届の提出期限は、事業年度終了後「4か月以内」と定められています。例えば、3月末決算の企業は7月末まで、個人事業主で12月末決算の企業は4月末までに提出する必要があります。
決算期 | 提出期限 |
3月末決算 | 7月末まで |
12月末決算(個人事業主) | 4月末まで |
2.4 提出しないとどうなる?(罰則・デメリット)
決算変更届を提出しない、または期限を過ぎてしまうと、以下のような問題が発生する可能性があります。
法的な罰則
建設業法では、決算変更届の未提出に対し、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される場合があります。
業務への影響
未提出時のリスク | 具体的な影響 |
建設業許可の更新不可 | 建設業の許可更新ができず、事業継続が困難に |
経営事項審査(経審)の受審不可 | 公共工事の入札資格が失われる |
取引先からの信用低下 | 決算内容を開示できないため、取引を敬遠される可能性がある |
例えば、ある建設会社が決算変更届を提出しなかった結果、経審の審査を受けられず、公共工事の入札資格を失ったケースがあります。これにより、経営が苦しくなり、取引先との契約更新が難しくなったという事例もあります。
2.5 決算変更届を適切に管理する方法
決算変更届の提出を忘れないようにするためには、次のような管理方法が効果的です。
カレンダーアプリの活用
スマートフォンやパソコンのカレンダーアプリに提出期限を設定し、リマインド通知を設定しておくと忘れるリスクを軽減できます。
事務担当者との連携
決算変更届の提出業務を経理部門や行政書士と連携し、スムーズに進められるような体制を作ることが重要です。
提出直前のチェックリスト
書類の不備がないように、事前にチェックリストを作成し、提出前に必ず確認を行いましょう。
2.6 まとめ
決算変更届は、建設業許可業者が毎年提出しなければならない報告書
提出期限は事業年度終了後4か月以内で、期限を過ぎると罰則の対象になる
決算変更届を提出しないと、経営事項審査(経審)の受審ができず、公共工事の入札資格を失う
業務への影響を避けるため、カレンダー管理や担当者との連携が重要
決算変更届の提出は、単なる義務ではなく、建設業の継続に不可欠な手続きです。適切に管理し、期限内に確実に提出することで、事業の安定運営につなげましょう。
2.2 提出期限と提出先
決算変更届の提出期限
決算変更届は、建設業許可を持つ企業が毎年提出しなければならない重要な書類です。提出期限は、事業年度終了後「4か月以内」と定められています。
提出期限の具体例
決算期 | 提出期限 |
3月末決算(法人) | 7月末まで |
12月末決算(個人事業主) | 4月末まで |
たとえば、3月決算の法人であれば、7月末までに決算変更届を提出する必要があります。この期限を過ぎると、建設業許可の更新に支障が出る可能性があるため、スケジュール管理を徹底することが重要です。
法人と個人事業主の提出期限の違い
法人と個人事業主では決算期が異なるため、提出期限もそれに伴って変わります。
法人の場合
個人事業主の場合
法人は自社の経営方針に合わせて決算期を選べますが、個人事業主は12月末が固定されているため、4月末までの提出が必須となります。法人の場合、決算期が異なれば提出期限も変わるため、自社の決算日を把握しておくことが大切です。
決算変更届の提出先
決算変更届の提出先は、事業者が所在する都道府県庁または政令指定都市の担当部門です。企業がどの自治体の管轄にあるかによって提出先が変わるため、事前に確認しておきましょう。
提出先の種類
事業エリア | 提出先 |
都道府県内の市町村 | 都道府県庁の建設業担当窓口 |
政令指定都市(例:大阪市、横浜市など) | 政令指定都市の担当部署 |
たとえば、東京都に本社がある企業は、東京都庁に決算変更届を提出します。一方、大阪市や名古屋市といった政令指定都市に本社がある場合は、各市の担当部門が窓口となります。事前に自治体の公式サイトを確認し、適切な窓口に提出することが大切です。
決算変更届をスムーズに提出するためのポイント
提出期限を管理する方法
カレンダーアプリでリマインド設定をする
書類作成のスケジュールを事前に組み、余裕を持った準備を行う
行政書士や専門家に相談し、正確な書類を作成する
提出前のチェックリスト
書類に記入漏れがないか確認する
必要な添付書類(財務諸表、工事経歴書など)が揃っているかチェックする
提出方法(窓口持参・郵送・電子申請)が正しいか確認する
まとめ
決算変更届は、事業年度終了後4か月以内に提出が必要
法人は決算期に応じて提出期限が異なり、個人事業主は毎年4月末が期限
提出先は都道府県庁または政令指定都市の担当部門
期限管理を徹底し、書類の準備を事前に進めることが重要
決算変更届の提出は、建設業許可の維持や経営事項審査(経審)に必要不可欠な手続きです。期限を守り、正しく提出することで、スムーズな事業運営を続けていきましょう。
2.3 提出しない場合のリスク
決算変更届を提出しないと、建設業許可の維持や公共工事の受注に大きな支障をきたします。特に、建設業許可の更新ができなくなるだけでなく、経営事項審査(経審)を受けられなくなるなど、業務の継続に直結する問題が発生します。ここでは、提出しないことで生じる具体的なリスクについて詳しく解説します。
建設業許可の更新ができない
許可更新の要件
建設業を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要があります。この許可は5年ごとに更新しなければならず、更新時には直近の決算変更届が提出されていることが求められます。
更新の条件 | 内容 |
直近の決算変更届が提出されている | 過去1年分の財務状況が正しく報告されていること |
財務基準を満たしている | 自己資本額や営業資産が一定以上であること |
提出しない場合の影響
許可の更新ができず、建設業の継続が困難になる
取引先からの信頼を失い、新規受注が難しくなる
許可が失効すると、再取得に時間とコストがかかる
たとえば、許可更新の手続きを忘れた場合、その期間は無許可での営業となり、新規工事を請け負うことができません。また、無許可営業が発覚すると、罰則が適用される可能性もあります。
経営事項審査(経審)を受けられない
経営事項審査とは?
経審とは、公共工事を受注する際に必要な客観的評価制度であり、企業の経営状況や技術力を点数化する仕組みです。経審を受けるためには、直近の決算変更届を提出していることが前提となります。
未提出の影響
経審を受けられず、公共工事の入札に参加できない
自治体や取引先からの信頼を失う
競合他社との競争で不利になる
たとえば、ある建設会社が経審の点数を上げるために事業を拡大しようとした場合、決算変更届を提出していなければ、そもそも審査を受ける資格がありません。その結果、入札機会を逃し、経営に大きな影響を与える可能性があります。
業種追加申請が認められない
業種追加とは?
建設業では、元々取得した許可業種とは別に、新たな工事分野に進出する際には業種追加の申請が必要です。たとえば、建築一式工事の許可を持つ企業が、内装仕上工事の許可を取得したい場合、この手続きを行います。
決算変更届未提出による影響
業種追加の申請が受理されない
事業拡大の機会を逃す
取引先からの要求に対応できず、受注機会を失う
たとえば、元請会社から「今後は内装仕上工事も対応できるようにしてほしい」と言われた場合、決算変更届が未提出であれば、業種追加の申請が認められず、新たな仕事を請け負うことができません。その結果、競合他社に案件を取られてしまう可能性があります。
行政処分や罰則の適用
法律上の罰則
決算変更届を提出しないことは、法律上の義務違反にあたります。これにより、罰則が適用される可能性があります。
違反内容 | 適用される罰則 |
決算変更届の未提出 | 懲役6か月以下または100万円以下の罰金 |
無許可営業(許可失効後の営業) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
実務上のリスク
許可の取り消し処分を受ける可能性がある
罰金が科せられ、経営資金に影響を及ぼす
自治体や元請会社からの信用を失い、契約が打ち切られる
例えば、建設業許可が取り消されると、その後の事業継続が難しくなり、既存の取引先からの信用も失います。また、無許可営業を続けた場合、刑事罰が適用される可能性もあるため、決算変更届は必ず期限内に提出することが求められます。
まとめ
決算変更届を提出しないと、建設業許可の更新ができなくなる
経営事項審査(経審)を受けられず、公共工事の入札に参加できなくなる
業種追加の申請が認められず、事業拡大のチャンスを失う
行政処分や罰則が適用されるリスクがある
建設業許可を維持し、事業を発展させていくためには、決算変更届の提出が不可欠です。提出を怠ることで生じるリスクは大きいため、期限を守り、確実に手続きを進めるようにしましょう。
3. 決算変更届に必要な書類
決算変更届を適切に提出するためには、必要な書類を正しく準備し、提出先の基準に従って提出しなければなりません。特に、財務情報や工事実績を正確に記録し、整合性のあるデータを用意することが重要です。ここでは、常時提出が必要な書類について詳しく説明します。
3.1 常時提出が必要な書類
決算変更届には、以下の書類を提出する必要があります。これらの書類は、事業の健全性を証明するものであり、経営事項審査(経審)や建設業許可の更新にも影響を及ぼします。
書類名 | 内容 |
変更届出書 | 決算変更届の基本書類で、会社情報や変更点を記載する |
工事経歴書 | 過去1年間の工事実績を記載し、受注状況や施工能力を示す |
工事施工金額 | 直近3年間の元請・下請工事の金額を記録し、経審の評点算出に用いる |
財務諸表 | 貸借対照表や損益計算書を含み、企業の財務状況を示す |
納税証明書 | 法人税・所得税・事業税の納付状況を証明し、経営の健全性を確認する |
変更届出書(決算変更届の基本書類)
決算変更届の中心となる書類であり、会社の基本情報や事業年度ごとの変更点を記載します。ここで誤った情報を記載すると、許可更新や経審の評価に影響を与えるため、慎重に作成する必要があります。
工事経歴書(過去1年間の工事実績)
過去1年間に請け負った工事の内容を記録した書類で、経営状況や施工能力を評価する際に重要な資料となります。
記載内容 | 具体例 |
工事件名 | ○○市道路改修工事 |
発注者 | ○○市役所 |
工期 | 2023年4月1日〜2024年3月31日 |
請負金額 | 5,000万円 |
元請・下請 | 元請 |
工事施工金額(直近3年分)
工事の受注状況を示すもので、経審の評点を決定する際に重要な要素です。直近3年間の施工実績をまとめ、元請・下請、公共・民間ごとに区分して記載します。
財務諸表(貸借対照表・損益計算書など)
企業の財務状況を示すために必要な書類であり、建設業法に基づいた適正な会計処理が求められます。
書類名 | 目的 |
貸借対照表 | 企業の資産・負債・純資産の状況を示す |
損益計算書 | 一定期間の収益・費用・利益を記載し、経営の健全性を評価する |
納税証明書(法人税・所得税・事業税)
税金を適切に納付していることを証明するための書類であり、行政手続きの際に信頼性を担保する役割を持ちます。
法人税:会社の利益に対して課される税金
所得税:個人事業主の事業所得に対して課される税金
事業税:一定の所得がある事業者に課される地方税
まとめ
決算変更届には、経営状況や工事実績を示すための複数の書類が必要
工事経歴書や工事施工金額は、経営事項審査(経審)の評価にも直結する
財務諸表や納税証明書は、企業の財務健全性を証明する重要な書類
提出書類の内容が不備なく揃っていないと、許可更新や経審で不利になる
決算変更届をスムーズに提出するためには、日頃から経理業務や工事実績の管理を適切に行うことが重要です。必要な書類を整理し、正確な情報を提出することで、スムーズな許可更新や経営事項審査の評価向上につなげることができます。
3.2 変更があった場合のみ提出が必要な書類
決算変更届には、事業年度ごとに必ず提出しなければならない書類と、特定の変更があった場合のみ追加で提出が必要な書類があります。ここでは、後者の「変更があった場合のみ提出が必要な書類」について詳しく説明します。
どのような場合に追加提出が必要なのか
決算変更届を提出する際、以下のような変更があった場合は、それに対応する書類を添付しなければなりません。これらの変更は、企業の経営状況や許可要件に影響を及ぼすため、適切に報告する必要があります。
変更内容 | 影響 | 必要な書類 |
使用人数の変更(従業員数の増減) | 技術者要件や経審の評価に影響 | 使用人数報告書 |
定款変更(会社の目的変更など) | 事業内容の変更に伴い、建設業許可の適用範囲が変わる | 定款変更届、変更後の定款 |
健康保険加入状況の変更 | 社会保険未加入企業と判断されると行政処分の対象になる | 健康保険・厚生年金加入状況報告書 |
使用人数の変更(従業員数の増減)
会社の従業員数が増減した場合は、「使用人数報告書」を提出する必要があります。特に、技術者や管理職の数は、建設業許可の要件や経審の評点に影響を与えるため、正確に報告しなければなりません。
影響を受ける要素
技術者の人数が不足すると、特定の業種の許可要件を満たせなくなる
経営事項審査(経審)の技術力評価(Z点)が変動する
公共工事の発注者からの信頼に影響を与える
例
例えば、技術者が1名退職し、新たに採用しなかった場合、企業の技術力評価が下がり、公共工事の受注に影響を与える可能性があります。逆に、資格を持つ技術者を増やせば、経審の評価が向上し、入札の際に有利になります。
定款変更(会社の目的変更など)
会社の事業内容を変更する際、定款の変更を行う場合があります。建設業許可を取得している場合、新たな事業が建設業許可の範囲内にあるかどうかが問題になります。
定款変更が必要なケース
新しい工事業種を追加する
現在の事業を廃止し、別の建設業種に転換する
法人形態の変更(合同会社から株式会社への変更など)
定款を変更した場合は、変更届とともに「変更後の定款」を提出する必要があります。適切に手続きを行わないと、新たな業種の追加申請が認められないことがあります。
健康保険加入状況の変更
従業員の社会保険(健康保険・厚生年金)に関する状況が変更された場合、「健康保険・厚生年金加入状況報告書」の提出が求められます。建設業では、社会保険未加入企業に対する行政指導が強化されており、未加入のままだと経審の評点にも影響します。
未加入のリスク
経営事項審査の評点が下がる
公共工事の入札資格が制限される
元請業者からの受注が難しくなる
例として、元請会社が社会保険未加入の下請企業に工事を発注した場合、監督官庁から指導を受けるリスクがあるため、未加入の企業との取引を避ける傾向があります。そのため、社会保険の加入状況は必ず最新のものに更新し、適切に報告する必要があります。
変更があった場合の提出フロー
変更内容 | 必要書類 | 提出先 | 提出期限 |
使用人数の変更 | 使用人数報告書 | 都道府県庁・政令指定都市 | 変更があった日から30日以内 |
定款変更 | 定款変更届、変更後の定款 | 都道府県庁 | 変更が確定した日から30日以内 |
健康保険加入状況の変更 | 健康保険・厚生年金加入状況報告書 | 都道府県庁 | 変更があった日から30日以内 |
まとめ
使用人数の変更は、経審の評価や許可要件に影響を与えるため、適切に報告が必要
定款の変更があった場合、新しい事業が建設業許可に適用されるかを確認する
健康保険未加入の企業は、行政処分の対象となり、経審の評価も下がる
変更があった場合は、30日以内に必要書類を提出することが求められる
企業の経営状況や許可要件に影響を及ぼす重要な変更については、迅速かつ適切に報告し、行政手続きを確実に進めることが求められます。特に、経審の評点や公共工事の受注に関わる要素については、十分な準備を行い、必要な書類を整えて提出しましょう。
3.3 提出書類の作成ポイント
決算変更届を作成する際、適切に書類を準備することは、建設業許可の維持や経営事項審査(経審)の評点向上に大きく関わります。特に、工事経歴書、財務諸表、施工金額の記載においては、正確で一貫性のある情報を提出することが求められます。ここでは、各書類の作成ポイントを詳しく解説します。
工事経歴書の作成ポイント
元請・下請・公共・民間を正確に分類する
工事経歴書とは、事業年度内に行った工事の実績を記載する書類です。これを適切に分類することで、経営事項審査の評点を最大限に活かすことができます。
分類 | 特徴 | 影響 |
元請工事 | 自社が発注者(官公庁や企業)と直接契約 | 元請の実績が多いほど評価が高くなる |
下請工事 | 他社(元請業者)からの受注 | 元請に比べると評価は下がるが、件数が多いと影響を与える |
公共工事 | 国・都道府県・市町村からの直接発注 | 公共工事の実績があると入札資格や評点に有利 |
民間工事 | 企業や個人からの受注 | 公共工事と比べると評価は低いが、安定的な受注の証明になる |
記載内容のポイント
各工事ごとに「工事名」「発注者」「契約金額」「施工期間」「工事の概要」を明確に記載
工事の規模や技術力を適切にアピールできるよう、詳細な説明を加える
経営事項審査で評価される公共工事の割合を最大限に活用する
例
例えば、同じ1億円の売上でも、公共工事の元請であれば評価が高くなる一方、民間工事の下請ばかりでは評価が低くなる可能性があります。そのため、実績を整理し、できるだけ公共工事の比率を高めることが重要です。
財務諸表の作成ポイント
建設業法の勘定科目分類に合わせる
財務諸表(貸借対照表・損益計算書)は、建設業法に基づいた形式で作成する必要があります。税務申告に使う財務諸表とは科目の分類が異なるため注意が必要です。
一般会計の勘定科目 | 建設業会計での分類 |
売上高 | 完成工事高 |
売上原価 | 完成工事原価 |
仕掛品 | 未成工事支出金 |
外注費 | 外注工事費 |
注意点
一般の会計基準と建設業会計基準では勘定科目が異なるため、建設業会計基準に従って作成する
施工中の工事がある場合、「未成工事支出金」を適切に記載する
経営事項審査で評価される自己資本比率を向上させるため、資産や負債の分類を適切に行う
例
例えば、通常の決算では「仕掛品」として計上するものも、建設業の決算では「未成工事支出金」として扱われます。適切に分類しないと、審査時の評価に影響が出るため注意が必要です。
施工金額の記載方法
過去3年分を正確に記載する
経営事項審査では、直近3年間の施工実績が評価の対象になります。そのため、過去3年分の施工金額を正確に記載することが重要です。
対象期間 | 記載内容 |
直近1年目 | 詳細な工事内容と施工金額 |
2年目 | 前年度の実績と比較しながら記載 |
3年目 | 継続的な業績を示せるよう記載 |
記載のポイント
元請・下請・公共・民間の区分を明確にする
経営事項審査の評点に影響するため、できる限り高い実績を正確に反映する
事業の成長性を示せるように、継続的な業績の推移を明確にする
例
例えば、直近3年間の施工金額を適切に記載しないと、企業の成長性を正しく評価してもらえません。特に、公共工事の比率を適切に記載することで、経営事項審査の評点を向上させることが可能です。
まとめ
工事経歴書は元請・下請・公共・民間の分類を明確にし、経審の評価を高める
財務諸表は建設業会計基準に準拠し、適切な勘定科目で作成する
施工金額は直近3年間のデータを正確に記載し、企業の成長性を示す
提出書類を適切に作成することで、経営事項審査の評点向上や建設業許可の維持に直結します。事業の信頼性を高め、公共工事の受注に有利になるよう、正確かつ戦略的に書類を準備しましょう。
4. 経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査(経審)は、建設業許可を受けた企業が公共工事を受注するために必要な審査です。企業の経営状況や技術力を数値化し、入札資格を判定する重要な仕組みとなっています。ここでは、経営事項審査の基本から、審査で評価されるポイントについて詳しく解説します。
4.1 経営事項審査の基本
公共工事の入札に必要な審査
公共工事は、税金を使って行われるため、発注者である国や自治体は、信頼できる建設業者に仕事を依頼する必要があります。そのため、経営事項審査を通じて、企業の財務状況や技術力を数値で評価し、適切な業者を選定する仕組みが整えられています。
審査の仕組み
経営事項審査では、企業の様々な側面を数値化し、総合的に評価します。この評価結果は「総合評定値(P点)」として算出され、入札の際に考慮されます。
審査対象 | 評価内容 |
経営状況(Y点) | 財務の健全性を評価(負債比率、自己資本比率など) |
経営規模(X点) | 企業の規模を示す指標(年間の完成工事高、従業員数など) |
技術力(Z点) | 技術職員数や施工実績を評価 |
社会性(W点) | 雇用環境や法令遵守状況などを評価 |
なぜ経審が必要なのか?
公平な入札制度を維持し、信頼できる企業が公共工事を受注できるようにする
企業の経営状況を可視化し、発注者が適切な判断を行えるようにする
経審の結果が良いほど、入札で有利になる
4.2 経審で評価されるポイント
経営状況分析(Y点)
経営状況分析では、企業の財務の健全性を評価します。具体的には、以下のような指標が考慮されます。
評価指標 | 内容 |
自己資本比率 | 会社の安定性を示す指標(自己資本 ÷ 総資本) |
負債比率 | 借入金の割合を示す指標(負債 ÷ 自己資本) |
営業利益率 | 営業利益の割合(営業利益 ÷ 売上高) |
経営規模(X点)
企業の規模を示す指標で、主に以下の項目が評価されます。
評価指標 | 内容 |
年間完成工事高 | 過去3年間の平均完成工事高(高いほど評価が上がる) |
職員数 | 常勤技術者数が多いほど評価が上がる |
資本金 | 企業の資本金額が大きいほど評価が上がる |
技術力(Z点)
技術力の評価では、技術職員の数や施工実績が重要になります。
評価指標 | 内容 |
技術職員数 | 国家資格を持つ技術者の人数 |
施工実績 | 過去の工事実績(特に公共工事の実績が高く評価される) |
社会性(W点)
社会性の評価では、法令遵守や労働環境が重視されます。
評価指標 | 内容 |
法令遵守 | 建設業法や労働基準法などを遵守しているか |
雇用環境 | 社会保険の加入状況、育児・介護制度の整備など |
まとめ
経営事項審査は、公共工事の入札に必要な審査であり、企業の財務状況や技術力を数値化する
審査では、経営状況(Y点)、経営規模(X点)、技術力(Z点)、社会性(W点)の4つの指標で評価される
企業の財務状況、技術力、施工実績を適切に整え、より高い評点を目指すことが重要
経営事項審査の評点を上げることは、公共工事の受注において大きなメリットになります。経営状況の改善、技術職員の確保、適切な施工実績の整理を行い、企業の信頼性を高めていきましょう。
5. 決算変更届と経営事項審査の関係
決算変更届は、経営事項審査(経審)を受けるために不可欠な書類です。建設業を営む企業が公共工事を受注するためには、経営事項審査を受けなければなりませんが、その前提条件として、決算変更届の提出が求められます。
5.1 決算変更届を提出しないと経営事項審査を受けられない
決算変更届がなぜ必要なのか?
経営事項審査では、企業の財務状況や施工実績を評価しますが、その基礎データとなるのが決算変更届の内容です。これは、事業年度ごとに提出が義務付けられており、提出しなければ審査自体を受けることができません。
決算変更届を提出しない場合の影響
経営事項審査の申請が受理されない
公共工事の入札資格が得られない
建設業許可の更新にも影響を与える可能性がある
例え話
決算変更届は、経営事項審査の「履歴書」と考えると分かりやすいでしょう。例えば、学校の試験を受けるためには、事前に出席記録や成績証明書が必要になります。これがないと試験の申し込みができず、合格するチャンスも失われてしまいます。同じように、決算変更届を提出しなければ、企業の実績を証明できず、経営事項審査を受けることができません。
5.2 決算変更届のデータが経審の評点に直結する
どのように影響するのか?
経営事項審査では、企業の経営状況や技術力、社会的評価などが数値化され、総合的に評価されます。そのため、決算変更届のデータが正しく記載されていないと、評点に大きく影響を及ぼす可能性があります。
決算変更届の項目 | 経営事項審査への影響 |
売上高(完成工事高) | 経営規模(X点)に影響し、大きいほど評価が高くなる |
技術職員数 | 技術力(Z点)に影響し、資格保有者が多いほど評価が高くなる |
財務状況 | 経営状況(Y点)に影響し、自己資本比率が高いほど評価が良くなる |
社会保険加入状況 | 社会性(W点)に影響し、法令遵守の観点で評価が高くなる |
例え話
企業の経営状況は「健康診断」に似ています。健康診断の結果が正確でないと、病気のリスクを見逃してしまうことがあります。同じように、決算変更届のデータが正しくなければ、経営事項審査で適正な評価が受けられず、企業の信用度にも影響を与えます。
5.3 虚偽申告のリスク(監査・行政処分)
虚偽申告のリスク
決算変更届や経営事項審査の申請内容を偽った場合、厳しいペナルティが科される可能性があります。実際に、過去には虚偽の申告が発覚し、行政処分を受けた事例もあります。
虚偽申告が発覚した場合のリスク
経営事項審査の取り消し
公共工事の指名停止措置
最悪の場合、建設業許可の取消処分
刑事罰(懲役6か月以下または100万円以下の罰金)
監査の強化
近年、行政の監査が強化されており、虚偽申告が発覚するリスクは高まっています。特に、財務データや社会保険加入状況などは、税務署や年金機構とも連携してチェックされるため、不正があれば簡単に発覚します。
例え話
会社の決算データを偽ることは、スポーツの試合でドーピングをするようなものです。一時的に成績をよく見せることはできても、いずれ不正が発覚し、厳しい処罰を受けることになります。正確なデータを提出し、健全な経営を続けることが最も重要です。
まとめ
決算変更届を提出しなければ、経営事項審査を受けることができず、公共工事の入札資格も得られない
決算変更届のデータは、経営事項審査の評点に直結するため、正確な記載が必要
虚偽申告を行うと、行政処分や刑事罰のリスクがあるため、正しい情報を提出することが重要
決算変更届と経営事項審査は、建設業者が適正な評価を受け、公共工事に参加するための重要な手続きです。正確な情報を基に適切な申請を行い、企業の信用を高めながら、安定した経営を目指しましょう。
6. 経審の評点を上げるための具体策
経営事項審査(経審)では、企業の財務状況や技術力、社会的責任などが数値化され、公共工事の入札資格が評価されます。この評点を上げることで、より有利な入札競争に参加できるようになります。ここでは、各評価項目ごとに具体的な改善策を解説します。
6.1 経営状況分析(Y点)を向上させる方法
Y点とは?
経営状況分析(Y点)は、企業の財務の健全性を示す指標です。主に自己資本比率や営業利益率などの財務指標が評価され、企業の安定性を測る基準となります。
評価項目 | 内容 | 改善策 |
自己資本比率 | 総資産に占める自己資本の割合 | 負債を減らし、利益を内部留保する |
営業利益率 | 売上に対する利益の割合 | 経費削減と高利益率の工事受注を増やす |
流動比率 | 短期的な資金繰りの安定性 | 短期借入金を抑え、手元資金を確保する |
具体的な対策
負債を減らし、自己資本比率を高める
負債を減らすことで、企業の安定性が向上します。例えば、不要な借入れを減らし、設備投資を計画的に行うことで負債を抑えることが可能です。
適正な利益を確保し、安定した財務体質を作る
工事ごとの利益率を見直し、低利益の案件を減らすことが重要です。たとえば、受注単価を見直したり、経費の削減策を実施することで利益を確保しやすくなります。
6.2 技術力(Z点)を向上させる方法
Z点とは?
技術力(Z点)は、企業が持つ技術的な実力を数値化したものです。特に、資格保有者の数や過去の工事実績が影響を与えます。
評価項目 | 内容 | 改善策 |
技術職員数 | 有資格者(1級施工管理技士など)の人数 | 資格取得を支援し、技術者を増やす |
施工実績 | 過去に完了した工事の内容 | 公共工事の実績を積極的に増やす |
具体的な対策
資格を持つ技術者を増やす
1級施工管理技士などの資格を持つ社員の数が増えれば、Z点の向上につながります。会社が資格取得支援制度を導入することで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
過去の工事実績をしっかり記録する
工事の施工実績が評価されるため、過去の施工データを整理し、確実に記録しておくことが大切です。写真や書類をデータ化し、すぐに提出できる状態にしておくと良いでしょう。
6.3 社会性(W点)を向上させる方法
W点とは?
社会性(W点)は、法令遵守や社会貢献度を示す指標です。特に、社会保険の加入状況や環境対策などが評価されます。
評価項目 | 内容 | 改善策 |
社会保険加入 | 健康保険・厚生年金の加入状況 | 全社員の加入を徹底する |
女性・高齢者の雇用 | ダイバーシティの促進 | 女性や高齢者の雇用を推進する |
ISO認証 | ISO9001(品質管理)やISO14001(環境)取得 | 認証取得に向けた準備を進める |
具体的な対策
社会保険加入を徹底する
社会保険未加入の企業は、W点が大きく減点されるため、全社員の加入を確実に行うことが重要です。
女性や高齢者の雇用を促進する
ダイバーシティの推進は、加点要素になります。例えば、女性技術者の採用や定年後の再雇用制度を導入することで、W点の向上につながります。
ISO認証や環境対策を導入する
ISO9001(品質管理)やISO14001(環境)を取得することで、企業の信頼性を高めながらW点の向上を狙えます。
まとめ
Y点を向上させるには、負債を減らし、利益を適正に確保する
Z点を向上させるには、資格保有者を増やし、施工実績を記録する
W点を向上させるには、社会保険加入を徹底し、雇用促進や環境対策を行う
経営事項審査の評点を向上させることで、公共工事の入札資格を有利にするだけでなく、企業の信用度向上にもつながります。各項目の改善策を継続的に実践し、安定した経営を目指しましょう。
7. 決算変更届の提出を忘れた場合の対応
建設業許可を取得している企業は、毎年「決算変更届」を提出する義務があります。しかし、忙しい業務の中で提出を忘れてしまうこともあります。提出期限を過ぎた場合の影響や、すぐに対応すべき対策について詳しく解説します。
7.1 提出遅れのペナルティ(罰則・許可取り消しリスク)
提出遅れがもたらす影響
決算変更届の提出を怠ると、以下のようなリスクがあります。
リスク | 具体的な影響 |
建設業許可の更新不可 | 許可の更新時に決算変更届の提出が確認されるため、未提出だと更新できない |
経営事項審査(経審)の受審不可 | 経審を受けるためには、最新の決算変更届の提出が必須 |
業種追加申請の制限 | 未提出の状態では、新たな業種の追加申請ができない |
行政処分や罰則 | 状況によっては、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金(建設業法第50条) |
許可取り消しのリスク
決算変更届を長期間提出しないと、建設業許可の維持が困難になります。許可の取消処分を受けると、一定期間新たな許可を取得できない場合があるため、注意が必要です。
7.2 期限後でも早急に提出する方法
速やかに対応すべき手順
提出期限を過ぎてしまった場合、できるだけ早く提出することが重要です。以下の手順で対応しましょう。
対応手順 | 具体的な内容 |
決算変更届の必要書類を準備 | 財務諸表、工事経歴書、直近3年の施工金額などをすぐに用意 |
所管の行政機関へ連絡 | 提出遅延の事情を説明し、今後の対応を確認 |
書類を整え、速やかに提出 | 窓口に直接提出するか、郵送で速達扱いにする |
経営事項審査(経審)の予定を再調整 | 遅延により経審を受けられない場合、受審スケジュールを見直す |
早めの対応が重要
提出遅れが長引くほどリスクが高まり、許可更新ができない事態を招きます。できるだけ速やかに書類を揃え、提出手続きを完了させましょう。
7.3 行政書士に相談するメリット
専門家のサポートでスムーズに対応
決算変更届の提出遅れに対する対応は、行政書士に相談することでスムーズに進めることができます。以下のようなメリットがあります。
メリット | 具体的な内容 |
書類作成の負担軽減 | 行政書士が書類作成を代行し、ミスを防ぐ |
スピーディーな提出が可能 | 専門家が対応することで、手続きを迅速化 |
最新の法改正情報を把握 | 法令の変更にも対応した適切な書類作成ができる |
経営事項審査(経審)の準備も一括対応 | 決算変更届の提出とあわせて、経審の準備も進められる |
行政書士を活用するタイミング
以下のような場合は、早めに行政書士へ相談するのが得策です。
提出期限が過ぎてしまったが、どう対応すればよいかわからない
行政書士がスムーズに対応策を提案し、迅速な提出をサポートします。
複数年分の決算変更届をまとめて提出する必要がある
過去の未提出分を一括で処理する際も、行政書士に依頼すると確実に対応できます。
今後、経営事項審査(経審)を受ける予定がある
決算変更届と経審の手続きが密接に関係しているため、並行して進めることでスムーズな入札準備が可能になります。
まとめ
決算変更届の提出を怠ると、建設業許可の更新不可や行政処分のリスクがある
提出遅れが発覚した場合は、すぐに必要書類を準備し、所管機関へ提出する
行政書士に相談することで、スムーズな書類作成とリスク回避が可能
決算変更届の提出は、建設業許可の維持と公共工事への参加に不可欠な手続きです。提出を忘れてしまった場合は、早急に対応し、行政書士などの専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えましょう。
8. 決算変更届をスムーズに提出するためのポイント
決算変更届は建設業許可業者にとって毎年必ず行わなければならない重要な手続きです。提出をスムーズに進めるためには、事前の準備が不可欠です。ここでは、効率的に準備を進める方法や電子申請の活用について詳しく解説します。
8.1 効率的に準備する方法
決算確定後すぐに書類を整理する
決算変更届の準備は、決算が確定したタイミングですぐに始めるのが理想です。以下の点に注意して準備を進めましょう。
準備項目 | ポイント |
決算書の整理 | 財務諸表、工事経歴書、直近3年の施工金額を取りまとめる |
社内での役割分担 | 経理担当者や総務担当者と協力して情報を集める |
書類の最新版を確認 | 法改正や様式変更がないか確認し、最新のフォーマットを使用 |
経理担当者や専門家と連携し、スケジュールを管理する
決算変更届の提出は、計画的に進めることが大切です。特に中小企業では経営者が多くの業務を兼務しているため、専門家の協力を得ることも有効です。
社内での管理
・経理担当者に書類作成を依頼し、進捗を定期的にチェック
・建設業許可の更新時期と合わせてスケジュールを組む
専門家(行政書士や税理士)に相談
・決算書の作成や法改正の確認を依頼
・過去にミスがあった場合、改善策をアドバイスしてもらう
チェックリストを作成し、書類の不備を防ぐ
提出直前になって書類の不備が見つかると、提出が遅れる原因になります。そこで、事前にチェックリストを活用してミスを防ぐことが有効です。
チェック項目 | 確認する内容 |
決算書の作成 | 正確な財務データが反映されているか |
工事経歴書 | 元請・下請・公共・民間の区分が明確になっているか |
納税証明書 | 法人税や事業税の納付証明が取得できているか |
8.2 電子申請の活用
一部自治体では電子申請が可能
従来、決算変更届の提出は役所の窓口で行う必要がありました。しかし、近年では一部の自治体でオンライン申請が可能になっています。電子申請を活用することで、効率的に手続きを進めることができます。
GビズIDを取得し、オンラインで申請
電子申請を利用するためには、GビズIDの取得が必要です。これは、政府が提供する法人向けのオンライン認証システムで、様々な行政手続きをインターネット上で行うことができるようになります。
GビズID取得の手順
1. GビズIDの公式サイトにアクセスし、アカウントを作成
2. 会社情報や担当者情報を入力
3. 本人確認書類を提出し、審査を受ける
4. 承認後、オンライン申請が可能に
オンライン申請のメリット
電子申請を活用することで、以下のようなメリットがあります。
メリット | 具体的な内容 |
役所に行かずに手続きが完了 | 移動時間や待ち時間を削減できる |
書類不備の早期発見 | オンラインで即時確認でき、修正が容易 |
電子データで管理可能 | 過去の提出履歴をデータ化し、次回の申請時に活用 |
まとめ
決算変更届の準備は、決算確定後すぐに進めるのが理想
経理担当者や専門家と連携し、スケジュールを管理する
チェックリストを活用し、書類の不備を防ぐ
電子申請を活用すると、手続きの効率化が可能
決算変更届の提出は、計画的に進めることで手間を削減し、スムーズに完了させることができます。電子申請の活用も視野に入れ、今後の業務効率化を進めていきましょう。
9. 行政書士に依頼するメリットと活用法
決算変更届や経営事項審査の手続きは、専門的な知識と正確な書類作成が求められます。自社で対応することも可能ですが、手間や時間がかかるため、行政書士に依頼することを検討するのも有効です。ここでは、行政書士に依頼することで何が変わるのか、費用相場、依頼時の注意点について詳しく解説します。
9.1 行政書士に依頼すると何が変わる?
行政書士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
メリット | 具体的な内容 |
手間の削減 | 書類の作成や提出の準備をすべて任せることができるため、事業運営に集中できる |
ミスの防止 | 経験豊富な専門家が書類を作成するため、記載ミスや不備による再提出を防げる |
法改正への対応 | 最新の法改正や提出要件を把握しているため、適切な手続きが可能 |
評点アップのアドバイス | 経営事項審査で高得点を獲得するための戦略的なアドバイスが受けられる |
許可更新や業種追加の対応 | 決算変更届だけでなく、建設業許可の更新や業種追加のサポートも可能 |
9.2 依頼する際の注意点
依頼時の注意点
実績のある行政書士を選ぶ
建設業関連の手続きは専門性が高いため、実績豊富な行政書士に依頼することが重要
費用とサービス内容を確認
安価な事務所を選ぶ際は、どこまでのサポートが含まれているかを事前に確認
必要な情報を整理しておく
事業内容、財務状況、過去の工事実績などを整理しておくとスムーズに手続きが進む
9.3 書類作成・申請代行・アフターフォローの違い
行政書士に依頼できる業務は、大きく3つに分かれます。それぞれの特徴を理解し、自社に合ったサポートを選びましょう。
業務内容 | 具体的なサポート内容 |
書類作成 | 決算変更届や経営事項審査の書類を作成し、企業が自ら提出 |
申請代行 | 書類作成だけでなく、役所への提出手続きも代行 |
アフターフォロー | 提出後の修正対応、経営事項審査の評点アップ支援、次回の申請準備 |
まとめ
行政書士に依頼すると、手間を省きミスを防げる
費用相場を確認し、予算に合ったサポートを選ぶ
書類作成・申請代行・アフターフォローの違いを理解する
実績豊富な専門家を選ぶことで、より確実な手続きを実現
決算変更届や経営事項審査は、正確な書類作成と適切な手続きが求められます。行政書士の力を借りることで、事業の成長と安定した経営をサポートできます。自社の状況に応じたサポートを検討し、スムーズな手続きを進めましょう。
10. まとめ
建設業を営む企業にとって、決算変更届の提出と経営事項審査の手続きは、安定した事業運営と公共工事の受注に直結する重要な要素です。本記事では、それぞれの手続きの概要や提出のポイント、評点を上げるための具体策、さらには行政書士の活用方法について詳しく解説しました。
10.1 決算変更届の重要性と期限厳守の必要性
決算変更届は毎年提出が義務付けられている
建設業許可を持つ事業者は、毎年の決算終了後、決算変更届を提出することが法律で義務付けられています。これを怠ると、建設業許可の更新ができなくなるリスクがあり、事業の継続に影響を及ぼします。
期限を守らないと経営事項審査が受けられない
決算変更届の提出がなければ、経営事項審査(経審)を受けることができません。経審を受けないと、公共工事の入札に参加できず、収益の安定性にも影響が出ます。
提出が遅れた場合のリスク
提出期限を過ぎると、許可の更新手続きに支障が出るだけでなく、場合によっては行政処分の対象になることもあります。期限後でも速やかに提出することが重要です。
10.2 経営事項審査(経審)で評点を上げるための戦略
評点を上げるには、財務・技術・社会性の強化が必要
経営事項審査では、企業の経営状況や技術力、社会性が数値化されます。特に以下のポイントを強化することで、より高い評点を獲得できます。
評価項目 | 評点向上のポイント |
経営状況(Y点) | 自己資本比率を高め、安定した財務体質を築く |
技術力(Z点) | 資格を持つ技術者を増やし、施工実績を蓄積する |
社会性(W点) | 社会保険加入を徹底し、女性や高齢者の雇用促進を図る |
経営状況を改善し、安定した利益を確保する
自己資本比率を高め、負債を減らすことで経営の健全性を示せます。特に銀行融資を受ける際にも有利になるため、長期的な視点で財務を改善することが重要です。
技術者の資格取得を支援し、施工実績を記録する
1級施工管理技士などの資格を持つ技術者を増やすことで、技術点を向上させることができます。また、過去の施工実績をしっかりと記録し、経審時に適切に申告することが必要です。
社会保険の適用を徹底し、企業の信頼性を向上させる
社会保険(厚生年金・健康保険)への加入は、経審の加点要素として重要視されています。適用漏れがないか確認し、必要な対応を行いましょう。
10.3 電子申請や行政書士の活用で手続きをスムーズに
電子申請の導入で、役所に行かずに手続きが完了
一部の自治体では、決算変更届の電子申請が可能になっています。GビズIDを取得し、オンラインで手続きを行うことで、提出の手間を大幅に削減できます。
行政書士に依頼すると手続きの負担を軽減
書類の不備による再提出を防ぐため、経験豊富な行政書士に依頼するのも一つの方法です。費用はかかりますが、スムーズな手続きを進めるためのサポートが受けられます。
書類のチェックリストを作成し、ミスを防ぐ
事前に必要な書類をリストアップし、不備がないか確認することで、スムーズな提出が可能になります。
10.4 まとめ
ポイント | 内容 |
決算変更届の重要性 | 毎年必ず提出し、期限を守らないと許可更新や経審が受けられない |
経審の評点向上 | 財務・技術・社会性を強化し、評点を高める |
電子申請の活用 | GビズIDを取得し、オンラインで手続きを進める |
行政書士の活用 | 書類作成や手続き代行を依頼し、スムーズな対応を図る |
決算変更届や経営事項審査は、建設業を営む企業にとって避けて通れない手続きです。これらを適切に対応し、評点を向上させることで、公共工事の受注機会を広げ、安定した経営基盤を築くことができます。正しい知識を持ち、確実に手続きを進めることが、事業の発展につながる鍵となります。