建設業許可 実務ノート(総論)

建設業許可 実務ノート(総論) ── 要否判定から取得・維持・公共工事まで

建設業許可の解説は世に溢れていますが、実務で迷う点は決まっています。「そもそもうちに要るのか」「どの区分・業種で取るか」「要件をどう証明するか」「取った後に何が続くか」。この記事は、熊本の建設業者向けにその全体像を一枚にした総論ノートです。各論(経管・専技・費用・業種など)は個別の実務ノートに深掘りし、ここから辿れるようにしています。

構成:一 許可が要るとき・要らないとき/二 5要件の全体像/三 区分の選び方(知事・大臣/一般・特定/業種)/四 申請の実務/五 取得後の維持/六 許可の先にあるもの/決算前チェック

第一章許可が要るとき・要らないとき

  • 1件の請負代金が500万円以上(建築一式は1,500万円以上または木造住宅で延べ150㎡以上)の工事を請け負うには許可が必要です(軽微な工事の線引き)
  • 分割しても合算 ── 一つの工事を契約書だけ分けても、正当な理由のない分割は合算で判定されます。「500万円未満に割ればいい」は通用しません
  • 金額は税込・材料支給があればその市価も含めて判定します。ぎりぎりの見積りは危険水域です
  • 無許可での受注は建設業法違反。近年は元請のコンプライアンス審査で、下請に入る条件として許可を求められる場面が金額に関係なく増えています
図 許可の要否は、どこで分かれるか許可が要るか ── 「軽微な工事」の線請け負う1件の工事の金額税込・材料支給があればその市価も含めて判定建築一式工事1,500万円以上または木造住宅で延べ150㎡以上それ以外の27業種500万円以上業種ごとに判定するいずれも未満軽微な工事許可がなくても請け負える建設業許可が必要契約書を分けても、正当な理由のない分割は合算で判定される金額に関わらず、元請の取引条件として許可を求められる場面も増えている

この線引きは建設業法施行令第1条の2の「軽微な建設工事」です。特定建設業が必要になる下請代金の額とは別の基準なので、混同しないでください。

第二章5要件の全体像

要件 一言でいうと 実務の難所 詳細
経営業務の管理責任者 経営経験5年の常勤役員等 経験の証明資料集めが最大の山 経管の実務ノート
営業所技術者等(旧・専任技術者) 営業所ごとの資格者・経験者 実務経験10年ルートの資料量/常勤性 専技の実務ノート
財産的基礎 自己資本500万円か残高証明 証明のタイミング設計 500万円要件の実務ノート
誠実性 不正・不誠実のおそれがない 通常は問題にならない
欠格要件 役員等の前科・処分歴等 申告漏れ=虚偽申請で5年アウト。全役員への事前確認必須 不許可7パターン

加えて、社会保険(健保・厚年・雇用)の加入は許可の要件です。未加入なら申請前に整備します。

第三章区分の選び方

知事許可か、大臣許可か

営業所が熊本県内だけなら知事許可、複数の都道府県に営業所を置くなら大臣許可。工事を県外でやるだけなら知事許可のままで全国どこでも施工できます(よくある誤解です)。

一般か、特定か

元請として下請に出す総額が大きい場合に特定建設業許可が必要になります(令和7年2月1日以降、下請代金の総額が5,000万円以上、建築工事業は8,000万円以上。財産要件も資本金2,000万円・自己資本4,000万円等と格段に重くなります)。下請専門・自社施工中心なら一般で足ります。特定への切替は成長戦略そのものなので、許可LPで個別にご相談ください。

業種はどう選ぶか

29業種から、実際に請ける工事と専技の資格・経験が対応する業種を選びます。「一式があれば何でもできる」は誤解で、選び間違いは経審・入札まで響きます。詳しくは業種選びの実務ノートへ。

第四章申請の実務

項目 内容
申請先 熊本県(知事許可)。電子申請(JCIP)にも対応が進んでいます(JCIPの実務ノート)
法定費用 新規9万円・更新/業種追加 各5万円(知事)。大臣新規は登録免許税15万円。費用の実務ノート
審査期間 知事許可でおおむね1か月前後(補正で延びる)
主な書類 申請書一式/登記事項証明書・納税証明書・身分証明書等の公的書類/経管・専技の証明資料/財産的基礎の証明。全体の流れは申請の流れの実務ノート
実務の要点難易度を決めるのは様式の記入ではなく証明資料の在庫です。とくに経管・専技の経験証明は、資料が揃えば2週間、揃わなければ数か月。申請の前に「棚卸し→取得可否の見立て」を必ず挟んでください(当事務所の無料相談はこの見立てを出す場です)。

第五章取得後の維持 ── 許可は「持ち続ける」もの

手続 期限 怠ると
決算変更届 毎事業年度終了後4か月以内 更新・業種追加が受理されない。経審も受けられない
各種変更届(役員・専技・所在地等) 事由発生から2週間〜30日 更新時にまとめて補正地獄に
更新申請 5年ごと(満了30日前まで) 失効=新規取り直し
標識(金看板)の掲示・帳簿の備付け 常時 行政指導・信用低下

専技・経管の退職は許可の維持要件を直撃します。後継の資格者育成(経審のZ点対策と同じ話です)まで含めて、体制を「点」でなく「線」で設計しておくこと。

第六章許可の先にあるもの

許可はゴールではなく、公共工事という次の舞台への入場券です。許可→経営事項審査入札参加資格(指名願)の三段階を最初から見据えて設計すると、業種選び・決算の組み方・技術者計画のすべてが一本の線になります。民間だけでやるつもりの会社も、TSMC関連の準公共案件や大手元請の与信審査でP点を問われる時代です。

申請前チェックリスト

  • 請負予定の工事は許可が必要な規模か(税込・材料込みで判定)
  • 経管候補の経営経験5年の証明資料はあるか
  • 専技候補の資格証または10年分の工事資料はあるか
  • 自己資本500万円または残高証明の目処
  • 全役員の欠格要件の確認(賞罰の申告)
  • 社会保険3種の加入状況
  • 業種の選定(請ける工事・専技の対応・入札の狙い)
  • 取得後の年間手続(決算変更届)の担当を決めたか

※手数料・様式・審査運用は改定されることがあります。最新は熊本県の建設業許可の手引きで確認してください。

この総論で全体像を掴んだら、あとは自社の一番の不安要素(経験証明・財産・業種)の各論ノートへ。見立てだけの無料相談も歓迎です。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。

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