行政書士村上事務所

自己資本額と平均利益額 ── 売上を増やさずにX2を動かす

X2は自己資本額平均利益額(利払前税引前)の二つで決まります。重みは0.15とX1より小さいものの、売上を増やさなくても動かせる数少ない評点です。しかも自己資本は審査基準日=決算日時点で判定されるため、決算をまたぐと一年待つことになります。この講では、決算前に何ができるかを整理します。

構成:一 X2は何を見ているか/二 自己資本を動かす四つの道/三 平均利益額の読み方/四 つまずきの記録/決算前チェックリスト

第一章X2は何を見ているか

X2は、会社の規模の厚みを測る評点です。二つの要素からできています。

X2を構成する二つ

  • 自己資本額 ── 貸借対照表の純資産合計。審査基準日(決算日)時点、または2期平均を選択できます
  • 平均利益額 ── 利払前税引前利益(営業利益+減価償却実施額に近い考え方)の2期平均

ここで注目すべきは、利益が「利払前」で見られていることです。支払利息を引く前の数字なので、借入が多くても利益額そのものは目減りしません。また減価償却を足し戻す考え方をとるため、設備投資をして償却費が大きい会社が不利にならない設計になっています。

裏を返せば、「節税のために利益を圧縮する」経営は、そのままX2を削ります。経審の評点を上げたい年と、税負担を抑えたい年は、方向が逆を向きます。ここは税理士と方針を合わせておくべき点です。

図 X2は「利益を残したか」を見ている節税とX2は、逆を向く利益を圧縮する税負担は軽くなる利益剰余金が積まれない自己資本が増えないX2とYが下がる評点が動かないただし、利益は「利払前」で見られる支払利息を引く前の利益借入が多くても目減りしない減価償却は足し戻す設備投資をしても不利にならない2期の平均で見る一年だけ頑張っても半分

節税は利益を小さく見せる方向、評点は利益と自己資本を大きく見せる方向に働きます。どちらが正しいという話ではなく、その期にどちらを取るかを決める話です。経審を受ける年が決まっているなら、決算の方針は税理士と先に合わせておくことになります。

第二章自己資本を動かす四つの道

自己資本=純資産合計です。決算日時点の数字なので、決算日を過ぎてからでは動かせません。打てる手は四つあります。

一 利益を残す

最も本筋です。利益剰余金の積み上げがそのまま自己資本になります。前述のとおり、過度な利益圧縮はX2とY点の両方を削ります。

二 増資する

資本金を積み増せば直接効きます。役員からの借入金を資本に振り替える(DES)方法もありますが、税務上の取り扱いに注意が必要なため、必ず税理士と設計してください。

三 役員借入金を資本性借入金として扱う

一定の条件を満たす借入は、経審上自己資本とみなして評価される取り扱いがあります。返済順位・期間・金利などの条件があり、契約書の書き方が問われます。詳しくは資本性借入金の講で扱います。

四 含み損を整理する

不良債権や滞留在庫を放置していると、実態より自己資本が大きく見え、Y点の指標を悪化させます。整理すれば自己資本は減りますが、Y点は改善するという関係にあり、どちらが得かは会社の状況によります。

第三章平均利益額の読み方

平均利益額は2期平均で見られます。つまり一年だけ頑張っても半分しか効かないということです。逆に、赤字の年があってもその影響は二年で薄まります。

実務的に重要なのは、大型案件の期ずれです。完成基準で計上している会社の場合、竣工が期をまたぐと利益が片方の期に寄ります。X1(完成工事高)とX2(利益)が同じ方向にぶれるため、工期の設定が二つの評点を同時に動かします。

第四章つまずきの記録

決算が終わってから相談に来る

最も多いパターンです。自己資本も利益も決算日時点で確定しているため、その期については打つ手がありません。相談すべきは決算の3〜6か月前です。

節税と評点の方針が食い違う

税理士は税負担を抑える方向、経審は利益を出す方向。どちらが正しいかではなく、その年にどちらを優先するかを経営者が決める問題です。入札参加資格の申請年度と重なる年は、評点を優先する判断があり得ます。

2期平均の選択を試算していない

自己資本は基準日時点と2期平均のどちらかを選べます。増資した直後なら基準日時点、業績が落ちた直後なら2期平均が有利になることがあります。両方試算してから決めてください。

確認決算前チェックリスト

X2を動かすために確認すること

  • 今期末の純資産の見込みはいくらか
  • 増資・DESの検討余地はあるか(税務は税理士と確認)
  • 役員借入金を資本性借入金として整理できるか
  • 不良債権・滞留在庫の処理方針は決まっているか
  • 2期平均と基準日時点、どちらが有利か試算したか
  • 今期の利益方針は、税負担と評点のどちらを優先するか
  • 大型案件の竣工時期は、どちらの期に寄せるか

算式や換算表の具体的な数値、選択できる方式は年度や改正で変わることがあります。実際の判断にあたっては、必ず熊本県「経営事項審査の実施について」と国土交通省の最新の手引き、および顧問税理士にご確認ください。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。

経営事項審査 実務講座 第6講 / 全25講 ── 第二部 X点(経営規模)

前の講:第5講 X点① 完成工事高と業種振り分けの設計
次の講:第7講 Y点 8指標の分解と、翌期に動かす決算の設計
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