行政書士村上事務所

完成工事高と業種振り分けの設計 ── X1をどこから動かすか

P点の四分の一を占めるのがX1、完成工事高の評点です。売上そのものは急に変えられませんが、どの業種にいくら計上するかと、2年平均と3年平均のどちらを選ぶかは、決算のたびに選び直せます。この講では、その二つの選択がP点をどう動かすかを整理します。

構成:一 X1が占める重み/二 2年平均か3年平均か/三 業種振り分けという設計/四 つまずきの記録/決算前チェックリスト

第一章X1が占める重み

総合評定値P点は、五つの評点を重みづけて合計したものです。

P=0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.20 Y + 0.25 Z + 0.15 W

X1は業種別の完成工事高から算出されます。重みは0.25。技術力(Z)と並んで最も大きく、経営状況(Y)や社会性(W)より重い。売上の大きさがそのまま点数の土台になるという、経審のいちばん素直な部分です。

ただしX1は工事高に比例して伸びるのではなく、階段状の換算表で点数が決まります。同じ1億円の増加でも、いまいる階段の位置によって上がり幅が違う。だから「いくら売れば何点上がるか」は、自社の現在地を見ないと分かりません。

第二章2年平均か3年平均か

完成工事高は、直前2年の平均か、直前3年の平均かを選べます。これは審査を受ける側が選択するもので、毎回選び直せます。

選び方の原則

  • 売上が伸びている会社 ── 2年平均が有利。古い低い年を落とせます
  • 直近が落ち込んだ会社 ── 3年平均が有利。好調だった年を残せます
  • 大きな一件で跳ねた年がある会社 ── その年を何年残すかで、数年分の点数が変わります

重要な制約が一つあります。この選択は全業種で統一しなければなりません。土木は2年平均が有利、建築は3年平均が有利、という使い分けはできません。主力業種で判断し、他業種は結果を受け入れることになります。どの業種で格付を取りにいくのかを先に決めておく必要があるのは、このためです。

図 同じ実績でも、選び方で数字が変わる売上が伸びている会社2.03期前2.62期前3.2直前期2.902年平均こちらが有利2.603年平均直近が落ち込んだ会社3.23期前3.02期前2.0直前期2.502年平均2.733年平均こちらが有利縦軸:完成工事高(億円・イメージ)

2年平均か3年平均かは、審査を受ける側が毎回選べます。ただし全業種で統一しなければならないため、主力業種で判断することになります。どの業種で格付を取りにいくのかを先に決めておく必要があるのは、このためです。数値は考え方を示すための例です。

第三章業種振り分けという設計

完成工事高は実際に施工した業種で計上するのが原則です。ここを恣意的に動かすことはできません。ただし実務では、判断の余地がある場面が出てきます。

一式工事と専門工事の切り分け

土木一式・建築一式として受注した工事の中に、専門工事として切り出せる部分が含まれていることがあります。逆に、専門工事の集合として受けたものが実質的に一式であることもある。契約書と施工体制の実態が、どちらを示しているかで決まります。

業種を分散させると、どうなるか

同じ売上でも、5業種に分散させれば各業種のX1は小さくなり、1業種に集中させれば大きくなります。格付を狙う業種に厚く、それ以外は薄くというのが基本の考え方です。

ただし注意が要ります。入札参加資格では業種ごとに等級が付くため、狙わない業種の点数が下がっても実害は小さい一方、その業種で工事を取りにいく予定があるなら話は別です。二年先の受注計画から逆算して決めることになります。

第四章つまずきの記録

兼業売上を工事高に混ぜてしまう

建設業以外の売上(不動産賃貸、物販、保守契約など)は完成工事高に入りません。決算書の売上と経審の完成工事高が一致しない会社は珍しくなく、この切り分けが決算変更届の段階でずれていると、経審の数字も連鎖してずれます。

振り分けの根拠資料が残っていない

業種の振り分けは、聞かれたときに契約書・注文書・施工体制台帳で説明できる必要があります。「そう計上した」だけでは通りません。年度の途中から資料を集め直すのは大変なので、受注のたびに業種を決めて記録する運用に変えるのが結局は早道です。

平均の選択を毎年考えていない

前回と同じ選択を惰性で続けているケースです。売上の形が変われば、有利な選択も変わります。決算が固まった時点で、両方の平均を試算して比べるのが本来です。

確認決算前チェックリスト

X1を動かすために確認すること

  • 2年平均と3年平均、両方で試算したか
  • 格付を狙う業種はどれか。そこに厚く計上できているか
  • 兼業売上が完成工事高に混ざっていないか
  • 業種振り分けの根拠資料(契約書・注文書)は揃っているか
  • 一式工事の中に、専門工事として切り出せる部分はないか
  • 今期の大口案件は、どの業種・どの期に計上されるか

換算表の具体的な数値や様式は年度で変わることがあります。実際の申請にあたっては、必ず熊本県「経営事項審査の実施について」および国土交通省の最新の手引きでご確認ください。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

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経営事項審査 実務講座 第5講 / 全25講 ── 第二部 X点(経営規模)

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