【建設業法改正】工期ダンピングの受注者禁止を完全解説！見積もりとコスト管理を変えて利益を生む方法

建設業法改正の重要ポイント！工期ダンピングが受注者にも禁止されました

建設業界で働くすべての方に関わる、とても大切なルールの変更がありました。これまでも問題になっていた、極端に短い期間で工事を完成させる契約、いわゆる「工期ダンピング」に対する規制が、より一層厳しくなったのです。

特に大きな変更点は、これまでは工事を注文する「発注者」だけが対象だったこのルールが、工事を請け負う「受注者」、つまり元請会社や下請会社にも適用されるようになったことです。これは、建設業界の契約の常識を大きく変える可能性を秘めた、重要な法改正です。

これまでのルールと何が変わったのか

今回の法改正によって、具体的に何がどのように変わったのでしょうか。一番の違いは、ルールを守るべき人の範囲が広がった点です。以前のルールと新しいルールを比べてみましょう。

	これまでのルール（改正前）	新しいルール（改正後）
ルールの対象者	工事を注文する「発注者」だけでした。	発注者に加えて、工事を請け負う「受注者」（元請・下請の両方）も対象になりました。
禁止されること	発注者が、無理のある短い工期を押し付けることでした。	発注者が短い工期を押し付けること、そして受注者がその無理な契約を結ぶことの両方が禁止されました。

なぜ受注者も禁止の対象になったのか

これまでの現場では、「元請や発注者から指示されたのだから、無理な工期でも断れない」という状況が数多くありました。その結果、下請会社や現場で働く作業員の方々に大きな負担がかかり、休みなく働き続けなければならない、安全対策がおろそかになるといった問題の原因となっていました。

今回の改正は、このような悪循環を断ち切るために行われました。受注者側にも契約を結ぶことを禁止することで、建設会社自身が「その工期では法律違反になるので契約できません」と、不当な要求をはっきりと断るための盾を持つことになります。これは、現場で働く人々を守り、建設業界全体をより健全な環境にするための大切な一歩です。

法律が定める「著しく短い工期」とは

ここで言う「著しく短い工期」とは、どのような状態を指すのでしょうか。これは、単に日数が短い工事のことではありません。建設業法という法律（第19条の5）では、その工事の内容や規模、現場の天候や地理的な条件、準備や後片付けに必要な時間をすべて考えた上で、「普通に考えて、この期間で工事を終えるのはとても無理がある」と判断される工期のことを指します。

例えば、学校の体育館を建てるのに、通常は半年かかるところを「1ヶ月で建ててほしい」と要求するような、誰が見ても非現実的なケースがこれにあたります。

まとめ

今回の法改正は、単にルールが一つ増えたというだけではありません。これからは、受注者である建設会社自身が、提示された工期が本当に適正なものか、自分たちでしっかりと判断し、時には交渉する責任が生まれたことを意味します。もし不当な工期であれば、その契約自体を結んではいけない、という義務を負うのです。これは、自社の利益はもちろん、従業員の生活と安全を守る上で、非常に大きな意識の転換を求められる変更点です。次の章では、このルール変更が実際の建設現場にどのような影響を与えるのかを、より具体的に解説します。

なぜ今この改正が？「著しく短い工期」が全面的に禁止された背景

第1章で解説した「受注者にも工期ダンピングを禁止する」というルールは、決して突然始まったものではありません。実は、今の建設業界が抱えている、とても深刻な問題を解決するために、どうしても必要だったのです。この章では、今回の法改正が行われた背景にある、業界の課題について解説します。

建設業界が直面する大きな課題

現在の建設業界は、いくつかの大きな課題に直面しています。これらが、今回の法改正に大きく関係しています。

課題１　担い手の不足と高齢化

まず、建設業界で働く人が年々減っており、特に若い世代のなり手が不足しているという問題があります。建物を建てたり、道を作ったりする仕事は社会に不可欠ですが、このままでは将来、その仕事を担う人がいなくなってしまうかもしれません。経験豊富な職人さんたちが高齢になり、その技術を次の世代に引き継ぐことも難しくなっています。

課題２　長時間労働の常態化

建設業界は、他の産業に比べて働く時間が長く、お休みが少ない傾向にあると言われています。その大きな原因の一つが「工期」です。決められた期間内に工事を終わらせるため、どうしても長時間働いたり、休日も現場に出たりすることが当たり前になってしまっていました。このような働き方が、若い人たちが建設業界で働くことをためらう一因にもなっています。

課題３　弱い立場の下請業者へのしわ寄せ

元請会社が発注者から無理な短い工期で仕事を受けると、その負担は、実際に現場で作業を行う下請会社や専門工事業者に直接のしかかります。利益が出ないような厳しい条件でも、今後の仕事を失うことを恐れて断れず、結果として安全対策が不十分になったり、働く人の賃金が安くなったりする、という問題が起きていました。

工期ダンピングが生み出す悪循環

これらの課題と「著しく短い工期での契約」は、密接に結びついています。「無理な工期」で契約してしまうと、それを守るために「長時間労働」が生まれます。厳しい労働環境は、建設業界のイメージを悪くし、「担い手不足」をさらに深刻化させます。そして、少ない人数で工事を終わらせるために、さらに無理な働き方や下請業者への負担増につながる、という悪循環が生まれていました。

今回の法改正は、この悪循環の出発点である「著しく短い工期での契約」を、発注者と受注者の双方から断ち切ることを目的としています。

国が進める大きな流れの一環

このルール変更は、建設業界だけの話ではありません。日本全体で進められている「働き方改革」という大きな流れの一部でもあります。すべての働く人が、健康でやりがいを持って仕事に取り組める社会を目指す中で、特に課題が大きかった建設業界にも、いよいよ本格的なメスが入れられた形です。建設業法（第1条）の目的にもある「建設業の健全な発達」を促すため、国としても強い意志を持って取り組んでいるのです。

まとめ

ここまで見てきたように、今回の法改正は、建設業界の未来を守るために避けられない、重要な一歩と言えます。業界に根付いてしまった長時間労働や担い手不足といった深刻な問題を、その根っこから改善しようという強い意志の表れなのです。これは、すべての建設会社にとって、これまでの働き方や契約に対する考え方を見直す大きなきっかけとなります。次の章では、この改正が、日々の業務や現場に具体的にどのような変化をもたらすのかを詳しく解説します。

「元請からの指示」はもう理由にならない！改正が建設現場に与える具体的な影響

第2章で解説した法改正は、観念的な話だけではありません。日々の業務、特に建設現場における元請会社と下請会社との関係に、非常に具体的で直接的な変化をもたらします。これまでの「当たり前」が通用しなくなる、重要な変化です。この章では、現場に与える具体的な影響を、それぞれの立場から見ていきます。

下請業者の立場から見た影響

今回のルール変更で、最も大きな影響を受けるのが下請業者の立場の方々です。これまでは受け入れるしかなかった状況が、大きく変わります。

「断る権利」から「断る義務」へ

これまでの現場では、元請から「この短い期間でお願いしたい」と言われた場合、今後の関係を考えて断りにくいのが実情でした。しかし、新しいルールでは状況が一変します。もし元請から提示された工期が、客観的に見て「著しく短い」と判断される場合、下請業者はその契約を結んではいけません。これは、自社を守るための「権利」であると同時に、法律を守るための「義務」になったのです。「元請に言われたから仕方なく」という言い訳は、もはや通用しません。

法律が交渉の「後ろ盾」になる

一方で、このルールは下請業者にとって強力な武器にもなります。無理な工期を要求された際に、「申し訳ありませんが、その工期では建設業法に定められたルールに違反してしまうため、契約することができません」と、法律を根拠に、はっきりと交渉できるようになります。これは、単なる感情的な反論ではなく、法的な正当性を持った主張です。これにより、対等な立場で工期の調整を申し出ることが可能になります。

元請業者の立場から見た影響

元請業者にとっても、今回の改正は決して他人事ではありません。現場全体の管理責任者として、より一層の注意が求められます。

工期設定の責任がより重くなる

元請業者は、発注者と工事全体の契約を結ぶ際に、これまで以上に慎重な工期設定が求められます。自社の工程だけでなく、各下請業者が担当する工事の種類や規模を正確に把握し、それぞれに必要となる適正な作業期間を確保した上で、全体の工期を算出しなければなりません。もし、下請業者が法律違反となるような短い工期で契約せざるを得ない計画であれば、その責任は元請業者にも及ぶことになります。

安易な「しわ寄せ」は自社のリスクに

「とりあえず受注して、あとは下請に任せよう」という考え方は、非常に高いリスクを伴うことになります。万が一、下請業者が無理な工期の契約を結んでしまい、それが監督官庁に発覚した場合、その下請業者だけでなく、指示をした元請業者も監督処分の対象となる可能性があります。現場の管理責任を問われ、会社の評価や信頼を大きく損なうことになりかねません。

もし違反してしまったらどうなるのか

この「著しく短い工期での契約」に違反した場合、直接的な罰金や懲役といった刑事罰がすぐに科されるわけではありません。しかし、建設業法という法律に違反したとして、監督官庁（国や都道府県）から「指示処分」や、より重い「営業停止処分」といった行政処分を受ける可能性があります（建設業法第28条）。営業停止になれば、その期間は事業を行うことができず、会社の経営に致命的なダメージを与えます。公共工事の入札に参加している会社であれば、指名停止処分を受けるなど、その影響は計り知れません。

まとめ

今回の法改正は、建設現場における長年の力関係や慣習に、大きな変化を促すものです。「元請の指示だから」「昔からこうだったから」という理由はもはや通用せず、すべての建設会社が法律に基づいた公正な契約を結ぶ責任を負うことになりました。これからは、法律という共通のルールを盾に、根拠のある主張で対話し、自社の利益と従業員の安全を確保する姿勢が不可欠です。次の章では、この厳しい変化を乗り越えるために、企業が具体的にどのような対策を取るべきかを解説していきます。

これからの見積もりはこう変わる！企業が今すぐに対応すべきこと

法改正という大きな変化に対応し、自社の利益と従業員を守るために最も重要な武器となるのが、客観的な根拠に基づいた「見積書」です。これまでの経験や勘に頼った方法から脱却し、誰が見ても納得できる見積もりを作成する能力が、これからの建設会社には不可欠です。この章では、企業が今すぐ取り組むべき具体的な対策について解説します。

なぜ「どんぶり勘定」の見積もりではダメなのか

「この工事なら、全部でこれくらいだろう」といった、いわゆる「どんぶり勘定」で工事価格の総額だけを提示する方法は、もはや通用しません。なぜなら、その金額や工期が「適正である」と説明するための根拠が何もないからです。

もし発注者や元請から「もっと安くしてほしい」「もっと期間を短くしてほしい」と要求された場合、根拠がなければ「これ以上は無理です」と交渉することができません。結果として、不利な条件を飲まざるを得なくなり、会社の利益を損なうだけでなく、法律違反のリスクを抱えることにもつながります。

これからの見積もりに必要な２つの「内訳」

これからの見積書は、価格と工期の両方について、その詳細な内訳を明確にすることが求められます。一つひとつの要素を積み上げて計算する「積算」という考え方が基本です。

内訳１　工事価格の根拠を明確にする

工事価格は、様々な費用の積み重ねでできています。見積書には、これらの費用をきちんと分けて記載し、総額の根拠を示す必要があります。

費用の種類	内容の例
直接工事費	工事に直接かかる費用です。使う材料の代金である「材料費」、職人さんの人件費である「労務費」、専門業者に作業を依頼する「外注費」などが含まれます。
間接工事費	工事を管理・運営するために間接的にかかる費用です。現場事務所の設置費用や、安全対策にかかる費用、現場で働く従業員の給料などが含まれます。
一般管理費など	会社の事務所で働く従業員の給料や、事務所の家賃など、会社全体を維持するために必要な経費です。

これらの項目を一つひとつ正確に計算し、積み上げていくことで、初めて説得力のある工事価格を示すことができます。

内訳２　適正な工期の根拠を明確にする

工事に必要な期間、つまり工期も、価格と同じように分解して考える必要があります。「何となくこれくらい」ではなく、各工程に必要な日数を積み上げて、全体の工期を算出します。

例えば、「準備や仮設工事に何日」「基礎工事に何日」「建物の組み立てに何日」「内装工事に何日」「後片付けや検査に何日」というように、作業工程ごとに必要な日数を割り出します。さらに、雨で作業ができない日などを考慮した「予備日」も設定することで、現実的で適正な工期の根拠を示すことができます。

企業が今すぐ取り組むべき具体的な行動

精度の高い見積もりを作成するためには、日頃からの準備が欠かせません。今すぐ、以下のことに取り組みましょう。

施工実績データの蓄積と分析

過去に行った工事の記録は、未来の見積もりを作るための宝の山です。どのような工事で、実際に何人の職人さんが何日間働き、どれくらいの材料と費用がかかったのか。これらのデータを整理・分析することで、自社独自の「歩掛かり（ぶがかり）」を把握できます。「歩掛かり」とは、ある作業を一人で行うのにどれくらいの時間がかかるか、といった作業効率の目安のことです。これがあれば、新しい工事の見積もりを、より正確に作れるようになります。

工事部門と経理部門の連携強化

現場の状況を一番よく知っている「工事部門」と、会社のお金の流れを管理している「経理部門」が、これまで以上に協力し合うことが重要です。現場でかかった費用を正確に経理に伝え、経理はそれを整理して、工事ごとの正確な原価を把握する。この連携が、会社全体の利益管理能力を高め、精度の高い見積もり作成につながります。

まとめ

見積もりの方法を見直すことは、単に書類の書き方を変えるということではありません。それは、自社の仕事の価値を正しく把握し、会社の経営そのものを強くすることに直結します。根拠のある見積書は、不当な要求から会社を守る「盾」であり、同時に、会社が稼ぐべき正当な利益を確保するための「武器」にもなるのです。次の章では、この利益を守るための鍵となる「適正コスト」について、さらに詳しく解説していきます。

利益を守る鍵！自社の「適正コスト」を正確に知る方法

不当な価格競争や工期短縮の要求に巻き込まれず、会社にきちんと利益を残すためには、自社の仕事にかかる「適正コスト」を１円単位で正確に把握することが絶対的な出発点になります。第4章で触れた「根拠のある見積もり」を作るための、まさに土台となる部分です。この章では、利益を守るための鍵となる、適正コストの把握方法について解説します。

あなたの会社の「適正コスト」とは？

「コスト」と聞くと、材料の仕入れ費用や外注先への支払いなどを思い浮かべるかもしれません。しかし、会社が負担しているコストはそれだけではありません。本当の意味での「適正コスト」とは、一つの工事を完成させるために会社が支払う、すべての費用のことを指します。

これには、現場で働く自社の社員の人件費はもちろん、事務所の家賃や光熱費、営業担当者や事務員の給料、社員の社会保険料など、直接工事に関わっているように見えない費用も含まれます。これらの「見えないコスト」を無視していると、知らないうちに赤字の工事を生み出してしまう危険性があります。

「実行予算」の作成がコスト把握の第一歩

自社の適正コストを正確に把握するための最も有効な方法が、「実行予算」を作成することです。実行予算とは、工事を受注した後、実際に作業を始める前に作る、その工事専用の「詳細な予算計画書」のことです。これは、利益を確保するための「儲けの設計図」とも言えます。

実行予算に盛り込む費用の例	具体的な内容
材料費	工事で使う資材や部品の費用を、数量と単価から正確に計算します。
労務費	現場で働く自社の社員の人件費です。下の項目で詳しく解説します。
外注費	専門工事業者など、外部の会社に作業を依頼するための費用です。
現場経費	重機のレンタル代、現場事務所の費用、交通費など、その現場だけで発生する経費です。
本社経費	事務所の家賃や事務用品の費用など、会社全体でかかる経費の一部を、この工事の負担分として割り当てます。

特に重要な「自社の労務費単価」を計算する

実行予算の中でも特に重要なのが、自社社員の「労務費」です。これを正確に把握するためには、社員一人あたり、１日働くと会社がいくら費用を負担しているのかという「労務費単価」を計算しておく必要があります。この単価には、社員に支払う給料だけでなく、会社が負担している健康保険や厚生年金などの社会保険料、福利厚生費なども含めて計算しなくてはなりません。この単価に、工事に必要な作業日数を掛けることで、初めて正確な労務費を算出できるのです。

適正コストを知ることで得られる３つの大きなメリット

手間をかけてでも自社の適正コストを把握することには、計り知れないメリットがあります。

メリット１　交渉の土台ができる

「この工事には、最低でもこれだけのコストがかかる」という明確な数字を把握していれば、それが会社として譲れない最低ラインになります。もし発注者からそのラインを下回るような厳しい値引きを要求されても、「その金額では赤字になってしまうため、お受けできません」と、根拠を持って交渉や断ることができます。

メリット２　赤字工事を未然に防げる

実行予算を立てておけば、工事の途中や完了後に、実際にかかった費用と比較することができます。もし予算を超えそうな場合は、その原因をすぐに突き止め、対策を打つことができます。これにより、「終わってみたら赤字だった」という最悪の事態を防ぐことができます。

メリット３　会社の利益体質がわかる

工事ごとに、どれくらいの利益が出たのか（あるいは赤字だったのか）を正確に把握できるようになります。これにより、自社が得意な工事、利益を出しやすい工事は何かを分析でき、今後の経営戦略を立てる上での重要な判断材料になります。

まとめ

自社の適正コストを把握し、実行予算を管理することは、法改正に対応するという「守り」の側面だけではありません。会社の無駄をなくし、利益を最大化するという「攻め」の経営に直結する、極めて重要な活動です。自社のコスト構造という羅針盤を持つことで、初めて安定した経営という航海が可能になります。最終章では、これまでの内容を総括し、今回の法改正をいかにして会社の成長の機会に変えていくか、その視点を解説します。

まとめ：法改正をチャンスに変え、収益性を高める経営へ

ここまで、工期ダンピングに関する建設業法の改正について、その背景から具体的な対策までを解説してきました。最終章となるこの章では、これまでの内容を振り返りながら、この大きな変化をいかにして自社の成長のチャンスに変えていくか、その視点を整理します。

今回の法改正で変わったことの要点

まず、今回の重要なポイントを改めて確認しましょう。

受注者にも工期ダンピングが禁止に

最大の変更点は、著しく短い工期の契約をすることが、工事を注文する発注者だけでなく、請け負う受注者（元請・下請）にも禁止されたことです。「元請の指示だから」という理由は、もはや通用しなくなりました。

背景には業界の深刻な課題

この改正は、建設業界が抱える担い手不足や長時間労働といった、深刻な問題を解決するために行われました。業界の未来を守るための、必然的なルール変更と言えます。

根拠のない見積もりは通用しない

法改正に対応するためには、これまでの「どんぶり勘定」の見積もりを改め、「工事価格」と「工期」の両方について、客観的な根拠を詳細に示すことが不可欠です。

自社の適正コストの把握が鍵

交渉の土台となり、会社の利益を守るためには、自社の社員の人件費や経費を含めた「適正コスト」を１円単位で正確に把握し、工事ごとの「実行予算」を管理する体制が求められます。

「規制強化」から「適正な競争」の時代へ

今回の法改正を、単に「規制が厳しくなった」とだけ捉えるのは非常にもったいないことです。これは、建設業界が、不当な安値競争から脱却し、企業の持つ技術力や管理能力が正当に評価される「適正な競争」の時代へと移行する、大きな転換点と考えることができます。

これまで真面目に安全管理や労務管理に取り組み、誠実な見積もりを作成してきた会社にとっては、その努力が報われやすい環境が整ったと言えるでしょう。法律という共通のルールの上で、自社の強みを堂々と主張し、適正な利益を確保するチャンスが来たのです。

専門家と共に乗り越えるという選択肢

ここまでお読みいただき、「何を変えるべきかは理解できたが、自社だけで全て実行するのは難しい」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。見積もり方法の見直し、実行予算制度の導入、工事ごとの原価管理体制の構築。これらは、日々の業務を行いながら片手間でできるほど簡単なことではなく、時には会計や労務に関する専門知識も必要となります。

そのような時、建設業の法律と経営実務の両方を深く理解している専門家は、皆様の強力なパートナーとなります。会社の現状を客観的に分析し、法改正への対応はもちろんのこと、その先の収益力強化に向けた最適な体制づくりを、計画的にサポートすることが可能です。

会社の未来のために、まず一歩を

今回の法改正は、すべての建設会社にとって、自社の経営のあり方を根本から見直す絶好の機会です。この変化の波を乗りこなし、より強く、収益性の高い会社へと成長するために、今、何から始めるべきか。もし少しでも迷うことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の会社が未来に向けて確かな一歩を踏み出すためのお手伝いができれば、これに勝る喜びはありません。