建設業のM&A|行政書士村上事務所

元請の再編と、協力会社の選ばれ方 ── 経審の評点で自社の位置を測る

元請の再編が進むと、下請の選び方も変わります。グループ全体で基準を揃える動きの中で、協力会社は数字で比べられるようになりました。そこで使われるのが、すでに毎年出している経営事項審査の評点です。自社がどこに立っているかは、通知書と公表統計で今日から測れます。

構成:一 選ばれ方が変わる/二 四つの評点は何を示すか/三 自社の位置を測る三手順/四 評点別の打ち手/五 つまずきの記録

第一章選ばれ方が変わる

元請が再編されると、品質・コスト・安全の管理レベルをグループ全体で揃えようとします。その過程で、協力会社の評価基準が統一され、書面化されます。

見られるところ 具体的に何を
経営の安定性 財務の健全性、自己資本の厚み。経審のY評点で示せます
技術力 技術者の資格と人数、施工実績。Z評点と工事実績
体制と法令遵守 社会保険、退職金制度、CCUS、労働環境。W評点
規模 完成工事高。X1評点
新しい書類を作る必要はない

ここで求められる情報の多くは、経審の総合評定値通知書にすでに載っています。毎年出しているものが、そのまま自社紹介の資料になります。

逆に言えば、経審を受けていない会社は、この土俵に上がる手段を持たないということでもあります。

第二章四つの評点は何を示すか

評点 示すもの 元請から見た意味
Y 経営状況(負債、収益性、財務健全性、規模) 途中で倒れないか
Z 技術力(技術者数、元請完成工事高) 任せられる人がいるか
W その他の審査項目(担い手、法令遵守、経理、機械、認証) 体制として続くか
X1 完成工事高 どの規模まで受けられるか

総合評定値Pは、この四つにX2(自己資本額と利払前税引前償却前利益)を加えた五つの合成です。ウェイトはX1が0.25、X2が0.15、Yが0.20、Zが0.25、Wが0.15。技術力と規模で半分が決まる設計です。

第三章自社の位置を測る三手順

  1. 通知書から評点を書き出す ── 最新の総合評定値通知書で、P・X1・X2・Y・Z・Wを表にする
  2. 平均と比べる ── 建設業情報管理センター(CIIC)が経審結果の統計を公表しています。業種別・規模別の分布と自社を並べる
  3. 強みと弱みを言葉にする ── 平均より高い項目は営業で使う材料、低い項目は次の一年の課題
総合評定値だけを見ても、打ち手は出ない

Pが低いことは分かっても、どこが低いのかが分からなければ動けません。同じP点でも、Yが低い会社とWが低い会社では、やることがまったく違います。

Yが低ければ財務、Zが低ければ資格者、Wが低ければ制度の整備。内訳を分解するところまでが分析です。

第四章評点別の打ち手

図 どの評点から手をつけるか効き始めるまでの時間が、評点ごとに違うWその他の審査項目制度に加入する・宣言する審査基準日までY経営状況原価管理と自己資本の積み増し決算を跨いでからZ技術力資格者を育てる1〜2年X1完成工事高元請比率を上げる数年短い ← 効き始めるまで → 長い着手は時間のかかるほうから。Wは後からでも間に合う総合評定値Pだけでは、どこを直せばよいか分からない同じP点でも、Yが低い会社とWが低い会社ではやることが違う

横棒は効き始めるまでのおおよその長さです。制度への加入は決算日までに間に合えば次の審査に反映されます。

低い評点 打ち手 効き始める時期
Y(経営状況) 工事別の原価管理で不採算工事を特定。自己資本の積み増し(増資・DES) 決算を跨いでから
Z(技術力) 監理技術者・1級資格の取得支援。費用補助と受験の時間確保をセットで 1〜2年
W(その他) 建退共・法定外労災・退職金制度、CCUS、環境認証。制度に入るだけで点が付く 審査基準日まで
X1(完成工事高) 元請比率を上げる。下請中心では伸びにくい 数年

この中でW評点は最も早く動きます。加入や宣言といった手続きで済むものが多く、決算日までに間に合えば次の審査に反映されます(建退共、自主宣言)。

逆にZとX1は年数がかかります。先に着手すべきは時間のかかるほうで、Wは後からでも間に合う、という順序で計画を組みます。

第五章つまずきの記録

つまずき 防ぎ方
審査基準日の直前に制度加入を思い立った W評点の項目は決算日時点で判定。決算の3か月前には棚卸しを
P点だけを追って、内訳を見ていない 五つの評点に分解しないと、打ち手が決まりません
資格者の育成を始めるのが遅れた Z評点は年単位。退職の予定から逆算して育てる
元請の評価基準を聞いていない 取引先に何を見ているかを尋ねる。多くは経審の項目と重なります

※経審の評価項目・配点は改正されます。最新は国土交通省の公表資料でご確認ください。

通知書をお持ちいただければ、五つの評点の分解と、次の決算までに動かせる項目の整理をその場でお出しできます。

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行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

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顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

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