熊本建設業経営戦略センター(技術士/一級建築士/行政書士)
最大2,000万円のJAS構造材実証支援事業第2次募集を示す抽象グラフィック

【最大2,000万円】JAS構造材実証支援の第2次募集|熊本の建設会社が7月21日までに詰める採算・申請戦略

2026年7月21日、令和8年度「中高層等JAS構造材実証支援事業」の追加公募(第2次募集)が始まります。助成上限は原則1件1,500万円、4階建て以上では2,000万円です。募集期間は8月7日17時までと短く、採択を狙う企業は「申請書を書き始める」より先に、対象物件、設計者、木材供給者、プレカット工場、発注者を一つのチームにまとめる必要があります。公式サイトは7月6日に追加公募を告知し、新建ハウジングも7月15日に制度概要を報じました。[1][2]

経営判断の結論:この制度は、木材価格を単純に値引きする補助金ではありません。中高層・中大規模木造の「初号案件」で生じやすい設計調整、JAS構造材の調達、施工計画、情報発信の負担を助成で吸収し、次の受注に使える施工実績へ変えるための制度です。対象候補がある会社は、今週中に採算表と供給証明を固めるべきです。

第2次募集の要点を3分で確認

今回の募集は、品質・性能が明確なJAS構造材を中高層建築等に活用し、設計・施工上の課題解決や普及につながる実証を支援するものです。対象は、構造計算が必要な延べ床面積300平方メートル超、または3階建て以上の新築・増改築が中心です。4階建て以上であれば、一戸建て住宅や併用住宅も応募対象になり得ます。助成額は一律ではなく、対象となるJAS構造材の種類と材積等に基づいて算定されます。[1][2]

確認項目 第2次募集の概要 経営者が確認すべきこと
募集期間 2026年7月21日~8月7日17時 社内稟議ではなく、案件・設計・調達を同時並行で確定する
助成上限 原則1件1,500万円、4階建て以上は2,000万円 上限額を売上として見込まず、対象材積による試算を先に行う
主な対象規模 構造計算が必要な延べ床面積300㎡超、または3階建て以上の新築・増改築 用途、階数、延べ面積、構造計算の要否を設計者と確認する
対象となる主な構造材 構造用製材、枠組壁工法構造用製材、構造用集成材、構造用LVL、CLT、保存処理材 主要構造部のどこに、どの規格・強度・材積を使うかを確定する
関連登録 「JAS構造材活用宣言事業」や木材SCM支援システム「もりんく」の登録等 自社だけでなく、供給・施工体制に必要な登録状況を確認する
追加要件 地域材の活用、4階建て以上のLCA、住宅用途の国産木材活用住宅ラベル等 要件を設計完了後に足すのではなく、基本計画へ組み込む

詳細な用途区分や対象可否は、公式サイトと用途区分資料で必ず確認してください。特に「建物が木造だから対象」「JAS材を使えば全額対象」という理解は危険です。主要構造部での使い方、地域材、事業登録、報告内容などを一体として満たす必要があります。[1][3]

なぜ熊本の地場建設会社にとって「今」重要なのか

熊本では、半導体関連投資だけでなく、事業所、福祉施設、教育施設、集合住宅、店舗などの整備機会が継続しています。一方で、鉄骨・RC案件は資材価格、技能者不足、工期調整の影響を受けやすく、発注者からは建設費だけでなく、脱炭素性、地域資源の活用、企業イメージまで含めた提案が求められます。中高層等JAS構造材実証支援事業は、この競争条件に対して「木造化という別解」をつくるための資金です。

林野庁は、JAS構造材の活用を安全・安心な木造建築の基盤として位置づけ、中高層建築等での利用実証と安定供給体制の整備を進めています。これは単年度の値引き策ではなく、非住宅・中高層分野で国産材需要を広げる政策の一部です。[4][5]

地場企業にとっての価値は、助成額そのものだけではありません。第一に、JAS規格、構造計算、プレカット、施工管理を組み合わせた受注体制を構築できます。第二に、見学会や成果報告を営業資産として利用できます。第三に、地域材を扱う供給者や設計者との関係を強化し、次回以降の提案速度を上げられます。1件目で得た標準詳細、見積単価、施工手順、検査記録を社内標準に変えられれば、補助終了後にも利益が残ります。

採択より先に確認すべき「5つのGo/No-Go」

1.対象物件がすでに存在するか

最も重要なのは、制度に合わせて架空の案件をつくるのではなく、発注者との協議が進んでいる候補物件を持っているかです。土地、用途、規模、着工時期、予算が不明な状態では、短い公募期間内に材積と施工計画を詰めるのは困難です。営業会議では、300㎡超、3階建て以上、4階建て以上という条件を基に、進行中の案件を即日棚卸ししてください。

2.設計者がJAS構造材を「構造計画」に落とし込めるか

対象材の名称を申請書へ書くだけでは不十分です。柱、梁・桁、壁、床、屋根、横架材など、どの主要構造部に何を使うかを設計段階で決める必要があります。構造設計者が木造中大規模案件に不慣れな場合は、意匠設計、構造設計、施工、プレカットの合同会議を先に設定してください。申請後に構造材を置き換えると、助成額、調達期間、確認申請、施工手順が連鎖的に変わります。

3.地域材とJAS材を期限内に確保できるか

「県産材ならJAS材である」「JAS材なら地域材要件を満たす」とは限りません。樹種、産地、認証、強度等級、寸法、数量、納期を分けて確認することが重要です。熊本県内だけで全量を揃えることに固執して工程を崩すより、公式の地域材定義と対象条件を確認し、複数の供給候補を持つ方が経営上は安全です。供給者からは、見積書だけでなく、規格、産地、供給可能量、リードタイムを記載した回答を得てください。

4.資金繰りが助成金入金まで耐えられるか

助成制度で最も多い誤算は、上限額を契約時の値引き原資として先に使ってしまうことです。助成金は、対象経費の支出、実績確認、書類審査を経て入金されるのが基本です。公募要領で支払時期と必要証憑を確認し、木材代、加工費、運搬費、外注設計費、現場経費を月別資金繰り表へ反映してください。採択されても、つなぎ資金が不足すれば工程と信用を失います。

5.実証成果を次の受注に転換できるか

単発の補助案件で終わらせないため、応募段階で営業利用を設計します。見学会、完成写真、構造見学、発注者インタビュー、CO2・LCAの説明資料、施工上の改善点を、誰が、いつ、どの形式で残すかを決めてください。制度上求められる普及活動を、採択のための義務ではなく、金融機関、設計事務所、自治体、民間発注者への営業素材へ変える視点が必要です。

助成上限2,000万円でも「粗利」が増えるとは限らない

申請判断は、助成額ではなく補助後粗利で行います。JAS構造材の採用に伴って、構造設計、特殊加工、運搬、揚重、仮設、施工教育、品質記録、見学会などの追加コストが発生する可能性があります。反対に、プレカット精度の向上、現場加工の削減、軽量化、工程短縮などでコストを下げられる場合もあります。会社ごとの差が大きいため、標準単価ではなく案件別積算が必要です。

採算表の区分 計上する主な項目 見落としやすい点
通常工法の原価 材料、加工、運搬、労務、重機、仮設、現場管理 比較対象の工期と金利負担も合わせる
木造化による増減 構造設計、JAS材差額、プレカット、接合金物、耐火・防耐火対応 設計変更と納期リスクを予備費に入れる
実証対応費 申請、写真・証憑管理、LCA、見学会、成果報告 社内人件費をゼロと置かない
助成見込額 対象材の種類・材積に基づく算定額 上限額と実際の算定額を混同しない
営業資産価値 標準詳細、施工実績、見学会、提案書、供給網 将来価値は保守的に評価する

経営会議では、「助成なしの粗利」「助成採択時の粗利」「助成減額時の粗利」の3ケースを並べてください。助成が想定の70%でも赤字にならない案件だけを進めるという基準を置けば、補助金依存の受注を避けられます。

7月21日までに終えるべき実務

募集開始後に動くのでは遅いため、受付開始前に次の準備を終えることが理想です。

期限目安 実務 成果物
48時間以内 進行中案件を規模・用途・着工時期で選別 候補案件1~2件の比較表
3日以内 発注者、意匠設計、構造設計、施工、木材供給、プレカットで合同確認 役割分担表と論点一覧
4日以内 JAS材の規格・材積・産地・納期・価格を仮確定 構造材リストと供給回答
5日以内 通常案と助成活用案の採算・資金繰りを比較 3ケース粗利表と月別資金繰り表
募集開始前 必要登録、申請主体、証憑管理、普及活動を確認 申請責任者付きチェックリスト

この段階で、対象物件、供給体制、採算のいずれかが固まらない場合は、無理に第2次募集へ合わせない判断も重要です。補助金のために設計や契約を急げば、後工程の変更コストが上限額を上回る可能性があります。

発注者への提案は「補助金がある」から始めない

発注者へは、最初に補助金額を提示するのではなく、建物の事業価値を説明します。たとえば、地域材の使用による地域貢献、木質空間による採用・集客効果、企業の環境方針との整合、構造材の品質表示、施工期間や維持管理の見通しです。その上で、「初期投資の一部に活用可能な制度がある」と位置づけます。

補助金額を先に示すと、採択されなかった場合に価格交渉が破綻します。また、助成額の全額を発注者への値引きに回せば、申請・報告・施工リスクを負う建設会社に利益が残りません。見積書では、通常工事費、実証対応費、助成対象見込、採択後の精算方法を明確に分け、契約条件にも採否・減額時の扱いを記載してください。

失格・減額を防ぐ管理ポイント

公的支援では、工事が適切でも書類が不足すれば助成対象として認められないことがあります。発注、契約、納品、支払、施工写真、材料証明を一つの証憑番号で連結し、現場と経理が同じ台帳を見る運用が有効です。交付決定前の発注・契約・着手の可否は、公募要領の最新情報を確認し、判断に迷う場合は事務局へ書面で照会してください。

リスク 防止策
対象外材が混在する 構造図・加工図・納品書・証明書の材種表記を統一する
材積が申請値から変わる 設計変更時に助成額への影響を即日再計算する
支払証憑が追えない 請求書と振込記録を案件・材種・納品単位で紐付ける
普及活動が後回しになる 見学会・成果資料の担当者と実施日を着工前に決める
補助金入金が遅れる 月別資金繰り表に入金遅延ケースを設け、融資枠を先に確認する

今回の制度を受注拡大へつなげる3段階戦略

第1段階は、実証案件の完工です。採択をゴールにせず、原価、工数、設計変更、調達期間、検査指摘を記録します。完工後に「何が想定より高かったか」「どの工程を短縮できたか」を振り返り、次回見積の根拠にします。

第2段階は、商品化です。構造形式、スパン、用途、床面積をある程度絞り、標準構造、標準仕様、概算単価、標準工程をまとめます。福祉施設、事務所、店舗、共同住宅など、自社が既存顧客を持つ用途に絞るほど営業効率は高まります。

第3段階は、発注者開拓です。完成見学会を単発イベントにせず、金融機関、設計事務所、不動産事業者、自治体担当者へ継続的に案内します。「木造もできます」ではなく、「この用途・規模なら、設計から地域材調達、施工、LCA・成果発信まで一括で管理できます」と伝えることが差別化になります。

まとめ:補助金を「値引き」ではなく「次の受注の学習費」にする

令和8年度「中高層等JAS構造材実証支援事業」の第2次募集は、最大2,000万円という金額だけを見れば魅力的です。しかし、実際の成否を分けるのは、対象物件、構造設計、JAS材・地域材の供給、資金繰り、成果の営業利用を一つの事業計画にできるかどうかです。

熊本の地場建設会社が取るべき行動は明確です。まず候補案件を棚卸しし、設計者と供給者を交えた合同確認を行い、対象材積に基づく助成試算と3ケースの粗利表を作ってください。条件が揃う案件は7月21日の受付開始に備え、揃わない案件は無理に申請しない。この規律が、補助金を一時的な売上ではなく、木造非住宅・中高層分野の継続受注へ変える土台になります。


参照資料

  1. 中高層等JAS構造材実証支援事業 公式サイト(全国木材組合連合会)
  2. 「JAS構造材実証事業」で2次募集 4階建て以上の住宅も応募可(新建ハウジング、2026年7月15日)
  3. 令和8年度 中高層等JAS構造材実証支援事業 助成対象用途区分(公式PDF)
  4. 安全・安心な木造建築のために(林野庁)
  5. 木材利用課関係補正予算の概要(林野庁)

本記事は2026年7月15日時点の公開情報に基づく実務解説です。申請要件、対象経費、着手可能時点、提出書類、締切は更新される場合があります。申請前に必ず公式サイトの最新公募要領を確認し、必要に応じて事務局へ照会してください。

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