土捨て場と盛土規制法 ── 熊本の盛土規制法と、元請の確認義務

土捨て場は、許可のある場所しか使えません ── 熊本の盛土規制法と、元請の確認義務

現場で出た土の持って行き先を探している、という話をよく聞きます。熊本では、ここの前提が変わりました。令和7年4月1日から、熊本県と熊本市はそれぞれ域内の全域を盛土規制法の規制区域に指定しています。一方で元請には、土を出す前に「搬出先が許可や届出を済ませた場所か」を確かめる義務がかかっています。空いている土地に入れればよい、という時代ではなくなりました。土を出す側と、受ける側の両方から整理します。

01熊本は、県内のどこもが規制区域です

盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)は令和5年5月26日に施行された法律です。熱海市の土石流災害をきっかけに、旧宅地造成等規制法を改めたもので、宅地・農地・森林といった土地の用途を問わず、危険な盛土を規制します。

この法律は、区域を指定してはじめて効き目が出ます。熊本県は令和7年4月1日、熊本市を除く県内全域を「宅地造成等工事規制区域」か「特定盛土等規制区域」のどちらかに指定しました。熊本市も同じ日に、市内全域を規制区域に指定しています。

旧法の時代、熊本で規制区域になっていたのは熊本市の立田山・清水池田・花岡山の三地区と、荒尾市の一部だけでした。いまは「区域の外だから関係ない」という土地が、熊本にはありません。

対象になる行為も広がっています。県の手続きフローには、宅地造成のための盛土・切土だけでなく、単なる土捨て行為や、土石の一時的な堆積も規制の対象と明記されています。逆に、敷地の整地や、建物を建てるための掘削・埋戻し、解体に伴う埋戻しは対象外です。

02どの大きさから、手続きが要るか

規制区域には二種類あり、区域によって許可が要るか、届出で足りるかが変わります。宅地造成等工事規制区域は人家のある市街地や集落とその周辺、特定盛土等規制区域はそこから離れていても、崩れれば下流の人家に被害が及ぶおそれのある斜面などです。

行為 規模A 規模B
盛土で崖ができる 崖の高さ1m超 崖の高さ2m超
切土で崖ができる 崖の高さ2m超 崖の高さ5m超
盛土と切土を同時に行い崖ができる 崖の高さ2m超 崖の高さ5m超
盛土の高さ 2m超 5m超
盛土・切土の面積 500㎡超 3,000㎡超
土石の一時的な堆積 高さ2m超かつ面積300㎡超/または面積500㎡超 高さ5m超かつ面積1,500㎡超/または面積3,000㎡超
区域 規模A 規模B
宅地造成等工事規制区域 許可 許可
特定盛土等規制区域 届出(着工の30日前まで) 許可

「崖」は、地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす土地で、硬岩盤(風化の著しいものを除く)以外のものをいいます。数値は熊本県の許可・届出フローによります。熊本市内の計画は、市の許可申請の手引で確かめます。

土捨て場は面積で引っかかることが多くなります。高さを抑えても、500㎡を超えて盛れば、宅地造成等工事規制区域では許可が要ります。規模の考え方や技術的な基準の詳しいところは、姉妹サイトの盛土規制法 ── 区域の指定と、許可の要否にまとめています。

03元請には、搬出先を確かめる義務があります

土を受ける側の規制と対になって、土を出す側の決まりも強くなりました。資源有効利用促進法の省令が改正され、令和5年5月26日以降に請負契約を結んだ工事では、元請が搬出先の適正さを確かめることになっています。公共工事に限らず、民間工事も対象です。

図1 元請が行うことの流れ着工前計画をつくる再生資源利用促進計画搬出先を確かめる盛土規制法の許可・届出など説明・掲示・通知発注者/現場/運搬業者搬出したあと受領書をもらう計画の搬出先と一致するか最終搬出先まで追う令和6年6月から記録を残す工事完成後5年間

計画の作成と搬出先の確認は、建設発生土を500m³以上搬出する工事が対象です。

  1. 計画をつくる着工前建設発生土を500m³以上搬出する工事では、再生資源利用促進計画を作ります。以前は1,000m³以上でしたが、令和5年1月から引き下げられました。
  2. 搬出先を確かめる着工前搬出先が盛土規制法の許可を受けた場所か、届出を済ませた場所かなどを確かめ、確認結果票にまとめます。あわせて、発注者が行った土壌汚染対策法の手続きの状況も確かめます。
  3. 説明し、掲示し、伝える着工前計画は発注者に提出して説明し、現場の見やすい場所に掲示します。運搬を頼む業者にも、計画の内容を伝えます。
  4. 受領書をもらう搬出したとき搬出先の管理者に受領書を出してもらい、計画に書いた搬出先と一致しているかを確かめて、写しを保存します。
  5. 最終搬出先まで追う令和6年6月から計画に書いた搬出先から、土がさらに別の場所へ移されたときは、その先の名称・所在地・量を書面にします。最終的な行き先まで追うことになります。国土交通大臣の登録を受けたストックヤードに出した場合は、この確認が要りません。
  6. 記録を残す工事完成後5年計画と実施状況の記録は、工事が完成してから5年間保存します。

確認結果票には、搬出先が受けている許可の番号や届出の日付を書く欄があります。手続きを踏んでいない土地は、ここに書けません。規模が小さく許可も届出も要らない場所に出すこともできますが、その場合も「規模未満である」ことや土地所有者の同意を確かめた旨を書くことになります。「知り合いの土地だから」で済ませてきたやり方は、ここで止まります。

土そのものは産業廃棄物ではありませんが、元請に課された責任の重さは、廃棄物の扱いに近づいてきています。廃棄物の側の決まりは建設廃棄物 実務ノート ── 元請の排出事業者責任と、令和8年9月からの確認事項にまとめています。

04許可のある搬出先は、公表されています

では、手続きを済ませた土捨て場はどこにあるのか。熊本では、県と熊本市がそれぞれ一覧を公表しています。

熊本県建設発生土処分先一覧表 熊本県土木部土木技術管理課が作成。掲載されているのは、盛土規制法の許可・届出の手続きが完了した施設(手続き中を含む)です。処分場・ストックヤードの別、受入価格、受け入れる土質、搬入できる最大車両などが載っています。随時更新されます。
熊本市建設発生土処分先一覧表 熊本市の「土木工事の技術情報」のページに、単価表とあわせて随時掲載されています。

どちらの一覧も、掲載されている施設に限る、という意味ではありません。一覧にない場所に出すことはできますが、その場合は盛土規制法の許可・届出の状況を自分で確かめることになります。まず一覧を見て、近くにない、受け入れる土質が合わない、というときに次の手を考える、という順になります。

05受け入れる側に回るとき

近くに捨て場がないなら、自社の土地や、話のついた土地で受け入れる、という考えも出てきます。その場合は、受け入れる側として盛土規制法の手続きを踏むことになります。

手続きの流れ

許可が要る規模なら、申請の前に土地所有者等の同意を取り、周辺の住民に事前に周知します。許可を受けたら標識を掲げてから着工します。規模Bにあたる大きなものは、排水施設を設ける工程での中間検査と、工期が3か月を超える場合の3か月ごとの定期報告があり、工事が終われば完了検査を受けます。届出で足りる規模なら、着工の30日前までに届け出ます。

熊本市では、許可・届出の要否の事前相談と、土地利用計画などの事前審査を開発指導課で受け付けています。

ほかの許可との関係

  • 開発許可:都市計画法の開発許可を受けた造成で、盛土規制法の規模に当たるものは、盛土規制法の許可・届出を受けたものとみなされます。ただし、標識の掲示・中間検査・定期報告は別に要ります。二つの許可の関係は盛土規制法と開発許可 ── どちらの許可が要るかにあります。
  • 森林:森林を開発する場合は、規模によって森林法の林地開発許可が別に関わります(林地開発許可 ── 森林を開発するときの、もうひとつの許可)。
  • 農地:農地に土を入れる場合は、盛土規制法とは別に農地法の手続きが要ることがあります。計画の段階で農業委員会に確かめます。

受け入れたあとの責任

規制区域内では、土地の所有者・管理者・占有者に、盛土を安全な状態に保つ責務があります。区域の指定より前の盛土も含みます。土を運び込んだ業者がいなくなっても、土地に残るということです。危険な状態になれば、土地所有者等に加えて、原因を作った者にも是正が命じられます。無許可や命令違反の罰則は、最も重いもので3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金です。

「処分費をもらえて土地も嵩上げできる」という話を受けるかどうかは、この責任まで含めて考えることになります。

06つまずきやすいところ

よくある思い込み 実際は
山の中の土地だから、区域の外だろう 熊本は県・熊本市とも全域が規制区域です。二つの区域のどちらに入るかで、許可か届出かが分かれます。
一時的に置くだけだから関係ない 土石の一時的な堆積も対象です。高さ2m超かつ300㎡超、または500㎡超から手続きが要ります。
開発許可を取るので、盛土規制法は関係ない 許可はみなされますが、標識・中間検査・定期報告は残ります。
下請が持って行った先までは分からない 搬出先の確認は元請の義務です。令和6年6月からは最終搬出先まで追います。
土地の持ち主が「いい」と言っている 所有者の同意と、盛土規制法の許可・届出は別のものです。受け入れたあとの安全の責務も、所有者に残ります。

着工前に確かめておくこと

  • 搬出する土量が500m³以上かどうか(計画と確認結果票の要否)
  • 搬出先が盛土規制法の許可・届出を済ませているか、その番号や日付
  • 搬出先がストックヤードなら、国土交通大臣の登録を受けているか
  • 発注者が行った土壌汚染対策法の手続きの状況
  • 計画を発注者に説明し、現場に掲示し、運搬業者に伝えたか
  • 受領書を受け取る段取り(誰が、いつ、どこで)

07確認先

区域の線引きや運用は、県と熊本市で窓口が分かれています。計画地や搬出先がどちらの所管か、まずそこから確かめます。

盛土規制法(熊本市以外) 熊本県 土木部 建築住宅局 建築課 盛土対策室 096-333-2555
盛土規制法の許可・届出(熊本市) 熊本市 都市建設局 都市政策部 開発指導課 096-328-2507
盛土規制法の制度・区域(熊本市) 熊本市 都市建設局 都市政策部 都市安全課 096-328-2926
建設発生土処分先一覧表(県) 熊本県 土木部 土木技術管理課 096-333-2490
搬出先計画制度 国土交通省「建設発生土の搬出先計画制度」(確認結果票・受領書の参考様式、FAQ)

盛土規制法の許可申請と届出は、熊本県・熊本市とも当事務所でお引き受けしています。当事務所がお受けするのは熊本県内が基本です。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を専門に扱っています。お客様の紹介で広がり、取引先は100社を超えました。

顧問技術士・一級建築士

技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

chiou.jp株式会社地央/姉妹サイト

不動産・都市計画・開発許可・農地転用の実務ノートを100本以上載せています。土地から入る案件は、あわせてご覧ください。

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