村上事務所

「コリンズって何?」中小建設業社長の疑問に答える!簡単解説&実践マニュアル

第1章 コリンズ(CORINS)とは? 公共工事受注の鍵を握る「信頼の証明書」

公共工事への参入を目指し「経営事項審査(経審)」の準備を始めると、「コリンズ」という言葉を耳にする機会が増えてくるはずです。初めて聞くと、「一体何のことだろう?」と疑問に思われるかもしれませんね。

この章では、公共工事を受注していく上で非常に重要となる「コリンズ」について、その基本的な考え方から、なぜ必要なのか、誰がどのように関わっているのかを、順を追って、できるだけ分かりやすく解説してまいります。ご安心ください、専門用語も都度かみ砕いてご説明します。

「コリンズ以前」の世界を想像してみましょう なぜ必要になったのか?

思考プロセス

まず、なぜコリンズのような仕組みが必要になったのか、その背景から考えてみましょう。もしコリンズがなかったら、公共工事の発注者(国や自治体など、工事をお願いする側)はどうやって工事を任せる会社を選んでいたでしょうか?

おそらく、過去の評判や担当者同士の付き合い、あるいはその会社が提出する資料だけで判断していたかもしれません。しかし、それだけでは、いくつかの問題点が考えられました。

過去の方法だけでは見えなかったこと

問題点具体例
評価のばらつき発注機関ごと、担当者ごとに評価の基準が異なり、同じような実績でも評価が変わってしまう可能性がありました。
情報の偏り特定の地域や発注機関での実績しかない会社の実力を、他の発注機関が正確に把握するのが困難でした。
公平性の懸念客観的なデータに基づかない評価は、時に不公平感を生む可能性がありました。

このような状況では、本当に実力のある会社が正当に評価されにくかったり、発注者側も「この会社に任せて本当に大丈夫だろうか」という不安を抱えたりすることがあったのです。特に、新しく公共工事に参入しようとする会社にとっては、実績を客観的に示す手段が乏しいという課題がありました。

コリンズ登場!「信頼」をカタチにする仕組み

そこで登場したのが、コリンズ(CORINS)です。これは、Construction Records Information Service (工事実績情報サービス)の頭文字を取った略称で、文字通り、建設工事の実績に関する情報を集約したデータベースシステムのことです。

コリンズの核心部分

コリンズは、国や地方公共団体などが発注する一定金額以上の公共工事について、受注した建設会社がその工事内容や担当技術者などの情報を登録し、それをデータベースとして一元管理する仕組みです。発注機関は、このデータベースにアクセスすることで、入札に参加する会社の過去の実績を、全国規模で、統一された基準で確認できるようになりました。

例えるなら「クルマの整備手帳」のようなもの?

少しイメージしにくいかもしれませんので、例え話をしてみましょう。皆さんが中古車を買うときのことを想像してみてください。走行距離や年式も大事ですが、「定期点検記録簿(整備手帳)」がしっかり残っている車は、過去にどのような整備を受けてきたかが分かり、信頼感が増しますよね。

コリンズもこれに似ています。コリンズに登録された実績は、皆さんの会社が手掛けた工事の「公式な記録簿」のようなものです。一つ一つの工事記録が、皆さんの会社の技術力や施工能力を客観的に証明する「信頼の証」となり、発注者はその「記録簿」を見ることで、「この会社なら安心して任せられる」と判断しやすくなるのです。ただの自己申告ではなく、発注機関の確認印が押された、いわば「お墨付き」の記録となります。(この確認プロセスについては、後の章で詳しく説明しますね。)

コリンズが目指すもの その目的と法的背景

コリンズが導入された背景には、単に情報を集めるだけでなく、公共工事のあり方そのものをより良くしようという明確な目的があります。

思考プロセス

国がわざわざこのようなシステムを作り、運用するには、相応の理由があるはずです。それは、公共事業が私たちの税金で賄われている以上、その使い方には高い透明性や公平性、そして成果(品質)が求められるからです。コリンズは、これらの要求に応えるための重要なツールとして位置づけられています。

コリンズの主な目的

目的内容
透明性・公平性の確保入札や契約のプロセスにおいて、誰にでもアクセス可能な客観的データを用いることで、「誰が見ても納得できる」選定を目指します。
品質の確保過去の工事実績や評価(工事成績評定など)を参照しやすくすることで、技術力が高く、質の高い工事ができる会社を選びやすくします。
客観的な評価基盤の提供企業の実績や技術者の経験を、標準化されたデータで評価できる共通の土台を提供します。

法的根拠について

これらの目的は、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(公共工事品確法)」にも通じる考え方です。この法律では、発注者に対し、技術提案や施工能力などを適切に評価し、品質と価格の両面から優れた契約相手を選ぶ努力義務を課しています(同法第7条など)。コリンズのようなデータベースの整備・活用は、まさにこの法律の趣旨を実現するための方策の一つとして重要な役割を担っているのです。

(※条文の解釈や具体的な運用については、必ず最新の公式情報をご確認ください。)

誰が運営しているの? 中立な管理人「JACIC」

これほど重要な情報を扱うデータベースですから、「誰が運営しているのか」は非常に気になるところですよね。もし特定の建設会社や省庁が直接運営していたら、「自分たちに有利なように操作されるのでは?」という疑念が生じかねません。

コリンズの運営・管理は、一般財団法人 日本建設情報総合センター(JACIC:ジャシック)という組織が行っています。

JACICの役割

  • 中立性: JACICは特定の企業の利益のためではなく、建設分野全体の情報化を推進する公益法人として、中立的な立場でコリンズを運営しています。これが、システムの信頼性を担保する上で非常に重要です。
  • データの収集・管理: 建設会社から登録された工事実績データ(工事カルテとも呼ばれます)を受け取り、データベースを構築・維持管理します。
  • 情報提供: 蓄積された情報を、各公共工事の発注機関が利用できるように提供します。
  • サポート: 登録方法に関する問い合わせ対応や、システムの利用支援なども行っています。

JACICはコリンズだけでなく、後ほど触れる「テクリス」や、積算システム、電子入札関連システムなど、建設業界の情報化に幅広く貢献している組織です。コリンズは、JACICが提供する大きな情報基盤の一部として機能している、と考えると分かりやすいでしょう。


さて、ここまででコリンズが「何のために」「誰によって」運営されている、公共工事の実績データベースであるか、大まかなイメージは掴んでいただけたでしょうか。この「信頼の証明書」とも言えるコリンズの記録が、皆さんの会社の未来、特に公共工事受注や経審において、どのように関わってくるのか。次の章では、コリンズとよく似た名前の「テクリス」との違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

第2章 「工事」と「業務」は別物? コリンズとテクリスの守備範囲

第1章では、コリンズが公共工事の実績を記録し、皆さんの会社の「信頼の証明書」となるデータベースであることをお話ししました。さて、ここで一つ、非常に重要な区別についてご説明しなければなりません。それは、「コリンズ」と、それによく似た名前の「テクリス(TECRIS)」との違いです。

この二つは、しばしば「コリンズ・テクリス」と一括りに呼ばれることもあり、どちらも同じJACICが運営しているため、混同しやすいのですが、記録する対象が明確に異なります。この違いを理解しておくことは、正しく実績を登録し、経審などで適切に評価されるための第一歩となります。

なぜ二つあるの? 契約の種類が違うから

思考プロセス

なぜ実績登録システムが二つに分かれているのでしょうか? それは、建設プロジェクトには、実際に「モノをつくる」段階と、その前段階である「計画・調査・設計」などの段階があり、それぞれ契約の種類や性質が異なるためです。この違いに対応するために、二つのデータベースが存在すると考えると分かりやすいでしょう。

公共事業に関連する契約は、大きく分けて以下の二種類があります。

契約の種類

契約の種類主な内容対応するデータベース
建設工事請負契約建物や道路、橋などを実際に建設・製造・設置する契約。コリンズ (CORINS)
(建設関連)業務委託契約工事に必要な調査、設計、測量、地質調査、工事監理の補助など、専門的な技術や知識を提供する契約。テクリス (TECRIS)

このように、契約の性質が異なるため、それぞれの実績を記録・管理する専門のデータベースが用意されているのです。

コリンズの守備範囲 「工事(こうじ)」とは?

まず、このブログの主役である「コリンズ」が対象とする「工事」について詳しく見ていきましょう。

法律上の定義

建設業における「工事」とは、一般的に、建設業法という法律の第2条第1項で定められている「建設工事」を指します。具体的には、土地に固定された工作物の建設、改造、修理、解体などを行うことです。

建設業法 第2条第1項(抜粋・要約)

この法律で「建設工事」とは、土木建築に関する工事で、別表第一の上欄に掲げるものをいう。

(別表第一には、土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、電気工事、管工事、舗装工事など29種類の工事が挙げられています。)

具体的な工事の例

皆さんが日々請け負っていらっしゃる、以下のような作業が「工事」に該当します。

  • 道路や橋、トンネルなどを造る(土木一式工事)
  • 住宅、ビル、工場などを建てる(建築一式工事)
  • 電気設備を設置する(電気工事)
  • 給排水・空調設備を設置する(管工事)
  • 道路をアスファルトで舗装する(ほ装工事)
  • 建物の塗装を行う(塗装工事)
  • その他、建設業法で定められた各種専門工事

「工事」のキーポイント

「実際に、物理的なモノ(工作物)を造ったり、直したり、撤去したりする作業」が「工事」である、とイメージしてください。皆さんの会社の技術力で、形あるものを生み出す、あるいは維持・改修する活動がこれにあたります。

この「工事」の実績を登録するのが、コリンズ (CORINS) の役割です。

テクリスの守備範囲 「業務(ぎょうむ)」とは?

次に、コリンズの兄弟分である「テクリス」が対象とする「業務」について見ていきましょう。テクリスは Technical Consulting Records Information Service の略です。

「業務」の定義

「業務」とは、建設工事そのものではなく、工事を行うために必要な、あるいは工事に関連する専門的なサービス(技術役務の提供)を指します。これらは通常、「業務委託契約」に基づいて行われます。

具体的な業務の例

  • 工事予定地の地形を測る(測量業務)
  • 地盤の強度などを調べる(地質調査業務)
  • 構造物の設計図を作成する(設計業務)
  • 工事が設計通りに進んでいるか発注者をサポートする(発注者支援業務、旧 工事監理業務)

「業務」のキーポイント

「工事そのものではなく、工事のための計画、調査、設計、管理支援など、専門知識や技術を提供するサービス」が「業務」である、とイメージしてください。頭脳や専門技術を使って、工事の準備をしたり、円滑に進むようサポートしたりする活動です。

この「業務」の実績を登録するのが、テクリス (TECRIS) の役割です。

ちょっと注意点(建築設計について)

一つ補足ですが、建築物の「設計」や「工事監理」業務については、テクリスではなく、一般社団法人 公共建築協会が運営する「PUBDIS(パブディス)」という別のデータベースで管理されるのが一般的です。建築関連の業務委託契約の場合は、テクリスではなくPUBDISへの登録が必要か、発注機関にご確認ください。(ただし、建築「工事」そのものはコリンズの対象です。)

契約内容が決め手! コリンズ? テクリス? 迷ったときは

思考プロセス どうやって見分ける?

契約書の「件名」だけを見て、「〇〇工事」と書いてあるからコリンズ、「〇〇業務」と書いてあるからテクリス、と単純に判断するのは早計な場合があります。重要なのは、その契約で「何をすることを求められているか」「主たる目的は何か」という中身です。

もし判断に迷った場合は、以下の点を自問してみてください。

  • この契約のゴールは、物理的な「モノ」を完成させることか? → YESなら、コリンズの可能性が高いです。
  • この契約のゴールは、調査結果、設計図、報告書、あるいは専門的な助言やサポートを提供することか? → YESなら、テクリス(またはPUBDIS)の可能性が高いです。

最終的には、契約書の内容を確認し、不明な点は必ず発注機関に問い合わせて、どちらのシステムに登録すべきかを確認することが最も確実です。

コリンズとテクリスの違い まとめ

最後に、コリンズとテクリスの主な違いを表にまとめます。

項目コリンズ (CORINS)テクリス (TECRIS)
対象となる契約建設工事請負契約(建設関連)業務委託契約
主な内容工作物の建設、修繕、解体など(物理的な施工)調査、測量、設計、地質調査、発注者支援など(技術サービスの提供)
根拠となる法律(参考)建設業法(第2条第1項の建設工事)民法上の委任・請負契約など(業務委託)
実績登録システムコリンズテクリス(建築設計等はPUBDISの場合あり)

この章では、コリンズとテクリスという二つのデータベースが、それぞれ「工事」と「業務」という異なる種類の契約実績を扱っていることをご説明しました。皆さんの会社が主に「工事」を請け負っているのであれば、コリンズへの登録が中心となります。

次の章では、具体的にどのような工事がコリンズへの登録対象となるのか、特に「登録が必要となる金額」の基準について詳しく見ていきます。

第3章 この工事、コリンズ登録は必要? 対象となる工事の条件

第2章では、「工事」と「業務」の違い、そしてコリンズが「工事」の実績を登録するシステムであることを確認しましたね。そうなると次に社長が気になるのは、「うちが今度やる、あの工事はコリンズに登録しないといけないのだろうか?」という点だと思います。

全ての工事を登録する必要はありません。コリンズへの登録が原則として必要になるのは、特定の条件を満たす工事に限られます。この章では、その具体的な条件について、一つずつ丁寧に見ていきましょう。

基本ルール なぜ全ての工事ではないのか?

思考プロセス 背景を考える

なぜ登録対象に基準が設けられているのでしょうか。もし全ての工事、例えば数万円の小さな修繕工事まで登録義務があると、建設会社の事務負担は膨大なものになってしまいます。一方で、あまりに高額な工事だけに限定すると、中小規模の会社の多くが実績を登録できず、公共工事への参入障壁が高くなってしまうかもしれません。現在の基準は、こうした「できるだけ多くの実績データを集めたい」という要請と、「建設会社の負担を考慮する」というバランスの上に成り立っていると考えられます。

コリンズへの登録義務が生じるかどうかは、主に「誰が発注した工事か」そして「いくらの工事か」という二つの条件で判断されます。

条件1 どんな機関が発注した工事か? (発注機関)

まず、誰から受注した工事なのかが重要です。コリンズ登録の対象となるのは、主に以下のような機関が発注する「公共工事」またはそれに準ずる工事です。

主な対象となる発注機関

分類具体例
国の機関各省庁(例 国土交通省、農林水産省など)
地方公共団体都道府県、市区町村
特殊法人などNEXCO(高速道路会社)、UR都市機構、水資源機構 など
公益民間企業電力会社、ガス会社、JR各社、NTT など(※発注機関が指定する場合)

いわゆる「官公庁」からの工事だけでなく、公共性の高いインフラを担う民間企業からの工事も対象となる場合がある点に注意が必要です。ただし、全ての民間企業の工事が対象となるわけではありません。

ポイントは、「公共的な性格を持つ機関からの工事」が中心であるということです。 純粋な民間企業から受注した工事(例 一般企業の工場建設や個人住宅など)は、通常、コリンズ登録の対象外となります。

条件2 いくらの工事か? (請負代金額)

発注機関の次に重要なのが、その工事の契約金額、すなわち「請負代金額(うけおいだいきんがく)」です。

登録が必要となる金額のライン

現在の主な基準は、消費税及び地方消費税を含む請負代金額が500万円以上の工事です。

税込みで500万円、この数字が大きな判断基準となります。

例えるなら「身長制限」のようなもの

遊園地の乗り物にある「身長〇〇cm以上の方」という制限をイメージしてみてください。コリンズ登録もこれと似ていて、「請負代金額500万円以上」というラインを超えると、原則として「登録」という手続きが必要になる、というわけです。

要注意! 契約金額が変わった場合 (契約変更)

工事を進めていると、途中で設計変更や追加工事が発生し、契約金額が変わることはよくありますよね。この契約変更によって、当初の金額が500万円のラインを跨ぐ場合に、特に注意が必要です。

思考プロセス 金額変更時の扱い

契約当初の金額だけで判断してしまうと、後で金額が増えて500万円以上になった場合に登録漏れが発生してしまいます。逆に、当初500万円以上だったものが減額されても、一度登録対象となった工事の実績は、最終的な結果まで記録する必要がある、というのが基本的な考え方です。

金額変更の主なパターンと対応

パターン当初の契約金額変更後の契約金額コリンズ登録
A. 金額が増加し、ライン越え500万円未満(例 480万円)500万円以上(例 520万円)変更後の情報で「受注登録」が必要になります。(変更契約締結時点)
B. 金額が減少し、ライン未満へ500万円以上(例 550万円)500万円未満(例 490万円)当初の受注登録に加え、「変更登録」および「完成登録」も原則として必要です。(※注)

(※注)パターンBについて、一部情報では変更により500万円未満となった場合に登録削除を行うケースも示唆されていますが、原則としては変更・完成登録が必要とされています。運用が異なる可能性もあるため、必ず発注機関にご確認ください。

重要なのは、契約金額が途中で変わった場合でも、500万円という基準額を意識し、登録が必要かどうかを再確認することです。

必ずしも「義務」だけではない? 任意登録について

ここまでは「登録が必要(義務)」という観点でお話ししてきましたが、実は「任意登録(にんいとうろく)」という制度もあります。

これは、発注機関からは登録を義務付けられていない工事(例えば、請負金額が500万円未満の工事や、対象外の発注機関からの工事など)であっても、受注した建設会社が自社の判断で、発注機関の承諾を得てコリンズに登録するケースです。

任意登録のポイント

  • 発注機関の承諾が必須 受注会社だけで勝手には登録できません。
  • 登録内容の確認は必要 任意であっても、登録する内容については発注機関の確認が必要です。
  • メリット 金額に関わらず実績として公式に残せるため、将来的なアピールにつながる可能性があります。

ただし、任意登録はあくまでも例外的な扱いです。まずは、ご自身の工事が「義務登録」の対象かどうかを正確に把握することが先決です。

確実な確認方法 「契約書類」と「発注機関への問い合わせ」

「うちの工事は、結局、登録が必要なんだろうか?」

ここまでご説明した条件を踏まえても、判断に迷うケースがあるかもしれません。その場合に、最も確実な確認方法は以下の二つです。

1.契約関係書類を確認する

公共工事の契約では、「契約書」本体の他に、「設計図書」や「仕様書(しようしょ)」といった詳細な書類が交付されます。特に「仕様書」の中の「共通仕様書」や「特記仕様書(とっきしようしょ)」と呼ばれる書類に、コリンズへの登録義務について明記されていることが非常に多いです。

契約図書の確認ポイント

仕様書の中に、「本工事は、工事実績情報サービス(コリンズ)への登録対象工事である」といった一文や、「受注者は、請負代金額〇〇円(税込)以上の工事について、工事実績情報サービス(コリンズ)に登録しなければならない」といった具体的な指示が記載されているか確認しましょう。これは発注機関の方針に基づく契約条件の一部となります。

2.発注機関に直接確認する

契約書類を見ても不明な場合や、解釈に迷う場合は、遠慮なく工事の発注担当者(監督員さんなど)に直接確認しましょう。「この工事はコリンズ登録の対象でしょうか?」と尋ねるのが一番確実で、間違いがありません。


この章では、コリンズ登録の対象となる工事の条件、特に「発注機関」と「請負代金額(税込み500万円以上)」という二つの大きな柱、そして契約変更時の注意点について解説しました。

ご自身の工事が登録対象だと分かったら、次に気になるのは「いつ、何を、どのように登録すればいいのか?」ということですよね。次の章では、具体的な登録のタイミングと種類について、詳しくご説明していきます。

第4章 コリンズ登録のタイミングと種類 「いつ」「何を」登録するのか?

第3章では、どのような工事がコリンズ登録の対象となるか、その条件について詳しく見てきました。社長の会社が受注した工事が登録対象だと分かったところで、次に重要になるのが、「では、具体的にいつ、どんな内容を登録すればいいのか?」という点です。

コリンズへの登録は、一度行えば終わり、というわけではありません。一つの工事のライフサイクル(始まりから終わりまで)の中で、通常、複数回の登録が必要となります。これは、工事の情報を常に最新かつ正確な状態に保つためです。この章では、主な登録の種類とそのタイミング、そして絶対に守らなければならない登録期限について、詳しく解説していきます。

工事の進捗に合わせた「定点観測」としての登録

思考プロセス なぜ複数回の登録が必要?

工事は、契約してから完成するまでに、数ヶ月、場合によっては数年かかることもあります。その間に、計画が変わったり、状況が変化したりすることは珍しくありません。もし契約時の情報だけで登録を終えてしまうと、最終的な工事の実態とデータベースの情報がかけ離れてしまう可能性があります。それでは、第1章で述べたコリンズの目的(正確な実績に基づく評価)が達成できません。そのため、工事の主要な節目(マイルストーン)ごとに情報を更新する仕組みになっているのです。

例えるなら「マラソンの通過報告」

マラソン中継を思い浮かべてください。ランナーはスタート地点だけでなく、5km地点、中間地点、30km地点など、主要なポイントで通過タイムが計測・報告されますよね。そして、最後にゴールタイムが記録されます。コリンズ登録もこれに似ています。工事の「スタート(契約)」「途中の状況変化(変更)」「ゴール(完成)」という各段階で、その時点での情報を正確に報告(登録)することで、工事全体の状況が正確に記録されるのです。

主に必要となる登録は、以下の3種類です。(場合によっては4種類目の登録もあります。)

種類1 受注登録(じゅちゅうとうろく) 工事のスタートを記録

いつ登録する?

工事の請負契約を締結した時です。契約書にハンコを押した、そのタイミングが起点となります。

何を登録する?

契約当初の基本的な情報を登録します。いわば、工事の「出生届」のようなものです。

  • 発注機関名、工事名、工事場所
  • 契約年月日、契約時の請負代金額、契約時の工期(開始日と終了日)
  • 受注形態(単独かJVかなど)
  • 配置予定の主任技術者または監理技術者の情報
  • 工事の種別 など

ここで登録する情報が、その工事に関するコリンズ記録の基礎となります。

種類2 変更登録(へんこうとうろく) 計画変更を反映

いつ登録する?

当初の契約内容から重要な変更が生じた都度、登録が必要です。変更契約を締結した時点などが該当します。

どんな時に必要?

「重要な変更」とは、主に以下のようなケースを指します。

  • 請負代金額の変更 (特に、第3章で触れた500万円のラインを跨ぐ変更の場合は必須です。ラインを跨がない軽微な金額変更のみの場合は、登録不要とされることもありますが、発注機関にご確認ください。)
  • 工期(工事期間)の変更
  • 配置する主任技術者または監理技術者の変更
  • その他、工事内容に関わる大きな変更があった場合

何を登録する?

変更後の最新情報を登録します。例えば、変更後の請負代金額、延長された工期、新しく配置される技術者の情報などです。これにより、コリンズのデータが常に現状を反映した状態に保たれます。

種類3 完成登録(かんせいとうろく) 工事のゴールを記録

いつ登録する?

工事が完成(竣工 しゅんこう とも言います)した時です。検査に合格し、工事が正式に終了したタイミングとなります。

(「竣工登録」という言葉も使われますが、意味合いは「完成登録」とほぼ同じです。)

何を登録する?

工事の最終的な結果と、技術的な詳細情報を登録します。これが工事の「完了報告書」にあたります。

  • 最終的な請負代金額、実際の完成年月日
  • 実際に使用した主要な工法や技術
  • 施工した数量(延長、面積、体積など)
  • 構造物の形式や規模 など

この完成登録によって、一つの工事に関するコリンズ記録が完結します。

(補足)種類4 訂正登録(ていせいとうろく) 誤りを修正

いつ登録する?

過去に登録した内容(受注・変更・完成)に誤りが見つかった場合に、速やかに行います。

目的

入力ミスなどを訂正し、データベースの情報の正確性を維持するために行います。発見したら放置せず、正しい情報に修正することが大切です。訂正にも発注機関の確認が必要になる場合があります。

最重要! 登録期限は非常に厳しい!

さて、それぞれの登録タイミングについて見てきましたが、ここで絶対に忘れてはならないのが「登録期限」です。

原則「10日以内」

受注・変更・完成といった各登録は、その事実が発生した日(契約締結日、変更契約日、工事完成日など)の翌日から起算して10日以内(土日祝日など、発注機関の閉庁日を除く)に行わなければなりません。

思考プロセス なぜこんなに短い?

「10日なんてあっという間だ!」と感じられるかもしれません。この厳しい期限が設けられているのは、情報の鮮度を保つためです。時間が経てば経つほど、記憶も曖昧になり、正確な情報の入力が難しくなります。また、発注機関も最新の情報を早く把握したいという意図があります。迅速な登録は、コリンズシステムの信頼性と有効性を維持するために不可欠なのです。

この「閉庁日を除く10日以内」という期限は、非常に厳格に運用されています。 うっかり忘れてしまうと、発注機関からの信頼を損ねたり、場合によっては契約上のペナルティが課されたりする可能性もゼロではありません。カレンダーやスケジュール帳に大きく書き込むなど、絶対に忘れない工夫が必要です。

期限の根拠

この「10日以内」という期限は、特定の法律で全国一律に定められているわけではありませんが、国土交通省をはじめとする多くの発注機関が定める標準仕様書や特記仕様書において、契約遵守事項として規定されている一般的なルールです。必ずご自身の契約書類で具体的な期限をご確認ください。

登録種類・タイミング・期限のまとめ

最後に、これまでの内容を表にまとめます。

登録の種類登録するタイミング (トリガー)主な目的・登録内容登録期限 (原則)
受注登録工事の請負契約締結時工事の基本情報(契約内容、工期、技術者等)を最初に記録する。各事実発生日の翌日から起算し、閉庁日を除く10日以内
変更登録契約内容に重要な変更があった時 (金額、工期、技術者など)変更後の最新情報を反映させ、記録の正確性を保つ。
完成登録 (竣工登録)工事の完成(竣工)時最終的な工事結果と技術詳細を記録し、工事記録を完結させる。
訂正登録登録済みの情報に誤りを発見した時誤りを修正し、データの正確性を維持する。誤り発見後、速やかに

この章では、コリンズに登録すべきタイミング(受注・変更・完成)と、それぞれの登録で何を行うのか、そして何よりも重要な「登録期限」について解説しました。

「いつ」「何を」登録するかが分かったところで、いよいよ次は「どのように」登録するのか、具体的な登録手順について、第5章で詳しく見ていきましょう。

第5章 コリンズ登録の実践! 具体的な手順と最重要ポイント

さて、これまでの章でコリンズの目的や対象工事、登録のタイミングと種類についてご理解いただけたかと思います。いよいよこの章では、「じゃあ、実際にどうやって登録するの?」という具体的な手順について、ステップバイステップで解説していきます。

現在は、ほとんどの場合、JACICが提供する専用のシステムを使ってインターネット経由で登録を行います。一見、難しそうに感じるかもしれませんが、一つ一つの手順を確実にこなしていけば大丈夫です。ただし、特に重要な「ひと手間」がありますので、そこをしっかり押さえていきましょう。

誰が登録するの? 登録の責任者

基本は「元請負業者」

コリンズへの登録責任は、原則としてその工事を直接受注した元請負業者(もとうけぎょうしゃ)、つまり皆さんの会社にあります。下請け業者さんがいる場合でも、元請けである皆さんが代表して登録手続きを行うことになります。

登録はオンラインで JACICのシステムを利用

かつてはフロッピーディスクでデータを提出していた時代もありましたが、現在はJACICのウェブサイトにある専用システムにログインして、オンラインで情報を入力し、申請するのが主流です。これにより、迅速かつ効率的に登録が行えるようになっています。

コリンズ登録 7つのステップ

では、具体的な登録の流れを7つのステップに分けて見ていきましょう。

ステップ0 事前準備 JACICへの利用者登録

コリンズシステムを利用するには、まず皆さんの会社を利用者としてJACICに登録しておく必要があります。これは工事を受注するたびに行うものではなく、最初に一度、会社としてのIDやパスワードを取得する手続きです。まだお済みでない場合は、工事の受注が決まったら、あるいはその前から早めに手続きを済ませておきましょう。手続きには数日かかる場合もあります。

ステップ1 システムへログイン

利用者登録が完了し、IDとパスワードが手元にあれば、JACICのコリンズ・テクリスのポータルサイトからシステムにログインします。

ステップ2 工事情報の入力

ログイン後、登録する工事(受注・変更・完成など、該当する種類を選びます)に関する情報を画面の指示に従って入力していきます。入力する主な情報は、第1章で触れた「工事カルテ」の内容、つまり以下のような項目です。

  • 契約データ 発注機関名、工事件名、契約年月日、請負代金額、工期など
  • 工事データ 工事種別、施工場所、主な工法、工事概要など
  • 技術者データ 配置する主任技術者や監理技術者の氏名、資格など

入力項目は多岐にわたりますので、契約書や設計図書などを手元に用意し、正確に入力することが重要です。入力途中で一時保存することも可能です。

ステップ3 【最重要関門】 発注機関による内容確認

ここがコリンズ登録における最大のポイントであり、最も重要なステップです。システムに入力した内容が正しいかどうかを、工事の発注機関(工事を注文した役所などの担当者、例えば監督員さんや主任監督員さん)に確認してもらう必要があります。

思考プロセス なぜ発注機関の確認が必要?

考えてみてください。もし受注した会社が自由に情報を登録できてしまったら、その情報の信頼性は誰が保証するでしょうか? コリンズのデータは、第1章で述べたように、公共工事の入札参加資格の審査や、会社の評価に使われる「公的な証明書」としての性格を持ちます。だからこそ、発注者という「公的な立場」の人が内容を確認し、「この情報に間違いありません」という「お墨付き」を与えるプロセスが不可欠なのです。これにより、データの客観性と信頼性が担保されます。

確認の具体的な方法

一般的には、以下の手順で確認を受けます。

  1. システムから「登録のための確認のお願い」といった様式の書類をダウンロード・印刷します。(発注機関によっては独自の様式がある場合もあります。)
  2. 印刷した書類に、システムに入力した内容が反映されていますので、これを持って発注機関の担当者のところへ行き、内容を確認してもらいます。
  3. 内容に問題がなければ、担当者の方に署名(しょめい)または捺印(なついん)をもらいます。
例えるなら「稟議書の決裁」

社内で何か重要な決定をするとき、担当者が作成した稟議書(りんぎしょ)に上司や社長が目を通して承認の印鑑を押しますよね。あれに近いイメージです。皆さんが作成した「工事の登録申請書」に対して、発注機関が「内容を確認し、承認しました」という証しをもらう、大切なプロセスなのです。この確認なしに、勝手に登録を進めることはできません。

この確認作業には時間がかかることもありますので、登録期限(次のステップで触れます)から逆算して、早め早めに発注機関の担当者へお願いに行くことが肝心です。

ステップ4 確認情報の入力

発注機関の担当者から無事に確認印(またはサイン)をもらったら、システムに戻り、「誰に」「いつ」「どのように」確認してもらったか、という情報を入力します。確認者の氏名や役職、確認年月日などを入力する欄があります。

ステップ5 登録申請(最終提出)

全ての情報の入力と確認情報の入力が終わったら、内容を最終チェックします。工事の種類や金額によっては、ここで利用料金が発生する場合もありますので、画面の表示を確認しましょう。問題がなければ、「登録申請」や「送信」といったボタンをクリックして、JACICにデータを送信します。

ステップ6 登録完了の証 「登録内容確認書」の発行

登録申請が無事に受理されると、JACICから「登録内容確認書(とうろくないようかくにんしょ)」という書類が発行されます。これは通常、システム上でPDFファイルとしてダウンロードできるようになります。これが、コリンズに正式に登録されたことの証明書となります。

ステップ7 発注機関への提出(完了報告)

最後に、ダウンロードした「登録内容確認書」を、発注機関に提出します。提出方法は、印刷して持参・郵送する場合や、最近ではメールでの提出が認められる場合もありますので、発注機関の指示に従ってください。この提出をもって、一連の登録手続きが完了となります。

スムーズな登録のための心構え

以上がコリンズ登録の基本的な流れですが、スムーズに進めるためには以下の点を心がけましょう。

心構え具体的な行動
期限厳守第4章で触れた登録期限(契約後10日以内など)は非常にタイトです。特に発注機関の確認に時間がかかることを見越して、早めに取り掛かりましょう。
正確な入力登録データは後々まで残る会社の公式記録です。契約書や図面と照合し、誤りのないように慎重に入力しましょう。訂正も可能ですが、手間がかかります。
発注機関との連携特にステップ3の確認は、発注機関の協力なしには進みません。日頃から担当者と良好なコミュニケーションを保ち、確認をお願いしやすい関係を築いておくことも大切です。

手続きの重要性

コリンズ登録は、単なる事務作業ではありません。公共工事の契約において、仕様書などで登録が義務付けられている場合、この手続きを怠ると契約不履行とみなされる可能性もあります。会社の信頼に関わる重要な業務と認識し、確実に行うようにしましょう。


この章では、コリンズ登録の具体的なステップと、特に重要な発注機関の確認について詳しく解説しました。少し手間がかかる部分もありますが、一つずつ確実に進めれば大丈夫です。

さて、このようにして登録されたコリンズのデータが、最終的に皆さんの会社の評価、特に経営事項審査(経審)にどのように結びついていくのでしょうか。次の最終章では、コリンズ登録と経審の点数との関係について見ていきます。

第6章 コリンズ登録が経営事項審査(経審)の評価を変える! その具体的な影響とは

さあ、いよいよ本題の核心に迫ります。これまでコリンズの概要から登録方法まで見てきましたが、社長が一番知りたいのは、「このコリンズ登録という手続きが、自社の経営事項審査、いわゆる経審(けいしん)の点数に、具体的にどう影響するのか?」という点でしょう。

結論から申し上げますと、コリンズへの正確な登録は、経審の評価、ひいては公共工事の受注チャンスに直結する、極めて重要な要素です。この章では、その理由と具体的な影響について、経審の評価項目と関連付けながら詳しく解説します。

経審の評価とコリンズデータの関係 「信頼できる材料」の提供

経審とは? 会社の通知表

まず、経審(経営事項審査)をおさらいしますと、これは公共工事の入札に参加しようとする建設会社の経営状況や技術力などを、客観的な指標で評価する制度です。評価結果は点数化され、総合評定値(P点)として算出されます。このP点が高いほど、一般的に大きな規模や難易度の高い公共工事を受注できる可能性が高まります。

コリンズデータは「一級品の材料」

経審の評価は、皆さんの会社が提出する財務諸表や各種証明書に基づいて行われます。その中で、コリンズに登録されたデータは、特に公共工事に関する実績を証明する上で、非常に信頼性の高い「公式な証拠」として扱われます。

例えるなら「料理のレシピと食材」

経審の総合評定値(P点)という「最終的な料理」をより美味しく(=高く)するためには、レシピ(=評価基準)に沿って、良質で正確な「食材」(=証明書類やデータ)を使う必要があります。コリンズデータは、特に公共工事という分野において、発注機関のお墨付きを得た「一級品の食材」に相当します。この食材がなければ、公共工事の実績という重要な味付け(=評価)が、経審の料理(=P点)に正しく反映されないのです。

影響1.完成工事高(X1評点)への貢献 「いくら稼いだか」の証明

完成工事高とは?

経審における完成工事高(かんせいこうじだか)は、審査基準日(通常は決算日)直前の2年間または3年間に、皆さんの会社がどれだけの額の工事を完成させたかを示す指標です。会社の経営規模を示す重要な評価項目(評点X)の一つであり、特に公共工事の完成工事高はX1評点として評価されます。

コリンズが証明するもの

コリンズに登録された工事の請負代金額データは、皆さんの会社が「実際に、いくらの公共工事を完成させたか」を証明する、客観的で強力な根拠となります。

思考プロセス なぜコリンズデータが重要?

もちろん、会社の決算書(損益計算書)にも完成工事高は記載されています。しかし、経審、特に公共工事の評価においては、「どの発注機関から」「いくらの」工事を完成させたかという、より詳細で客観的な証明が求められます。コリンズデータは、第5章で説明したように発注機関の確認を経ているため、単なる自社申告以上の信頼性を持つと判断され、X1評点の算出において非常に重要な役割を果たすのです。

結果として、コリンズへの正確な登録は、皆さんの会社の公共工事における実績(X1評点)を、経審において正当に評価してもらうための基礎となります。 登録漏れがあれば、せっかくの実績が評価に反映されず、P点が低くなる要因になりかねません。

影響2.技術職員数(Z評点)の裏付け 「どんな技術者がいるか」の証明

技術職員数とは?

経審では、皆さんの会社にどれだけ有資格の技術職員(ぎじゅつしょくいん)が在籍しているかも評価されます(評点Z)。会社の技術力を示す重要な指標です。

コリンズが示すもの

コリンズには、その工事に配置された主任技術者(しゅにんぎじゅつしゃ)監理技術者(かんりぎじゅつしゃ)の氏名や保有資格が記録されます。

経審における活用
  • 在籍確認の補強 経審で申請する技術職員名簿と、コリンズに登録された配置技術者の情報が一致することで、技術職員の在籍や実際の現場経験を裏付ける補強材料となり得ます。(ただし、Z評点の主な評価は、審査基準日時点での在籍と保有資格に基づきます。)
  • 技術者の経験証明 個々の技術者がどのような工事に、いつ従事したかの客観的な記録として、対外的な経験証明にも活用できます。

コリンズの記録は、会社の技術力の根幹である技術職員の実際の活動を証明するデータとして、Z評点の信頼性を補強する役割を果たします。

影響3.入札参加資格審査での「信頼度」向上 経審の前段階でも活躍

コリンズのデータは、実は経審の評価だけでなく、その前段階である入札参加資格審査(にゅうさつさんかしかくしんさ)や、個別の工事入札においても直接的に利用されています。

発注機関による直接利用

公共工事の発注機関は、入札に参加しようとする建設会社が、その工事を遂行する能力(同種・類似工事の実績など)を持っているか、また、配置予定の技術者が他の工事と掛け持ちになっていないか(専任性の確認)などを判断するために、直接コリンズのデータベースを検索・確認しています。

信頼性への影響

  • 実績の客観的証明 発注機関は、コリンズで皆さんの会社の過去の類似工事実績を直接確認できます。
  • コンプライアンス意識の証明 登録義務のある工事について、期限内に正確に登録していること自体が、「ルールをきちんと守る会社」という信頼の証となります。
  • 将来への布石 継続的に良い実績をコリンズに積み重ねていくことが、発注機関からの信頼を高め、将来の受注機会の拡大につながります。

つまり、コリンズへの適切な対応は、経審対策であると同時に、日々の入札活動においても皆さんの会社の信頼性を高めるための重要な取り組みなのです。

結論 コリンズ登録は、評価と信頼の礎

これまでの内容をまとめます。

コリンズ登録の正確な実施がもたらすもの具体的な影響
経審(X1評点)への貢献公共工事の完成工事高を客観的に証明し、正当な評価を受ける基盤となる。
経審(Z評点)への貢献技術職員の配置実績を裏付け、技術力の信頼性を補強する。
入札・受注活動への貢献発注機関からの実績確認や信頼度向上に直接つながり、受注機会を拡大する。

経審制度の根拠

経営事項審査の評価項目や基準は、建設業法及び関連する国土交通省令・告示によって定められています。コリンズデータは、これらの法令等に基づく評価プロセスにおいて、客観的な実績データとして活用される位置づけにあります。

コリンズに、対象となる工事の実績を、正確に、漏れなく、そして期限内に登録していくこと。これが、経審で適切な評価を得て、公共工事受注という目標を達成するための、避けては通れない、そして非常に重要なステップであることを、ご理解いただけたでしょうか。


これで、コリンズに関する一連の解説は終わりとなります。最後に、これまでの内容を簡潔にまとめた「まとめ」をご用意しました。全体像を再確認し、今後の取り組みにお役立てください。

まとめ コリンズは未来への投資、公共工事への「信頼パスポート」

社長、ここまでコリンズに関する長い解説をお読みいただき、誠にありがとうございました。このブログ記事を通じて、コリンズが決して他人事ではなく、皆さんの会社の未来、特に公共工事への挑戦と経営事項審査(経審)において、いかに重要な役割を果たすかをご理解いただけたなら幸いです。

この記事で巡ってきたコリンズのポイント

ここで、本記事でお伝えしてきた重要なポイントを振り返ってみましょう。

主な内容キーワード
第1章コリンズとは何か? その目的と運営体制工事実績データベース, 公平性, 透明性, 品質確保, JACIC
第2章コリンズとテクリスの違い 「工事」と「業務」の区別工事(CORINS), 業務(TECRIS), 契約内容が重要
第3章どんな工事が登録対象? 発注機関と契約金額公共機関等, 税込み500万円以上, 契約変更時の注意
第4章いつ登録する? 登録の種類とタイミング受注登録, 変更登録, 完成登録, 期限厳守
第5章どうやって登録する? 具体的なステップと注意点オンライン申請, 発注機関の確認(最重要), 登録内容確認書
第6章なぜ重要? 経審(X1, Z評点)と入札への影響完成工事高証明, 技術者実績証明, 発注機関の信頼度向上, P点

コリンズは「単なる事務手続き」を超えた戦略的活動

思考プロセス 「面倒」から「武器」へ

日々の業務に追われる中で、コリンズ登録を「また一つ増えた面倒な事務作業」と感じてしまうお気持ちも、よく分かります。しかし、見方を変えれば、これは皆さんの会社の価値を公的に証明し、競争力を高めるための「戦略的な活動」と捉えることができます。手間をかけるだけの価値が、そこには確かに存在するのです。

コリンズへの登録は、単に義務だからこなす作業ではありません。それは、

  • 皆さんの会社が積み上げてきた努力と実績を「見える化」し、公に示す行為です。
  • 発注機関に対して、「私たちはこれだけの仕事を、きちんとやり遂げる力があります」と客観的に証明する行為です。
  • 経審の点数、ひいては公共工事の受注という具体的な成果に直結する、未来への投資活動です。

コリンズ登録成功の秘訣 再確認

この重要な活動を成功させるためには、以下の3つの要素が鍵となります。

  • 正確性 登録する情報に誤りがないこと。契約書や事実に基づき、慎重に入力しましょう。
  • 迅速性(期限厳守) 定められた期限内に必ず登録を完了させること。遅延は評価に影響しかねません。
  • 連携(発注機関とのコミュニケーション) 特に確認作業において、発注機関担当者との円滑な連携は不可欠です。

未来へ繋がる 「信頼のパスポート」 を育てよう

コリンズを、海外へ行くための「パスポート」に例えてみましょう。初めてパスポートを作るときは手続きが少し面倒かもしれません。しかし、一度手に入れれば、それはあなたを世界へ連れて行ってくれる証明書になります。

そして、コリンズ登録は、そのパスポートに押される「スタンプ」のようなものです。一つ一つの工事実績というスタンプが増えるたびに、皆さんの会社が「どんな国(=工事の種類や規模)を訪れ、何を成し遂げてきたか」が証明され、より多くの、より魅力的な「渡航先(=公共工事の受注機会)」への扉が開かれていくのです。

コリンズへの正確な登録を継続することは、皆さんの会社の「信頼のパスポート」を着実に育て、事業の可能性を広げていくことに他なりません。

最後に 情報収集と確認の徹底を

コリンズの制度や運用方法は、今後変更される可能性もあります。常に最新の情報を得るためには、

  • JACICの公式ウェブサイトを定期的に確認する。
  • 登録システムの操作マニュアルやFAQを参照する。

といった自主的な情報収集が大切です。

そして、個別の工事の登録手続きで不明な点や判断に迷うことがあれば、必ず契約相手である発注機関に直接確認することを徹底してください。自己判断による誤りは、後々修正するのが大変です。

このブログが、社長のコリンズに対する理解を深め、今後の事業展開、特に公共工事への積極的な挑戦の一助となれば、これ以上の喜びはありません。

免責事項

この記事は、2025年4月21日現在の情報に基づき、コリンズに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものです。特定の建設業者の個別具体的な状況に対する法的な助言や、手続きの完全性を保証するものではありません。制度内容や運用、システム仕様等は変更される可能性があります。実際の登録手続きや判断にあたっては、必ずJACICが提供する最新の公式情報をご確認の上、契約書や仕様書に基づき、発注機関に直接ご確認・ご相談くださいますようお願い申し上げます。必要に応じて、建設業専門の行政書士など専門家へのご相談もご検討ください。

NOTE

業務ノート

PAGE TOP