安全衛生経費 ── 令和7年12月から工事費内訳書に書く項目が増えました
見積の内訳明示そのものについては改正建設業法「見積内訳明示」の実務で扱っています。この記事は、そのうち安全衛生経費に絞ったものです。
第一章令和7年12月12日から、内訳書の項目が増えた
根拠は入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)第12条です。令和6年法律第49号による改正が段階的に施行され、令和7年12月12日以降に提出する工事費内訳書から、次の項目を書くことになりました。
根拠は入契法第12条(令和6年法律第49号による改正)。安全衛生経費は建設職人基本法、建退共の掛金は中小企業退職金共済法に由来する項目です。無効の取扱いは発注者ごとに定められているため、参加する工事の入札説明書で必ずご確認ください。
材料費・労務費・法定福利費は、これまでも書いてきた会社が多いはずです。新しく加わったのは、建退共の掛金と安全衛生経費の二つです。安全衛生経費のほうは、これまで現場管理費や共通仮設費に溶け込ませていた費用を、独立した項目として出すことになります。
第二章書き漏らすと、入札が無効になる
ここが本題です。工事費内訳書は、金額の妥当性を見るためだけの書類ではありません。提出そのものが入札参加の要件です。
安全衛生経費の欄が空欄のまま出れば、この「一部が提出されていない」に当たり得ます。金額を積む前に、欄を埋められる状態になっているかどうかが先です。
第三章安全衛生経費とは、何を指すのか
国土交通省の整理では、二つに分かれます。
国土交通省の見積書作成手順(案)による整理です。確認表に載っていない対策が現場で必要になったときは、追加項目として注文者と確認します。積み上げが難しい場合に、安全衛生経費率を労務費に乗じて算出する方法も示されています。
この区分が実務で効くのは、どちらが負担するかが工事ごとに違うからです。足場の安全対策を元請が用意する現場もあれば、下請が持ち込む現場もあります。保護具を会社が支給しているか、職人の自前かも会社によって違います。負担していない項目を自社の内訳書に積めば過大な見積になり、負担しているのに積まなければ自腹になります。
第四章元請の話で終わらない ── 下請の見積書へ
公共工事の内訳書は元請が出すものです。ただ、そこに積んだ安全衛生経費は、下請に支払われて初めて意味を持ちます。国土交通省は、専門工事業団体に対して安全衛生経費を内訳として明示した「標準見積書」の作成・普及を求めており、型枠・左官・鉄筋・鳶・コンクリート圧送などの団体で整備が進んでいます。
標準見積書の使用そのものは、いまのところ義務ではありません。国が団体に作成を要請し、普及を図っている段階です。ただ、元請側が内訳書で安全衛生経費を明示するようになった以上、下請から上がってくる見積にも同じ欄が求められる流れになります。
下請の立場からいえば、これは値上げ交渉の話ではありません。これまで請負金額に溶け込んでいて見えなかった費用を、見える形にするだけです。見えるようになれば、削られたときに「どこを削ったのか」を指せます。
第五章つまずきの記録
複合単価のままで欄が埋められなかった
従来の複合単価は、安全対策の費用を単価に溶かし込んでいます。溶かし込んだままでは、安全衛生経費として取り出せません。積算の作り方から変える必要があり、締切の直前に気づくと間に合いません。
確認表を受け取らずに見積を出した
どの対策を誰が負担するかは、見積条件の提示の段階で確認するものです。確認表が来ないまま自社の判断で積むと、後で「それはうちが用意する」と言われて減額されます。提示がなければ、こちらから求めてください。
建退共の掛金を書き忘れた
安全衛生経費と同じ改正で加わった項目です。対象となる労働者がいるのに空欄で出すと、内訳書の不備として扱われ得ます。証紙の購入実績とあわせて、経審のW点にも効く項目です。
確認入札の前に確かめる五つ
- 参加する工事の入札説明書で、内訳書の様式と記載項目を確認したか
- 安全衛生経費の欄を埋められる積算になっているか。複合単価のままではないか
- 見積条件の提示で、どの安全対策を自社が負担するのか確認したか
- 建退共の掛金の欄は、対象労働者の有無に応じて埋めたか
- 日付・商号・工事名・工事場所・工種に記載漏れがないか
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