設計労務単価|行政書士村上事務所

令和8年度の設計労務単価 ── 4.5%上がり、労務費の基準の土台になった

令和8年3月から適用される公共工事設計労務単価が、令和8年2月17日に公表されました。全国全職種の単純平均で前年度比4.5%の引き上げ、加重平均値は25,834円で、初めて2万5千円を超えています。14年連続の上昇です。ただし今年の本当の変化は数字ではありません。この単価が、改正建設業法の「労務費に関する基準」の計算の基礎に位置づけられたことです。

構成:一 令和8年3月からの単価/二 熊本県の主な職種/三 単価に入っているもの、いないもの/四 位置づけが変わった/五 見積りと契約への反映

第一章令和8年3月からの単価

項目 内容
公表 令和8年2月17日(国土交通省)
適用 令和8年3月から
上昇率 全国全職種の単純平均で前年度比4.5%(前年度は6.0%)
加重平均値 25,834円/日。初めて25,000円を超えた
連続上昇 平成25年度の改定から14年連続

単価は所定労働時間内8時間当たりの金額です。日給ではなく、8時間分という前提を外すと計算が狂います。

第二章熊本県の主な職種

単価は都道府県ごとに設定されます。熊本県の令和8年3月適用分から、建設の現場で使う頻度の高い職種を並べます。

職種 熊本県(円/日) 職種 熊本県(円/日)
土木一般世話役 32,300 鉄筋工 30,000
大工 29,200 とび工 29,000
左官 28,400 型わく工 27,900
運転手(特殊) 27,400 特殊作業員 27,100
電工 26,500 配管工 25,300
運転手(一般) 23,800 普通作業員 22,100
軽作業員 18,200 交通誘導警備員A 17,700
交通誘導警備員B 15,500    

※国土交通省の報道発表資料(令和8年2月17日)の都道府県別表から、熊本県の行を確認したものです。掲載のない職種は同資料でご確認ください。

第三章単価に入っているもの、いないもの

「この金額をそのまま職人に払うのか」という問いが必ず出ます。単価の中身を分けて見ると、答えははっきりします。

図 単価に入っているもの、いないもの設計労務単価は、どこまでを賄う金額か公共工事設計労務単価単価の外基本給相当額割増賃金(時間外・休日・深夜)基準内手当通常を超えた労働への手当臨時の給与(賞与等)法定福利費(事業主負担分)実物給与(食事の支給等)研修訓練費・一般管理費等積算上は現場管理費に含まれている8時間当たりの金額「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」国土交通省 令和8年2月17日 報道発表資料

単価は賃金の話です。事業主が負担する法定福利費や研修訓練費は単価の外側にあり、積算上は現場管理費で手当てされています。

入っているもの 入っていないもの
基本給相当額 時間外・休日・深夜の割増賃金
基準内手当 通常の作業条件・内容を超えた労働への手当
臨時の給与(賞与等) 現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練費等)
実物給与(食事の支給等) 一般管理費等の諸経費
事業主負担の法定福利費は、単価の外にある

健康保険・厚生年金の事業主負担分は、単価には含まれていません。積算上は現場管理費に含まれているという建てつけです。

国土交通省は報道発表の一枚目で、こう明記しています。「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」

つまり「設計労務単価どおりに払っているから十分だろう」という説明は成り立ちません。単価は賃金の話で、必要経費はその外側にあります。

第四章位置づけが変わった

ここが今年の最大の変化です。従来、設計労務単価は「公共工事の予定価格を積算するためのもの」と説明されてきました。令和8年版の資料は、そこから踏み込んでいます。

令和8年版の留意事項(原文)

「公共工事設計労務単価は公共工事の工事費の積算に用いるために設定するものであるが、建設業法第34条第2項に基づき、中央建設業審議会から勧告された『労務費に関する基準』において、全ての建設工事の請負契約において確保されるべき『通常必要と認められる労務費(適正な労務費)』の計算の基礎となる水準としても、公共工事設計労務単価が位置づけられており、公共工事・民間工事を問わず、下請取引を含め、この適正な労務費が確保されるべきであること。」

労務費に関する基準は、令和7年12月2日に中央建設業審議会が勧告し、改正建設業法は令和7年12月12日に全面施行されました。基準の計算式はこうなっています。

  • 適正な労務費 = 適切な職種の公共工事設計労務単価 × 適正な歩掛
  • 労務単価は工事の施工場所が属する都道府県のものを使う
  • 公共工事設計労務単価を下回る水準を設定しないこと

熊本で施工するなら、熊本県の単価が基準になります。設計労務単価が上がれば、適正な労務費の水準も自動的に上がります。労務費の基準の記事で、勧告・公表の仕組みを整理しています。

第五章見積りと契約への反映

  1. 職種と歩掛を分けて持つ ── 一式見積りのままでは、単価の根拠を示せません
  2. 都道府県を間違えない ── 施工場所の単価を使います。本社所在地ではありません
  3. 必要経費を別建てで積む ── 法定福利費の事業主負担分は単価の外。値引きの対象にしない
  4. 3月をまたぐ工事に注意 ── 適用は令和8年3月から。既契約の変更の可否は発注者に確認します
つまずき 防ぎ方
単価を日給と思って計算した 所定労働時間内8時間当たりの金額です
単価どおり払っているから問題ないと考えた 事業主負担の法定福利費は単価の外。別に確保する
本社所在地の単価で積算した 施工場所の属する都道府県の単価を使う
民間工事だから関係ないと考えた 労務費の基準は公共・民間を問わない

※単価・上昇率は国土交通省の公表内容が正です。職種別・都道府県別の全表は報道発表資料でご確認ください。

見積書の様式を「職種×歩掛×単価」で組み直す作業は、一度やれば毎年の更新で済みます。契約書のスライド条項の点検とあわせてお手伝いできます。

執筆体制

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