村上事務所

待ったなし!建設業の「人手不足」と「働き方改革」の現在地と未来への処方箋

【2025年目前】待ったなし!建設業の「人手不足」と「働き方改革」の現在地と未来への処方箋

はじめに。私たちの仕事場に起きている、二つの大きな変化

建設業界で働く皆さんの間で、「最近、現場の人手が足りないな」「残業のルールが厳しくなったらしい」といった会話が増えていないでしょうか。実は今、日本の社会を支えるこの建設業界は、とても大きな転換期を迎えています。それは、避けては通れない、二つの大きな課題に同時に向き合わなければならない状況です。

この二つの課題は、まるでパズルのピースのように複雑に絡み合っています。片方だけを考えても、もう片方が解決しなければ、全体の絵は完成しません。この記事では、その複雑なパズルの全体像を、誰にでも分かるように、一つひとつ丁寧に解きほぐしていきます。

思考の出発点。なぜこの二つの課題は同時に語られるのか

まず、私たちの目の前にある課題を整理してみましょう。一つは「働く人がどんどん減っている」という問題。もう一つは「働き方のルールが新しく、そして厳しくなった」という問題です。この二つがどうして密接に関係するのか、例え話で考えてみます。

想像してみてください。ここに、水を溜めるための大きな「バケツ」があります。このバケツが「建設業界」です。

課題1 人手不足という名の「バケツの穴」バケツの底に、少しずつ穴が開き始めています。これが「人手不足」です。経験豊富な職人さんたちが次々と引退し、新しい若い世代が思うように入ってこないため、業界全体から働く人がじわじわと減っています。穴が大きくなれば、バケツの中の水、つまり業界を支える力はどんどん失われてしまいます。
課題2 働き方改革という名の「蛇口の調整」一方で、国は新しいルールを決めました。これが「働き方改革」です。このルールは、バケツに水を注ぐ「蛇口」を調整するようなものです。「今までのように、夜遅くまで水を出しっぱなしにするのはやめましょう。働く人の健康を守るため、水の量、つまり労働時間には上限を設けます」と定められました。これは、労働基準法という法律によって定められた、国全体の取り組みです。

お分かりでしょうか。穴が開いて水が漏れ続けているバケツに、注げる水の量が制限されてしまったのです。これでは、バケツを満たすどころか、空になってしまう危険さえあります。だからこそ、「人手不足(バケツの穴をふさぐこと)」と「働き方改革(限られた水でやりくりすること)」は、必ずセットで考えなければならない、喫緊の課題なのです。

知っておくべき法律の話。働き方改革関連法とは

ここで少し専門的な話をします。「働き方改革」は、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に基づいています。これは一つの法律の名前ではなく、働く人たちの健康を守り、多様で柔軟な働き方を実現するために、関連する様々な法律をまとめて改正したものです。

根拠となる法律内容の簡単な説明
労働基準法働く時間の上限や、休日、休憩についてのルールを定めています。今回の改革で特に重要になるのが、時間外労働、つまり残業時間の上限が罰則付きで定められた点です(労働基準法第36条)。これまで建設業には適用に猶予期間がありましたが、2024年4月1日から、この上限規制が完全に適用されることになりました。
労働安全衛生法働く人の安全と健康を守るための法律です。長時間の労働は心身の健康を損なうリスクが高いことから、労働時間を客観的に把握することなどが企業に義務付けられています。

これらの法律は、過去に起きた痛ましい過労死事件などを背景に、働く人を守るという社会全体の強い要請から生まれました。決して、単に仕事を不便にするためのルールではないのです。

この記事を通じて、こうした複雑な状況を正しく理解し、自社や自分自身の未来を考えるための土台となる知識を提供します。まずは次の章で、一つ目の課題である「人手不足」が、具体的な数字で見てどれほど深刻な状況にあるのかを、詳しく確認していきましょう。

まとめ

この記事の導入で伝えたかったこと
課題の構造
建設業界の現状二つの大きな課題
課題1 人手不足(バケツの穴)高齢化と若者離れで働く人が減少
課題2 働き方改革(蛇口の調整)法律で労働時間に厳しい上限が設定

結論:二つは連動しており、同時解決が必須

【現状】数字で見る、建設業の深刻なリアル

先ほどの「はじめに」では、建設業界が直面する課題を「穴の開いたバケツ」に例えました。この章では、その穴が一体どれほど大きく、そして深刻なのかを、具体的な数字という「ものさし」を使って測っていきましょう。感覚的な「大変だ」という気持ちを、誰もが否定できない客観的な事実に置き換えて見ていきます。

減り続ける仲間たち。就業者数の移り変わり

まず、建設業界で働く人の数そのものが、大きく減り続けています。最も多かった頃と今を比べると、その変化の大きさに驚くかもしれません。

ピーク時(1997年)の就業者数約685万人
近年(2022年)の就業者数約479万人
減少した割合約30%の減少

これは、かつて10人の仲間で進めていた現場が、今では7人で行わなければならない状況に等しいです。一人ひとりの負担が大きくなっているのは、こうした背景があるからです。そして、この流れは今も続いており、対策を講じなければ、さらに厳しい状況が予測されています。

働く人の年齢構成。ベテラン頼りの現場が示す未来

働く人の数が減っていることに加え、さらに深刻なのが、その年齢構成です。今の建設現場が、いかに経験豊富なベテランの力に支えられているか、そして、その未来がいかに危ういかが、数字から見えてきます。

全産業と比べても高い高齢化の波

建設業全ての産業の平均
55歳以上の就業者が占める割合35.5%31.5%

上の表が示すように、建設業で働く人のうち、3人に1人以上が55歳以上です。これは他の産業と比べても高い水準であり、業界全体の高齢化が著しく進んでいる証拠です。

特に深刻な技能者の高齢化と、失われる技術

問題はさらに深くなります。建設現場の中心的な役割を担う「技能者」、つまり専門的な技術を持つ職人さんたちに目を向けると、この傾向はより一層鮮明になります。

建設技能者のうち、60歳以上が占める割合約25.7% (およそ4人に1人)

これは、現場の最前線にいる職人さんの4人に1人が、還暦を迎えているという現実を示しています。彼らが持つ長年の経験と勘、そして言葉では伝えきれない「匠の技」は、建設工事の品質を支える土台そのものです。しかし、その多くが今後10年以内に現場を去ることを考えると、「技能承継の危機」という言葉が決して大げさではないことが分かります。貴重な技術が、教える相手がいないまま失われてしまう危険性が、すぐそこに迫っているのです。

未来を担う若手の不足

ベテランが引退していく一方で、その技術を受け継ぎ、未来の業界を担うはずの若い世代は、なかなか増えていません。

建設業の就業者のうち、29歳以下が占める割合約12.0%

この数字もまた、全産業の平均より低い水準です。かつて言われた「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージに加え、長時間労働や休日が少ないといった労働条件への懸念が、若者たちの足をとどまらせる一因と考えられています。

そして、忍び寄る「2025年問題」という大きな波

これまで見てきた個別の問題に、さらに拍車をかけるのが「2025年問題」です。

2025年問題とは

これは、日本の人口の中で最も大きなボリュームを占める「団塊の世代」が、全員75歳以上の後期高齢者となることで生じる、社会全体への影響を指す言葉です。労働人口が急激に減少し、医療や介護の需要が爆発的に増加すると予測されています。

日本全体が経験するこの大きな人口減少の波は、当然、建設業界にも容赦なく押し寄せます。ある試算では、建設業だけで新たに約90万人の人手不足が発生するとも言われており、事態はまさに待ったなしです。

このように、具体的な数字で見ていくと、建設業界が直面する「人手不足」という課題がいかに構造的で、深刻であるかがお分かりいただけたかと思います。「バケツの穴」は、私たちが想像している以上に大きく、そして確実に広がり続けているのです。

では、このように人手が足りず、現場が逼迫している状況の中で、次の章で解説する「働き方のルール」、つまり労働時間の上限規制が加わると、一体何が起きるのでしょうか。

【ルール】もう逃げられない「働き方改革」の重要ポイント

第1章では、建設業界の「バケツ」に、人手不足という大きな「穴」が開いている現実を数字で確認しました。では、その状況で、バケツに注がれる水の量を調整する「蛇口」、つまり働き方のルールは、どのように変わったのでしょうか。

この章では、建設業で働くすべての人に関わる、新しい法律のルールを具体的に解説します。特に2024年4月1日から、建設業にも例外なく適用されることになった、いわゆる「2024年問題」の核心部分です。「知らなかった」では済まされない、非常に重要なポイントを整理していきましょう。

最大の変更点。時間外労働の上限規制とは

今回の働き方改革で最も大きなインパクトを持つのが、時間外労働、つまり残業時間に対する、法律による上限の設定です。これは労働基準法という法律で定められており、違反した事業者には厳しい罰則が科されます。国が設けた、残業時間の「赤信号」と考えてください。

原則のルールと、特別な事情がある場合のルール

残業時間の上限には、普段守るべき「原則」と、どうしても忙しい時期などに適用される「特別な事情がある場合」の、二段階のルールがあります。

ルールの種類時間外労働の上限
原則月45時間、かつ、年360時間
特別な事情がある場合(臨時的なものに限る)・年720時間以内・複数月(2ヶ月から6ヶ月)の平均が、すべて80時間以内(休日労働を含む)・単月では、100時間未満(休日労働を含む)・原則である「月45時間」を超えられるのは、年6回まで

「特別な事情がある場合」のルールを適用するには、労働者と使用者の間で事前に「36(サブロク)協定」という約束事を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。しかし、その特別ルールにも、これ以上は絶対に超えてはならない、という厳しい上限が設けられたのが今回の大きな変更点です。

もし、ルールを破ってしまったら

この上限規制に違反した場合、事業者(会社や事業主)に対して、法律に基づいた罰則が科される可能性があります。

罰則の内容6ヶ月以下の懲役 または 30万円以下の罰金

これは、単なる努力目標ではなく、必ず守らなければならない法的な義務なのです。

災害からの復旧、復興事業の場合

なお、大規模な災害からの復旧や復興に関わる事業については、国民の安全確保の観点から、一部の規制(「月100時間未満」「複数月平均80時間以内」)は適用されません。しかし、これも無制限に働いて良いという意味ではなく、働く人の健康への配慮が不可欠であることは言うまでもありません。

コストに直結するルール。割増賃金率の引き上げ

働き方のルール変更は、働く時間だけでなく、お給料、特に会社のコストにも直接影響します。2023年4月1日から、大企業だけでなく、中小企業においても残業代の計算ルールが変更されています。

時間外労働の時間割増賃金率
月60時間までの部分25%以上
月60時間を超える部分50%以上

つまり、月に60時間を超えて残業した場合、その超えた部分の時給は、通常の1.5倍以上で計算しなければなりません。これは、長時間労働を抑制すると同時に、企業の経営にとっては人件費の増加という形で重くのしかかります。

休ませる義務。年次有給休暇の確実な取得

これも既に始まっている重要なルールです。企業は、年間に10日以上の有給休暇が与えられる全ての労働者に対し、そのうちの5日間については、時季を指定するなどして、確実に取得させなければなりません。

対象となる人

正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトなど、雇用形態にかかわらず、条件を満たすすべての労働者が対象となります。これも違反した場合には、事業者に対して罰則(30万円以下の罰金)が科される可能性があります。

このように、新しいルールは「労働時間の上限」「コスト」「休日」という、事業運営の根幹に関わる部分に、大きな変化を求めています。これまでのやり方が、もはや通用しない時代に突入したのです。

では、第1章で見たような深刻な人手不足の中で、この第2章で確認した厳しいルールを守ろうとすると、建設業界の現場や経営には、具体的にどのような影響が及ぶのでしょうか。次の章では、その光と影、特に避けては通れない課題について、さらに深く掘り下げていきます。

【影響】規制強化が引き起こす「三重苦」とは?

第1章で、建設業界という「バケツ」に人手不足という「穴」が開いていることを見ました。そして第2章では、そのバケツに水を注ぐ「蛇口」が、働き方改革という法律によって固く締められたことを確認しました。

では、「穴の開いたバケツ」と「固く締まった蛇口」という二つの現実が組み合わさった時、私たちの仕事場では具体的に何が起きるのでしょうか。法律で労働時間が短くなったからといって、明日から急に仕事の量が減るわけではありません。むしろ、これまで見過ごされてきた問題が、より一層深刻な形で表面化し始めています。この章では、その厳しい現実を直視していきます。

それぞれの立場で感じる、改革の「光と影」

働き方改革は、働く人の健康を守るという大切な目的を持っていますが、その影響は立場によって異なって見えます。

働く人(労働者)の視点。収入への不安

これまでの給与が、基本給に加えて多くの残業代が含まれることで成り立っていた場合、労働時間が規制されることは、そのまま収入の減少に直結する可能性があります。「早く帰れるのは嬉しいけれど、生活が苦しくなるのは困る」というのが、正直な気持ちかもしれません。

現場(プロジェクト)の視点。高まる工期遅延のリスク

限られた人数と時間の中で、これまでと同じ品質の仕事を、同じ期間で終わらせることは非常に困難になります。生産性を劇的に向上させない限り、「工期を守るために無理をすれば法律違反、法律を守れば工期が遅れる」という、まさに板挟みの状態に陥るリスクが高まっています。

会社(経営者)の視点。増え続けるコストと経営リスク

労働時間が減った分を補うために新しい人を雇おうにも、第1章で見た通り、採用は非常に困難です。少ない人数で現場を回すために残業が発生すれば、第2章で見たように、その割増賃金率は以前よりも高くなっています。人件費はかさみ、会社の利益を圧迫します。最悪の場合、人手不足が原因で工事を受注できなかったり、採算が悪化したりして、会社の存続そのものが危うくなる「人手不足倒産」のリスクも現実味を帯びています。

問題の核心。「労働力不足」「時間制約」「コスト上昇」の三重苦

これらの個別の課題は、それぞれが独立しているわけではありません。互いに密接に絡み合い、一度陥ると抜け出すのが難しい「負のスパイラル」を生み出します。私たちは、この構造的な問題を「三重苦」と呼んでいます。

第一の苦。労働力不足全ての問題の根源です。人が足りないから、一人当たりの仕事量が増えます。
第二の苦。時間制約働き方改革による、厳しい労働時間の上限です。仕事が多くても、無限に残業することは許されません。
第三の苦。コスト上昇人を新たに雇うための採用費、そして月60時間超で50%に引き上げられた割増賃金など、人に関わる費用が増大しています。

三重苦が引き起こす、負のスパイラル

この三つの「苦」が、どのように連鎖していくのかを見てみましょう。

ステップ1人手不足で、現場の仕事が終わらない。
ステップ2工期に間に合わせるため、残業時間が増えそうになる。
ステップ3しかし、時間外労働の上限規制(時間制約)があるため、残業させられない。
ステップ4結果、生産性が上がらなければ、工期は遅れてしまう。工期が延びれば、その分、現場の経費は余計にかかる(コスト上昇)。
ステップ5対策として新しい人を雇おうとするが、採用は困難で、採用コストもかかる(コスト上昇)。
ステップ6結局、少ない人数で厳しい工期に追われ、現場の負担は増すばかり。労働環境は改善されず、さらに人が離れていく(労働力不足の深刻化)。

このように、「労働力不足」「時間制約」「コスト上昇」は、互いが互いの原因となり、結果となることで、状況をさらに悪化させてしまうのです。この構造を正しく理解することこそが、問題解決への第一歩となります。

では、この八方塞がりのような「三重苦」から抜け出し、持続可能な建設業界を築いていく道はあるのでしょうか。絶望的な状況に見えますが、打つ手はあります。

次の最終章では、この厳しい三重苦に立ち向かうための具体的な「処方箋」について、詳しく見ていきます。

【対策】未来を切り拓く3つの処方箋

第3章では、建設業界が直面する「三重苦」という、厳しい悪循環の構造を見てきました。「人手が足りない」「時間は限られている」「コストは上がるばかり」という八方塞がりのような状況に、暗い気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ただ手をこまねいているわけにはいきません。問題の構造が分かったからこそ、打つべき手が見えてきます。この最終章では、厳しい状況を乗り越え、未来の建設業界をより魅力的な場所にするための、具体的な「処方箋」を3つ、ご紹介します。

処方箋① 生産性向上。テクノロジーで時間と人手の壁を越える

限られた人数と時間で、これまで以上の成果を出すために、もはや避けては通れないのが「生産性の向上」です。その最大の武器となるのが、ICT(情報通信技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)といったテクノロジーの力です。これは、時間と体力の消耗を抑えるための、いわば「特効薬」です。

小さな一歩から始める建設DX

「DX」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、特別なことばかりではありません。例えば、スマートフォンやタブレットのアプリで現場の図面を確認したり、写真の整理をしたりすることも、立派な第一歩です。紙の書類を減らし、情報の共有をスムーズにするだけでも、移動や探すといった無駄な時間を大幅に削減できます。

BIM/CIMという強力な武器

さらに強力な武器が、BIM/CIM(ビム/シム)です。これは、コンピューター上に、現実に建てるものとそっくりな3Dモデル(デジタルの双子)を作り、そこに設計やコスト、工程など、あらゆる情報を詰め込む技術です。着工前に、部材がぶつからないか、作業に無理がないかなどをシミュレーションできるため、現場での手戻りや無駄を劇的に減らすことができます。

処方箋② 人材確保と処遇改善。「ここで働きたい」と思われる業界へ

テクノロジーがいかに進化しても、建設の主役は「人」です。人手不足という根本的な問題を解決するには、業界の体質そのものを改善し、新しいエネルギーを取り込む、いわば「漢方薬」のような取り組みが不可欠です。若者をはじめ、多くの人から「建設業界で働きたい」と思ってもらえるような魅力づくりが求められます。

鍵を握る「建設キャリアアップシステム(CCUS)」

その切り札として国が推進しているのが、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」です。

CCUSとは職人さん一人ひとりの資格や現場での経験を、専用のICカードに記録、蓄積していく仕組みです。いわば、建設技能者版の「デジタルな技能経歴書」です。
その目的これまで個人の記憶や会社の評価に頼りがちだった技能や経験を、業界共通の「ものさし」で見える化し、頑張った人が正当に評価され、それに見合った待遇を受けられるようにすることです。

このCCUSが普及し、「このカードのレベルが上がれば、給料も上がる」という具体的な賃金体系と結びつくことで、技能者は将来のキャリアパスを明確に描くことができます。これは、若手が入職し、定着するための大きな魅力となるはずです。2023年度からは公共工事でCCUSの活用が原則化されており、この流れは今後さらに加速します。

処方箋③ 常識を変える「適正な工期設定」。現場だけの努力にしない

最後の処方箋は、いわば「生活習慣の改善」です。現場がどれだけ生産性を上げ、会社が処遇を改善しても、そもそも発注される工事の工期が無理な設定であれば、全ての努力は水の泡となってしまいます。

発注者を含めた、業界全体の協力

「短納期は正義」という、これまでの古い常識を、業界全体で見直す時期に来ています。働き方改革のルールを守り、安全で質の高い工事を行うためには、それに見合った適切な工期と、適切な価格での契約が不可欠です。これは、受注者側から発注者側へ、粘り強く働きかけていく必要があります。無理な工期は、品質の低下や労働災害のリスクを高めるだけで、誰の利益にもならないという共通認識を、社会全体で育てていくことが重要です。

まとめ

ここまで、建設業界が直面する厳しい「現状」、守らなければならない新しい「ルール」、それが引き起こす「影響」、そして未来を切り拓くための「対策」について見てきました。

私たちの現在地深刻な「人手不足」と、待ったなしの「働き方改革」という、大きな変化の渦中にいます。
直面する課題「労働力不足」「時間制約」「コスト上昇」の三重苦という、厳しい悪循環に陥るリスクがあります。
未来への道筋しかし、この変化は、業界の古い体質から脱却するための「きっかけ」でもあります。1.生産性向上(DX/ICT)で、働き方を変える。2.人材確保と処遇改善(CCUS)で、人を育てる。3.適正な工期設定で、働く環境を整える。この3つの処方箋に総合的に取り組むことが、未来への道筋を示しています。

これらの課題を乗り越えることは、決して簡単ではありません。しかし、変化をただの「危機」として恐れるのではなく、新しい建設業界を創る「好機」と捉え、私たち一人ひとりが、それぞれの立場で行動を起こすことが今、求められています。その先にこそ、持続可能で、誰もが誇りを持って働ける建設業の未来が待っているはずです。

【まとめ】変化の時代を「チャンス」に変えるために

ここまで、建設業界が直面する「人手不足」という深刻な現状、守らなければならない「働き方改革」の新しいルール、それが引き起こす「三重苦」という厳しい影響、そして未来を切り拓くための3つの「処方箋」について、順を追って見てきました。

私たちの現在地深刻な「人手不足」と、待ったなしの「働き方改革」という、大きな変化の渦中にいます。これは、業界の構造そのものが問われる、歴史的な転換点です。
直面する課題「労働力不足」「時間制約」「コスト上昇」の三重苦という、厳しい悪循環に陥るリスクがあります。これまでのやり方が通用しない、という現実を直視しなければなりません。
未来への道筋しかし、この大きな変化は、業界の古い体質から脱却し、新しく生まれ変わるための「きっかけ」でもあります。
1.生産性向上(DX/ICT)テクノロジーの力で、働き方そのものを根本から変える。2.人材確保と処遇改善(CCUS)「人」を育て、頑張りが報われる魅力的な職場を創る。
3.適正な工期設定業界全体の協力で、無理のない健全な働く環境を整える。この3つの処方箋に総合的に取り組むことが、未来への唯一の道筋を示しています。

これらの課題を乗り越えることは、決して簡単ではありません。しかし、変化をただの「危機」として恐れるのではなく、新しい建設業界を創る「好機」と捉え、私たち一人ひとりが、それぞれの立場で行動を起こすことが今、求められています。その先にこそ、持続可能で、誰もが誇りを持って働ける建設業の未来が待っているはずです。

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