熊本建設業経営戦略センター(技術士/一級建築士/行政書士)

【速報】中東情勢が直撃!「ナフサショック」による建設資材の価格高騰と供給不足への緊急対応策

建設業界において、中東情勢の緊迫化に伴う深刻な「ナフサショック」が発生しています。ホルムズ海峡の実質的な封鎖懸念などによる原油の供給不安を背景に、燃料費の上昇だけでなく、石油化学製品の基礎原料であるナフサを使用するほぼ全ての建設資材において、急激な価格高騰と供給遅延が顕在化しています。

本記事では、全国建設業協会(全建)が令和8年(2026年)4月30日に国土交通大臣に提出した緊急要望書および緊急アンケート結果をもとに、現状の深刻な影響と、建設業者が今すぐ取るべき実務対応について解説します。

1. 建設資材の価格高騰と供給遅延の実態

全国建設業協会が令和8年4月に実施した緊急アンケート(回答15社)によると、建設現場に不可欠な多岐にわたる資材で、前例のない規模の価格上昇と納期遅延が報告されています。

主要資材の価格上昇率(令和8年4月時点)

資材名 価格上昇率の目安 供給・納期の状況
シンナー・塗料・仕上げ材 70〜80%上昇 入荷未定・長期化
断熱材・防水材 30〜50%上昇 出荷制限により納期不透明
EPS(発泡スチロール系) 40%以上上昇 供給不足
ゴム・シート類 30%以上上昇 供給不足
塩ビ管・配管材 20〜30%上昇 供給不足
AS合材(アスファルト) 18〜30%上昇 販売停止・受注停止・予約制へ移行
鋼材 15〜20%以上上昇 供給不足

さらに、住宅設備機器(ユニットバス・トイレ等)では2〜3か月以上の遅延や受注停止が発生しており、海外輸入資材(タイル等)も中東情勢による航路変更で約1.5か月の追加遅延が生じています。ダンプ輸送単価(10t)も57,000円から70,000円へと大幅に上昇しており、建設コスト全体を大きく押し上げています。

2. 全国建設業協会(全建)による緊急要望

事態の深刻さを重く見た全国建設業協会は、令和8年4月30日、金子恭之国土交通大臣に対し「中東情勢に伴う建設資材の需給に関する緊急要望」を提出しました。要望の核心は以下の4点です。

  1. 石油製品の供給目詰まり解消:経済産業省へ働きかけ、塗料、住宅設備、塩ビ管等の供給状況を改善し、円滑な工事実施を確保すること。
  2. 適切な価格転嫁の実施:公共工事における実勢価格の調査頻度引き上げと「単品スライド条項」の適時適用。民間工事における「おそれ情報」に基づく価格転嫁。スライド条項の閾値(1%要件)撤廃または引き下げ。
  3. 柔軟な工期延長と設計変更:資材供給が困難な場合の速やかな工事一時中止、工期延長、代替資材への変更と、それに伴う費用の設計変更への見込み。
  4. 部分払いによる資金繰り支援:工期延長に伴う支払遅延を防ぐため、受注者の求めに応じた適宜の部分払い実施。

3. 中小建設業者が今すぐ取るべき実務対応

資材の納期未定や価格高騰は「受注者の責によらない」事態ですが、適切な手続きを踏まなければ自社の損失に直結します。以下の対応を至急検討・実施することが求められます。

① 公共工事:スライド条項の積極的な活用と工期延長協議

単品スライド条項やインフレスライド条項の適用を前提に、発注者との協議を早期に開始してください。また、資材納入の遅れにより工程が維持できない場合は、速やかに「工事の一時中止」や「工期延長」を書面で申し入れることが重要です。無理に現場を動かして手待ちのロスを出す前に、正式な手続きを踏むことが資金繰り悪化を防ぎます。

② 代替資材の提案と設計変更

指定された資材が入手困難な場合、同等性能を持つ代替資材への変更を提案し、設計変更の協議を行います。この際、変更に伴うコスト増減も明確に提示し、合意形成を図ります。

③ 民間工事:「おそれ情報」の通知と価格交渉

民間工事においては、全建が作成している「おそれ情報通知書」などのフォーマットを活用し、資材の供給遅延や価格高騰のリスクを発注者に書面で通知します。これを契機として、請負代金の変更や工期の見直しに向けた協議のテーブルを設けることが不可欠です。

④ 新規見積・契約における防衛策

これから契約する案件については、見積書の有効期限を極力短く設定(例:1〜2週間)し、「資材価格の急激な変動や納期遅延が生じた場合は、請負代金および工期について別途協議する」旨の特約条項を必ず契約書に盛り込むようにしてください。

⑤ 部分払い・前払い金の活用

工期が延長される場合、資金繰り悪化を防ぐために部分払いや前払い金の増額を発注者に申請してください。全建の緊急要望書でも明記されている正当な手続きです。

まとめ:危機を乗り越えるための「記録」と「協議」

今回のナフサショックによる資材高騰は、一過性のものではなく構造的な長期化が懸念されています。「そのうち落ち着くだろう」という楽観視は禁物です。

最も重要なのは、資材メーカーや問屋からの「納期遅延通知」や「価格改定通知」などのエビデンス(記録)を確実に残し、それをもとに発注者と「協議」を行うことです。mkensetu.jpでは、こうした危機的状況下での契約実務や経営事項審査への影響など、建設業の皆様をサポートする情報を引き続き発信してまいります。


【参照資料・一次情報】

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