㍿三成開発 村上事務所

ものづくり補助金、申請を考える前に知っておきたい5つの意外な事実【公式データ徹底分析】

はじめに

多くの中小企業にとって、革新的な設備投資や新サービス開発の鍵となる「ものづくり補助金」。貴社でも申請を検討されているかもしれません。しかし、その採択の裏側にある本当の数字、そしてその数字が持つ戦略的な意味まで深く理解されているでしょうか。

本稿では、ものづくり補助金総合サイトで公表されている採択結果データを基に分析し、これから申請を考える経営者や担当者が戦略を練る上で知っておくべき「5つの意外な事実」を、データ分析に強い経営コンサルタントの視点から解説します。

1. 意外とシビア?気になる全体の採択率

最新の20次締切の結果では、申請企業数2,453社に対し、採択は825社。採択率は約33.6%です。過去の18次(約35.8%)、19次(約31.8%)を見ても、採択率はおおむね30%台で推移しています。これは「採択1社の裏で2社が不採択」という構図を示します。

戦略的インプリケーション
この補助金は「基準を満たすか」ではなく、競合を上回る説得力が鍵になります。事業計画の独自性、実現可能性、収益見通しの具体性で他社を上回る設計が必要です。

2. 応募者数はジェットコースターのように変動している

  • 最多:4次締切(一般型)で10,041社
  • 最少:17次締切で629社

17次締切の応募が少なかった背景として、交付決定総額が約37億円と比較的小規模だった点が確認できます。さらに、17次は省力化(オーダーメイド)枠中心の回であり、制度設計上、応募対象が絞られた影響もあったと考えられます。

戦略的インプリケーション
予算規模や枠設定は応募傾向に影響します。政策や予算動向を注視し、競争が相対的に緩む可能性のある回を見極めるなど、タイミングの戦略を組み込むべきです。

3. グローバル枠はさらに狭き門

20次締切の枠別データは以下のとおりです。

区分申請社数採択社数採択率
製品・サービス高付加価値化枠2,276社784社約34.4%
グローバル枠177社41社約23.2%

グローバル枠は主要枠より採択率が10ポイント以上低く、審査では市場調査の具体性、海外販路や物流体制、文化・制度差への対応など、実行可能性の裏付けがより重視される傾向があります。

戦略的インプリケーション
「海外展開したい段階」ではなく「既に準備が整っている段階」で挑む方がリスクは低くなります。必要なエビデンスが不足する場合は、まず国内向けで実績と体制を固める選択肢も検討に値します。

4. これまでの支援総額は3,400億円超えという巨大スケール

公表累計では、交付決定件数40,426社、総額約3,434億円。1社あたり平均額は約850万円となります。数百〜数千万円規模の投資を後押しする制度であることがわかります。

留意点として、採択後の交付手続きにおいて精査や減額、対象外となる場合もあり得ます。申請額がそのまま交付額になるとは限らない点は、資金計画上の重要な前提です。

戦略的インプリケーション
平均額の水準を踏まえると、専門家レビューや第三者視点でのブラッシュアップに投資する合理性は高いといえます。

5. 最も重要なルール:不採択の理由は聞けない

公式発表では、採択結果の理由開示や異議申立ては受け付けない旨が明記されています。なぜ不採択だったかが原則わからないため、一般的なPDCAを回しにくい制度設計です。

戦略的インプリケーション
初回提出の完成度が極めて重要です。公募要領の精読、審査観点の把握、第三者レビュー(複数回)の実施で、初弾から完成度を最大化する体制づくりが有効です。

結論:データを力に、次の一歩を

  1. 採択率約3割は、2社に勝つ必要があることを意味する。
  2. 応募数の波は予算規模や枠設計に連動し、タイミング戦略が必要。
  3. グローバル枠は実行可能性の裏付けがより厳しく問われる。
  4. 平均約850万円という規模は、本気の準備投資を正当化し得る。
  5. 不採択理由非開示により、初回から完成度を最大化する体制が不可欠。

問いは「申請すべきか」ではなく、「33%の壁を破り、約850万円規模の投資資金を獲得できるだけの事業計画をどう作るか」です。答えは、データに基づく戦略と準備にあります。

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