
建設業退職金共済(建退共)の最新動向
建設業退職金共済制度の概要
建退共制度とは
建設業退職金共済(建退共)は、建設業で働く労働者が安心して退職後の生活を送るための退職金積立制度です。建設業は現場ごとに雇用主が変わることが多く、退職金制度が確立されにくい業界特性があります。この課題を解決するために、国が制度を設け、雇用主が労働者の退職金を積み立てる仕組みを作っています。
証紙貼付方式と電子申請方式
従来の建退共では、元請企業が「証紙貼付方式」を用いて退職金を積み立てるのが一般的でした。しかし、デジタル化の進展に伴い、「電子申請方式」の導入が進んでいます。これにより、手続きの効率化や管理の透明性向上が期待されています。
最新の動向と制度改正
電子申請方式の推進強化
2025年秋に予定されている大規模なシステム改修により、建設キャリアアップシステム(CCUS)とのデータ連携が強化されます。この改修の主な目的は、手続きのワンストップ化です。
改修による主な改善点
改善点 | 具体的な変更 |
工事情報の自動登録 | 建設キャリアアップシステムのデータと連携し、工事情報の手動入力が不要に |
就労実績報告の自動化 | 従来の書類ベースの提出が不要になり、CCUSからの自動データ連携で簡略化 |
企業間の情報共有強化 | 元請・下請間で統一されたデータ管理が可能に |
証紙貼付方式との併用制限
2025年以降、元請企業は「電子申請方式」か「証紙貼付方式」のいずれかを選択し、工事ごとに統一することが義務付けられる見込みです。これにより、下請事業者にも同じ方式を採用させることが求められるようになります。
変更のポイント
- 元請事業主が工事ごとに方式を統一
- 下請事業主は元請の選択した方式に従う必要がある
- 異なる方式が混在することで生じる管理の煩雑さを解消
手続きの効率化と運用改善
加入証明書の再発行基準の明確化
2025年1月の改正により、加入証明書の再発行手続きが簡略化されます。特に、新たな様式では就労日数が記載されるため、従来のような再発行手続きが不要になる場合があります。
中小企業退職金共済(中退共)との連携
建設キャリアアップシステムの普及により、中小企業退職金共済制度(中退共)との連携が強化されます。これにより、以下のメリットが期待されています。
期待されるメリット
- 加入促進が容易になり、労働者の福利厚生が向上
- 企業の事務負担が軽減され、手続きがスムーズに
制度運用の課題対応
元請事業主の責務強化
制度の適正な運用を推進するため、元請事業主には下請企業への制度説明義務が明確化されました。また、就労状況報告書の作成指導が求められるようになり、元請企業の役割がより重要になります。
責務強化の具体的内容
- 建退共制度に関する情報提供を義務化
- 下請事業者が適切に加入・運用できるよう指導
- 就労状況報告書の作成支援
予定運用利回り改定の検討
以前に提案された運用利回りの改定(1.3%→1.5%)については、現時点で実施状況が不明ですが、制度の持続性確保の観点から、今後も検討が続けられると考えられます。
今後の展望
デジタル化の加速
2025年秋のシステム改修を契機に、建設キャリアアップシステムとの連携がより強化され、電子申請方式の利用拡大が進むと予測されます。これにより、手続きの簡略化とデータ管理の効率化が期待されます。
制度全体の透明性向上
今後の取り組みにより、被共済者の退職金積立状況の可視化が進むとともに、元請・下請間の情報共有が最適化されると考えられます。
まとめ
ポイント | 内容 |
電子申請方式の推進 | 2025年秋のシステム改修により、建設キャリアアップシステムとの連携強化 |
証紙貼付方式の併用制限 | 元請企業は工事ごとに方式を統一し、下請企業も同方式を遵守 |
加入証明書の簡略化 | 再発行基準の明確化により、手続きが効率化 |
元請企業の責務強化 | 下請企業への説明義務や報告書作成指導を義務化 |
建退共制度のデジタル化が進むことで、建設業界全体の業務効率向上が期待されています。今後の動向に注目し、適切な対応を取ることが求められます。