IT導入補助金2025、採択率の現実は?公式データから見えた5つの意外な事実
1. 全体の採択率は5割を切る局面がある ―「厳しさ」を前提にした準備が必要
「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」の主要2類型に限っても、回次や時期により採択率が5割未満となるケースが確認されています。ご提示の合計値(通常枠:申請16,069件/交付6,170件=約38.4%、インボイス対応類型:申請35,579件/交付16,661件=約46.8%)は、複数回の結果を合算した筆者試算としては傾向把握の参考になりますが、一次資料の表記と完全に一致しない可能性があるため、厳密な値としての引用は避けた方が安全です。
いずれにせよ、「ただ出せば通る」制度ではなく、不備ゼロ・要件適合・効果の実証性まで含めた競争環境であることは、公表結果の推移からも読み取れます。
2. 申請ボリュームは「インボイス枠」が優勢になりがち
少なくとも初期回次では、インボイス対応類型の申請数が通常枠を上回った回が確認されています。ご提示の累計(インボイス対応類型:35,579件、通常枠:16,069件)ほどの差が常に再現されるとは言い切れないものの、インボイス対応は多くの中小企業にとって喫緊の課題であり、競争が激化しやすい傾向は留意すべき点です。
戦略的インサイト:激戦区では「要件充足+差別化(導入理由・効果測定・業務フローの具体化)」の精度が採否を左右しやすくなります。
3. 一部回で「申請ゼロ」の類型があった可能性
「インボイス枠(電子取引類型)」について、一部回で申請・交付ともに0件となった事例が確認されています。要件の特殊性やメリット認知の不足、企業側の準備状況など、複合要因が考えられます。
戦略的インサイト:応募前に「枠そのものの稼働状況(実際に採択が出ているか)」を確認し、自社の目的との適合性だけでなく実効性のある類型かを見極めてください。
4. ニッチ枠で高採択率が出た回があるが、母数小・初期限定の面も
初期回では、「セキュリティ対策推進枠」や「複数社連携IT導入枠」で採択率100%(申請=交付)となった回が確認されています(例:セキュリティ対策推進枠:申請7/交付7、複数社連携:申請3/交付3等)。ただし、これは母数が小さい初期回の現象で、その後は応募増・競争激化に伴い採択率が50%前後、または40%台に低下した回も見られます。
戦略的インサイト:自社の導入目的と枠趣旨が完全一致する場合、主要枠よりも高い確率が期待できる回もありますが、「常に有利」とは限りません。要件適合性>競争度の観点で冷静に選定してください。
5. 回次別に採択率は変動 ― 初期回が相対的に有利だった可能性
「通常枠」の例として、以下は公表情報に基づく二次整理の概数です(回次・日時の表記は目安、%は四捨五入)。回を追うごとに採択率が低下した回が確認され、初期回で相対的に通りやすかった可能性が示唆されます。
- 1次(6/18):約50.7%(申請2,979/交付1,511)
- 2次(7/24):約41.1%(申請3,516/交付1,447)
- 3次(9/2):約30.4%(申請3,856/交付1,174)
- 4次(9/30):約34.1%(申請2,742/交付935)
- 5次(10/31):約37.1%(申請2,976/交付1,103)
ただし、毎回「初期が必ず有利」とは限りません。申請内容の質、加点要素、需要の集中、運用上の配分など複数要因で変動します。
戦略的インサイト:活用を決めているなら、早期回に間に合う品質まで準備を前倒しし、要件適合・事業効果・費用対効果の説明責任を満たした申請書を整えることが王道です。
結論 ―「資金調達」ではなく「競争戦略」
IT導入補助金は、単なる資金支援ではなく競争型の審査です。全体の採択率が5割を切る局面があること、類型ごとの人気偏在、回次別の変動といった「外形的な難度」に加え、要件と導入目的の整合性、効果の具体性、業務フローの実装計画、KPI・定量効果の妥当性が鍵になります。数字はあくまで「傾向」を示す材料に留め、最終的には自社に最適化した戦略設計と書類精度で勝負してください。
データ出所と留意点
- 本稿は、2025年度の交付決定公表分・一次資料のほか、回次別結果を整理した解説記事等を参照し、公表範囲内で整合の取れる数値を優先して記載しています。
- 類型別・回次別で公表形式が異なるため、合算値は筆者集計の概数を含みます。一次資料の追補・訂正・追加公開により数値が変動する可能性があります。
- 「申請ゼロ」類型は一部回での確認に留まり、全回通算での断定は避けています。
- 引用時は最新の交付決定一覧・公表資料をご確認ください。