村上事務所

経営事項審査「建設機械の保有状況(W5)」徹底解説。点数計算とリース・書類の注意点

経営事項審査の「建設機械の保有状況(W5)」とは?

経営事項審査(経審)には、会社の技術力や社会性などを評価する「その他の審査項目(W)」という大きな分類があります。その中の一つに「建設機械の保有状況」という評価項目があります。

これは、建設業法(第27条の23)などに基づき、会社が「工事を実際に行うための技術的な力(施工能力)をどれだけ持っているか」を判断するための大切な指標です。

とても簡単に言えば、「決められた建設機械を、いつでも使える状態で保有しているか」を審査し、点数化するものです。

Wの番号(W5やW7)について

この「建設機械の保有状況」の項目は、申請する自治体(都道府県)の資料や時期によって、「W5」と呼ばれたり「W7」と呼ばれたりすることがあります。

例えば、以前は「W5」が建設機械の保有状況を指していた時期もありますが、制度の改正(建設業の経理に関する項目がW5に割り当てられるなど)により、現在では「W7」として扱っている自治体も多く見られます。

このように番号が変わることがあっても、評価する内容(建設機械を持っているかどうか)の重要性は変わりません。この記事では、項目名を特定するため便宜上「W5」としていますが、ご自身の申請先の最新の手引きで正しい番号を確認することが重要です。

なぜ機械を持っていると点数がもらえるのですか?

公共工事などを発注する役所は、経営事項審査の結果を見て「この会社に工事を任せても大丈夫か」を判断します。

例えば、大きな土木工事を請け負う会社が、必要な重機(ショベルカーなど)を自社で持っている場合と、持っていない場合を比べてみましょう。

もちろん、持っていなくても工事のたびにレンタルすることは可能です。しかし、自社で機械を保有し、いつでも動かせるように整備している会社の方が、「工事を安定して行う体力がある」「技術的な準備が整っている」と客観的に評価されます。

このように、建設機械の保有状況の点数は、会社の「施工能力」や「技術力」を裏付ける「証拠」の一つとして扱われるのです。

評価の基本的な仕組み

この点数は、ただ「機械を持っている」というだけでは加算されません。経営事項審査のルール(建設業法施行規則第18条の3など)に基づき、いくつかの厳しい条件が定められています。

対象となる機械は決まっています

すべての建設機械が対象ではありません。点数になるのは、ショベルカーなどの「掘削機械」、ブルドーザーなどの「整地機械」、クレーン車などの「つり上げ機械」といった、法令で定められた特定の機械だけです。

「保有」または「長期リース」が対象です

自社で購入した機械(自己保有)はもちろんですが、リース契約で借りている機械も対象に含まれます。ただし、このリース契約には「審査基準日から1年7か月以上の契約期間が残っていること」といった厳格な条件があります。

そのため、工事の時だけ数日間借りるような「レンタル」契約は、対象外となります。

機械が「使える状態」であることが必須です

これが最も重要で、見落としやすい点です。対象の機械は、法律で定められた検査(例えば、クレーン車なら車検、特定の機械なら「特定自主検査」)を受け、その記録(検査済証など)を提示できなければなりません。

もし機械を保有していても、必要な検査を受けていなかったり、書類を紛失したりしていると、点数として認められないのです。

まとめ

「建設機械の保有状況」は、会社の技術的な体力を示す重要な評価項目です。しかし、点数を得るためには「申請先の自治体での正しい項目番号(W5かW7か)の確認」「リース契約の残存期間(1年7か月以上)」「検査記録の有無」など、専門的な確認点が数多く存在します。

「このリース契約書で本当に審査に通るか」「自社の申請先ではW7として申請すべきか」など、具体的な判断に迷う場合は、ぜひ専門家にご相談ください。御社が持つ本来の力を正しく評点に反映させるためのお手伝いをいたします。

点数になる建設機械の種類と条件

経営事項審査の「建設機械の保有状況」で点数が加算される機械は、法令によって厳密に定められています。大きく分けて3つのグループがあり、さらに点数として認められるためには2つの重要な条件をクリアする必要があります。

点数対象となる3つの分類

点数の対象となるのは、建設業法施行規則(別表二)で定められた、以下の表に示す「ショベル系掘削機械」「整地・運搬・積込機械」「つり上げ機械」の3種類が基本です。

これらは、工事現場で中心的な役割を果たす、いわば「主力」となる重機が選ばれています。ただし、自治体によっては、これらに加えて高所作業車などを対象に含める独自のルールを設けている場合もありますので、申請先の最新の手引きを確認することが大切です。

機械の分類主な機械の例法律上の根拠(参考)
ショベル系掘削機械ショベルカー、バックホウ、油圧ショベルなど建設業法施行規則 別表二(イ)
整地・運搬・積込機械ブルドーザー、トラクターショベル、モーターグレーダーなど建設業法施行規則 別表二(ロ)
つり上げ機械クレーン車、移動式クレーン、ラフテレーンクレーンなど建設業法施行規則 別表二(ハ)

点数化のための2大条件

上記の機械を持っていれば自動的に点数になるわけではありません。審査で認めてもらうには、以下の2つの条件を両方とも満たしていることが必須です。

条件1:明確な保有関係(自己所有または長期リース)

機械の保有形態が厳しく問われます。

自己所有の場合

自社で購入し、所有権を持っている機械です。固定資産台帳などで自社の資産であることが証明できる必要があります。

リース契約の場合

これが非常に重要な修正点です。以前は「1年以上の契約」とされていましたが、現在の制度では、原則として「審査基準日(決算日)から1年7か月以上の契約期間が残っているリース契約」である必要があります。

つまり、契約全体の期間が長くても、審査基準日時点で残りの期間が1年7か月未満になっていると、点数対象として認められません。また、工事のたびに数日間借りるような「レンタル」契約は、保有とは認められず対象外となります。

条件2:法令に基づく検査の実施と証明

これも点数化のための絶対条件です。対象の機械は、「安全に稼働できる状態」であることを公的に証明できなければなりません。

その証明として、以下のいずれかの検査記録(検査済証や車検証の写し)の提出が求められます。

特定自主検査(労働安全衛生法 第45条)

ブルドーザーやショベルカー、移動式クレーンなど、多くの建設機械は、労働安全衛生法に基づき、1年に1回(機械の種類によっては異なる場合もあります)の「特定自主検査」が義務付けられています。

この検査を受け、検査業者が発行する「特定自主検査済証(ステッカーが貼付された検査記録表など)」がなければ、経営事項審査では点数になりません。

自動車検査(車検)

クレーン車のように、道路を走行するためにナンバープレートがついている車両(自動車)の場合は、道路運送車両法に基づく「自動車検査証(車検証)」が検査の証明となります。

まとめ

この評点で点数を確保するには、「対象の機械であること」に加えて、「審査基準日時点で1年7か月以上の契約期間が残っているリース契約書」や「最新の特定自主検査済証」といった書類を、不備なく揃えておく必要があります。

特に「リースの残存期間が足りなかった」「検査済証の期限が審査基準日より前に切れていた」といった理由で、本来もらえるはずだった点数を逃してしまうケースは少なくありません。

自社の機械が正しく点数として認められるか、書類の管理に不安がある場合は、申請前に一度、専門家による確認をおすすめします。

建設機械の保有状況(W5)の点数計算の仕組み

第2章で確認した「点数の対象となる機械」が準備できたら、次はその台数を使って評定値(点数)を計算します。

ここが、以前の制度や情報と大きく変わっている点ですので注意が必要です。現在の制度は、以前使われていた複雑な計算式((N ÷ 15)× 10 のような計算)ではなく、非常に分かりやすい仕組みに変更されています。

点数計算の仕組み(1台1点・上限15点)

現在の経営事項審査の制度(熊本県などの多くの自治体で採用されている方式)では、「建設機械の保有状況」の点数は、「1台につき1点」として加算されます。

そして、その上限は「15点」(つまり15台分)と定められています。

点数計算の具体的な流れ

点数計算は、以下の3つのステップで行われます。

ステップ1:対象機械の台数を数える

まず、第2章の条件(機械の種類、自己所有、または審査基準日から1年7か月以上のリース契約、法令に基づく検査の実施)をすべて満たしている機械が、合計で何台あるかを数えます。

ステップ2:最大15台の上限を適用する

ここが重要なポイントです。経営事項審査のルールでは、この計算に使える機械の台数は「最大15台まで」と定められています。

例えば、条件を満たす機械を20台保有していても、計算に使えるのは「15台」として扱われます。もし5台しか保有していなければ、そのまま「5台」として計算します。

ステップ3:台数がそのまま評定値(点数)となる

ステップ2で確定した台数(N)が、そのまま「建設機械の保有状況」の評定値(点数)となります。

5台なら5点、15台なら15点です。

具体例で見る点数

この「1台1点・上限15点」のルールがどのように点数になるか、具体的な台数で見てみましょう。

保有台数(N)計算方法評定値(点数)
0台0台としてカウント0点
3台3台としてカウント3点
8台8台としてカウント8点
15台15台としてカウント15点(最高点)
25台15台で上限15点(最高点)

この点数は全体の評価にどう影響しますか?

この「建設機械の保有状況」の評定値(最高15点)は、それ自体が最終的な点数ではありません。

経営事項審査のW(その他社会性等)という大きな評価項目には、この他にも「法令遵守の状況」や「環境への配慮」など多くの項目があります。

「建設機械の保有状況」の点数は、これら他のW項目の点数と合算され、W全体の点数として算出されます。このW全体の点数が、最終的な総合評定値(P点)に影響を与える仕組みです。

まとめ

「建設機械の保有状況」の点数計算は、「1台1点、最大15点」という非常にシンプルな仕組みです。計算式自体は難しくありません。

しかし、本当に難しいのは、計算の前提となる「台数(N)」を正しく確定させることです。審査日時点で特定自主検査の期限が1日でも切れていれば、その機械は「0台」として扱われ、点数になりません。

「このリース契約書で本当に1年7か月の条件を満たせるか」「検査記録の管理方法はこれで万全か」など、計算以前の段階で不安がある場合は、申請前に専門家へご相談いただくことが、確実な評点確保への近道です。

点数を上げる具体的な方法(購入とリースの違い)

経営事項審査の「建設機械の保有状況」の点数を上げる方法は、とてもシンプルです。それは、第2章と第3章で確認した「点数対象となる機械」の台数を増やすことです。

現在の制度では、対象となる機械「1台につき1点」、最大「15点(15台)」までが評点として加算されます。

機械を増やす主な方法には「購入(自己所有)」と「リース」の2つがあります。経営事項審査の点数計算(1台1点)においては、どちらの方法で保有していても、条件さえ満たせば同じ「1台」としてカウントされます。

しかし、点数が同じだからといって「どちらでも良い」わけではありません。それぞれに利点(メリット)と注意点(デメリット)があり、会社の経営全体(特に財務状況=Y評点)に与える影響が大きく異なるからです。

方法1:購入(自己所有)する

自社の資金で建設機械を購入し、資産として保有する方法です。

購入の利点(メリット)

機械が自社の資産となるため、いつでも自由に使うことができます。また、リース契約のように契約期間に縛られることもありません。

購入の注意点(デメリット)

まず、購入時に多額の初期費用(キャッシュ)が必要になります。これは、会社の財務状況(経営事項審査のY評点)に影響を与える可能性があります。

さらに、購入後は自社の責任で機械を管理しなければなりません。特に、労働安全衛生法に基づく「特定自主検査」の実施と、その記録(検査済証)の保管を徹底することが求められます。もし検査を忘れて審査日(審査基準日)を迎えてしまうと、その機械は点数として認められません。

方法2:リースを利用する

リース会社と契約を結び、月々のリース料を支払って建設機械を借りる方法です。

ここで最も重要な条件があります。第2章でも確認した通り、この項目で点数として認められるには、原則として「審査基準日(決算日)から1年7か月以上の契約期間が残っている」リース契約である必要があります(建設業法施行規則第18条の3第5項など)。

リースの利点(メリット)

購入に比べて、初期費用を大幅に抑えることができます。一時的に大きな資金が出ていかないため、財務体質(Y評点)への影響を少なくできる場合があります。

また、リース契約の内容によっては、特定自主検査などの管理業務をリース会社が担当してくれる場合もあり、管理の手間を減らせる可能性もあります。

リースの注意点(デメリット)

経営事項審査において、最も注意が必要な点です。それは「契約書の形式」と「残存期間」です。

審査では、その契約が短期の「レンタル」ではなく、確かに「リース契約」であることを証明する書類の提出が求められます。

もし契約書の名称が「賃貸借契約書」や「レンタル契約書」となっていても、実態が長期契約であれば認められる可能性はありますが、審査が非常に厳しくなります。点数確保を目的とするならば、最初から「リース契約書」として明確に締結しておくことが不可欠です。

そして何より、審査基準日時点で契約期間が有効であり、かつ、残存期間が1年7か月以上残っていなければ、点数としてカウントされません。

購入とリースの比較(経営事項審査の視点)

どちらの方法が自社に適しているか、経営事項審査の視点で比較してみましょう。

比較項目購入(自己所有)リース
評点への影響1台1点としてカウント
(最大15点まで)
1台1点としてカウント
(最大15点まで)
初期費用多額に必要(財務に影響)少額で済む
検査・管理自社で実施・保管が必須契約内容による(注意)
審査での必須条件特定自主検査の記録(必須)リース契約書(必須)
審査基準日から残存1年7か月以上

まとめ

「建設機械の保有状況」の点数を上げるために機械を増やす場合、「購入」と「リース」のどちらが正解かは、会社様の状況によって全く異なります。

例えば、財務に余裕があり、自社でしっかり機械管理ができる会社様は「購入」が良いかもしれません。一方で、点数は上げたいけれど、財務評点(Y)も維持したい、という会社様は「リース」が適しているかもしれません。

ここで重要なのは、この項目の点数(最大15点)だけを見て判断すると、かえって総合評定値(P点)が下がってしまう危険性もある、ということです。購入によって財務(Y)が悪化したり、リースの残存期間不足や契約書の不備で点数が0点になったりするケースも実際にあります。

どの方法が御社の経営戦略にとって最適なのか。私たちは、評点確保はもちろんのこと、財務分析や他の評点(X1, X2, Z, Y)とのバランスまで含めた総合的な視点で、最適なご提案が可能です。機械の導入を検討される前に、ぜひ一度ご相談ください。

審査で必要な確認書類と準備のポイント

経営事項審査(経審)は、提出された書類だけですべてを判断する「書面審査」が原則です。「建設機械の保有状況」で点数を確実に得るためには、第2章で解説した条件を満たしていることを「証明する書類」を、審査日(審査基準日)時点で完璧に揃えておく必要があります。

必要な書類は、その機械が「自己所有」か「リース」かによって異なります。それぞれ見ていきましょう。

自己所有(自社で購入)の場合

自社で保有している機械を点数とするためには、大きく分けて2種類の証明が必要です。

1. 自社の資産であることの証明

その機械が確かに自社の所有物であることを証明します。自治体(申請先)によって認められる書類が異なる場合があります。

必要な書類の例確認される内容
固定資産台帳の写し
または 売買契約書の写し など
・審査対象の機械が資産として計上されているか
・機械の名称、型式、取得年月日など

2. 安全に稼働できる状態であることの証明

法令に基づく検査を受け、安全基準を満たしていることを証明します。

機械の種類必要な書類
クレーン車など(ナンバープレート付)自動車検査証(車検証)の写し
(道路運送車両法に基づく検査)
ショベルカーなど(ナンバーなし)特定自主検査済証(検査記録表)の写し
(労働安全衛生法に基づく検査)

リースの場合

リースで借りている機械の場合も、同様に2種類の証明が必要です。特に契約書の形式と契約期間には細心の注意が必要です。

1. 一定期間以上のリース契約であることの証明

工事の時だけ借りる「レンタル」ではなく、安定的に保有している「長期リース」であることを証明します。

必要な書類確認される内容
リース契約書の写し・契約書に「リース契約」と明記されていること
・審査基準日(決算日)時点で契約期間中であること
・審査基準日から「1年7か月以上」の使用期間(契約期間)が残っていること(必須)

2. 安全に稼働できる状態であることの証明

リース機械であっても、安全検査の証明は申請者(建設会社)の責任で提出する必要があります。

機械の種類必要な書類
クレーン車など(ナンバープレート付)自動車検査証(車検証)の写し
(リース会社から写しをもらう)
ショベルカーなど(ナンバーなし)特定自主検査済証(検査記録表)の写し
(リース会社から写しをもらう)

準備の最大のポイント

書類を準備する上で、点数を落とさないために最も注意すべき点が3つあります。

ポイント1:すべては「審査基準日」時点で判断されます

これが絶対的なルールです。審査基準日は通常、決算日です。例えば、審査基準日が3月31日の場合、機械の特定自主検査の有効期限が3月30日に切れていたら、その機械は点数になりません。車検証やリース契約の残存期間も同様です。必ず審査基準日時点で有効な書類を揃えてください。

ポイント2:「リース契約書」の形式と「残存期間」です

第4章でも触れましたが、契約書の名称が「賃貸借契約書」や「レンタル契約書」となっているものは、原則として認められません。「リース契約書」とはっきり書かれている必要があります。そして何より、残存期間が「1年7か月」に満たない契約は、0台として扱われてしまいます。

ポイント3:検査済証の管理責任は申請者にあります

リース機械の検査はリース会社が行う場合が多いですが、その「検査済証の写し」をリース会社からもらい、経審の申請書類として提出するのは、申請者である建設会社様の責任です。「リース会社が検査しているはず」という思い込みは通用しません。

まとめ

「建設機械の保有状況」の評点は、保有している機械の台数そのものではなく、「審査基準日時点で、条件を満たした書類を提出できた台数」によって決まります。

実際には10台保有していても、書類の不備(検査切れ、リース残存期間不足など)で0点になってしまうことも珍しくありません。これほど「もったいない」失点は無いと言えるでしょう。

「このリース契約書で本当に大丈夫か」「管理している検査記録は最新のものか」など、申請直前に不安を感じた際は、そのまま提出してしまう前に専門家にご相談ください。たった1枚の書類の見落としが、総合評定値(P点)に響くことを防ぐことができます。

機械を増やすべき?専門家と考える経営戦略

ここまで「建設機械の保有状況」の仕組みを見てきて、「よし、点数を上げるために機械を15台まで増やし、最高点の15点を確保しよう」とお考えになるかもしれません。確かに、この項目(自治体によりW5やW7など番号は異なります)の評点だけを考えれば、それは正しい行動です。

しかし、経営事項審査(経審)の専門家としては、「それは御社の経営全体にとって、本当に最善の策でしょうか?」と一度立ち止まって考えることをご提案します。なぜなら、経審は機械の台数だけで決まるのではなく、多くの評価項目が複雑に影響しあう「バランス」で成り立っているからです。

機械の点数(W)と財務評点(Y)のシーソーゲーム

経審で特に重要な評価項目の一つに、Y(経営状況分析)があります。これは会社の「財務体質」や「儲ける力」を評価する、いわば会社の「体力」を示す成績表です。

ここで問題となるのが、機械の点数を上げようとすると、Yの点数が下がってしまう危険性がある、ということです。これはまるでシーソーのような関係です。

機械を「購入」した場合の落とし穴

例えば、点数を上げるために、銀行から融資(借金)を受けて高額なショベルカーを1台購入したとします。

「建設機械の保有状況」の点数は1点上がるかもしれません。しかし、同時に「借入金(負債)」が増え、「手元の現金(資産)」が減ります。これは、財務体質(Y)の評価において、マイナスに働く可能性が非常に高いのです。

機械の項目で1点のプラスを得るために、経審全体への影響度がもっと大きいY評点で、それ以上のマイナスを被ってしまっては、総合評定値(P点)はかえって下がってしまいます。

機械を「リース」した場合の注意点

「では、購入ではなくリースなら財務(Y)への影響は少ないのでは?」という考え方もあります。確かにその側面はありますが、リース料という「固定費」が毎月発生します。これは会社の利益(X1評点の一部)を圧迫する要因になります。

また、第5章で解説した通り、リース契約書の条件は非常に厳しく、審査基準日時点で「残存期間が1年7か月以上」なければ、点数は0点です。点数を取れないまま、費用だけを払い続けることにもなりかねません。

専門家は「評点シミュレーション」で考える

私たちは「機械を増やすべきですか?」とご相談いただいた際、単純に「はい、増やしましょう」とはお答えしません。

まず、御社の決算書(Y評点)と現在の機械保有状況を分析します。その上で、「もし機械を1台購入したら」「もしリースにしたら」という複数のパターンで、機械の点数とYの点数、さらには総合評定値(P点)がそれぞれ何点変動するかを「シミュレーション(試算)」します。

機械の点数を15点(15台)にするためにYが20点下がるなら、あえて機械の点数は8点(8台)に抑えてYの点数を守る、という戦略の方が、P点は高くなる場合も多いのです。

まとめ

建設機械の導入は、「建設機械の保有状況」の点数アップのためだけに行うものではなく、会社の利益や資金繰り全体に関わる重要な「経営判断」です。

経審の目的(建設業法第27条の23)は、会社の「総合的な経営力」を評価することです。機械の点数だけが突出していても、財務(Y)が不安定では、良い評価は得られません。

「うちの会社の場合、機械を増やすとP点は本当に上がるのか?それとも下がるのか?」

その機械の契約書に印鑑を押す前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。御社の財務状況に基づいた正確なシミュレーションを行い、機械の点数だけでなく会社全体の評点を最大化する、最適な経営戦略をご提案します。

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