村上事務所

建設業の資金繰りに効く!ファクタリングの正しい使い方

第1章 はじめに 「お金が足りない…」その悩み、仕組みで解決できます

建設業に多い「資金繰りの悩み」はなぜ起きるのか

建設業の経営者にとって、「お金が足りない」「支払いが先で入金が遅い」といった悩みはつきものです。
仕事は取れているのに、手元に現金が残らない。このような状況が続くと、いくら技術力があっても会社の運営が難しくなります。

例えば、こんなことが起きています

ある工事を請け負って、すぐに資材や職人さんにお金を払わなければならない。しかし、実際にお金が入ってくるのは工事が終わって数カ月後。
この「時間差」が、建設業における資金繰りの最大の壁です。

建設業ならではの資金繰りの構造

原因内容
工期が長い契約から工事完了、請求、入金までに数カ月〜半年以上かかることもあります。
先に出費が発生着工前に、材料費や外注費、人件費などを支払う必要があります。
手形での支払い手形は現金ではないため、すぐに使えるお金にならず、現金化にも手数料と時間がかかります。

この問題、どうすればいいのか

ここで重要なのは、「仕組みで乗り越える」という考え方です。経営者のがんばりだけでは限界があります。
キャッシュフローを「見える化」し、外部の資金調達手段をうまく活用することがカギになります。

たとえばファクタリングという方法

ファクタリングとは、まだ入金されていない請求書(売掛債権)をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、すぐに現金を得る仕組みです。

ファクタリングのイメージ
ステップ内容
①請求書発行工事が終わり、取引先に請求書を出す
②売掛金を売却ファクタリング会社に請求書を買い取ってもらう
③即日入金手数料を引かれた金額が即日、または数日以内に入金される

ただし、長期的な改善もセットで考える

ファクタリングはあくまで応急処置のひとつです。本質的には「どの工事を請けるか」「どのように費用を管理するか」など、経営そのものを見直すことが重要です。

今後の章で解説する内容

  1. ファクタリングの仕組みと種類
  2. 実際の活用方法と注意点
  3. 悪徳業者の見分け方
  4. 専門家と連携した資金繰りの改善

まずは「見える化」と「知ること」から始めましょう

本記事では、専門用語をできるだけ使わず、建設業に関わる方が「なるほど」と納得できるように、仕組みや注意点を解説していきます。
経営における「お金の不安」を少しでも減らし、安心して事業を継続できるヒントになれば幸いです。

第2章 ファクタリングって何?建設業に向いている理由をやさしく解説

建設業で資金繰りが厳しいと感じたとき、「ファクタリング」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。ファクタリングとは、売掛金(未回収の請求書)をファクタリング会社に買い取ってもらい、早期に現金を受け取る仕組みのことです。

ファクタリングの基本仕組み

ファクタリングは「売掛債権の譲渡」という法律行為に基づいています(民法第466条)。つまり、取引先からまだ受け取っていないお金を第三者に買い取ってもらうことで、手元に資金を早く得る方法です。

仕組みの流れ

1建設会社が請求書(売掛金)をファクタリング会社に提示
2ファクタリング会社が審査を行う
3審査通過後、売掛債権の金額から手数料を差し引いた金額が入金
4後日、取引先からの入金はファクタリング会社に直接支払われる

なぜ建設業に向いているのか

建設業は工期が長く、工事完了から入金まで数ヶ月かかることが一般的です。さらに、工事前に先行して費用が発生するため、資金が不足しやすくなります。

建設業とファクタリングの相性

長期の支払サイト→ 入金までの期間を短縮できる
手形取引の多さ→ 手形よりも早く現金化できる
下請けへの支払いの早期対応→ キャッシュを確保しやすくなる

例え話でイメージしてみましょう

例えば、大きな団地の造成工事を請け負ったとしましょう。工期は半年。材料代、重機のレンタル代、人件費と、工事の初期に多額の出費が発生します。

ですが、代金が振り込まれるのは工事が完了してから3ヶ月後。これでは日々の支払いが追いつかず、資金ショートの危機に陥ることも。そこで、工事途中で発行した請求書をファクタリング会社に売却すれば、1週間以内に現金が入り、資金繰りがぐっと楽になります。

注意すべき点

2社間と3社間の違い

2社間ファクタリング建設会社とファクタリング会社だけで契約。取引先には知られないが、手数料は高め。
3社間ファクタリング取引先の承諾が必要。手数料は抑えられる。

法律上の注意

ファクタリングは貸金業ではなく「債権の売買」に分類されます。ただし、実質的に貸金に該当する取引形態(例えば給与ファクタリング)は、貸金業法違反とされ違法と判断される場合があります(金融庁指導)。

まとめ

ファクタリングは、建設業が抱える「入金までのタイムラグ」という構造的な課題を解消する手段の一つです。大切なのは、

  • 信頼できるファクタリング会社を選ぶこと
  • 手数料や契約条件をしっかり理解すること
  • 一時的な資金確保で終わらせず、資金体質の改善につなげること

次章では、ファクタリングを利用する際の具体的な流れと注意点をより詳しく見ていきます。

第3章 ファクタリングの基本的な流れを知っておこう(申し込みから入金まで)

はじめに

建設業では、仕事が終わっても入金までに時間がかかることが多く、資金繰りが悩みのタネになりがちです。
そこで役立つのが「ファクタリング」という仕組みです。
ここでは、ファクタリングを活用するための一連の流れを、初めての方にもわかりやすくご説明します。

ファクタリングの流れをざっくり解説

ファクタリングとは、まだ入金されていない「売掛金(うりかけきん)」をファクタリング会社に買い取ってもらい、早めに現金を受け取る方法です。
八百屋さんが売れ残りそうな野菜を安く買い取ってもらって現金化するようなイメージです。
以下が、申し込みから資金受け取りまでの基本的なステップです。

  1. 1. 比較検討と見積もり複数のファクタリング会社に見積もりを取り、条件や手数料、対応の丁寧さなどを比較します。ポイント:手数料は2社間で8~18%、3社間で2~9%程度が相場です。
  2. 2. 申し込みと審査選んだファクタリング会社に申込み、請求書や契約書など必要書類を提出します。審査では、取引先の信用力や売掛金の金額が重視されます。
  3. 3. 契約の締結契約内容を確認し、問題がなければ契約を結びます。以下の2つの方法があります。
    • 2社間ファクタリング:自社とファクタリング会社だけで契約。取引先に知られずに利用できます。
    • 3社間ファクタリング:取引先にも通知して承諾を得る必要がありますが、手数料が低くなる傾向があります。
  4. 4. 売掛債権の売却と入金契約が成立したら、指定の売掛債権をファクタリング会社に譲渡します。数日以内に現金が振り込まれるのが一般的です。即日入金に対応している会社もあります。

ファクタリングで注意すべきこと

注意点内容
契約内容の確認契約書に「償還請求権(しょうかんせいきゅうけん)」があると、取引先が倒産した際に支払い義務が発生します。
債権譲渡禁止条項の確認取引先との契約書に「債権譲渡禁止」と書かれていないかを事前に確認しましょう。
信頼できる業者の選定実績があり、登録情報が明確な業者を選びましょう。金融庁や日本貸金業協会の登録も確認してください。

まとめ

ファクタリングは、急な資金不足をカバーするための心強い選択肢です。
ただし、内容をきちんと理解せずに利用すると、後で予想外のトラブルに発展することもあります。
そのため、事前の情報収集と契約内容の確認が非常に重要です。
わからないことがあれば、迷わず専門家に相談するようにしましょう。

第4章 契約の種類を選ぶコツ 2社間と3社間の違いと特徴

はじめに

ファクタリングの契約には大きく分けて「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、状況に応じた選択が重要です。
ここでは、建設業における実務上のポイントを踏まえながら、どちらの契約形態が向いているかをわかりやすく解説します。

2社間ファクタリングとは

2社間ファクタリングは、自社とファクタリング会社の間だけで契約を行う方式です。
取引先には通知されず、内密に資金調達を進められるのが特徴です。

メリット

秘密保持取引先に知られずに資金化できるため、信用関係を維持しやすいです。
手続きの迅速さ取引先の同意が不要なため、契約から入金までのスピードが速い傾向にあります。

デメリット

手数料が高め取引先のリスクをファクタリング会社が負うため、手数料が8~18%と高くなる傾向があります。
信用調査が厳しい取引先に通知できない分、売掛先の信頼性に対してより厳しい審査が行われます。

3社間ファクタリングとは

3社間ファクタリングは、自社・取引先・ファクタリング会社の三者間で契約を交わす方式です。
取引先からの債権支払を、ファクタリング会社へ直接行うことになります。

メリット

手数料が低いファクタリング会社のリスクが低いため、手数料は2~9%程度に抑えられます。
信用力の証明取引先との信頼関係が強いことをファクタリング会社に示すことができます。

デメリット

取引先の同意が必要債権譲渡の通知と承諾が必要となるため、時間がかかる場合があります。
取引先の反応資金繰りに困っている印象を与える可能性があり、注意が必要です。

どちらを選ぶべきか?

建設業では、取引先との関係性や案件の性質によって選び方が変わってきます。

今すぐ資金が必要2社間ファクタリングが適しています。スピード重視の場面で有効です。
手数料を抑えたい3社間ファクタリングが有利です。余裕を持った計画的な資金調達に向いています。
取引先との信頼関係が強い3社間でも問題なく進められる可能性が高いです。

補足 法的なチェックポイント

債権譲渡禁止特約取引基本契約書に記載されていないかを事前に確認してください。
償還請求権の有無支払い不能時の責任が自社に戻る契約になっていないか、確認が必要です。
契約書の記載内容「債権譲渡契約書」になっているか、不明な点は専門家へ相談することが大切です。

まとめ

2社間と3社間のファクタリングは、それぞれに強みとリスクがあります。
会社の資金繰りの状況、取引先との関係性、緊急性などを冷静に判断しながら、適切な契約形態を選択することが求められます。
契約前には、内容をしっかりと理解し、不明な点があれば専門家に相談する姿勢が重要です。

第5章 どう使う?資金の使い道とファクタリングの上手な活用法

はじめに

建設業において、資金繰りは経営の重要な課題です。ファクタリングを活用することで、資金調達の柔軟性が高まり、企業の成長をサポートします。ここでは、ファクタリングで得た資金の具体的な使い道と、その効果的な活用法について解説します。

ファクタリング資金の主な使い道

用途説明
運転資金の確保日々の経費や人件費、材料費などの支払いに充てることで、安定した事業運営を維持します。
新規プロジェクトへの投資新たな工事案件や設備投資に必要な資金を迅速に調達し、事業拡大を図ります。
突発的な支出への対応予期せぬ修理費や追加工事など、急な出費にも柔軟に対応できます。
信用力の向上早期の支払いを実現することで、取引先からの信頼を高め、今後の受注拡大につなげます。

ファクタリング活用の具体例

例えば、大型の建設プロジェクトを受注した際、完成までの期間が長く、売上金の回収が遅れることがあります。その間にも人件費や材料費などの支払いが発生します。ファクタリングを利用して売掛金を早期に現金化することで、これらの支払いをスムーズに行い、プロジェクトを円滑に進めることができます。

ファクタリング活用のポイント

  1. 資金用途の明確化: 資金をどのように活用するかを明確にし、効果的な資金運用を計画します。
  2. 信頼できるファクタリング会社の選定: 手数料やサービス内容を比較し、自社に最適なパートナーを選びます。
  3. 適切な契約形態の選択: 2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの特徴を理解し、自社の状況に合った契約を選択します。

まとめ

ファクタリングを上手に活用することで、建設業の資金繰りを改善し、事業の安定と成長を促進できます。資金の使い道を明確にし、信頼できるパートナーと協力することで、ファクタリングの効果を最大限に引き出すことが可能です。

第6章 注意が必要!契約前に絶対に確認しておきたいポイント

ファクタリングは資金繰りを助けてくれる便利な手段ですが、契約前にしっかりと確認すべきポイントがあります。特に建設業のように取引金額が大きく、請求書のやりとりも複雑になりがちな業種では、契約内容を誤ってしまうと大きなトラブルにつながるおそれがあります。

なぜ契約内容の確認が重要なのか

ファクタリング契約は、売掛債権(請求書)を他人に譲渡する法的な手続きです。つまり、自分の持つお金を受け取る権利を第三者に売るということです。そのため、契約書の内容が曖昧だったり、内容をよく読まずにサインしてしまうと、想定外の義務が発生することがあります。

小学生にもわかるように例えるなら

たとえば「お小遣い帳」をつけていて、友達から借りたお金をもらう前に「代わりに別の人に渡していいよ」と許可を出すようなものです。でもそのとき、「返してもらえなかったらあなたが返してね」と言われたら困ってしまいます。これが「償還請求権あり」の契約です。

確認すべき主なポイント

債権譲渡禁止条項の有無

取引先との契約書に「債権は譲渡できません」と書かれていないかを確認しましょう。これがあると、法的に譲渡が無効になる可能性があります(民法第466条の6参照)。

償還請求権の有無

「もし取引先から支払われなかったら、あなたが代わりに支払ってください」という条件がある場合、それは「償還請求権付き」の契約です。これは借金とほぼ同じリスクを負うことになります。

契約書の種類

ファクタリング契約であるはずが、「金銭消費貸借契約(ローン契約)」になっていないか確認してください。この場合、実質的に貸金業となり、貸金業法の対象となります。

手数料の適正性

一般的な手数料の相場は以下の通りです。

契約形態手数料相場(目安)
2社間ファクタリング8%〜18%
3社間ファクタリング2%〜9%

これを大きく上回る手数料が提示された場合は、契約を再検討するべきです。

登録業者であるかの確認

ファクタリング業者の中には、実態が貸金業者でありながら無登録で営業している違法業者も存在します。金融庁や日本貸金業協会の登録リストで、業者が登録されているかを確認しましょう。

契約書の控えを必ず受け取る

契約後は、契約書の写し(控え)を必ず保管してください。後々、トラブルが起きた際の重要な証拠になります。

見落としがちな落とし穴

契約を急かす業者には注意

「今すぐ契約しないと資金が出せません」などと急がせる業者は、内容に問題がある可能性があります。きちんと説明を受け、納得できるまで契約は保留すべきです。

給与ファクタリングは違法

「給料前払いサービス」などの名目で給与債権を買い取る手法は、現在では違法とされており、判例(東京地裁令和2年3月30日判決)でも貸金業と認定されています。絶対に利用しないでください。

まとめ

ファクタリングは便利な仕組みですが、契約内容を一つひとつ丁寧に確認することで、無用なトラブルを避けることができます。以下のような視点で、契約前のチェックを行ってください。

確認項目チェックポイント
契約種類本当に「債権譲渡契約」か
契約条項債権譲渡禁止条項や償還請求権の記載はあるか
業者の登録金融庁や貸金業協会で登録確認済みか
契約書の控え手元に保管しているか

不安な点があれば、契約前に弁護士や行政書士などの専門家に相談することで、リスクを事前に回避することができます。特に初めてファクタリングを利用する建設会社の経営者にとっては、信頼できる専門家のサポートが心強い味方になります。

第7章 こんな業者には気をつけて!悪徳ファクタリング業者の見分け方

なぜ「見分け方」が重要なのか

ファクタリングは、建設業の資金繰りを支える便利な手段ですが、それを悪用する業者も存在します。特に、法令を守らず高額な手数料を取る違法業者や、返済義務が残るような契約を仕込む業者には注意が必要です。間違って契約してしまうと、資金繰りが改善するどころか、逆に経営を圧迫することになります。

よくある悪徳業者の特徴

特徴なぜ危険か
手数料が異常に高い2社間で18%以上、3社間で9%以上なら注意が必要です
契約書の説明が不十分内容をきちんと説明しない業者は、後でトラブルになる可能性があります
金銭消費貸借契約になっているこれは貸金業にあたり、貸金業登録がない業者との契約は違法の可能性があります(貸金業法第3条)
契約書の控えを渡さない証拠が残らないため、万が一の時に不利になります
償還請求権付き契約を迫る債務者が支払わなかった場合、返金義務を負うためリスクが高くなります

事前にチェックすべきポイント

1. 会社情報の確認

公式サイトに住所・代表者・固定電話・資本金などの基本情報が明記されているかを確認してください。特商法に基づく表示がない業者は避けましょう。

2. 登録業者かどうか

貸金業に該当する契約を結ぶ場合は、必ず金融庁や日本貸金業協会に登録されていることが必要です。登録番号の記載がない業者とは契約してはいけません。

3. 契約形態の確認

ファクタリング契約は「債権譲渡契約」である必要があります。「金銭消費貸借契約」や「営業保証契約」となっている場合、それはファクタリングではなく、事実上の貸付である可能性があります。

4. 口コミや評判のチェック

インターネットの口コミやGoogleマップの評価、SNSでの評判などを確認することも有効です。「手数料の説明がなかった」「しつこい電話が来る」などの記載があれば注意しましょう。

実際にあったトラブル事例

ある中小建設会社では、急な資金繰り悪化により、インターネット広告で見つけた業者に急いで申し込んでしまいました。契約書には小さく「金銭消費貸借契約」と書かれており、実際にはファクタリングではなく高利の貸付でした。数ヶ月後、利息と元本の返済が追いつかず、裁判を起こされてしまったというケースも報告されています。

トラブルを避けるために

以下のような対策を取りましょう

  1. 契約書は専門家(行政書士や弁護士)にチェックしてもらう
  2. 必ず見積書を取り、内容を丁寧に説明してくれる業者を選ぶ
  3. 無登録業者や給与ファクタリング業者(違法)には絶対に近づかない
  4. 「即日対応」「審査なし」など過度な謳い文句には注意する
  5. 信頼できる専門家に相談しながら契約を進める

まとめ

ファクタリングは便利な資金調達手段ですが、相手を見極める目を持つことが何より大切です。表面的には似たようなサービスでも、契約内容の中に落とし穴が潜んでいる場合があります。事業を守るためにも、焦らず、冷静に、そして確かな情報をもとに行動しましょう。専門家のサポートを受けることは、時間とリスクを減らすための最良の方法の一つです。

第8章 信頼できる会社を見つけるための比較と見積もりの進め方

なぜ比較と見積もりが必要なのか

ファクタリングは会社の資金繰りを助ける心強い仕組みですが、提供する会社によって内容や条件は大きく異なります。たとえば、同じ売掛金を売却する場合でも、手数料や契約の柔軟性、対応の丁寧さなどに差が出ます。だからこそ、信頼できる会社を見つけるためには、最初に複数社を比べて、見積もりをとることがとても大切です。

比較のときに見るべきポイント

確認項目チェックする理由
手数料の割合2社間で8%~18%、3社間で2%~9%が相場。相場とかけ離れていないかを確認します。
対応の丁寧さ説明が不明瞭だったり、質問に答えてくれない会社は避けたほうが安全です。
契約書の明確さ「金銭消費貸借契約」ではなく「債権譲渡契約」になっているかどうかを確認します。
所在地や連絡先固定電話番号があり、オフィス所在地がはっきりしているかをチェックします。
登録状況金融庁や日本貸金業協会などの登録がされているかを確認します。

見積もりをとるときの流れ

  1. インターネットや紹介で2~3社を選びます
  2. 各社に問い合わせをして、見積もりの取得を依頼します
  3. 見積もりを受け取ったら、手数料だけでなく契約内容、対応の丁寧さなどを比べます
  4. 必要があれば、再度質問や条件交渉を行います

よくある落とし穴と対策

説明があいまいな業者

「今日契約すれば手数料が下がる」などと焦らせてくる会社には注意が必要です。本当に信頼できる会社は、こちらのペースに合わせてくれます。

契約書を出さない業者

どんな契約でも、書面の確認は必須です。「契約書はあとで」などと言ってくる会社は避けるべきです。民法第522条でも契約の合意内容が明確であることが重要とされています。

会社情報が不明確

会社の公式サイトに代表者名、所在地、連絡先がない場合や、事務所の存在が確認できない場合は要注意です。

見積もりをうまく活かす考え方

ファクタリングの見積もりは、ただ「金額を比べる」だけでなく、その会社がどれだけ誠実に対応してくれるかを見極めるチャンスでもあります。たとえるなら、家を建てるときの設計図のようなものです。安さだけに目を向けず、長く付き合える信頼性を見ましょう。

まとめ

信頼できるファクタリング会社を見つけるには、事前の比較と見積もりがカギです。ポイントは、手数料の妥当性、契約の明確さ、対応の丁寧さです。無理に急がず、時間をかけて複数社を比較検討することが、トラブルを防ぎ、安心して資金調達を行う第一歩になります。

第9章 不安なときは専門家に相談しよう 契約書チェックとアドバイス

迷ったら一人で抱え込まないことが大切

ファクタリングを利用しようとするとき、多くの経営者が最初に感じるのは「契約書の内容がよくわからない」「手数料が高すぎないか」などの漠然とした不安です。特に建設業のように、現場業務が忙しく、書類をじっくり読む時間が取れない場合は、内容を見落としてしまうリスクもあります。そんなときに心強いのが、専門家の存在です。

専門家に相談するメリット

相談相手期待できる支援内容
行政書士契約書の法的チェック。業者が適正に登録された会社かどうかの調査
弁護士トラブルが起きた場合の法的対応。契約上のリスク判断
中小企業診断士資金繰りの分析や資金調達戦略のアドバイス

こんなときは相談を検討しましょう

  1. 契約書の文言に「償還請求権付き」など難しい言葉が出てくる
  2. 手数料が異常に高く、計算方法が不透明
  3. 「今すぐ契約しないとダメ」など、契約を急がせてくる
  4. 契約書の控えを渡してもらえない
  5. 売掛債権の譲渡に、取引先の了承が必要か判断に迷う

契約書を読むうえでの基本ポイント

1. 債権譲渡契約であるか確認

ファクタリング契約は「債権譲渡契約」が原則です。「金銭消費貸借契約」となっている場合は、貸金業に該当し、違法の可能性があります。貸金業法第2条および金融庁のガイドラインにもとづき、無登録での貸金行為は違法です。

2. 償還請求権の有無

「償還請求権」とは、売掛先が倒産したときに、その分の代金をあなたの会社が支払わなければならない仕組みのことです。これがある契約は、事実上の貸し付けに近く、リスクが非常に高くなります。

3. 手数料や条件の記載の明確さ

契約書に「事務手数料」「管理費」などの名目で追加費用が記載されていないかを確認します。金額や算定方法が明記されていない場合は、後から高額請求されるリスクがあります。

例え話で考えてみましょう

たとえば、あなたが車を買うとき、契約書に「車両価格50万円」と書いてあるのに、納車後に「別途手数料20万円かかります」と言われたら、納得できませんよね。ファクタリング契約も同じです。書いてあることだけがすべて。そこに書いていないお金があとからかかるような契約には、慎重になる必要があります。

専門家に相談するタイミングと方法

タイミング

  1. 契約前の不安があるとき
  2. すでに契約してしまい、内容が不明確なとき
  3. トラブルが起きているとき

方法

  1. インターネットで「ファクタリング 契約 チェック 行政書士」などと検索
  2. 地域の行政書士会や商工会議所に相談窓口を確認
  3. 無料相談を活用して、まずは簡単な質問をしてみる

まとめ

ファクタリングは正しく使えばとても便利な資金調達手段ですが、契約内容が不明確だったり、リスクが高い条項が含まれていると、会社経営に大きなダメージを与えることになります。だからこそ、少しでも「不安だな」と思ったときには、迷わず専門家に相談しましょう。第三者の目で契約書をチェックしてもらうことで、安全で納得できる取引につながります。

第10章 まとめ ファクタリングは一時しのぎ 本質的な改善とセットで使おう

ファクタリングは「道具」 本質は経営の改善にあります

ここまでの章で、ファクタリングの仕組みや活用方法、契約上の注意点などについて詳しく見てきました。改めて大切なのは、ファクタリングはあくまで「一時的に資金を得るための手段」であり、それ自体が経営を立て直す魔法の杖ではないということです。たとえば、バケツに穴が空いているのに水を注ぎ続けていても、すぐに空っぽになってしまいます。資金も同じで、根本の仕組みが改善されていなければ、いくら資金を注いでも流れ出てしまいます。

ファクタリングの位置づけを整理しましょう

目的意味
資金の緊急確保売掛金を現金化し、すぐに資金を手に入れる
キャッシュフローの調整入金までのタイムラグを埋めて資金繰りを安定させる
事業運転の継続材料費や人件費を確保して現場を止めない
信用力の向上延滞や支払い遅延を避け、取引先との信頼を守る

中長期的に必要な改善ポイント

ファクタリングとあわせて取り組むべき、経営の本質的な改善は以下のように整理できます。

1. 原価管理と利益の見える化

現場ごとの利益を把握していないと、どの工事が儲かっているか、逆に赤字かが分からず、手元の資金だけを追いかけるような経営になります。現場別の原価台帳をつけることから始めましょう。

2. 入金と支払いのタイミング調整

売掛金の入金が60日後で、支払いが30日後に集中していると資金繰りは苦しくなります。できる限り支払いの猶予を交渉する、部分前払いを取引先と取り決めるなどの工夫が必要です。

3. 複数の資金調達手段を持つ

ファクタリングだけに依存すると、万が一のトラブル時に資金調達の道が閉ざされてしまいます。小規模事業者持続化補助金、日本政策金融公庫のつなぎ融資、信用保証協会の制度融資など、行政支援も活用しましょう。

4. 財務管理の見直し

通帳と請求書の管理だけでは限界があります。Excelやクラウド会計ソフトで資金繰り表をつけ、1か月後、3か月後の資金残高を常に予測する習慣をつけることが、安定経営への第一歩になります。

専門家との継続的な連携

一度ファクタリングを使ったら終わり、ではなく、今後も発生するであろう資金課題に備えるには、専門家との連携が重要です。契約のときだけでなく、日々の経営計画、資金繰り、助成金申請、建設業許可の更新などもワンストップで支援してくれる行政書士や税理士、中小企業診断士の存在が力になります。

例え話でイメージをつかむ

ファクタリングは、言わば一時的な「かさ」。雨が降ってきたときには役に立ちますが、ずっと差しているわけにはいきません。本当に必要なのは、雨が降らないように天気予報を確認すること、傘が必要ないように屋根付きの歩道をつくること、つまり「予防」と「仕組みづくり」です。お金の話も、同じです。

まとめ

資金繰りに困ったとき、ファクタリングはたしかに有効な手段です。しかしそれは、あくまで一時的な応急処置にすぎません。大切なのは、資金繰りが苦しくなる根本の原因に向き合い、再発を防ぐための改善を続けていくことです。建設業の現場においても、正しい情報と信頼できる支援者に支えられながら、持続可能な経営を目指していきましょう。

NOTE

業務ノート

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