村上事務所

熊本県建設産業の未来を読み解く:第4次振興プランの全貌

イントロダクション 今、なぜ第4次熊本県建設産業振興プランが重要なのか?

熊本県にお住まい、あるいは熊本県で建設に関わるお仕事をされている皆様は、日々の暮らしの中で、あるいは仕事を通して、様々な変化を感じていらっしゃるかもしれませんね。

例えば、私たちの街のインフラ、つまり道路や橋、河川などが整備されたり、時には大きな災害からの復旧作業が進められたりしています。また、最近では大きな工場が建設されている様子を目にすることもあるでしょう。こうした私たちの生活や地域の基盤を支えているのが、建設産業の皆様です。まさに「地域の守り手」であり、未来をつくる大切な役割を担っていらっしゃるのです。

しかし、その建設産業は今、大きな波に直面しています。一体どのような状況にあるのでしょうか。これから、令和6年度から令和10年度までの5年間を対象とする「第4次熊本県建設産業振興プラン」を詳しく見ていくにあたり、まずは「なぜ、今このプランが必要なのか」という背景からご説明いたします。

プランが必要な理由 建設産業が直面する厳しい現実

まず、建設産業全体が抱える全国的な課題があります。

人手不足と高齢化

例えるなら、地域を守るリレーチームを想像してみてください。ベテランの選手たちが素晴らしい技術で走り続けてくれていますが、その選手たちがだんだん高齢になり、引退の時期を迎えています。ところが、新しい若い選手が思うように集まっていない。これが建設産業の現状です。特に、55歳以上のベテラン技術者や技能労働者の割合が高く、一方で29歳以下の若年層が減っています。アンケート調査でも、多くの事業者が技術者も技能者も不足していると感じているのですね。このままでは、将来、大切なバトン、つまり技術やノウハウを次世代に繋いでいくことが難しくなってしまいます。

長時間労働と働き方改革

このリレーチームの選手たちは、他のチームの選手よりも練習時間が非常に長い状況です。朝早くから夜遅くまで、時にはお休みも取りにくい。これでは、せっかく興味を持った若い選手も、「もっと自分の時間や家族との時間を大切にしたいな」と他のチームを選んでしまうかもしれません。こうした長時間労働の状況を変え、週休2日制をしっかり実現していくこと、誰もが働きやすい環境にすることが、新しい選手を迎えるためにも、今いる選手が安心して働き続けるためにも喫緊の課題となっているのです。

生産性の向上

少ない人数でも、以前と同じ、あるいはそれ以上の成果を出すためにはどうすれば良いでしょう。ここで必要になるのが、「もっと賢く、効率的に働く」ということです。例えば、昔ながらの手作業だけでなく、ドローンで現場を測ったり、タブレットで図面を確認したり、ロボットが重いものを運んだり。こうした新しい技術(これを建設DX、デジタルトランスフォーメーションと呼びます)を取り入れることで、一人ひとりの力を何倍にも高め、より短い時間で質の高い仕事ができるようにすることが求められています。古い道具だけで頑張るのではなく、最新のツールを使いこなす必要があるのですね。

熊本県ならではの背景 二つの大きな波

これらの全国的な課題に加えて、熊本県には地域特有の、そして非常に大きな変化が起きています。

波①熊本地震等からの復旧・復興
2016年の熊本地震や2020年の7月豪雨は、熊本県に甚大な被害をもたらしました。建設産業は、発災直後から復旧の最前線で活動し、壊れたインフラを直し、被災された方々の生活再建を支える重要な役割を担ってきました。今もなお、球磨川流域の治水対策や道路の整備など、多くの復旧・復興事業が続いています。これは、地域を守る建設産業の力が最大限に発揮されている状況です。
波②半導体産業集積の影響
ご存じの通り、世界的な半導体関連企業が熊本県に進出し、関連産業の集積が進んでいます。これは熊本県の経済にとって大きなチャンスであり、建設産業にとっても新しい工場や関連施設の建設、住宅などの大きな建設需要を生み出しています。例えるなら、急にたくさんの新しいお店がオープンして、建物を作る仕事がものすごく増えたような状況です。

しかし、この新しい波は良いことばかりではありません。急激な需要の増加は、既に人手不足の建設産業にさらなる負担をかける可能性があります。また、交通渋滞の深刻化や地価の高騰といった課題も生じています。

このように、熊本県の建設産業は、過去の大きな災害からの復旧という大切な仕事を続けながら、同時に、新しい産業の集積という未来に向けた大きな変化にも対応していくという、二つの異なる、そして強力な波に同時に乗ることを求められています。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランは、こうした人手不足や高齢化、長時間労働といった産業構造の課題と、熊本地震からの復旧・復興、そして半導体産業集積という地域特有の変化という、厳しい現実と大きなチャンスの両方を踏まえ、「では、熊本県の建設産業はこれからどう進んでいくべきか」という羅針盤を示すために策定されました。

このプランは、単に現状を維持するだけでなく、これらの課題を乗り越え、未来に向けて力強く発展していくための道筋、いわば「新しい地図」なのです。

判例や根拠となる法律条文については、本イントロダクションで触れた背景事情やプラン策定の必要性に関する内容のため、特に関連するものの記載はございません。

このブログ記事では、この「新しい地図」である第4次熊本県建設産業振興プランが、具体的にどのような未来を描き、そのためにどのような戦略や取り組みを進めようとしているのか、その「ポイント」を一つずつ、分かりやすく丁寧にご紹介していきます。次の章では、このプランが掲げる目指すべき未来の姿、その全体像について詳しく見てまいりましょう。

熊本県建設産業が今まさに直面している、人手不足や高齢化といった構造的な課題に加え、熊本地震からの復旧・復興、そして半導体関連産業の集積という地域特有の大きな波についてお話しいたしました。こうした状況は、業界にとって厳しい側面がある一方で、未来に向けた変革を進める大きな契機でもあります。

それでは、こうした複雑な状況の中で、熊本県は建設産業の未来をどのように描き、今後5年間(令和6年度から令和10年度まで)でどのような方向へ進んでいこうとしているのでしょうか。その羅針盤となるのが「第4次熊本県建設産業振興プラン」です。

第1章 プランが示す熊本建設産業の未来像

このプランは、単に現状維持を目指すものではありません。変化の激しい時代において、建設産業がさらにその役割を果たし、地域社会に貢献し続けるための、積極的な「進化」を目指しています。

中心的なビジョン 「地域を守り、未来をつくる建設産業の持続・発展」

第4次熊本県建設産業振興プランが掲げる最も大切な目標、つまり「中心的なビジョン」は、「地域を守り、未来をつくる建設産業の持続・発展」です。

これを分解して考えてみましょう。

「地域を守る」とは

これは、建設産業がこれまでも担ってきた、そしてこれからも変わらず重要な役割です。例えば、地震や豪雨といった自然災害が発生した際に、いち早く現場に駆けつけ、道路の啓開(通れるようにすること)や応急復旧を行うこと。また、普段の暮らしの中で当たり前のように使っている道路、橋、河川といったインフラを日々点検し、必要な手入れをすること(維持管理)も含まれます。地域の皆様の安全・安心な暮らしの基盤を支える、まさに見えないヒーローのような存在です。

「未来をつくる」とは

一方で、建設産業は未来を創造する役割も担います。新しい道路や橋を建設して地域を結び付けたり、新しい工場や施設を建てて産業の発展を支えたり、より災害に強いまちづくり(防災・減災、国土強靱化)を進めたりします。熊本県で今まさに進んでいる半導体関連産業の集積を支えるのも建設産業の力です。子供たちが安心して学び遊べる学校や公園をつくるのも建設産業の仕事です。未来の熊本を、より豊かで、より安全で、より便利な場所にしていく役割と言えます。

「持続・発展」とは

そして、「持続・発展」という言葉に、このプランの強い意志が込められています。これは、これらの「地域を守る」役割と「未来をつくる」役割を、これからもずっと、そして今よりもさらにレベルアップさせて担い続けていくことを意味します。前章で見たような厳しい課題(人手不足、高齢化、働き方など)を乗り越え、変化に対応できる強い産業として、進化し続けていくことを目指しているのです。

例えるなら、このビジョンは、地域を守る頼りになる「消防団」と、未来の街をデザインし建設する「建設チーム」の両方の役割を、ずっと続けられるように、そしてもっと強く、賢くなることを目指す、というイメージでしょうか。

ビジョン実現のための三つの戦略的柱

この壮大なビジョンを実現するために、プランでは三つの「戦略的な柱」が立てられています。建物がたくさんの柱に支えられているように、建設産業の未来も、これらのしっかりした柱によって支えられます。この三つの柱はそれぞれ独立しているのではなく、互いに関連しあいながら、産業全体を良い方向へ動かしていくための重要な枠組みとなります。

柱①未来の担い手となる人材の確保・育成
前章で触れたように、建設産業は今、働いている方の高齢化が進み、若い方がなかなか入ってきにくい状況です。これは、将来「地域を守る」ことも「未来をつくる」こともできなくなってしまうという、産業の根幹に関わる非常に深刻な問題です。そこで第一の柱は、これから建設産業を支えてくれる「人」をどうやって確保し、一人前に育てていくか、ということに重点を置いています。具体的には、建設産業の魅力を伝えたり、学校との連携を深めたり、誰もが働きやすい環境を整えたりすることで、若い方や女性、外国人の方など、多様な方々に建設の仕事に興味を持ってもらい、入職してもらうことを目指します。例えるなら、地域の「リレーチーム」が、これから長く活躍できる新しいメンバーを探し、しっかりトレーニングして、チームの一員として育てていくことに力を入れる、ということです。
柱②生産性向上と働き方改革による可能性の拡大
建設の仕事は、昔から「きつい、汚い、危険」といったイメージを持たれることもあり、また実際に長時間労働が多いという課題があります。これでは、せっかく興味を持った若い方も、他の働きやすい仕事を選んでしまうかもしれません。第二の柱は、「少ない人数でも、もっと効率的に、そしてもっと働きやすくする」ことで、この課題を解決し、建設産業の可能性を広げることを目指します。具体的には、「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれる、デジタル技術(ドローンやタブレット、AIなど)を積極的に活用して、仕事のやり方を効率化すること。そして、働く時間を減らし、お休みをしっかり取れるようにすること(例えば、週休2日制を当たり前にすること) に取り組みます。例えるなら、「手作業」だけでなく、最新の「便利な道具」や「効率の良い手順」を取り入れて、早く、正確に、そして無理なく仕事を進められるようにすること、そしてチームのみんながきちんと休めるようにすること、です。
柱③強靭で持続可能な産業エコシステムの育成
最後の第三の柱は、建設産業全体を、どんな変化にも負けない「強く、しなやかな」ものにすることに焦点を当てています。ここでの「エコシステム」とは、個々の会社だけでなく、関連する様々な会社や人、仕組みが一体となった「産業全体」を指します。具体的には、個々の建設会社が経営を安定させ、災害が起きても事業を続けられるように準備(BCP策定など)をしたり、後継者がいない会社の事業承継を支援したり、新しい分野の仕事にも挑戦できるように支援したりします。また、公共工事が安定的に行われるようにすること や、仕事の質が正しく評価される仕組みを作ることも重要です。これは、例えるなら、森の中の木々一本一本を丈夫にするだけでなく、森全体として多様な植物が育ち、病気や嵐にも強い、豊かな「森」を作っていくこと、です。地域の安全を守る重要な役割を担う建設産業が、経済的にも社会的にも安定して活動できる基盤を強化するのです。

三つの柱が連携して産業全体の変革を推進

これらの三つの柱は、それぞれが独立しているわけではありません。例えるなら、これらは大きな歯車のように、互いに噛み合い、回転することで、建設産業全体を前に進める駆動力となります。

人材の確保・育成(柱①)働き方改革の推進(柱②)魅力向上、生産性向上(柱②)企業収益改善、投資余力向上(柱③)人材育成への投資、DX推進(柱①, ②)

このように、人材が増え、働き方が改善されれば、産業全体のイメージが向上し、さらに人が集まりやすくなります。生産性が上がれば、同じ期間でもより多くの仕事ができたり、労働時間を減らしたりすることが可能になり、企業の収益改善にもつながります。収益が改善されれば、新しい技術(DX)への投資や、社員のスキルアップ、さらなる労働環境の改善(週休2日制の定着など)にお金をかける余裕が生まれます。そして、これらがまた、人材確保や生産性向上に繋がっていくという、好循環を生み出すことを目指しています。

つまり、この三つの柱は、熊本県の建設産業が、厳しい現状を乗り越え、より強く、より魅力的な産業として「持続的に発展」し、これからも地域の「守り手」であり「未来をつくる」存在であり続けるための、連携した戦略なのです。

なお、本章でご紹介したビジョンや戦略は、プラン全体の方向性を示すものであり、特定の法律の条文や裁判所の判例に直接関連する内容ではございません。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランは、「地域を守り、未来をつくる建設産業の持続・発展」という明確なビジョンを掲げ、それを実現するために「人材の確保・育成」「生産性向上と働き方改革」「強靭で持続可能な産業エコシステムの育成」という三つの戦略的柱を設定しました。これらの柱は互いに連携しながら、産業全体の構造的な変革を推進しようとするものです。

このプランが描く未来を実現するため、それぞれの柱の下で具体的にどのような取り組みが進められるのか、次の項目で詳しく見ていきましょう。

第2章 未来の担い手となる人材を確保・育成するために

熊本県の建設産業が、将来にわたって私たちの街や暮らしを守り、未来を築いていくためには、何よりも大切な「人」の力が欠かせません。しかし、今、建設業界は、多くの地域と同じように、深刻な課題に直面しています。それは、働く人が足りないこと、そして働く人の年齢が高くなっていること、さらに若い人がなかなか入ってこないという現状です。

特に心配されているのが、専門的な技術を持つ職人さんが減っていることです。たとえば、建物の壁を塗る左官さん、骨組みを作る鉄骨・鉄筋工さん、家を作る大工さん、色を塗る塗装工さんといった専門工事業では、働く人がこの15年ほどで大きく減ってしまっています。まるで、オーケストラで特定の楽器の演奏者がいなくなってしまうように、必要な技術を持つ人がいなくなることは、業界全体にとって大きな問題となります。

なぜ、このような状況になっているのでしょうか。働く人の年齢を見ると、55歳以上の人が約40%と、全国平均よりも高齢化が進んでいます。一方で、29歳以下の若い人は約10%と全国平均を下回り、さらにその割合が減り続けています。これは、まるで年齢構成の崖(デモグラフィック・クリフ)のようなもので、このままでは将来、技術や技能を次の世代に引き継ぐことが難しくなってしまいます。

県では、このような深刻な状況に対し、強い危機感を持っています。そこで、第4次熊本県建設産業振興プランでは、この「人手不足と高齢化、そして若年層不足」という喫緊の課題に対応するため、「未来の担い手となる人材の確保・育成」を最も重要な戦略の一つに位置づけているのです。

未来の担い手となる人材を確保・育成するための具体的な施策

では、この難しい課題を解決するために、具体的にどのような取り組みが進められているのでしょうか。プランでは、大きく3つの方向性で施策が展開されています。それは、「産業の魅力向上と新規人材の獲得」、「多様性の推進とインクルージョン」、そして「スキル開発と教育連携の強化」です。

産業の魅力向上と新規人材の獲得

建設業は、大変な仕事というイメージを持たれがちですが、実は私たちの生活に欠かせない道路や橋を作り、災害が起きたときには真っ先に駆けつけて地域を守る、とてもやりがいのある仕事です。まずは、こうした建設業の本当の姿や社会貢献の重要性を、広く知ってもらうことから始めます。

主な取り組みは以下の通りです。

取り組みの具体的な内容対象者目指すこと
小・中・高校生や保護者向けの現場見学会や「魅力発見フェア」の開催小・中・高生、保護者建設業の仕事を体験してもらい、面白さや社会での役割を理解してもらう
災害発生時の活躍など、社会貢献活動に関する情報発信の強化一般県民、求職者地域を守る「ヒーロー」としての建設業の姿を伝える
SNSなどを活用した企業ごとの魅力発信の強化求職者個々の企業の良いところや働く人の様子を身近に感じてもらう
工業系高校だけでなく、普通科高校や小・中学校との接触機会創出支援小・中・高生、学校関係者早い段階から、より幅広い層に建設業を将来の選択肢の一つとして考えてもらう機会を作る
建設産業ガイダンスの実施、高校在学中の資格取得支援高校生具体的な仕事内容や必要なスキルを知ってもらい、就職に繋げる
県内企業への就職を支援する「しごとコーディネーター」の配置求職者個別の相談に乗り、企業との橋渡しをする

これらの取り組みは、単に「人が足りません、来てください」と呼びかけるだけでなく、建設業で働くことが、いかに私たちの社会を支え、未来を創る素晴らしい仕事であるかを、子供たちの頃から知ってもらうことを目指しています。まるで、遠い存在だった建設の仕事を、私たちの街の身近な存在として、そして将来なりたい自分になれる場所の一つとして感じてもらうための、長期的な「ファンづくり」のようなイメージです。

多様性の推進とインクルージョン

少子高齢化で日本の人口が減っていく中で、これまで以上に様々なバックグラウンドを持つ人たちが、建設業で活躍できるようになることが不可欠です。女性や外国人材など、多様な人材に目を向け、誰もが働きやすい環境を整えることで、働く人の層を厚くし、新しい視点やアイデアを取り入れていくことを目指しています。

このための支援策が拡充されています。

取り組みの具体的な内容対象者目指すこと
女性や外国人材の受け入れ・育成環境整備支援(多言語対応の資格取得支援、就労環境整備、企業とのマッチング機会創出など)女性、外国人材、建設企業言葉や文化の違い、あるいは職場環境における物理的・心理的なバリアを取り除き、働きやすい環境を作る
建設現場における安全対策の強化、労働災害防止への取り組み全就業者誰もが安心して働ける安全な職場環境を実現する
新たな在留資格「育成就労」制度などの活用検討外国人材、建設企業人手不足に対応するため、外国人材の受け入れを円滑に進める制度を活用する

「多様性」という言葉は、異なる得意技を持つ人々が集まって一つのチームを作ることに例えられます。建設の仕事も、力仕事だけでなく、計画を立てる人、デザインする人、安全を管理する人など、様々な役割があります。女性ならではの視点や、外国から来た人々の持つ技術や考え方が、建設業の新しい可能性を広げてくれると期待されています。ただし、これらの取り組みが本当に成功するかどうかは、企業一つ一つが、言葉の壁をなくしたり、働き方を見直したりといった具体的な行動をどれだけ起こせるかにかかっています。

スキル開発と教育連携の強化

せっかく建設業に興味を持って入ってきてくれた若い人たちが、「この仕事は面白い」「ここで成長したい」と感じ、長く働き続けてくれることも重要です。そのためには、入ってからの「育ち」をしっかりサポートする仕組みが必要です。

プランでは、入職後のスキルアップと定着を支援する様々な施策が盛り込まれています。

取り組みの具体的な内容対象者目指すこと
若手職員の技能向上に向けた企業の取り組みへの支援(育成プログラム作成支援など)若手職員、建設企業企業が計画的に若手を育てられるようにサポートする
公共工事の入札評価における若手技術者の配置や優良工事担当実績の評価・表彰若手技術者、建設企業若い技術者の経験を評価し、活躍を後押しする
将来の担い手育成を評価する「担い手育成タイプ」の総合評価落札方式の試行建設企業人材育成に力を入れている企業が、公共工事を受注しやすくなる仕組みを試行する
県建設技術センターや高等技術専門校による技術者・技能者の育成、技能振興センターの活用促進技術者、技能者専門的な技術や知識を習得できる場を提供する
建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用推進(経営事項審査での評価など)全就業者、建設企業働く人の経験やスキルを「見える化」し、正当に評価されるようにする。頑張りが評価に繋がる仕組みを作る

ここで特に注目したいのは、企業が人材育成にかけた努力や投資が、公共事業を受注するための評価(総合評価落札方式や経営事項審査)に直接反映されるようになる、という点です。これは、まるで学校で頑張ったことが成績として評価され、進学に繋がるように、建設企業が人材育成に力を入れることが、そのまま経営上のメリットになるということです。県としては、公共事業の発注という強い力を利用して、業界全体に「人づくり」をもっと大切にしてもらいたい、と考えているのです。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

CCUSは、建設現場で働く一人ひとりの資格や、いつ、どこで、どのような仕事をしたかという経験が、インターネット上で記録・蓄積される仕組みです。いわば、建設業界で働く人の「職務経歴書」や「スキルの見える化ツール」のようなものです。これがあると、自分の経験やスキルが客観的に証明され、給与や待遇の改善に繋がりやすくなります。また、企業にとっては、働く人の能力が把握しやすくなり、適切な配置や育成に役立ちます。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランにおける「未来の担い手となる人材の確保・育成」という柱は、熊本県の建設産業が直面する最も根本的な課題である人手不足と高齢化に、真正面から向き合うためのものです。若い世代や一般の人々に建設業の魅力を伝え、女性や外国人材といった多様な人々を受け入れ、そして一度入った人がしっかりとスキルを身につけて長く活躍できるような仕組みを整える。これらの取り組みは、単に今足りない人を補うだけでなく、10年、20年先の建設産業を担う人材を育て、技術や技能を未来に繋いでいくための、まさしく「未来への投資」と言えます。

この章で見たように、人材確保・育成のためには様々な施策が進められています。しかし、人を育てるには、働く環境そのものが魅力的である必要があります。長時間労働の是正や休日をしっかりとれる働き方は、働く人のモチベーションを高め、新しい人材を呼び込むためにも不可欠です。次の章では、こうした働き方の改革や、限られた人員で効率よく仕事を進めるための「生産性向上」の取り組みについて、さらに詳しく掘り下げていきます。

熊本県の建設産業が直面している深刻な人手不足や高齢化といった構造的な課題、そして災害からの復旧・復興や半導体関連産業の集積という地域特有の状況についてお話ししました。このような状況下で、限られた人材で高まる建設需要に対応し、将来にわたって産業を持続させていくためには、根本的な変革が必要です。

そこで、本章では、第4次熊本県建設産業振興プランの第二の柱である「生産性向上と働き方改革」に焦点を当て、なぜこれが不可欠なのか、そして具体的にどのような取り組みが進められているのかを掘り下げてまいります。

生産性を高め、働きがいのある環境を実現するために

熊本県の建設産業は、社会基盤の整備や災害対応など、地域を守る上で非常に重要な役割を担っています。しかし、就業者数は減少傾向にあり、働く方々の平均年齢も高くなっています。このような状況で、増加する建設需要に応え続けることは容易ではありません。さらに、建設業の月間実労働時間は、全産業の平均と比べて長い傾向にあり、これが若い世代の入職をためらわせる一因とも考えられています。

「少ない人数で、これまで以上の仕事量をこなす」ためにはどうすれば良いでしょうか。そして、「働く方々が、無理なく、安心して長く働ける環境」をどうすれば実現できるでしょうか。この問いに答えるために、「生産性の向上」と「働き方の改革」が、喫緊の課題として位置づけられているのです。例えるならば、昔ながらの手作業に頼っていたチームが、便利な新しい道具や機械を導入し、さらに働く時間や役割分担を見直して、もっと効率的に、そして気持ちよく働けるように変わろうとしているイメージです。

課題に対応するための具体的な施策

この重要な課題を解決するために、プランではいくつかの具体的な施策が盛り込まれています。大きく分けて「建設DXの導入加速」「完全週休2日制の実現に向けた働き方改革」「現場や事務作業の負担を減らす工夫」の三つが柱となっています。

「建設DX」の導入加速

建設DXとは、建設現場の様々なプロセスにデジタル技術(Digital Transformation)を導入し、仕事のやり方そのものを変革することです。これは、まるで昔の白黒テレビがカラーテレビになり、さらにスマートテレビに進化したように、建設の仕事も最新技術で大きく生まれ変わらせようという試みです。

具体的には、以下のような取り組みが進められています。

施策の具体例どのような取り組みか期待される効果
ICT活用工事の推進ドローンやレーザースキャナーで地形を正確に測ったり、GPS付きの重機で設計通りに土を掘ったりします。対象となる工事の種類も増やしています。測量や作業のスピードと精度が格段に上がり、少ない人数で効率よく工事を進めることができます。
遠隔臨場やWEB会議の推進離れた場所からカメラやモニターを通じて現場の状況を確認したり、事務所と現場、あるいは複数の関係者がオンラインで会議をしたりします。新しい取り組みとして推進されています。現場への移動時間やコストが削減され、関係者間の情報共有がスムーズになります。
オンラインによる電子契約・電子納品の導入これまで紙で行っていた契約や、工事の成果品(写真や書類など)の提出をオンラインで行えるようにします。これも新しい取り組みです。書類の作成や管理の手間が減り、手続きが迅速になります。
建設業許可・経営事項審査における電子申請の推進建設業を営むために必要な許可の申請や、公共工事の入札参加に必要な審査をオンラインで行えるようにします。これも新しい取り組みです。申請作業の負担が軽減され、手続きが簡単になります。
BIM/CIMの普及・拡大建物の設計や工事に関する情報を3Dモデルで一元管理するシステムです。九州・沖縄ブロック全体で利用を広げていく方針です。設計段階から完成、さらには維持管理まで、情報を共有しやすくなり、手戻りやミスの削減、効率的な管理が可能になります。

これらの建設DXへの取り組みは、企業の生産性を高めるだけでなく、働く人々がより付加価値の高い業務に集中できるようになることを目指しています。県としても、こうしたデジタル技術の導入を後押しするための補助金制度や支援体制を整えています。

「完全週休2日制」の実現に向けた働き方改革

長時間労働の常態化は、若い人や女性などが建設業で働くことをためらう大きな理由の一つです。そこで、プランでは「完全週休2日制」の実現を非常に強く打ち出しています。これは、単なる努力目標ではなく、実際に週に二日しっかり休める環境を根付かせようという強い意志の表れです。例えるならば、「昔は土日も仕事をするのが当たり前だったけれど、これからは家族や自分の時間のために、みんなで協力して土日を休みにしよう!」と、業界全体で決意したようなものです。

そのための具体的な目標として、月単位で4週間に8日の休み(完全週休2日)を取得することを目指しています。そして、この休みを実現するために必要となる費用(例えば、休日分の人件費や、現場を閉めることによる経費など)を工事の価格に適切に反映させる取り組みが進められています。また、ユニークな取り組みとして、九州・沖縄ブロックの各県や政令指定都市と連携し、地域全体で毎月特定の土曜日を「統一現場閉所日」と設定し、みんなで一緒に休みを取りやすくする環境を整備しようとしています。令和7年度には、毎月第2・第4土曜日を閉所日とする目標が掲げられています。

これにより、建設業で働く方々がプライベートの時間も大切にできるようになり、ワークライフバランスが改善されます。これは、業界全体の魅力を高め、新たな人材を呼び込み、既存の社員が長く安心して働ける環境を作る上で、極めて重要な一歩となります。

日々の業務を効率化し、負担を軽減する工夫

生産性向上と働き方改革は、大掛かりなDXや制度改革だけではありません。日々の細かな業務の見直しも重要です。

施策の具体例どのような取り組みか期待される効果
工事関係書類の簡素化工事の進捗や品質などを記録するための書類作成を、より簡単にする取り組みです。様式の統一化なども進んでいます。現場の技術者などが書類作成に費やす時間を減らし、本来の仕事に集中できるようになります。
建設ディレクター導入支援工事現場の技術者をサポートするために、書類作成や写真整理などを担当する「建設ディレクター」のような役割を担う人材の導入を支援します。現場技術者の負担が軽減され、効率よく業務を進めることができます。
専任技術者の柔軟な運用工事現場に常駐する必要のある技術者が、休暇などを取得しやすくなるような柔軟な運用が検討されています。技術者が適切に休息を取れるようになり、健康維持やモチベーション向上につながります。
時間外労働上限規制への対応促進法律で定められた時間外労働の上限規制に、建設業もしっかりと対応できるよう、必要な取り組みを促します。働く人々の健康を守り、長時間労働を是正します。
発注・施工時期の平準化や適切な工期設定工事の発注時期や施工時期を年間を通じてできるだけ均等にしたり、無理のない適切な工事期間を設定したりします。特定の時期に仕事が集中することによる負担を軽減し、計画的に業務を進めることができます。

これらの取り組みは、一つ一つは小さなことのように見えても、積み重なることで現場や事務所の負担を大きく減らし、全体の効率アップに繋がります。

これらの取り組みがもたらす未来

建設DXによる生産性向上と、完全週休2日制を中心とした働き方改革、そして業務効率化の取り組みが進むことで、熊本県の建設産業は大きく変わる可能性があります。生産性が高まれば、少ない人数でもより多くの、そしてより質の高い仕事ができるようになります。働きがいのある環境が整備されれば、若い世代や女性、外国人材といった多様な人々が「この業界で働きたい」と感じるようになり、人手不足の緩和に繋がるでしょう。業界全体のイメージも向上し、「きつい、危険、汚い」といった従来のイメージから、「スマートで、魅力的で、安心して長く働ける」産業へと変貌を遂げることが期待されます。

これは、単に企業の利益が増えるということだけではありません。働く人々が心身ともに健康で、生き生きと仕事に取り組めるようになれば、それが高品質な社会基盤づくりに繋がり、最終的には地域に住む私たちの安全・安心な暮らしや、熊本県の持続的な発展に貢献することになるのです。

まとめ

熊本県の建設産業が直面する人手不足や長時間労働といった課題に対し、第4次振興プランでは「生産性向上と働き方改革」を重要な柱として位置づけています。建設DXの導入による仕事の効率化や質の向上、そして完全週休2日制の実現といった働き方の見直しは、業界の構造的な問題に対処し、将来にわたって持続可能な産業となるための不可欠な取り組みです。これらの改革は、個々の企業の努力はもちろん、県や業界団体、そして働く人々が一体となって進めることで、初めて実効性を持つものです。この変革の波を捉え、より魅力的な産業へと進化していくことが、今後の熊本県建設産業に求められています。

次章では、こうした取り組みを通じて、どのように強靭で持続可能な産業のエコシステムが構築されていくのかについて、さらに詳しく見ていきます。

強靭で持続可能な建設産業エコシステムを構築するために

熊本県の建設産業が直面している様々な課題、例えば人手不足や高齢化、そして働き方改革の必要性について、これまでの章で詳しく見てきました。これらの課題を乗り越え、将来にわたって地域を支え、発展させていくためには、産業全体の「足腰」を強くし、変化に柔軟に対応できる体質を作ることが不可欠です。この「強靭で持続可能な産業エコシステムの構築」こそが、第4次熊本県建設産業振興プランの3つ目の柱となっています。

「産業エコシステム」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、これは森のようなものだと考えてみてください。森には、大きな木だけでなく、小さな草花、虫、鳥、動物など、様々な生き物がいて、それぞれが役割を果たしながら interconnected (互いに関連し合って)生きています。そして、森全体が健康であることで、嵐にも耐え、次の世代に命をつないでいくことができます。建設産業も同じで、大きな会社、小さな専門会社、働く人々、材料を作る会社、そして発注者である県や市町村など、多くの要素が関わり合って成り立っています。この全体が健全でなければ、個々の会社だけが頑張っても限界があります。だからこそ、産業全体を強く、持続可能にしていく必要があるのです。

この柱では、主に次の4つの方向から、産業の基盤を強化するための取り組みが進められます。

柱3の主な取り組み

安定した市場環境を作る会社の基盤を強くする地域貢献の力を高める地球環境に配慮する

これらの取り組みは、単にビジネスを継続するだけでなく、建設産業がこれからも「地域の守り手」 として、また熊本の「未来をつくる」存在 として、その役割を果たし続けるための大切な土台となります。

安定した市場環境を作るために

建設産業が安心して事業を続け、将来への投資(例えば新しい技術の導入や社員の教育)を行うためには、仕事が安定してあること、そしてその仕事に見合った適正な価格で契約できることが重要です。ここでは、そのための施策を見ていきましょう。

公共投資の安定化と地元企業への配慮

まず、公共事業は建設産業にとって大きな柱の一つです。道路や橋、河川の整備など、私たちの生活に欠かせないインフラは、建設産業によって作られ、守られています。復旧・復興事業や国土強靱化対策などもあり、近年、県内の建設投資額は増加傾向にあります。しかし、災害復興事業が一段落した後の公共投資の安定性については懸念の声も聞かれます。

そのため、プランでは国などに働きかけ、公共投資の予算を安定的かつ継続的に確保していくことを目指しています。これは、企業が将来を見通しやすくし、安心して経営計画を立てられるようにするためです。

また、県内の企業に優先的に発注することや、専門的な技術を持つ工事業(専門工事業)さんへの分離発注を推進することも掲げられています。専門工事業さん、例えば左官屋さんや鉄筋屋さん、大工さんなどは、特定の高度な技術を持っています。これらの技術は、地域社会にとって非常に重要ですが、跡継ぎ不足などで減少が進んでいます。分離発注は、元請けの総合建設会社だけでなく、これらの専門工事業さんが直接仕事を受けやすくなるようにすることで、彼らの技術を守り、育成していくことを支援する狙いがあります。これは、多様な専門技術を持つことが、産業全体を強くすることにつながるという考えに基づいています。

公正なルールと品質の確保

次に、仕事の「質」をきちんと評価し、競争が公正に行われるためのルール作りです。

県が発注する工事では、工事の成績や、災害対応への貢献、BCP(事業継続計画)の策定状況、さらには社会貢献活動(後述します)といった、企業の様々な取り組みが入札の際に評価されます。これは、単に価格だけで業者を選ぶのではなく、技術力が高いか、地域に貢献しているか、非常時に対応できる備えがあるかなど、多角的な視点で「良い仕事をする会社」「信頼できる会社」を適正に評価しようという仕組みです。入札参加資格審査格付や総合評価落札方式といった形で評価が行われます。

また、「ダンピング対策」も重要です。ダンピングとは、工事費を極端に安く請け負うことです。一見、税金が安く済むように思えますが、これが行われると、企業は適正な利益を得られず、手抜き工事につながったり、働く人の賃金が抑えられたり、安全対策がおろそかになったりするリスクが高まります。これは業界全体の質を低下させ、働く人や地域社会にも悪影響を及ぼします。例えば、資材価格が高騰しても、安い価格でしか仕事が受けられないと、企業は十分な利益を確保できず、賃上げや働き方改革(週休2日制の導入など)のための投資が難しくなります。そこで、予定価格や最低制限価格を適切に設定するなど、ダンピングを防ぐ取り組みが進められています。

さらに、元請けと下請けの会社との間での関係を適正に保つことも大切です。例えば、下請けさんへの支払いをきちんと行う、無理な納期を押し付けない、といったことです。標準見積書の活用促進や現場への立ち入り調査なども行われます。そして、ルールを守らない「不良不適格業者」を排除するための厳しい対処も行われます。これらの取り組みは、全ての企業が安心して、公平な条件で事業を行えるようにするためのものです。

これらの施策は、例えるなら、市場を魚屋さんや八百屋さんが集まる「市場」のようなものだとすると、そこで取引される商品の「品質表示」をしっかりさせ、「不当な安売り」を防ぎ、「悪い商品を売るお店」を取り締まり、お店同士の「公正な取引」を促すルールを作るようなものです。これによって、市場全体が活性化し、消費者は安心して買い物ができ、お店も適正な利益を得て続けられるようになります。建設産業という市場でも、同様の仕組みが目指されているのです。

会社の足腰を強くする支援

市場環境の整備と並行して、個々の建設企業が経営的に安定し、変化に強い「足腰」を持つことも重要です。

もしもの時に備えるBCP

熊本県は地震や豪雨など、自然災害が多い地域です。災害が発生した際には、建設会社は道路の啓開や建物の応急復旧など、「地域の守り手」としていち早く活動する必要があります。しかし、企業自身が被災してしまっては、こうした活動を行うことができません。

そこで、BCP(事業継続計画)の策定が促進されています。BCPとは、地震や水害などの緊急事態が起きたときに、「どうすれば事業を止めずに、あるいは早期に復旧させて、重要な業務(建設業にとっては災害対応や復旧工事など)を続けられるか」という計画です。例えるなら、家庭で地震に備えて避難場所や家族との連絡方法を決めておく「防災計画」のようなものです。企業版の防災計画、と考えると分かりやすいかもしれません。BCPをしっかり策定し、訓練しておくことで、もしもの時にも混乱せず、地域のために迅速に動けるようになります。BCP策定状況は、入札評価でも考慮されます。

未来へつなぐ事業承継と経営支援

建設業界の経営者の皆さんも高齢化が進んでいます。後継者がいないなどの理由で、せっかくの技術や会社がなくなってしまうのは、地域社会にとっても大きな損失です。

この問題に対応するため、プランでは事業承継や企業合併に対する支援が行われます。例えば、会社を引き継ぐ人への支援や、複数の会社が一緒になって経営基盤を強くする場合のサポートなどです。これは、リレーのバトンを次の走者にスムーズに渡すように、大切な会社を未来へつないでいくための支援です。

また、経営に関する悩みを相談できる窓口の設置や、資金繰りを支援するための各種融資制度の活用促進も行われます。資材価格の高騰などにより、企業の収益性が圧迫されている現状もあります。こうした状況下で、企業が安定した経営を続けられるよう、様々な角度から支援が行われます。

新しい挑戦を応援

建設業は、社会のニーズの変化に合わせて、新しい分野にも挑戦していく必要があります。例えば、災害復旧事業が一段落した後の需要変動への対応 や、半導体関連産業の集積に伴うインフラ整備以外のニーズなどです。

そこで、プランでは建設業以外の新しい分野への進出も支援します。例えば、建設技術を活かして農業に取り組んだり、林業と連携したりといった取り組みが考えられています。これは、野球選手がオフシーズンに他のスポーツでトレーニングをするように、一つの分野に留まらず、多様な力を身につけて、どんな状況でも活躍できる会社を目指すということです。新しい分野に進出した企業は、入札評価で考慮されることも検討されています。これは、企業の多角化を後押しし、特定の事業に依存しない強靭な経営体質を作ることを目的としています。

地域社会を支える役割を強化

建設業は、単に建物や道路を作るだけでなく、地域社会にとってなくてはならない存在です。特に、災害時における活動は「地域の守り手」 として高く評価されています。

「地域の守り手」としての備え

大規模な災害が発生した際には、県と建設業界は災害協定に基づいて、迅速な復旧活動を行います。例えば、倒壊した家屋の撤去、道路の土砂の除去、仮設住宅の建設など、人々の命と生活を守るために不可欠な活動です。プランでは、こうした災害協定に基づく活動に関するルール作り(広域的な支援活動を含む)が新しく進められます。これにより、いざという時の連携がよりスムーズになります。また、先述したように、災害協定の締結状況やBCPの策定状況は、入札評価で考慮されます。これは、災害に強い地域を作るために、建設会社にも積極的に備えを進めてほしいというメッセージでもあります。

日常からの地域貢献も大切に

災害時だけでなく、日頃からの地域社会への貢献も重視されています。例えば、消防団活動への参加は、地域の防災力向上に直接つながります。また、保護観察対象者の協力雇用主として、社会復帰を支援する活動や、ロードグリーンボランティア(道路美化活動)への参加といった、企業の社会貢献活動も評価の対象となります。これらの活動は、企業のイメージ向上にもつながりますし、働く人々にとっても地域の一員としての誇りややりがいを感じる機会となります。建設会社が地域社会の一員として積極的に関わることで、地域からの信頼を得て、より良い関係を築いていくことを目指しています。

地球にも未来にも優しい取り組み

持続可能な社会の実現は、建設産業も避けて通れないテーマです。このプランでも、環境に配慮した取り組みが盛り込まれています。

SDGsと建設業

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。これは、国連が掲げる、世界中の誰もがより良い未来を築くための17の目標です。貧困をなくしたり、健康を守ったり、地球環境を守ったりといった様々な目標が含まれています。建設産業も、事業活動を通じてこれらの目標達成に貢献することができます。

プランでは、SDGsへの取り組みが新しく促進され、これも入札評価で考慮されるようになります [新]。例えば、建設現場での省エネルギー化、廃棄物の削減、環境に優しい工法の導入などが考えられます。企業が積極的にSDGsに取り組むことは、社会からの評価を高めるだけでなく、新しいビジネスチャンスにもつながる可能性があります。

地元のリサイクル活用

建設現場から出るコンクリートやアスファルトなどは、適切に処理すればリサイクルして再び工事に使うことができます。熊本県には「熊本県リサイクル製品認証制度」というものがあり、この制度で認証されたリサイクル製品の利用が促進されています。地元のリサイクル製品を積極的に使うことは、廃棄物を減らし環境負荷を低減するだけでなく、地域の資源を有効活用し、循環型社会を作ることに貢献します。

これらの環境への配慮は、例えるなら、家を建てる際に、古い材料を捨てずに新しい家の一部として再利用したり、太陽光パネルを設置したり、地域の森で育った木材を使ったりすることに似ています。地球環境を守りながら、未来世代が安心して暮らせる社会を作るための責任を、建設産業も果たしていくということです。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランの3つ目の柱である「強靭で持続可能な産業エコシステムの構築」は、建設産業が将来にわたって地域社会に貢献し続けるための、経営と基盤の強化を目指しています。

具体的には、公共投資の安定確保や地元企業・専門工事業への配慮、公正な入札・契約ルールの徹底によって、安心して事業に取り組める市場環境を作ります。そして、BCP策定支援や事業承継・経営支援、新分野への挑戦応援によって、個々の企業の経営力と変化への対応力を高めます。さらに、災害協定の整備や地域貢献活動の評価を通じて、「地域の守り手」としての役割を一層強化し、SDGsやリサイクル製品の活用促進を通じて、環境にも配慮した事業活動を広げます。

これらの取り組みは、これまでの章で見てきた「人材の確保・育成」や「生産性向上と働き方改革」といった柱とも密接に関連しています。経営が安定し、地域からの信頼が厚く、働きがいのある環境が整えば、優秀な人材が集まりやすくなります。また、DXによる生産性向上は、経営効率を高め、新しい分野への挑戦を後押しするでしょう。

この3つ目の柱で描かれているのは、単なるビジネスの継続ではなく、社会の変化に強く、働く人が誇りを持て、地域から必要とされ、未来世代にも貢献できる、そんな建設産業の姿です。プランが目指すこの強靭な産業エコシステムは、熊本県の未来を支える重要な土壌となるでしょう。

熊本県の建設産業が、将来にわたって地域を守り、未来を創造していくためには、超えなければならない大きな課題があります。深刻な人手不足、就業者の高齢化、そして生産性向上や働き方改革の必要性です。こうした背景から策定されたのが、「第4次熊本県建設産業振興プラン」です。前章までで、このプランが掲げる壮大なビジョンと、それを実現するための3つの柱(人材の確保・育成、生産性向上と働き方改革、持続可能な産業の育成)について見てきました。

このプランに盛り込まれた数多くの施策は、どれも重要なものばかりです。しかし、これらの施策が絵に描いた餅で終わらず、実際に効果を発揮し、業界の持続的な発展に繋がるためには、一つの「鍵」が必要です。それは、関係者全員が力を合わせる「連携」です。まるで大きなオーケストラが素晴らしい演奏をするために、一人ひとりの演奏家が指揮者に合わせて協力し、それぞれの楽器の音色を調和させるように、このプランもまた、多くの人々の協力があって初めて成功へと導かれるのです。

第5章 プラン成功の鍵は「連携」にあり! みんなで未来を築く熊本の建設産業

なぜ「連携」がプラン成功の鍵なのか

第4次プランが対象とする課題は、どれも一企業や一団体だけでは解決が難しい、構造的かつ根深いものです。人材不足は、少子高齢化という社会全体の傾向と深く結びついています。働き方改革は、業界特有の長時間労働の慣習や、工期、コストといった外部要因にも左右されます。生産性向上としての建設DX(デジタルトランスフォーメーション)は、新しい技術への投資や、従来のワークフローの見直しを伴うため、多くの企業にとってハードルがあります。

このような複雑な課題に対処し、プランが描く未来像「地域を守り、未来をつくる建設産業の持続・発展」を実現するためには、熊本県という地域全体で、建設産業に関わるあらゆるプレーヤーが共通認識を持ち、それぞれの立場で協力して取り組むことが不可欠なのです。県が旗を振り、業界団体が企業をまとめ、そして個々の企業が現場で実践するという、まさに「ワンチーム」としての取り組みが求められています。

連携を担う主要なプレーヤーたち

このプランを推進する上で中心となるのは、主に以下の三者です。

主体役割具体的な連携内容の例
熊本県政策の立案・推進、財源確保、規制・誘導(発注者としての役割が重要)プラン全体の方向性決定、予算措置、入札制度での優遇措置(インセンティブ付与)、情報提供、支援制度の実施
建設関連団体
(熊本県建設業協会など)
業界の意見集約、会員への情報伝達、研修・教育実施、自主的な取り組みの推進、県への政策提言プラン内容の説明会開催、会員アンケート実施、DX研修や働き方改革に関するセミナー開催、県との定期的な意見交換
個々の建設企業プラン施策の現場での実践、人材育成への投資、DXツールの導入・活用、働き方改革の実行若手育成プログラムの実施、CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録・活用、ICT活用工事への取り組み、完全週休2日制の導入に向けた努力

県は全体像を描き、業界団体が企業間の橋渡し役となり、企業が現場で具体的な行動を起こす。この三者の協力関係がスムーズに機能してこそ、プランは着実に前進するのです。例えば、県が入札制度でDXへの取り組みを評価する仕組みを導入すれば、業界団体は会員企業にその情報を周知し、導入方法に関する研修を提供します。それを受けて、企業は自社でDXツールを導入・活用するインセンティブ(動機付け)を得る、といった具合です。このように、それぞれの立場が連携することで、個別の施策がより効果的に推進されます。

地域を越えた広域連携の重要性

熊本県内の連携に加え、このプランでは「九州・沖縄ブロック」という、より広い範囲での連携も非常に重要な柱として位置づけられています。なぜ地域を越えた連携が必要なのでしょうか。

建設産業の課題、特に人手不足や働き方改革の必要性は、熊本県だけでなく、九州・沖縄地域全体で共通する問題です。また、発注者としての国(九州地方整備局など)や他の県・政令指定都市も、同様の課題意識を持っています。このような共通の課題に対して、各県がバラバラに対策を講じるよりも、広域で足並みを揃えて取り組んだ方が、より大きな効果が期待できるのです。

九州・沖縄ブロックでは、建設業の「働き方改革」や「生産性向上」を強力に推進するため、国土交通省の地方整備局や沖縄総合事務局、各県、政令指定都市の土木部長などが集まり、共通の取り組み目標を設定しています。

九州・沖縄ブロックでの主な連携の取り組み例

取り組み内容期待される効果
統一現場閉所日の設定令和7年度は毎月第2・第4土曜日などを目標に、地域全体で現場を閉める日を設ける。地域全体で休日取得を後押しし、建設業の「完全週休2日制」実現を構造的に支援する。
ICT活用工事の対象拡大ICT(情報通信技術)を活用できる工事の種類(土工、舗装工など)を、地域全体で共通認識を持って増やしていく。生産性向上に向けた新技術導入を地域全体で促進し、企業が導入しやすい環境を作る。
工事関係書類様式の統一化工事で使う書類の様式を地域共通のものにする(既に達成済み)。書類作成業務の効率化、異なる県での工事でもスムーズに対応できるようになる。
BIM/CIMの普及・拡大建設プロジェクトの情報を3Dモデルなどで統合管理するBIM/CIM技術の導入を広域で推進する。設計から施工、維持管理まで一貫した情報活用による生産性向上、より高度な技術活用を促進する。

このような広域連携は、企業にとって大きなメリットがあります。例えば、統一現場閉所日が設定されれば、特定の県だけが休日を取りにくくなるという状況を防ぎ、地域全体で働きやすい環境を作り出すことができます。また、ICT活用範囲が広域で統一されれば、企業はどの地域で工事を受注しても同じ技術基準に対応しやすくなり、DX投資の判断もしやすくなります。

まるで、隣り合った村同士がお祭りの日を合わせることで、たくさんの人が集まり、より盛大なお祭りになるように、建設産業の改革も広域で連携することで、より大きな推進力が生まれ、変革が加速するのです。

プランの進捗を測る「ものさし」

壮大なプランを立てても、それが計画通りに進んでいるのか、期待通りの効果が出ているのかを確認しなければ、絵に描いた餅になってしまいます。そのため、プランの進捗状況を定期的に確認する「モニタリング」が重要になります。まるで、マラソンで中間地点を通過した時のタイムを確認して、目標タイムに間に合うか調整するように、建設産業のプランも進捗を測るものさしが必要です。

提供された資料からは、第4次プラン全体としての具体的な数値目標(KPI、キーパフォーマンス指標)は明確には示されていません。しかし、プランを策定する上で分析された現状の様々な指標が、今後の進捗を測る「ものさし」として活用されると考えられます。

プランの進捗モニタリングに使われると考えられる主な指標

カテゴリー指標の例なぜ重要か
人材確保・育成建設業就業者の年齢構成(高齢化率、若年層比率)
新規高校卒業者の建設業就職者数・割合
人手不足感に関するアンケート調査結果
担い手確保・育成の状況を直接的に示す指標です。高齢化が進み、若年層が減少している状況が改善されるかどうかが鍵となります。
生産性向上・働き方改革建設DX(ICT活用工事実施率など)の導入状況
完全週休2日制の導入・定着状況
月間実労働時間数
働きがいのある環境が整備され、限られた人数でも効率的に業務が進められているかを示します。労働時間の短縮は若年層にとって魅力的な産業になるために不可欠です。
持続可能な産業育成企業収益性(完成工事高営業利益率など)
建設業許可業者数
BCP(事業継続計画)策定企業の割合
企業経営の健全性や、産業全体の体力、そして災害など不測の事態への備えが進んでいるかを示します。

これらの指標を定期的に確認することで、プランが狙い通りの効果を生んでいるのか、あるいはどこかに遅れや課題があるのかが見えてきます。例えば、人手不足感が依然として高い水準であれば、人材確保に向けた施策が十分ではない可能性を示唆します。完全週休2日制の導入が進まないのであれば、コストや工期の設定、あるいは企業側の意識改革に課題があるのかもしれません。

このようなモニタリングの結果を受けて、必要であれば施策を見直したり、新たな対策を講じたりすることが、プランを成功させるためには重要です。前向きな変化が起きている指標があれば、それをさらに加速させる取り組みを強化することも考えられます。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランという壮大な計画は、熊本県、建設関連団体、そして個々の建設企業が、それぞれの役割を果たしつつ緊密に「連携」することで初めて、実効性を持ちます。また、九州・沖縄ブロックという広域での連携は、特に働き方改革や生産性向上といった分野で、プランに強力な推進力を与えます。そして、人手不足の改善状況や働き方改革の進捗など、様々な「ものさし」でプランの歩みを測り、状況に合わせて柔軟に対応していくことが、プランを成功へと導く鍵となります。この連携とモニタリングの継続こそが、熊本県の建設産業が地域を守り、未来を創造する担い手として、持続的に発展していくための確かな道筋となるでしょう。

第6章 プランをチャンスに変えるために

前章までで、熊本県の建設産業が直面している厳しい現実や、今後5年間の方針を示す「第4次熊本県建設産業振興プラン」の全容について詳しく見てまいりました。このプランは、人口減少や高齢化、DXの波、そして働き方改革など、私たち業界に大きな変化と、それに対応するための投資を求めています。

しかし、見方を変えれば、これは単なる課題への対応策にとどまらず、私たち建設企業が事業を強化し、未来を切り開くための、またとない大きなチャンスでもあるのです。

特に、経営資源に限りがある中小企業の皆様にとっては、新しい取り組みへの一歩を踏み出すことに難しさを感じるかもしれません。しかし、このプランには、そうした皆様を後押しするための様々な支援策が盛り込まれています。これらの支援策を最大限に活用することが、変化の波を乗りこなし、成長を続けるための重要な鍵となります。

それでは、このプランをチャンスに変えるために、具体的な「次の一歩」として、何を考え、どのように行動していけば良いのか、掘り下げて見ていきましょう。

未来の担い手となる人材を確保し、育てる

建設産業の最も喫緊の課題は、人手不足と高齢化です。特に、55歳以上のベテランが多く、29歳以下の若手が減っている現状は、10年、15年後の業界の存続に関わるほど深刻な問題です。この状況を打開するためには、私たち企業自身が、積極的に人材の確保と育成に取り組む必要があります。

採用戦略を見直しましょう

ターゲットを広げる

従来の工業高校だけでなく、普通科の高校生、さらには小・中学生やその保護者にも、建設業の魅力や社会的な重要性を伝えていきましょう。災害時の復旧活動など、「地域の守り手」としての役割を積極的に発信することが大切です 。

多様な人材を受け入れる

これからの時代、男性や日本人だけに頼るのではなく、女性や外国人材なども含めた多様な人材が活躍できる環境を整えることが不可欠です。例えば、女性が働きやすい設備を整えたり、外国人材のために多言語対応の資格取得支援を検討したりすることが挙げられます。

育成プログラムを導入しましょう

入職後のスキルアップを支援

採用した若手社員が定着し、一人前に成長するためには、体系的な育成が必要です。会社として育成プログラムを策定し、実践していくことに対して、県からの支援も活用できます 。

適切な評価と連携

若手技術者の配置や、優れた工事を担当した実績を、県の公共事業入札における評価に繋げる仕組みも導入されています。建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用も評価対象となるため、積極的に導入・活用を進めましょう。

例えるなら、人材確保・育成は「未来の種まき」のようなものです。今、しっかりと良い種を選び、丁寧に育てなければ、将来の豊かな収穫は望めません。県や業界団体が提供する研修会や支援制度は、この種まきと育成を助けるための「肥料」や「道具」だと思って活用してください。

生産性向上と働き方改革で可能性を広げる

限られた人数で、増え続ける仕事に対応し、かつ働く人たちが「この仕事を続けていきたい」と思える環境を作るためには、生産性の向上と働き方改革が避けて通れません。特に、他の産業と比べて労働時間が長い現状を変える必要があります。

建設DXへの投資を検討しましょう

なぜDXが必要なのか

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使って、仕事のやり方や組織を変革することです。建設業におけるDXは、ドローンを使った測量、ICT建機による精密な施工、現場と事務所を繋ぐ遠隔管理システム、書類作成を効率化するクラウドツールなど、多岐にわたります。

例えるなら、これは「古い道具箱を最新のツールセットに交換する」ようなものです。手作業で時間がかかっていた作業が、デジタルツールを使えばあっという間に終わったり、現場に行かなくても状況が把握できたりします。これにより、時間と手間を大幅に減らし、生産性を飛躍的に向上させることができます。

具体的なDXのステップ

自社の規模や業務内容に合ったDXツールや技術(例えば、比較的導入しやすいクラウドツール、遠隔会議システムなど)を探し、小さなことから始めてみましょう。県では、中小企業向けのDX推進事業補助金なども用意していますので、こうした支援制度を積極的に活用しましょう。

評価への繋がり

ICT活用工事への取り組みや、BIM/CIM(3次元モデルを活用した情報共有システム)の導入なども進められており、これらは入札評価に繋がる場合もあります。

「完全週休2日制」導入に向けた準備を始めましょう

目指すべき働き方

建設業の魅力向上と人材確保・定着のために、完全週休2日制(月単位で4週8休)の実現は最重要施策の一つと位置づけられています 。これは、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)にも対応するために不可欠な取り組みです 。

例えるなら、これは「マラソンで適切な休憩を取る」ようなものです。休みなく走り続けることはできません。しっかりと休息を取ることで、心身ともにリフレッシュし、より質の高い仕事に集中できるようになります。これが、働く人たちの満足度を高め、長く働き続けてもらうために必要です。

具体的な準備

週休2日制を実現するためには、工事全体の工程管理を根本から見直す必要があります。また、休日取得に伴う労務費や、現場が休みになることによる間接的な費用を、工事費に適切に計上してもらうことが重要です。九州・沖縄ブロックで連携した統一現場閉所日(令和7年度は毎月第2・第4土曜日)の設定など、業界全体で休日を取りやすくするための動きも進んでいます 。

初めは難しく感じるかもしれませんが、県の補助金制度などを活用しながら、少しずつでも導入に向けた検討を始め、管理職を含めた会社全体の意識を変えていくことが求められています。

事業継続と多角化を考え、強靭な企業になる

熊本県は自然災害が多く、また、半導体関連産業の集積という大きな変化の中にあります。このような環境で事業を安定的に続けていくためには、不測の事態への備えと、一つの事業に偏りすぎない経営が重要になります。

BCP策定と事業承継の検討

災害への備え

BCP(事業継続計画)とは、地震や豪雨などの災害が起きた際に、事業を早期に復旧・継続させるための計画です。災害の多い熊本県では特に重要であり、BCPを策定していることは、県の入札評価でも加点対象となります。

例えるなら、BCPは「非常用の持ち出し袋」のようなものです。いつ起きるか分からない災害に備えて、事前に準備をしておくことで、いざという時に慌てず、スムーズに対応できます。地域社会の「守り手」である建設業だからこそ、自社の備えも万全にしておく必要があります。

未来へのバトンタッチ

経営者の高齢化が進む中で、事業承継は多くの企業が直面する課題です。後継者への引き継ぎや、M&A(企業合併・買収)なども含め、会社の未来をどう繋いでいくか、早めに検討を始めることが重要です。県でも、事業承継に関する支援策を用意しています。

新分野への進出や多角化の検討

変化への対応力強化

熊本地震からの復旧事業が一段落した後や、半導体関連の建設需要が落ち着いた後のことも見据え、建設業で培ったノウハウを活かして、農業や林業など、新たな分野に進出することも選択肢の一つです。

これは「一つのカゴに全ての卵を入れない」という考え方と同じです。一つの事業だけに頼るのではなく、複数の柱を持つことで、市場の変化に強く、安定した経営を目指すことができます。県は、こうした新分野進出企業を評価する仕組みも検討しています。

県の支援制度や業界団体の情報を積極的に活用する

これまで見てきた、人材確保・育成、DX推進、働き方改革、BCP策定や多角化といった取り組みは、企業単独で行うには大きな負担が伴う場合があります。

しかし、幸いなことに、この第4次プランには、これらの取り組みを後押しするための様々な支援策が盛り込まれています。例えば、働き方改革やDX導入に関する補助金制度、研修・講習会の開催、経営相談窓口の設置 などです。

また、熊本県建設業協会をはじめとする業界団体も、県の施策に関する情報を提供したり、研修プログラムを実施したり、会員企業同士の情報交換の場を設けたりと、様々な形で企業をサポートしています。

これらの支援制度や情報を「使うか、使わないか」は私たち企業次第です。積極的に情報収集を行い、自社に必要な支援策を見つけ出し、活用することが、プランに沿った改革をスムーズに進めるための賢い方法と言えます。分からないことがあれば、県の担当窓口や業界団体に相談してみることも大切です。

例えるなら、これは「地図とコンパス、そしてガイドを活用する」ようなものです。プランという地図が目指すべき方向を示し、支援制度や業界団体は、私たちをその目的地へ導いてくれるガイドのような存在です。これらを有効活用すれば、迷うことなく、着実に「未来をつくる建設産業」へと歩みを進めることができるでしょう。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランは、私たち熊本県の建設産業が、厳しい現状を乗り越え、持続的に発展していくための、重要な道しるべです。プランが示す方向性である、人材の確保・育成、生産性向上と働き方改革、そして強靭な産業エコシステムの構築は、企業が将来にわたって生き残るために、今、取り組むべき喫緊の課題であると同時に、大きな成長の機会でもあります。

特に中小企業の皆様には、このプランに盛り込まれた様々な支援策を最大限に活用していただき、自社の状況に合わせた「次の一歩」を踏み出していただきたいと考えています。人材への投資、DXへの挑戦、働き方の見直し、そして未来を見据えた経営戦略の検討は、必ずや企業の競争力を高め、働く人たちのやりがいを育み、地域社会に貢献し続ける力となるはずです。

これから始まる5年間は、熊本県の建設産業にとって、まさに未来を左右する重要な時期です。県、業界団体、そして私たち個々の企業が、それぞれの役割を果たし、しっかりと連携していくことで、このプランを単なる計画に終わらせず、熊本の「地域を守り、未来をつくる建設産業」を共に創り上げていきましょう。

まとめ:未来へ向けた熊本建設産業の軌道

熊本県の建設産業は、私たちの暮らしを支える重要な役割を担っています。道路や橋、河川といった社会基盤を整備し、維持管理することはもちろん、地震や豪雨といった自然災害が発生した際には、真っ先に駆けつけて復旧作業を行う「地域の守り手」として、なくてはならない存在です。近年では、半導体関連産業の大きな動きに伴うインフラ整備など、熊本の未来を作る上でもその重要性は増しています。

しかし、この大切な建設産業も、今はいくつかの難しい課題に直面しています。特に深刻なのが、働く人が足りないこと、そして今働いている人の高齢化が進んでいることです。新しい若い人がなかなか入ってこない一方で、経験豊かなベテランの方が引退していくという状況があります。また、昔ながらの働き方のために、長時間労働になりがちなことも、敬遠される一因となっています。

このような状況を乗り越え、これからの熊本を支え続けるために、熊本県は新しく「第4次熊本県建設産業振興プラン」(計画期間:令和6年度~令和10年度)を策定しました。この計画は、今の課題を解決するだけでなく、未来へ向かって建設産業が進むべき道筋を示すものです。この計画が目指すのは、「地域を守り、未来をつくる建設産業の持続・発展」という大きなビジョンです。

未来をつくる3つの柱:計画の戦略

この計画では、大きな目標を達成するために、3つの重要な戦略的な柱を立てています。例えるなら、家を建てる時に、しっかりとした基礎、丈夫な柱、安全な屋根が必要なように、この3つの柱が建設産業の未来を支える基盤となります。

柱1:未来の担い手となる人材の確保・育成

まず一つ目の柱は、「人材の確保・育成」です。これは、今最も深刻な課題である人手不足や高齢化の問題に、真正面から取り組むための最も重要な戦略です。

なぜこれが一番大切なのでしょうか。考えてみてください。どんなに素晴らしい機械があっても、実際に作業をしたり、計画を立てたり、現場をまとめたりするのは、最終的には「人」です。ベテランの技術を受け継ぎ、新しい技術を学び、未来のインフラを作る若い力が必要です。まるでスポーツチームで、ベテラン選手の引退に備えて、新しい才能を発掘し、しっかりと育てるように、建設産業も未来の担い手を育てなければ、チーム(産業)を存続させることができません。

この柱では、具体的にどのような取り組みを行うのでしょうか。

一つは、建設産業のイメージを変え、魅力をもっとたくさんの人に伝えることです。例えば、実際に工事現場を見てもらう機会を増やしたり、災害時に建設業がどれだけ活躍しているかを広く知ってもらったりします。SNSなどを使って、働く人たちのリアルな声ややりがいを発信することも考えています。特に、これまで建設業にあまり接点がなかった小・中学生や、普通科の高校生にも興味を持ってもらえるような取り組みを強化します。仕事内容を紹介するガイダンスを行ったり、学生のうちに役立つ資格が取れるように支援したりします。まるで、これまでは「難しそう」「大変そう」と思われがちだった建設業を、「かっこいい」「社会の役に立つ」仕事だと感じてもらえるようにする活動と言えるでしょう。

また、これからの時代は、多様な人材が活躍することが不可欠です。これまで建設現場では少なかった女性や、グローバル化に対応するための外国人材にも、もっと活躍してもらえる環境を整える支援を行います。言葉の壁を越えるための支援や、働きやすい職場環境の整備などが含まれます。深刻な人手不足を考えると、女性や外国人材の皆さんの力は、本当に大きな希望なのです。

そして、入ってきた人が長く働き続け、技術を磨いていけるような支援も重要です。若い技術者や技能者の方々が、より高度なスキルを身につけるための企業の取り組みをサポートしたり、公共工事の入札(仕事をどの会社に任せるか決めること)の際に、若い人をしっかり育てている会社を評価する仕組みを導入したりします。これは、「人材育成に力を入れている会社は、県も応援しますよ」というメッセージであり、会社が積極的に人を育てる大きなモチベーションになります。建設キャリアアップシステム(CCUS)という、働く一人ひとりの経験やスキルが記録され、評価される仕組みの活用も後押しします。これは、一人ひとりの成長が見える化され、それが会社の評価にも繋がる、まさに未来への投資なのです。

柱2:生産性向上と働き方改革による可能性の拡大

二つ目の柱は、「生産性向上と働き方改革」です。これは、限られた人数で、増える仕事に対応し、さらに働く人の負担を減らして、もっと魅力的な産業になるための柱です。

なぜ生産性を上げ、働き方を変える必要があるのでしょうか。ソースにあるように、熊本県の建設業の労働時間は、他の産業と比べてとても長い傾向があります。これでは、新しい人が「大変そうだ」と感じてしまうのも無理はありません。また、働く時間が長すぎると、体力的に大変なだけでなく、新しいことを学んだり、プライベートを充実させたりする時間も少なくなってしまいます。まるで、ずっと同じ方法で、長時間ひたすら作業を続けるのではなく、最新の機械や道具を使って、もっと短い時間で、楽に、そして効率的に仕事を進めるようにすることです。

そこで計画では、「建設DX」という取り組みを加速させます。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を使って仕事のやり方そのものを大きく変えることを言います。

例えば、工事現場でICT(情報通信技術)を積極的に活用します。ドローンを使って工事現場を測量したり、コンピュータで工事のシミュレーションをしたり。離れた場所から現場の状況を確認したり、インターネット会議システムを使って打ち合わせをしたりすることも増えるでしょう。また、書類のやり取りを電子化したり、役所への申請をオンラインで行ったりすることも推進します。これらは、これまでの紙でのやり取りや、現場への移動といった手間を大幅に減らし、時間を有効に使えるようにするための取り組みです。まるで、手書きのFAXからメールやチャットに変わったように、建設業の仕事の進め方を一気に効率化するイメージです。

そして、もう一つ重要なのが「働き方改革」です。特に力を入れているのが、「完全週休2日制」の実現です。これは、1ヶ月のうち4回の週で、それぞれ2日間お休みを取る(4週8休)ことを目指すものです。

「週休2日制なんて当たり前では?」と思うかもしれませんが、建設現場では、工期(工事にかかる期間)や天候の関係で、なかなか休みが取りにくいのが現状でした。この計画では、しっかり休みを取れるように、工事の費用計算の際に、お休みを取る分のコストをきちんと反映させたり、さらに九州・沖縄ブロック全体で足並みを揃えて、「この日は工事を休みましょう」という共通の現場閉所日を設定したりする取り組みも進めています。これは、県や他の地域とも協力して、業界全体で「休むこと」を当たり前にするための強い意志の表れです。

このようなDXによる効率化と、週休2日制の推進などの働き方改革を一体で進めることで、長時間労働を減らし、働く人がもっと快適に、そして「この仕事を選んでよかった」と思えるような魅力的な産業に変わっていくことを目指しています。

柱3:強靭で持続可能な産業エコシステムの育成

三つ目の柱は、「持続可能な建設産業の育成」です。これは、個々の建設会社がしっかりした経営基盤を持ち、業界全体が健全に発展し続けられるようにするための柱です。

会社が安定して経営できることは、働く人たちの安心に繋がりますし、質の高い仕事を継続的に提供するためにも不可欠です。また、地域経済を支え、災害時に迅速に対応できる力を維持するためにも重要です。

この柱では、まず公共事業の発注の安定性を高めることを目指します。建設業は公共事業に大きく依存する面がありますので、仕事量が安定していることは会社の経営にとって非常に重要です。また、熊本県内の会社に優先的に仕事を発注することや、専門的な工事を行う会社(例えば、鉄骨だけ、塗装だけを行う会社)を育てるために、専門工事として分けて発注することなども推進します。これは、地元の技術を守り、専門性の高い会社が活躍できる場を確保するための取り組みです。

良い工事を行った会社をきちんと評価し表彰する仕組みや、その評価を次の入札に反映させる仕組みも強化します。これは、「良い仕事をすれば報われる」という当たり前のことを徹底し、業界全体の品質向上に繋げるためのインセンティブ(やる気を促す仕掛け)です。また、一部の会社が極端に安い価格で仕事を請け負う「ダンピング」を防ぐ対策も行い、公正な競争が行われるようにします。

会社の経営そのものを強くするための支援も含まれます。例えば、地震や豪雨などの災害が発生しても事業を続けられるように、あらかじめ計画を立てておくこと(BCP:事業継続計画)を促したり、経営者の高齢化が進む中で、会社を次の世代に引き継ぐ「事業承継」や、他の会社と一緒になる「合併」などを支援したりします。

さらに、これからの時代、建設業の技術やノウハウを活かして、建設業以外の新しい分野にも挑戦することを支援します。例えば、農業や林業と連携するなど、会社のビジネスの幅を広げることで、特定の仕事に頼りすぎない、変化に強い経営体質を作ることを目指します。これは、まるで「建設」という専門分野を持ちつつ、時代の変化に合わせて新しい畑を耕すようなイメージでしょうか。

そして、「地域の守り手」として、災害対応能力をさらに高めるためのルール作りや、消防団活動、ボランティアなど、地域社会に貢献する活動も評価の対象とします。また、地球環境に配慮した取り組み(SDGsへの貢献など)を進める会社も応援し、評価に繋げることで、持続可能な社会づくりにも貢献していきます。

計画推進のための協力体制

このような大きな計画を進めるためには、熊本県庁だけでなく、熊本県建設業協会をはじめとする業界団体の皆様、そして働く一人ひとりの力が不可欠です。県は全体の方向性を決め、必要な予算や制度を整え。業界団体は、会員企業への情報伝達や、現場の声を取りまとめて県に伝えたり、研修会などを開催したりする役割を担います。

また、熊本県だけでなく、九州・沖縄地方の他の県や政令指定都市とも連携して、一緒に取り組んでいることも大きな特徴です。特に、働き方改革やDXの推進といった、業界全体に関わる課題については、地域全体で同じ目標を持って進めることで、より大きな効果が期待できます。例えば、先ほど触れた「統一現場閉所日」の設定は、この広域連携の代表的な例です。

計画実現への道のりと課題

この計画は、熊本県の建設産業が抱える多くの課題に対応し、未来への道筋を示す意欲的なものです。しかし、その実現は決して容易ではありません。いくつかの乗り越えるべき壁があります。

強み(計画の良い点)弱み(計画の難しい点)
人材、生産性・働き方、持続可能性という、建設産業が直面する主要な課題を網羅的にカバーしている点です。計画全体の具体的な数値目標(いつまでに、何を、どれだけ達成するか)が明確に見えにくい部分があるかもしれません。これにより、進捗状況や成果を客観的に評価することが難しくなる可能性があります。
県や業界団体、さらには九州・沖縄ブロックといった幅広い連携体制のもとで進められる点です。計画で示された様々な取り組み(DX導入や働き方改革など)は、最終的には個々の建設会社、特に多くを占める中小企業が自主的に実行し、投資する必要があります。その実行の度合いには差が出ることが考えられます。
公共事業の入札制度などを活用して、頑張っている会社を評価し、取り組みを促すインセンティブの仕組みを取り入れている点です。完全週休2日制のような働き方改革は、会社のコスト増や工事のスケジュール調整の難しさなどを伴うため、特に中小企業にとっては、実行し、定着させるのに困難が伴う可能性があります。
熊本地震からの復旧や、半導体産業の集積といった、熊本県ならではの状況に合わせた対策が盛り込まれている点です。各種支援策(補助金など)を実行するための財源が、計画期間中、そしてそれ以降も安定的に確保されるかについては、不確実性があります。
機会(追い風となる状況)脅威(逆風となる状況)
半導体関連産業の集積は、大きな建設需要を生み出し、新しい建設技術を導入したり、関連分野に事業を広げたりするチャンスとなります。深刻な人手不足と高齢化は、計画で対策を講じても、短期間で劇的に解消するのは難しい根深い問題です。
働き方改革やワークライフバランス(仕事と生活の調和)に対する社会全体の関心が高まっていることは、建設業界が変わろうとする努力にとって追い風となります。半導体関連産業をはじめとする他の産業も人材を求めているため、特に若い人や専門的な技術を持った人の獲得競争は、今後さらに激しくなる可能性があります。
建設DXに関わる技術(AIやロボット、3D技術など)は日々進化しており、生産性向上や仕事の魅力を高める新しい可能性を提供してくれます。建築資材の価格が高止まりしたり、さらに賃上げが必要になったりすること、そして国内や世界経済の変動は、会社の経営を圧迫し、新しいことへの投資をためらわせる可能性があります。
これまで建設業での活躍が限られていた女性や外国人材などを積極的に受け入れることで、人手不足を和らげ、多様な視点を取り入れることができます。大きな工事(災害復興や半導体関連投資)が終わった後に、建設の仕事が急に減ってしまうリスクも依然として存在します。
昔ながらの建設業界の文化や慣習が、DX導入や働き方改革といった新しい変化を受け入れにくい要因となる可能性もあります。

このように、計画には強みや機会がある一方で、弱みや脅威も存在します。特に、人手不足の根本的な解消や、変化への対応は、多くの会社にとって大きな課題となります。

建設会社にとって、これからどうなる?

この計画が進むことで、熊本県内の建設会社にとっては、事業のやり方や経営の考え方を見直す良い機会となります。計画が示す方向、つまり、働く人を大切に育て、DXに投資し、しっかり休める働き方を取り入れることに積極的に取り組む会社は、県からの評価が高まり、仕事のチャンスが増える可能性が高まります。また、魅力的な会社になることで、優秀な人が集まりやすくなるでしょう。

一方で、特に規模の小さな会社にとっては、DXのための新しい設備を導入したり、週休2日制のために人員配置を見直したりすることに、費用がかかったり、やり方が難しかったりすることが課題となるかもしれません。計画には、こうした会社を支援するための補助金などの制度も用意されていますので、それらを上手に活用しながら、自社の状況に合わせた現実的なステップで改革を進めていくことが大切になります。

未来へ向けた軌道に乗るために

第4次熊本県建設産業振興プランが計画通りに進めば、熊本県の建設産業は、今よりもっと効率が良く、働く人にとって魅力的で、そして変化に強い産業へと変わる可能性があります。DXが進み、みんながきちんと休めるようになれば、建設業のイメージが変わり、「ここで働きたい」と思う人が増えるかもしれません。これは、人手不足の解消にも繋がる大きな希望です。

しかし、この明るい未来を実現できるかどうかは、これからの5年間、そしてその先も、熊本県、建設業界に関わる団体、そして働く一人ひとりの建設会社が、強い気持ちを持って、協力し、継続的に努力を続けることができるかにかかっています。新しい技術や働き方を積極的に取り入れ、様々な人が活躍できる職場を作るという挑戦を続けることで、熊本県の建設産業は、まさに「地域を守り、未来をつくる」という大切な役割と、その存在感をさらに高めていくことができるはずです。この計画が、そのための確かな道標となることを期待しています。

まとめ

第4次熊本県建設産業振興プランは、熊本建設産業が直面する困難な課題を乗り越え、持続可能な産業へと変革するための重要なロードマップです。

建設DXや働き方改革の実現は、業界のイメージを変え、新たな人材を引き寄せる鍵となります。

県、業界、企業が強い意志と連携をもって継続的に努力することで、「地域を守り、未来をつくる」熊本の建設産業として、その役割と重要性をさらに高めていけるはずです。

NOTE

業務ノート

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