 
						CCUSの運用が「経審の点数」に直結する時代へ:登録だけでは加点されない本当の条件とは?
第1章 CCUSとは? 建設業界の未来を支える仕組み
建設キャリアアップシステム、通称CCUS(シーシーユーエス)という言葉は、国土交通省が中心となって普及を進めている、建設業界で働く方々のための仕組みです。これは、建設業で働く技能者(職人さんなど)の皆様の就業履歴、資格、経験などを、国が定めた共通のルールに沿って記録・蓄積していくためのシステムです。
一見すると「カードを使って出勤・退勤を記録するだけのシステム」のように見えるかもしれません。しかし、国がこの仕組みを強く推進している背景には、次のような建設業界が抱える大きな課題を解決したいという強い思いがあります。
建設業界が抱える課題
| 課題 | CCUSが目指す解決策 | 
| ベテランの技能や経験が客観的に見えにくい | 経験や資格を全国共通の形式でデータ化し、客観的な実績として証明できるようにします。 | 
| 現場や会社が変わると、評価や賃金がバラついてしまう | 技能や経験が正しく評価される流れをつくり、能力に見合った適切な処遇(賃金やポジション)に結びつくことを目指します。 | 
| 若い人が入ってこない、または定着しない | 将来の見通しが立ちやすい、魅力的な業界に変えることで、建設業の担い手を安定的に確保します。 | 
CCUSが実現する技能者の「キャリアの見える化」
これまでの建設業界では、会社や現場ごとに職人さんの技能の評価基準が異なっていました。その結果、高い技術を持っている方でも、初めて関わる元請けや発注者から十分な評価を受けられず、適切な待遇を得ることが難しいという現実がありました。
CCUSでは、技能者一人ひとりにICカード(キャリアアップカード)が発行されます。現場に入るときにそのカードを専用のリーダーに読み取ってもらうことで、「どの現場で」「どのくらいの期間働いたか」「どのような資格を持っているか」といった情報が共通の形式でデータベースに蓄積されます。この蓄積されたデータは、後から客観的な実績として示すことが可能になります。
技能者(職人さん)側の主なメリット
| 客観的な証明 | 自分の資格や現場経験が、全国どこでも通用する共通の形で示せるようになります。これは、転職や新しい現場での作業に入る際のアピール材料として活用できます。 | 
| 待遇改善の後押し | 「この方はこれだけのレベルの技能者です」というデータが会社側にも提示しやすくなるため、賃金や役割が実力に見合ったものになりやすいことが期待されます。 | 
| 熟練度の可視化 | CCUSでは、技能者の熟練度をレベル(概ね4段階)で示す仕組みがあり、次に何を学ぶべきか、上のレベルに上がるには何が必要かが整理しやすくなります。 | 
事業者(建設会社)側の主なメリット
会社にとってもCCUSの導入は、今後の事業継続において非常に大きなメリットをもたらします。
| 現場管理の効率化 | 入退場管理や勤怠管理にCCUSを活用することで、誰がいつ現場に入ったかという記録をまとめて残せるようになり、紙やエクセルでの管理に比べて省力化できる場合があります。 | 
| 信頼性の向上 | 「技能者をきちんと把握し、適正な就業管理を行っている会社」という姿勢は、公共工事の発注者や元請けから高く評価されやすくなります。 | 
| 経営事項審査(経審)での加点 | 最も重要な点として、CCUSの活用状況は、公共工事の入札に必要な経営事項審査において加点対象として扱われます。これにより、入札競争力を高めることができます。 | 
CCUSと建設業法の関係
CCUS自体が法律の条文に直接書かれているわけではありませんが、建設業法が目指す「担い手の育成・確保」や「適正な処遇の確保」という国の方向性を実現するための具体的な仕組みとして、国土交通省が整備・普及を進めています(建設業法第27条の23の趣旨など)。
今後、大手元請け企業を中心に、下請け企業に対してもCCUSの利用を求める現場が一段と増える流れにあります。公共工事を安定的に受注したい会社様にとって、CCUSは「導入済みであることを前提に見られる場合がある」という段階に入ってきており、迅速な対応が求められます。
まとめ
CCUSは、単なる勤怠管理ツールではなく、「技能を正当に評価し、処遇に結びつける」という国の産業政策と直結した、建設業界の未来を支える重要なシステムです。特に公共工事を請け負う会社様にとっては、将来的な入札競争力(経審の点数)に大きく影響するため、必須のテーマとなっています。
ただし、カードを作成するだけでは評価されず、現場で実際にカードをリーダーにかざして打刻し、就業履歴が継続的に蓄積されていることが重要です。この運用をいかに徹底するかが、経審での加点という成果に結びつくかどうかの鍵となります。
第2章 経営事項審査とCCUSの関係性
公共工事の入札参加を考える建設会社様にとって、経営事項審査(経審)の評点アップは最重要課題です。この経審の評価項目の中に、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況が組み込まれており、両者は非常に強く結びついています。CCUSは、今や「経審で競合他社に差をつけるための重要な戦略」と言えるでしょう。
CCUSが経審で評価される2つの領域
経審の総合評点(P点)は、「X(完成工事高)」「Y(経営状況)」「Z(技術力)」「W(その他の審査項目/社会性等)」の4つの要素から構成されます。CCUSに関する企業の取り組みは、このうちZ評点とW評点という2つの側面で評価対象となります。
1. Z評点(技術力)での評価:技能レベルの確保
Z評点は、企業が持つ技術職員や技能者の「質と量」を評価する項目です。CCUSの活用は、この技術力の中でも、特に技能者のレベルアップという観点で評価されます。
| 評価の視点 | CCUSの役割 | 
| 技能レベルの確保 | CCUSに蓄積された情報に基づき、レベル3やレベル4といった、一定以上の熟練度が確認された技能者をどれだけ多く確保・育成しているかがプラス評価の材料として扱われる改正が進んでいます。 | 
※技能レベルのカウント方法や、どの程度の加点になるかという具体的な計算方法は、国の告示によって細かく定められています。制度は今後も見直される可能性があるため、経審を受ける直前の年度で最新の情報を確認することが大切です。
2. W評点(社会性等)での評価:就業履歴の蓄積
W評点は、企業の労働福祉、若年人材の育成、法令遵守など、社会的な信頼性や持続性を点数化する領域です。CCUSの活用状況は、このW評点の中に直接評価項目として組み込まれています。
W評点におけるCCUS加点の核
特に重要なのは、W1(担い手の育成・確保に関する取組)の中にある「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」という項目です。ここで、CCUSを現場で実際に使って就業履歴を蓄積している会社が加点されます。
| 加点要件 | 加点のイメージ(例) | 
| 公共工事の全現場での運用 | 発注した公共工事のすべての現場でCCUS運用(打刻・履歴蓄積)を徹底している場合、加点の対象となります。 | 
| 公共・民間工事の全現場での運用 | 公共工事だけでなく、軽微な工事等を除いた民間工事も含めたすべての現場でCCUS運用を徹底している場合、さらに高い加点の対象となる運用が案内されています。 | 
この加点要素における点数や具体的な要件は、今後の制度見直しによって変更される可能性があるため、申請直前の年度の最新告示を必ず確認する必要があります。
「登録」ではなく「運用」が評価される
ここで多くの会社様が誤解しやすいのは、「会社としてCCUSに登録した」だけでは、W評点が自動的に上がるわけではないという点です。評価されるのは「導入済み」という事実ではなく、「現場ごとにCCUSを使って技能者の就業履歴を継続的に残しているか(打刻・蓄積が適正に回っているか)」という実態です。
もし会社や技能者の登録を済ませただけで、現場でのカードリーダー利用(打刻)が徹底されていなければ、「就業履歴の蓄積」という加点の中心となる要件を満たせません。結果として、コストだけがかかり、経審での評点アップという目標は達成できなくなります。
まとめ
CCUSは、経審のZ評点(技術力)とW評点(社会性等)の両方で評価の対象となり、公共工事の入札競争力を高めるための重要な要素です。中でもW評点では、「全現場でCCUSを運用し、技能者の就業履歴が継続的に蓄積されていること」が強く求められています。
このため、入札競争力(P点)の向上を目的としてCCUSを導入する場合には、制度への登録と同時に、現場での打刻運用までを確実に回すための戦略的な仕組みづくりが不可欠となります。CCUSの運用状況が経審の加点要件を正確に満たしているか否かを判断するには専門的な知識が必要です。確実に加点を目指すためには、経審を専門とする行政書士にご相談ください。
第3章:経審における評価と加点制度(CCUSは本当に点数になるのか?)
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、いまや「導入しておいたほうが良い便利ツール」というレベルではありません。
公共工事の入札で必要となる経営事項審査(経審)の点数(評点)に、実際に影響する仕組みとして扱われています。これは、現在の審査基準で明確に運用されている考え方です。
ただし、ここで大きな誤解が起きやすいポイントがあります。
「会社としてCCUSに登録しただけでは、加点されない」という点です。
加点されるのは、「登録している会社」ではなく、「CCUSを実際に現場で回している会社」です。
この差が、ものすごく大きいのです。
1. どこで評価されるのか?(どの点数に影響するのか)
経審の評価は大きく、次の4つの要素に分かれています。
「X=完成工事高」「Y=経営状況」「Z=技術力」「W=社会性等(その他の審査項目)」です。
このうち、CCUSが特に関わるのは「W(社会性等)」、そして一部「Z(技術力)」です。
W(社会性等)の中には、「建設現場で働く人の就業履歴を適切に記録・管理しているか」という評価項目があり、ここでCCUSの運用状況が加点対象になります。
また、Z(技術力)についても、今後は「一定レベル以上の技能レベル(CCUSのレベル3・レベル4など)を持つ技能者をどれだけ確保しているか」といった観点が評価に使われる方向性が示されています。
特にW評点での評価は、すでに都道府県等の審査で具体的に運用されており、単なる“理念”や“将来構想”ではなく、実際に点数に反映される扱いになっています。
2. 「登録していればOK」ではない:加点の前提条件
CCUSによる加点は、「CCUSに登録していること」+「現場でCCUSを使って就業履歴が蓄積されていること」の両方がそろって初めて認められます。
もう少し分解すると、次のような状態が求められています:
- 会社(事業者)がCCUSに登録している
- 常勤の技術職員・技能者などがCCUSに登録され、ICカード(キャリアアップカード)を保有している
- 現場ごとに工事情報をCCUSに登録している(現場がCCUS上で管理対象になっている)
- その現場で働く技能者が、入場・退場ごとにICカード等を読み取り、CCUS上に就業履歴が日々蓄積されている(いわゆる現場での「打刻」)
特に最後の「就業履歴の蓄積(打刻)」が肝です。カードだけ配っていて、現場で全然タッチしていない場合は「実際に運用されていない」と判断され、加点対象にはならない取り扱いが示されています。
つまり、“形式的な導入”ではなく“日常運用”が審査対象になっている、ということです。
3. 「全ての現場でやっているか」が問われる
経審で評価されるときに見られるのは、
「直近1年のあいだに、元請として施工した現場が、ちゃんとCCUSで運用されているか」
という点です。
ここで注意したいのは、
「一部の現場だけCCUSを使って、他の現場では使っていない」という状態だと、
“全ての現場で適切に就業履歴が蓄積されている”とは評価されず、結果的に加点対象外になることがある、という運用が示されている点です。
つまり、「できる現場から少しずつ試してみる」だと、経審の点数にはつながらない可能性があるということです。
さらに、元請としての工事が無い(すべて下請としての参画)という場合は、この「全現場での運用」という判定の対象にならず、加点の枠に入らないこともあります。
この点は会社の立場(元請中心か、下請中心か)によって結果が変わるため、事前の確認が必要です。
4. 加点のイメージ(点数の考え方)
CCUSを現場で運用し、就業履歴が蓄積されている場合、経審では「W(社会性等)」の評価の中で加点される仕組みが導入されています。
現在公表されている考え方では、たとえば次のような整理が案内されています(数値イメージ):
・直近1年の元請工事のうち、公共工事の全てでCCUSによる就業履歴蓄積の体制が整っている → 加点(10点)
・公共工事に加えて、民間工事も含めた全ての元請工事で同様の体制が整っている → さらに高い加点(15点)
※この点数の付け方や定義は、運用要領や告示の見直しで変わる可能性があります。実際に経審を受ける年度の最新基準を必ず確認してください。
なお、この「10点」「15点」はW評点の中の素点の話で、最終的な総合評定値(いわゆるP点・入札で使われる点数)への影響は自治体の計算式を通じて数点~十数点規模の差につながることがある、と説明されています。
入札の境目ではこの差が落札可否に直結することもあるため、現場では“ CCUSは営業ツールでもある ”という認識が強まっています。
繰り返しになりますが、これは「カードさえ作っておけば自動的に15点もらえる」という話ではありません。
全現場での運用と、就業履歴の継続的な記録が前提です。
5. 気をつけるべきリスク(やってはいけないこと)
CCUSの目的は、技能者の就業実績を正確に残し、適正な処遇につなげることです。
そのため、次のような運用は明確に問題とされています。
- 現場にいない人のカードを代理でタッチして“出勤したことにする”
- あとからまとめてデータを書き換える/盛る
- 一部の現場だけ「形だけ打刻しているふり」をする
このような行為は、経審での信用を失うだけでなく、建設業法上の不正として指導・処分の対象になる可能性があるとされています。
つまり「点数のために形だけやる」は、むしろ会社にとってリスクになります。
6. まとめ(第3章の結論)
・CCUSの運用状況は、経審(特にW評点=社会性等)の評価項目として加点対象になる仕組みが導入されています。これは実際に各自治体・審査機関で運用されている考え方です。
・ただし、加点されるのは「登録している会社」ではなく「現場できちんと打刻運用し、就業履歴を継続的に蓄積している会社」です。カードを持っているだけでは加点されません。
・審査では『直近1年の元請工事の全てでCCUS運用できているか』といった“全現場での実施”が問われます。公共工事だけで満たしている場合と、民間工事も含めて満たしている場合とで加点幅が変わる取り扱いが示されています。
・この運用は今後も見直し・更新される可能性があります。したがって、実際に経審の点数アップを狙う会社は、「CCUSの導入」と「現場運用」と「経審での証明方法」を一体で設計する必要があります。ここは社内だけで抱え込むより、CCUSと経審の両方に詳しい専門家(建設業専門の行政書士など)に早い段階で相談しておくほうが、結果的にコストも時間も少なく済みます。
第4章 経審で加点されるCCUS運用の具体策と注意点
建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入した目的が経営事項審査(経審)での加点である場合、最も重要になるのは「実際の運用」です。経審で評価されるのは、「CCUSを実際に活用して就業履歴を蓄積できる体制が整っているか」、そして「それをすべての対象工事で実施しているか」という実務的な側面です。ここでは、確実に加点を狙うための具体的な運用戦略と、絶対に避けるべき注意点について解説します。
加点の中心となるW評点(社会性等)の要件
CCUSによる加点は、W評点(社会性等)の中の「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」という項目が中心となります。加点を確実にするためには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 事業者登録と常勤者の技能者登録の前提
まず、会社(事業者)がCCUSに登録し、さらに自社の常勤の技術者および技能者全員をCCUSに登録し、ICカードを持たせることが基本的な前提です。未登録者がいると、加点の条件を満たせない、または加点効果が弱くなる場合があります。
2. 就業履歴の「打刻」による蓄積の徹底
これは加点のための最も重要な要件です。評価されるのは、以下の実態があるかどうかです。
| 評価される実態 | 行政書士からの解説 | 
| 現場での打刻 | 現場ごとに工事情報をCCUSに登録し、技能者が入場・退場のタイミングでカードリーダーや対応アプリにタッチする運用(打刻)を回すことが必須です。 | 
| 不正な入力の禁止 | 後から事務所でまとめて一括入力したり、実際は現場に出ていない人の履歴を代理で打刻したりする行為は、正しい蓄積として扱われないと明言されており、厳禁です。 | 
3. 全対象現場での実施の徹底
評価の対象となるのは、「対象となるすべての工事でこの打刻運用ができているか」という点です。加点は段階的であり、例えば「公共工事すべての現場でCCUSを運用している」場合や、「民間工事も含めたすべての現場で運用している」場合で、加点される点数が変わる運用が案内されています。
裏を返せば、たった一つの現場でも未対応の工事があると、その年度の加点が受けられないという、非常にシビアな扱いをしている審査機関もあります。すべての現場での運用が、加点成功の鍵となります。
経審加点のための現場運用とチェックポイント
この厳しい運用要件を満たすため、実務として必須になる運用ポイントを解説します。
運用ポイント1:協力会社(下請け)の巻き込み
元請けとして評価を受けるには、現場に入る二次・三次下請けまで含めた技能者全体の就業履歴蓄積体制が必要です。基本契約書や注文書の段階で「CCUSの登録と打刻協力」を義務項目として明記し、現場に入る条件にしておくことが、実務的に最も有効な手段です。
運用ポイント2:現場責任者への権限と教育
現場代理人や監督員に「毎朝・毎夕、全員のカード打刻を確認する」という具体的な運用ルールを徹底させ、形骸化を防ぐことが重要です。CCUSの運用管理は、会社のトップダウンで仕組みとして組み込まないと、現場レベルだけに任せた場合に破綻しやすい性質を持っています。
運用ポイント3:月次での運用状況チェック
経審申請の直前に打刻漏れに気づいても修正は困難です。最低でも月1回はCCUSの管理画面を確認し、打刻漏れや未登録者の洗い出し、協力会社の対応状況をチェックする社内ルーティンを確立しておくと安全です。
絶対に避けるべき不適切な運用リスク
CCUSは、適正な労務・就業管理を目的とした公的なシステムです。不適切な運用は、経審の点数に悪影響を及ぼすだけでなく、建設業法上の監督処分につながる可能性があります。
| 不適切な運用例 | リスク(建設業法上の注意点) | 
| 現場にいない人の代理打刻 | 虚偽の記録となり、経審での信用を損なうだけでなく、法律上の指導・処分の対象となるおそれがあります。 | 
| 後日まとめての履歴入力 | あとから事務所で「出たことにする」といった入力は、正しい就業履歴の蓄積として評価されません。 | 
まとめ
経審でCCUSによる加点を実現するためには、事業者登録や技能者登録というスタートラインを超え、「全現場での打刻運用」「協力会社まで巻き込む体制」「記録の月次チェック」という運用面を徹底することが不可欠です。
このレベルの運用管理を自社だけで完璧に行うのは非常に難しいことです。CCUSと経審の最新ルールを熟知した行政書士と組むことで、「どこまでやれば加点要件を満たせるか」というラインを正確に引き、不適切な運用リスクを避けながら、確実に経審の評点アップへと結びつけることができます。ぜひ専門家にご相談いただき、貴社の競争力を高めてください。
第5章 CCUSの導入手続きと費用(加点を狙う会社の準備)
建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入する際、経審での加点というゴールを見据えた上で、手続きと費用を計画的に進めることが重要です。登録手続きそのものよりも、現場で運用を回し、費用対効果を最大化する仕組みをどう作るかが核心となります。導入の具体的なステップと発生する費用について解説します。
CCUS導入手続きの3つのステップ
CCUS導入は、以下の3つのステップで進みます。経審加点を目指す場合、特にステップ2とステップ3の「徹底」が重要になります。
ステップ1:事業者(会社)登録
会社としてCCUSを利用するための土台を作る手続きです。オンライン申請が基本となります。
| 登録内容 | 会社名、所在地、代表者、建設業許可番号など、基本的な法人情報を登録します。 | 
| 主な必要書類 | 建設業許可通知書の写し、商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)など、会社の実在を証明する書類が必要です。 | 
ステップ2:技能者(社員・常勤技術者等)登録とカード発行
自社の社員である技術職員や技能者一人ひとりをCCUSに登録し、ICカード(キャリアアップカード)を発行してもらいます。
| 登録内容 | 氏名、生年月日、資格、社会保険の加入状況などを登録します。 | 
| 加点のための注意点 | 経審加点を狙う場合、常勤の技術職員だけでなく、現場に入る主要な技能者メンバーは原則として登録させた方が、加点要件を満たす上で安全という運用が一般的です。 | 
ただし、登録する人数が増えるほど、費用負担や社内でのオペレーションの手間が増えますので、自社の状況に合わせた優先順位付けと計画が必要です。
ステップ3:現場での運用開始(打刻体制の整備)
現場ごとに工事情報をCCUSへ登録し、技能者が入退場時に打刻できる仕組みを整備します。これが経審加点の根拠となります。
| 主な整備内容 | 現場ごとに、ICカードリーダーや、CCUS対応のアプリを導入したスマートフォン・タブレットなどの打刻端末を設置・運用します。 | 
| 経審上の注意点 | 現場が複数並行する場合、リーダーや端末も複数必要になり、ここがランニング上のコストとなります。また、打刻データが自動的に蓄積される仕組みを回す必要があり、後追いの手入力は正しい就業履歴の蓄積として評価されないため注意が必要です。 | 
CCUS導入・維持にかかる費用イメージ
CCUSの導入と維持には、以下の種類の費用が概ね発生します。
| 費用の種類 | 費用の性質 | 
| 事業者登録料 | 会社の規模に応じて変動する初期費用です。 | 
| 技能者登録料・カード発行料 | 技能者一人あたりに発生する初期費用です。 | 
| 事業者利用料 | 登録後、毎年発生する会社の維持費用です。 | 
| 現場利用料 | 現場ごとの管理費用が発生する形態がある場合があります。 | 
| 端末・通信費 | カードリーダーや専用アプリを利用するための端末費用、および通信費用です。 | 
金額帯は会社規模や登録人数によって変動します。また、協力会社の登録費用を一時的に会社が肩代わりするかどうかでも負担は大きく変わるため、経審の評点アップという見返りとセットで、費用を「投資」として判断することが大切です。
専門家(行政書士)を活用する意味
CCUSの導入・運用に専門家が関与することで、以下のメリットを得られ、「導入したのに加点できなかった」というリスクを回避できます。
| 専門家によるサポート | 得られる効果 | 
| 登録漏れのチェック | 経審に必要な「全員登録」の要件を確実に満たし、登録時の手続きミスを防ぎます。 | 
| 経審書類の形に揃える | CCUSの運用記録を、経審提出時に必要とされる証拠の形に合わせて整備し、書類作成の負担を軽減します。 | 
| 運用ルールの整備 | 協力会社への依頼文、下請け基本契約書への条項案、月次チェックのフロー表など、現場での実務的な運用ドキュメントの整備を支援します。 | 
まとめ
CCUSの導入は、登録手続き自体よりも、「現場で継続的に運用し、経審加点に必要な就業履歴を蓄積する仕組み」をいかに早く、確実に作り上げるかが成功の鍵です。初期費用やランニングコストは、公共工事の受注機会拡大という大きなリターンを考えれば、戦略的な投資と言えます。
導入・運用・経審提出までを一気通貫で整える計画を立てることが、結果として最もコストを抑え、確実な評点アップにつながります。ぜひ、CCUSと経審の両方に詳しい行政書士にご相談いただき、最適な導入準備を進めてください。
第6章 CCUSに関するよくある疑問と専門家への相談の重要性
建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入し、経営事項審査(経審)での加点を目指す際、多くの建設会社様から実務上の疑問や不安の声が寄せられます。ここでは、CCUSの運用と経審のルールにまつわる「よくある疑問」にお答えし、最後に専門家へ相談する重要性について解説します。
CCUSに関する「よくある疑問」とその回答
CCUSの導入効果を最大化するためには、以下の疑問点をクリアにしておく必要があります。
疑問1:CCUSの登録さえすれば、すぐに経審で加点されますか?
| 回答 | 登録しただけでは加点されません。経審で評価されるのは「登録していること」に加えて、「現場でCCUSを運用し、就業履歴が継続的かつ適正に蓄積されていること」という実態です。公共工事すべての現場、あるいは民間工事も含めたすべての現場でCCUSを使って打刻運用ができているかなど、厳格な基準が設定されています。 | 
疑問2:協力会社(下請け)の職人さんまで登録してもらわないとダメですか?
| 回答 | 実務上、ほぼ必須に近い状況です。元請けとして評価を受けるのは、その現場に入る技能者全体の就業履歴をきちんと蓄積している状態です。協力会社の技能者が打刻をしていなければ、「全ての現場でCCUSを実施」とは言えない、という扱いになる可能性が高くなります。加点を目指すなら、協力会社への働きかけは避けられません。 | 
疑問3:社会保険に未加入の技能者もCCUSに登録していいですか?
| 回答 | 形式的には登録自体は可能と案内されるケースがありますが、経審の評価上は注意が必要です。経審では、社会保険の加入状況もW評点(社会性等)の別の項目で評価されます。社会保険未加入者が多いと、その項目でマイナス評価となり、CCUSによる加点効果が相殺されたり、トータルの評点が伸び悩んだりする恐れがあります。 | 
疑問4:カードリーダーが置けない小規模現場ではどうすればいいですか?
| 回答 | 専用端末以外の運用方法もあります。専用のカードリーダーが設置できない現場のために、スマートフォンやタブレットに専用アプリを導入し、それをリーダーとして活用する形の運用も紹介されています。ただし、勝手な手入力や後からまとめて入力する行為は、正しい就業履歴の蓄積として認められないため、CCUSと連携した正規の方法で記録することが重要です。 | 
なぜ専門家(建設業専門の行政書士)に相談すべきなのか
CCUSと経審の関係は、国の告示改正などで内容が頻繁に見直されており、そのルールは非常に細かく、専門的です。「導入したのに加点できなかった」という事態を避けるために、専門家への相談は不可欠です。
1. 最新ルールを押さえた「最短ルート」の提示
CCUSのどの活用状況が何点に相当するか、どのレベルの技能者をどうカウントするかといった具体的な計算方法は、常に更新されています。専門の行政書士は最新の運用ルールを把握しており、無駄なコストをかけずに、確実に加点要件を満たすための最短の準備手順を提示することができます。
2. 現場実装と経審書類整備を同時に実現
CCUSは「システム」「現場運用」「経審提出書類」が一体で評価されます。外部の行政書士が介入することで、協力会社向けの依頼文や下請け基本契約書への条項追加、現場での月次チェックフローなど、実務で使うドキュメントまでまとめて整備できます。これにより、現場や事務の担当者の負担を大幅に軽減できます。
3. 不正リスクを避け、法令遵守のラインを確保
CCUSの記録を後から改ざんするなどの不適切な運用は、経審の信用を損なうだけでなく、建設業法上の処分対象になるリスクがあります。外部専門家が運用状況をチェックすることで、現場が知らず知らずのうちに危ない運用をしてしまうリスクを下げ、加点が欲しいが不正は絶対しないというラインを守ることができます。
まとめ
CCUSは「カードを持っている会社が強い」のではなく、「カードを現場でちゃんと使えている会社が強い」時代に移行しています。そして、この「ちゃんと」運用するためには、協力会社の巻き込み、社会保険の整備状況、月次でのデータチェック、経審書類での証明といった、非常に実務的で細かい作業が求められます。
だからこそ、CCUSと経審の両方に明るい専門家とタッグを組んで、「どこまで登録するか」「何を残すと証拠になるか」を具体的に決めていくことが、遠回りなようでいて、実は最も確実で、最終的なコストを抑える方法になります。貴社の入札競争力強化のため、ぜひ建設業専門の行政書士にご相談ください。
 
									