黒字なのに現金がない|行政書士村上事務所

建設業会計 実務ノート ── 黒字なのに現金がない構造と、月次で見る三つの数字

「決算書は黒字なのに、月末の支払いが苦しい」──建設業で最も多い経営相談です。原因は経営の失敗ではなく、建設業会計の構造を月次の経営に翻訳できていないこと。この記事では、儲けと現金がズレる仕組みを建設業特有の勘定科目から解き、月次で見るべき数字を三つに絞ってまとめます。

構成:一 なぜ黒字なのに現金がないのか/二 建設業特有の勘定科目を読む/三 月次で見る三つの数字/四 現場別原価管理の最低形/五 経審との接続

第一章なぜ黒字なのに現金がないのか

  • 利益は「完成時」に立ち、現金は「工程どおり」に出ていく ── 材料・外注・労務は先払い、入金は出来高・完成後。この時間差が構造の正体です
  • 決算書の利益は年1回の集計、支払いは毎月来る ── 年間で黒字でも、月次の谷で資金が切れれば会社は止まります
  • つまり見るべきは損益計算書ではなく、工事ごとの入出金のタイミング。ここから逆算した管理が建設業会計の実務です

第二章建設業特有の勘定科目を読む

科目 正体 放置すると
未成工事支出金 まだ完成していない工事に投じた原価(=立替中の現金) 膨らむほど現金が現場に「寝て」いる
未成工事受入金 前受金(=先にもらった現金) 他現場の支払に流用すると、完成時に原価を払う現金がない
完成工事未収入金 完成したのに未回収の売掛 回収遅延の温床。月齢管理が必須
工事未払金 協力会社への未払い 支払期日規制(60日)との整合を確認

この4科目の増減を毎月見るだけで、「黒字倒産の芽」はほぼ捕捉できます。

図 四つの科目の立ち位置四つの科目は、貸借対照表のどこに立つか資産の側(自社が持つ/待つ)負債の側(自社が返す/払う)完成前工事の途中未成工事支出金投じた原価。立て替え中の現金未成工事受入金前受金。先にもらった現金完成後引渡しのあと完成工事未収入金未回収の売掛。月齢を管理する工事未払金協力会社への未払い左が増えるほど現金は現場に寝て、右が増えるほど支払が先に控えるこの四つの増減を毎月並べるだけで、黒字倒産の芽はほぼ捕まえられる

建設業会計では、完成前の原価と前受金を貸借対照表に立てます。損益計算書だけを見ていると、この四つの動きが見えません。

第三章月次で見る三つの数字

  1. 現場別の粗利と入金予定 ── 「利益の出る現場」と「現金の残る現場」は別物(資金繰りノート)。両方を1枚で
  2. 資金繰り表(3か月先まで) ── 銀行提出用ではなく、受注判断の道具として
  3. 未収・未払の月齢 ── 60日を超える未収は個別対応リストへ

第四章現場別原価管理の最低形

高価なシステムは不要です。最低形は「現場ごとに、実行予算と発生原価を月1回並べる」だけ。実行予算のない現場が赤字の温床になります。見積り→実行予算→発注→原価集計の型が回り出すと、価格交渉(労務費基準を根拠にした転嫁)にも数字で臨めます。

第五章経審との接続

建設業会計の精度は、そのまま経審に跳ね返ります。決算変更届の財務諸表の組み替えが正確になり、Y点の8指標の改善余地が見え、業種別完工高(X1)の設計もできる。「会計を整える」は、資金繰り・受注力・評点の三方向に同時に効く投資です。月次の型づくりからのご相談も承ります(税理士との連携も含めて)。

執筆体制

行政書士村上事務所熊本市/創業2004年

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技術と設計の側から、評点の組み立てと施工体制について助言を受けています。

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