熊本建設業経営戦略センター(技術士/一級建築士/行政書士)

【令和8年7月経審改正】新設5点は「決算日までに宣言したか」で決まる|CCUSを回してきた会社ほど差引ゼロになる理由

2026年7月29日 公開|業界動向|熊本建設業経営戦略センター(村上事務所)

この記事の要点

  • 令和8年7月1日施行。新設の「自主宣言」はW点で5点、就業履歴蓄積措置は15点から10点へ5点減。W点の素点1点は総合評定値P点で約1.31点、5点なら約6.56点動きます。
  • 本当の論点は「5点増えて5点減るからプラマイゼロ」ではありません。新設5点をもらう条件の中に、CCUSの運用そのものが組み込まれています。
  • 加点の可否は「決算日までに宣言申請を終えたか」だけで決まります。7月・8月・9月決算の会社は、今月中に動かなければ1年分を落とします。

経営事項審査の項目と審査基準を定める告示が改正され、令和8年7月1日に施行されました。公布は令和8年2月6日の官報。改正は4項目で、うち2項目が建設キャリアアップシステム(CCUS)を現場で回してきた会社の点数に直接効きます。

この改正には他にない特徴があります。新設された5点は、決算日を過ぎてから動いても取れません。締切は公表されているのではなく、会社ごとに違う。自社の決算日が、そのまま締切です。今日は7月29日。7月決算の会社に残された時間は2日です。一方、3月決算の会社には今期この改正が適用されません。

はじめに:宣言は「支払いの約束」を含みます

自主宣言の必須項目には「見積書の内訳明示」「根拠のない値引きの廃止」が入り、宣言内容は企業名とともに公表されます。5点を取りにいくなら、下請への支払いが先に出ていく局面を前提に手元資金を組む必要があります。建設業のファクタリング活用(手数料・審査・使いどころ)はこちら

令和8年7月1日、経審の何が変わったか

事実だけを並べます。

出典:国土交通省九州地方整備局「経営事項審査の改正について」(令和8年2月6日公布・令和8年7月1日施行)より作成
改正項目改正前改正後
建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度
(通称「職人いきいき宣言」)
制度なし5点を加点
建設工事従事者の就業履歴蓄積措置
(CCUSでの履歴蓄積)
民間含む全工事 15点
全ての公共工事 10点
民間含む全工事 10点
全ての公共工事 5点
建設機械の保有状況(W7)対象機械に限定あり不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加(上限15点は変更なし)
社会保険の加入状況雇用・健康・厚生年金
各未加入で▲40点
評価項目から削除

改正の視点は、担い手の育成・確保、災害対応力の強化、建設業許可要件の改正への対応の3つ。建設機械に2機種が追加されたのは、令和6年能登半島地震の応急復旧工事での活用実績を踏まえたものと明記されています。

▼ 経審にはどう効くか

W点の換算式は「W=(W1+…+W8)×1,750/200」で、素点1点あたり8.75点。総合評定値は「P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W」でWの係数は0.15。素点1点はP点にして8.75×0.15=約1.31点、今回の5点は約6.56点です。

P点6.56点は、格付けの境界線上にいる会社なら等級一つ分の重みを持ちます。境界から離れている会社には、点数より「宣言の中身を実行できるか」のほうが重い論点です。

加点の可否は「決算日」だけで決まる

自主宣言の5点をもらう条件は3つです。

  1. 審査基準日(=決算日)が、宣言日以降であること。宣言日とは、ポータルサイトで申請を行った日です。
  2. 「元請事業者」または「下請事業者」の立場で宣言していること。「発注者」は加点対象外です。
  3. 経審の申請時に「宣言書」と「誓約書」を提出すること。

1つ目が効きます。決算日を過ぎてからの宣言は、その期には反映されません。さらに施行が令和8年7月1日ですから、審査基準日が令和8年6月30日以前の会社には新基準そのものが適用されません。決算月ごとに答えが変わります。

※「今期」=直近に到来する決算日を審査基準日とする経審。宣言申請は無料・オンラインで完結します。
決算月直近の審査基準日適用基準宣言申請の実質期限
1月〜6月決算令和8年1月〜6月末改正前(影響なし)令和9年の決算日まで。就業履歴の5点減も来期から
7月決算令和8年7月31日改正後令和8年7月31日(残り2日)
8月決算令和8年8月31日改正後令和8年8月31日
9月決算令和8年9月30日改正後令和8年9月30日
10月〜12月決算令和8年10月〜12月末改正後それぞれの決算日まで

3月決算の会社は、今期は何もしなくても点数が下がりません。就業履歴蓄積措置は15点のまま計算されます。減点が来るのは令和9年3月31日を審査基準日とする経審から。そのとき宣言していなければ素点5点、P点で約6.56点の純減です。減点の到来も決算月で1年ずれます。

7月・8月・9月決算の会社にとっては、今月から来月の仕事です。加点要件は「決算日より前に申請が完了していること」で、ポータルサイトへの掲載は決算日より後でも差し支えないとされています。それでも当日の駆け込みは避けてください。

なお熊本県知事許可業者の令和8年度の経審は、決算日が令和7年10月1日から令和8年9月30日までのものが対象です。同年度から色紙による提出が廃止され、白色紙・片面印刷が必須になりました。

プラマイゼロではない ─ 5点の中身にCCUSが入っている

「5点増えて5点減るから差引ゼロ」。これが今回いちばん多い誤解です。

自主宣言には必須項目があります。元請の立場で宣言する場合、そこに「CCUSの活用(現場への機器設置と就業履歴の蓄積)」が含まれます。配点を15点から10点へ下げたその取組を、5点をもらう条件としてあらためて約束させる構造です。

  • すでに全工事で履歴を蓄積している元請:5点減るが宣言すれば5点戻る。追加負担ほぼゼロ。ただし宣言しなければ5点の純減
  • CCUSを回していない元請:5点を取りにいくと、必須項目により事実上CCUS運用を始めることになる。到達すれば10点+5点で15点だが、負担は軽くない。

国土交通省は加点の総量を維持したまま、同じ点を取るための要求水準を一段上げました。この流れはCCUSの運用が経審の点数に直結する時代への延長線上にあります。

必須項目にはもう一つ、「労務費の確保・賃金支払い等への取組(見積書の内訳明示、根拠のない値引きの廃止)」が入ります。これは改正建設業法の標準見積書・労務費内訳明示と同じ内容です。法律上の義務を、あらためて宣言して公表する建て付けです。

▼ 詳しい方向けの補足:有効期間と、更新を忘れたときに起きること

宣言の有効期間は「申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末まで」です。起算日が翌月1日になるため、申請月によって実質的な有効期間が1年近く変わります。令和8年11月申請なら令和10年12月31日まで(実質約2年1か月)、令和8年12月申請なら令和11年12月31日まで(実質約3年1か月)です。

経審は毎年、宣言は2年強。「宣言したまま忘れて、3年目の経審で5点だけ落ちている」状態が構造的に起こります。満了日は交付される宣言書で確認し、決算スケジュールと同じ台帳に書き込んでください。

下請専業の会社には、むしろ取りやすい5点

下請専業の会社では話が逆になります。下請の立場で宣言する場合の必須項目は、「労務費の確保・賃金支払い等への取組」「雇用する全ての技能者について詳細型の技能者登録を行うこと」「宣言企業との取引優先」。カードリーダーの現場設置は入っていません。

就業履歴蓄積措置の加点は現場に機器があることが前提で、その設置権限は基本的に元請にあります。下請専業の会社が自力で取れる点数ではありませんでした。ところが自主宣言は、自社の技能者を詳細型で登録すれば下請単独で5点を取れます。

費用を出します。CCUSの技能者登録(詳細型)は現行4,900円。技能者20人なら98,000円。簡略型で登録済みなら切替は現行2,400円、20人で48,000円です。10万円以下の実費で、P点にして約6.56点。単価あたりの効率は良い部類です。

▼ 詳しい方向けの補足:詳細型登録は、どのみち避けられません

CCUSの技能者登録は令和9年(2027年)4月1日から詳細型に一本化される方針です。簡略型は廃止され、登録済みの技能者は次回のカード更新時に詳細型へ移行。手数料は4,900円から4,000〜4,500円程度への引下げが予定されています。

つまり必須項目の「全技能者の詳細型登録」は、いずれ全業界が通る道の前倒しです。余計な負担を負って5点を買うのではなく、先にやって5点を受け取ると読むのが正確です。引下げを待つ間、経審では毎年5点を落とします。

社会保険の▲40点が消えた意味と、2手先

雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入減点(各▲40点、合計▲120点)が評価項目から削除されました。これを「社会保険の優先順位が下がった」と読むのは誤りです。令和2年10月の改正建設業法により、社会保険への加入は建設業許可そのものの要件になっています。未加入なら許可が維持できない。経審で減点する以前の問題になったので、項目として不要になっただけです。

実務上の意味は別にあります。この削除でW評点の最低点は▲788点に変更されました。減点で沈んでいた会社が浮上する分、加点で稼いでいた会社の相対的な優位は薄まります。自社のP点が前年と同じでも、格付けの中の位置は変わり得ます。

2手先に何が起きるか

元請の下請選定に、宣言の有無が入ってきます。元請の必須項目には「宣言企業との取引優先」があります。宣言企業の一覧はポータルサイトで公開され、企業名・代表者名・宣言内容を誰でも確認できる。元請は協力会社リストと突き合わせるだけで運用できます。熊本の元請が動き始めれば、専門工事業者側へ短期間で波及します。

加点の軸は「導入」から「運用の中身」へ移ります。CCUSのレベル判定受審者は登録技能者の約8%、14.5万人にとどまります。就業履歴の配点を下げたのは、評価軸を「機器を置いたか」から「技能者がどう処遇されているか」へ移す布石と見るのが自然です。取れる5点ではなく、守れる5点を取ってください。

明日からの実務3点

  1. 総務または経理に、直近の決算日を確認させてください。令和8年7月1日以降に決算日が来るなら、その日より前に自主宣言ポータルサイトでの申請を完了させます。無料・オンライン。「発注者」を選ぶと加点対象外です。
  2. 現場管理部門に、CCUSの就業履歴が「民間を含む全工事」か「全ての公共工事」かを台帳で確認させてください。この区分で10点か5点かが決まります。
  3. 経審担当(社内または顧問)に、宣言書と誓約書を提出書類一式へ組み込ませてください。提出しなければ加点されません。あわせて建設機械台帳に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャがないか確認します。審査基準日から1年7か月以上のリース契約も対象で、1台5点、14台以上で上限15点です。

よくあるご質問

決算日が令和8年6月30日でした。今から宣言すれば今回の経審で5点つきますか。

つきません。決算日を過ぎた宣言は間に合わず、施行日が令和8年7月1日のため、令和8年6月30日を審査基準日とする経審は改正前の基準で審査されます。就業履歴蓄積措置も15点のままです。次回に向けて令和9年6月29日までに申請を完了させてください。

発注者の立場で宣言しても加点されますか。

加点されません。対象は元請事業者または下請事業者の立場に限られます。両方を行っている場合、選んだ立場で必須項目が変わります。元請なら現場へのCCUS機器設置と履歴蓄積、下請なら雇用する全技能者の詳細型登録が必須です。実態に近いほうを選んでください。

宣言してから取組を始めても構いませんか。

取組の開始は審査基準日より後でも差し支えありませんが、宣言日から1年以内にすべての項目に着手する必要があります。誓約書には取組開始日以降に「行う」または「行っている」旨を記載し、宣言内容は企業名・代表者名とともに公表されます。任意項目は最大5項目まで選べます。

社会保険の▲40点がなくなったので、加入手続きは後回しでよいですか。

いいえ。社会保険への加入は令和2年10月施行の改正建設業法により建設業許可の要件です。経審の減点項目から外れただけで、未加入なら許可の維持ができません。加入手続きや適用範囲の判断は社会保険労務士にご確認ください。

まとめ

動く点数は素点5点、P点で約6.56点。額としては大きくありません。それでも取り上げるのは、取り逃したときに取り返す方法がないからです。決算日を1日過ぎれば次は1年後。追加公募もありません。

この改正は、CCUSを「加点のためにやる取組」から「やっている前提で評価する取組」へ動かしました。真面目に履歴を蓄積してきた会社が、宣言を出さなければ5点減る。宣言できる実態を先に作った会社が、そのまま点数を持っていきます。

本記事は令和8年7月29日時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、特定の会社に対する助言ではありません。記載した点数は制度上の配点であり、実際の評点は各社の決算内容・技術者構成等により異なります。社会保険の適用・加入手続き、賃金制度や就業規則の設計など労務に関する事項は社会保険労務士に、税務に関する事項は税理士にご確認ください。提出書類および運用の詳細は許可行政庁(熊本県知事許可の場合は熊本県監理課建設業班)の最新の案内をご確認ください。

建設・不動産の経営者様へ:次の一手をお選びください

経審の点数を上げても、資金が回らなければ受注は増えません

下請への支払条件を適正化すれば、その分だけ手元資金は先に出ていきます。工事代金の入金を待たずに売掛債権を資金化する方法を、手数料・審査基準まで整理しました。

決算日までに何をすべきか、自社の数字で確認したい方へ

決算月・技能者数・CCUSの運用状況によって、取るべき手は変わります。技術士・一級建築士・行政書士が、経審の評点と許可・入札まで一体で見て判断材料をお示しします。熊本県内は出張相談も承ります。

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