熊本建設業経営戦略センター(技術士/一級建築士/行政書士)

【2026年7月施行】経審W点を守る「職人いきいき宣言」と夏季休工の実務対応

2026年、建設業界は「第三次・担い手3法」の全面施行や「職人いきいき宣言」の本格運用、そして国交省が推進する「夏季休工」など、現場の働き方と経営評価に直結する大きな変革期を迎えています。 特に注目すべきは、2026年7月1日から施行される経営事項審査(経審)の改正です。ここで新たに加点項目となる「職人いきいき宣言(建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度)」への対応は、公共工事を受注する地場建設業にとって急務となっています。 本記事では、深刻化する人手不足倒産の実態を踏まえ、経審W点対策としての「職人いきいき宣言」の活用法と、2026年夏から本格化する「夏季休工」に向けた工程管理の実務対応について解説します。

1. 2026年の建設業を取り巻く「人手不足」と「担い手3法」

帝国データバンクの調査によると、2025年度の人手不足倒産において、建設業は全体の25.4%を占め、全業種の中で最も深刻な状況が続いています[1]。高齢化による熟練技術者の大量引退と若年層の入職減少が重なる「2026年問題」は、単なる労働力不足を超え、受注機会の喪失や工期の長期化という経営上の致命傷となりつつあります。 こうした状況を打開するため、国は「第三次・担い手3法(建設業法、入契法、品確法)」を成立させました。この法改正では、著しく短い工期による契約締結の禁止や、不当に低い請負代金による契約の禁止が明記され、安値受注と長時間労働に依存した従来の現場運営からの脱却が強く求められています[2]。

2. 【2026年7月経審改正】「職人いきいき宣言」でW点+5点を確保せよ

担い手確保の切り札として国交省が創設したのが「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」、通称「職人いきいき宣言」です。技能者の処遇改善に積極的に取り組む事業者が、その姿勢を自主的に宣言し、ポータルサイトで広く公開する仕組みです[3]。

経審W点(W1-⑧)の新設とCCUS配点の見直し

2026年7月1日施行の経審改正において、この「職人いきいき宣言」を行っている企業は、W点(その他審査項目・社会性等)で新たに**5点の加点**(W1-⑧)を受けられるようになります。 ここで極めて重要な注意点があります。新設項目の加点と引き換えに、既存の「建設キャリアアップシステム(CCUS)による就業履歴蓄積(W1-⑦)」の最高配点が、従来の15点から10点へと引き下げられます。 つまり、**これまでCCUSで満点を獲得していた企業でも、「職人いきいき宣言」を行わなければ実質5点の減点**となってしまうのです。逆に、宣言を行うことで減点分を相殺し、評価点を維持(または純増)させることが可能です[4]。
状況自主宣言(W1-⑧)CCUS(W1-⑦)点数合計実質的な増減
宣言あり + CCUS全工事対応+5点10点(▲5点)15点±0(維持)
宣言あり + CCUS未対応+5点0点5点+5点アップ
宣言なし + CCUS全工事対応0点10点(▲5点)10点▲5点ダウン
宣言なし + CCUS未対応0点0点0点±0(変化なし)

申請のタイミングと注意点

経審で加点を受けるための絶対条件は、**「審査基準日(決算日)が宣言日以降であること」**です。例えば、3月末決算の企業が次回の経審で加点を狙う場合、必ず3月31日までにポータルサイトでの申請を完了させる必要があります。申請はオンラインで無料で完結するため、早急な対応が求められます。

3. 2026年夏から本格化する「夏季休工」と現場の労務管理

処遇改善(職人いきいき宣言)と並行して、現場の安全と働き方改革に直結するのが「夏季休工」の導入です。国交省は2026年度から、直轄の公共土木工事(道路舗装や盛り土など屋外作業中心)において、猛暑期間(7〜8月)の現場施工を回避する「夏季休工」の試行を本格化させます[5]。

WBGT(暑さ指数)を基準とした工期設定

近年、工期の算出において「雨休率」の中に猛暑日(WBGT値31以上の時間)が含まれるようになりました。危険な暑さで作業できない日をあらかじめ工期に反映させる仕組みです。 夏季休工は、単に「現場を休む」だけでなく、工期・原価・安全・採用を守るための「工程設計の標準化」と言えます。猛暑期を避けることで、作業員の熱中症リスクを劇的に低減し、若手人材が定着しやすい環境を構築できます。

経営層が取り組むべき実務対応

夏季休工を導入すると、結果的に全体の工期が延びる可能性があります。また、休工中も現場事務所の維持費や重機のリース代などの固定費は発生し続けます。したがって、経営層は以下の実務対応を進める必要があります。 1. **発注者・元請との事前協議の徹底:** 第三次・担い手3法を盾に、著しく短い工期を拒否し、夏季休工を前提とした余裕ある適正工期と、それに伴う管理費の増加分を契約に盛り込む交渉を行う。 2. **日給制技能者への配慮:** 休工による収入減を防ぐため、「職人いきいき宣言」の必須項目にもある「月給制の導入」や「CCUSレベルに応じた手当の支給」など、賃金体系の見直しを進める。

4. まとめ:守りの経審対策と攻めの採用戦略を両立する

2026年の建設業界は、法令遵守と処遇改善が「選ばれる企業」の絶対条件となります。 まずは直近の決算日までに「職人いきいき宣言」のオンライン申請を完了させ、経審W点の減点を防ぐ(または加点を得る)「守り」を固めてください。そして、宣言した処遇改善内容や夏季休工の取り組みを、自社の採用サイトや現場看板のシンボルマーク等で積極的にアピールし、若手人材の確保につなげる「攻め」の戦略を展開することが、2026年を生き抜く最適解となるでしょう。
【参考資料】
[1] 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260409-laborshortage-br25fy/
[2] 国土交通省「第三次・担い手3法 ポータルサイト」 https://ninaite-sanpo.mlit.go.jp/
[3] 国土交通省「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度 ポータルサイト」 https://jishusengen.mlit.go.jp/
[4] 全国建設業協会「【経審】改正 職人いきいき宣言で加点!」 https://www.kensetsugyou.or.jp/news_topics/kensetsugyou/5408/
[5] BuildApp News「2026『夏季休工』とは|国土交通省の定義やメリット・デメリットを解説」 https://housing-news.build-app.jp/article/36545/
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